« 開幕戦、東京の「10番」はどこにいるのだろう | メイン | 『クローバーフィールド』『パンズ・ラビリンス』『最も危険な遊戯』 »

2009年03月08日

●完敗スタート、ここから… (FC東京×アルビレックス新潟)


昨日の午後は、味の素スタジアムでJ1第1節。FC東京 1-4 アルビレックス新潟。いよいよ、というより早くも今シーズンの開幕、2ヶ月のオフ明けということでチームの仕上がり具合が注目される一戦であった。試合は、ホームの東京がボールを支配して攻めたてるもゴールを奪えず、逆に新潟が一発のチャンスを生かして先制。後半は東京の守備の乱れを突いて新潟の鋭い攻撃が次々と決まり、終わってみれば予期せぬ大差の結果となってしまった。
 
 
試合前のイベントは、引退した川口信男さんの挨拶と「東京ドロンパ」お披露目ショー。ご家族に見守られながら非常にそつのないスピーチをこなした信男さんにはひたすら拍手。ドロンパは……ローラースケートに乗って勢いよく登場したものの、一気に場内を駆け抜けて退場してしまう演出は笑えた。ただ、再登場した後、「東京ドロンパバックダンサーズ」(笑)を引き連れてのパフォーマンスはちと長かったかな。メインスタンドからはよく見えなかったし。

 
キックオフ。東京は4-4-2で、カボレ・佐原・塩田の代わりを近藤・平松・権田が務める布陣。中盤にブルーノではなく金沢が入ったのが意外ではあった。一方、新潟は4-3-3。初戦らしく双方慎重な立ち上がりで、東京は赤嶺や梶山の足下へ、新潟はDFライン裏を狙って、それぞれ長い縦のボールが多くなった。東京はダブルボランチのところでややプレッシャーが甘いのが気になったが、序盤はそこからピンチになる場面はなかった。

15分ほど膠着状態が続いた後、次第に東京がペースをつかんでいく。16分、右サイドのパス交換から今野がアーリークロス、赤嶺がDFのマークを外して頭で合わせたが枠をとらえられず。20分、梶山のパスで右サイドを抜けた長友がゴールライン際で折り返し、ニアに近藤が飛び込むがきわどくDFがカット。24分にはボックス前での細かいパス交換から今野が左足で狙うも大きく枠外。東京の速いパス回しに新潟DFの足が止まる場面もあった。

しかし、東京は一方的に押し込むものの、肝心なところで連携の悪さが出て意外と決定機を作れない。35分、金沢がDFの間をスルスルとボックスまで持ち上がり、こぼれ球を赤嶺が狙ったシュートはポスト右。39分、左サイドに流れた羽生が切り返してクロス、ゴール前の赤嶺が胸トラップするがシュートできず、金沢の右足シュートも枠外。この間、初出場の権田はクロスや威力のないシュートを無難に処理し、鋭いパントキックで能力の片鱗を見せていた。

ロスタイム、それまで防戦一方だった新潟がジュニオール・ジウトンのコンビで左サイド攻撃。ジュニオールが平松と長友を振り切って突破、深くえぐったところで茂庭がカットし、続くジウトンのシュートも茂庭が素早い動きでブロックしたものの、続く左CKをジウトンが強烈なヘッダーで突き刺して新潟先制。いい時間帯に一発で決められてしまった、という悔しさもあったが、DF2人があっけなく抜かれた事実はその後に向けての大きな不安となった。
 
 
後半は先制点の勢いそのままに新潟ペース。開始直後、平松がジュニオールに裏をとられるピンチ、茂庭が懸命に走ってカット。49分にはショートコーナーのコンビから梶山がボックス内へパスを通すも、敵味方混戦の中でシュートには至らず。ここら辺、梶山の動きに対する味方の反応の鈍さが目立つ。その直後に新潟の逆襲、一気にゴール前まで駆け上がったジウトンがヘッダーを撃つも権田キャッチ。新潟の攻撃スピードは前半に比べて断然上がっていた。

それでも、51分に東京が同点に追いつく。ボックス手前でパスを受けた近藤祐がゴールへ向かって突進、DFラインへ突入する間際に撃った左足シュートがゴール左隅に決まる。タイミング・コース・強さの全てが素晴らしかった。1-1。ところがその直後、新潟が矢野の仕掛けで右CKを獲得、新潟アタッカーが頭で合わせそこねて跳ねたボールをジュニオールがダイレクトボレーで叩き込んだ。1-2。得点直後のセットプレー……あまりに間の悪い失点である。

