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2009年10月18日

●石川と一緒にACLへ行こう (FC東京×柏レイソル)


昨日の昼間は、味の素スタジアムでJ1第29節。FC東京 4-0 柏レイソル。ジュビロ戦後半から吹いてきた上昇気流に乗り、前節もアウェイでグランパスに完勝を収めた我らが東京。再び上位が射程に入ってきた今節は降格危機真っ只中のレイソルが相手であった。試合は、終始東京がボールを支配して攻めたて続ける展開となり、エースストライカーの一撃を皮切りに4得点を奪う完勝。今季一番の内容で文句なしのはずだったのだが、しかし……。
 
 
キックオフ。現在の力関係どおりに東京がボールを支配、テンポよくパスをつなぎながら押し込んでいく。柏は後方を固めてカウンター狙いの構えだが、フォアチェックも抜かりない東京の圧力に押され、淡泊な「タテ一本」で終わってしまうことが多い。11分、この日は序盤からトップギアの梶山が右サイドへ速いフィードを送り、快足を飛ばして追いついた石川がスパッとDFをかわして中へ切れ込む。左足の強烈なシュートをGK菅野が横っ跳びで弾き出した。

15分、左サイドへ飛び出した菅沼がクロスを上げ、ファーサイドの北島がボレーで狙うも徳永がブロック。19分、椋原とのパス交換