新潟は勢いづき、サイドを中心に速い攻めでチャンスを量産する。54分、左サイドで今野がジウトンに抜かれ、折り返しをリシャルデスがふかして命拾い。57分、カウンターから松下のシュートを長友がブロック。59分にはロングボールに平松・長友の反応が遅れて矢野が左サイドを抜け、切り返したシュートはわずかにポスト右。60分にようやく羽生とのパス交換で赤嶺が攻め込むが、ミドルシュートは枠外。61分には徳永が矢野にぶち抜かれてまたヒヤリ。

ここで東京ベンチが動く。まず金沢OUTで鈴木IN、続いて近藤と羽生を外してカボレとブルーノを投入。一挙三枚替えの思い切った交代策である。ブルーノは攻撃的MFの位置に入り、チーム全体として前がかりの姿勢が顕著になった。66分、鈴木がフェイントでDFの逆をとって右サイド突破、クロスはブルーノの寸前できわどくDFがカット。その直後にも鈴木は中へ切れ込んでシュートを放っており(枠外)、動きの良さが目立っていた。

だが、そんな上げ潮ムードになりかけたところで致命的なミスが。68分、平松がトラップミスから中途半端なバックパスを大島にさらわれ、大島は持ち上がってカバーの茂庭をズラしシュート、ゴール左隅に決まった。1-3。その直後にはリシャルデスにかわされかかった梶山が後ろから引き倒してファウル(警告)、FKのクロスに権田が飛び出してさわれず、ジュニオールのシュートを茂庭とブルーノがゴールライン上でクリアするシーンも。

71分、右サイドの鈴木から内を追い越す長友へ浮き球が通り、戻したボールをカボレがシュート、きわどくサイドネットに突き刺さる。73分、新潟のカウンターでリシャルデスがスルーパス、長友が手を上げるがオフサイドはとれず、抜け出したジュニオールがあっさり決めた。1-4。これで大勢は決した。74分、敵陣でパスカットしたカボレが持ち上がってシュートするもGKの正面。79分にボックス正面で得たFKは梶山のシュートが壁を直撃。

ひたすら攻める東京だが、新潟にしてみれば余裕の守備専念モード、というところか。81分、長友のロングスローが逆サイドに抜け、平松が飛び込むもヘッダーはバーの上。82分、ボックス内で跳ねたボールを権田がパンチミス、2度に渡って無人のゴールを狙われるがいずれも茂庭がカバー。終盤にはその茂庭が猛然と攻め上がる場面もあったが、クロスをカボレがトラップミスするなど得点にはつながらず。結局、3点差を詰めることはできず試合終了となった。
 
 

いきなり冷や水を浴びせかけられたような敗戦だった。

前半のボール支配の割に決定機を作れない様子に「勝ちきれないかもしれない」という気はしたが、正直負ける感じもしなかったし、まさか大敗とは……。おそらく城福監督としては、守備陣に新顔が多いことも考えて金沢を「抑え」とし、慎重に入って次第にペースを上げるイメージだったのだろう。だからこそ、相手に自信を与えた前半ロスタイムの失点はやはり痛かった。後半は「追って前がかりになって逆襲を食らう」悪いパターンにはまってしまった。

新潟攻撃陣の破壊力については指摘しておくべきだろう。前半こそ単騎の仕掛けばかりが目立ったが、後半勢いづいてからは松下・リシャルデスのパスやドリブルにジウトンの押し上げが加わり、アタッカーも伸び伸びと仕掛けまくって決定力を発揮した。守備には穴もあるように見えたが(と言いつつ東京は個人技での1点しかとれなかったわけだが)、外国人選手と矢野・大島・松下で構成する攻撃陣はなかなかの迫力。侮ってはいけまへん。

一方、東京の守備が駄目だったのも事実である。バイタルエリアやサイドでボールを持たれた時の連携は非常に悪く、裏をとられては茂庭がカバーして何とか持ちこたえる、という場面が多かった。あと、もちろんセットプレーも。「ここだけはやられちゃいけない」状況で2度も失点したらそりゃ負けるわな。新しいシステムで挑む開幕戦だから仕方がない部分はあるにせよ、守備はもう少し整備しておいてほしかった。これでは1年前に後戻りではないか、と。

攻撃の方も「Moving」にはほど遠かった。梶山を中心に前半はボールキープこそできていたものの、ゴールに向かう流れはあまり作れなかったし、連動性の面でも決して良い出来ではなかった。特に梶山がボールを持った時に周りのフォローやボールを引き出す動きが羽生を除いてはあまりに少なく、10番が敵中に孤立してしまう事が多かった。ついでに言うと、やっぱり精神的にも技術的にも中盤の「コンダクター」がいなんだよね、相変わらず。

個々の選手では、平松が悪目立ちしてしまったのは否めない。前半44分までは積極的な動きで悪くないように思ったのだが、後半は焦りが出たかな。長友も本調子ではなかった様子で、攻撃参加の遅れや守備での粘りのなさが目立った。権田はパントキックの精度・飛距離に見るべきものがあるものの、現状では守備範囲が狭すぎるように見えた。ここら辺、茂庭(よく頑張った!)にかかる負担はあまりにも大きく、佐原の復帰が待たれるところではある。

攻撃陣では、近藤は同点シュートこそ素晴らしかったものの、その他は特にいいところなし。カボレは現状あんなもんで仕方ないだろう。赤嶺はシュートの精度が……。中盤の選手は、誰がどうというより、繰り返しになるけど、もっと連動して「動いて動かして」いかないと。昨日の試合では単騎の勝負か、せいぜい2人のコンビネーションでしか戦えていなかった。個人能力で言えばJ1の中で決して突出しているチームではないので、このままでは厳しい。
 
まあ、まだ始まったばかりだから慌てる必要などないと言えばその通りなんだけど、次はアウェイの浦和戦。いきなりの連敗はチームやファンに妙な動揺を与えかねないので、何とか勝点を持ち帰ってほしいところである。権田も平松もとにかく気をとりなおしてガンバってほしい。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2470

コメント

守備が崩壊して、今後に不安の残る大敗でしたね・・・。

そんな中ですが、祐介はシュート以外にもポストなどで貢献していたように見えました。
トラップが見違えるように上手くなったような。
おっしゃるように梶山を孤立させていた面は否めませんが、逆に呼吸が合えば数字を出せると期待します。

一方の赤嶺はシュートの場面以外あまり出てこず、今年もD or Aなスタイルなのかな。

困った時の社員様も珍しく怪我しちゃいましたし、ネガティブ要因には事欠きませんね(苦笑)

こんな時に相手が浦和なのは恨めしいですが、こんな時だからこそ何故か勝っちゃう東京に期待です!

>いぎーたさん

コメントありがとうございます。やっぱり点がとれないのもそうですが、守備がアレなのはリーグ戦を戦う上では不安ですよね。

祐介にせよ梶山にせよ赤嶺にせよ、やっぱり意思疎通が足りないというか、コンビネーションの下地はないはずないなのに、それを出せていない感じでした。開幕戦で先制されて泡くっちゃった、というのもあるのかもしれないですね。前半の中頃は悪くない感じでやれてましたし。

>困った時の社員様も珍しく怪我

ああ、そうなんですか。慎重に入るなら、まして新顔が多いのなら「金沢よりも浅利の方が(指さし確認とかするし)いいんじゃないかな」と思って観てたんですけど、怪我だったんですね。

>こんな時に相手が浦和なのは恨めしいですが
>こんな時だからこそ何故か勝っちゃう東京に期待です!

まあ、ある意味馬鹿力の出しどころとも言えるわけで。「開き直って」という物言いはあまり好きではないですが、城福監督と選手たちがきっちり修正してきてくれることに期待しましょう。

お久しぶりです、今期も宜しくです、根気も宜しくお願いしたかった試合でしたorz

梶山は疲れてくる?と難しい選択を選びがちな気がします、前半は凄かった。
モニとカボレお疲れでした。
ブルーノさんが先発で無い理由が分かった気がしました。
監督は前半に先制して逃げ切る予定だったんだろうなぁ、、、、とか、2失点目までは運が無いと言うか。
けが人が早く帰ってきて欲しいです。

次節は仕上がり未満のチーム同士の対決ですが田中達とエジミウソンにやられないか?が心配です。

>古美根さん
どうもです。今年も性懲りもなく「うまねん観戦記」帰って参りました。

>梶山は疲れてくる?と難しい選択を選びがちな気がします、前半は凄かった。
確かに。ただ、前半も梶山の発想と周りの意図が噛み合ってない場面は決して少なくなく、「まだまだだなあ」という感じでした。でも、前の方でキープできるのはいいですね。

>監督は前半に先制して逃げ切る予定だったんだろうなぁ、、、、
ああ、なるほど、そういう見方もあるんですね。私はどちらかと言えば「後半勝負」かと思ったんですよ。いずれにせよ、そこら辺が観ていてよくわからないような状況のままリードされてグズグズになってしまったということなんでしょうね。

>田中達とエジミウソンにやられないか?
とにかく、まずは守備、だと思います。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)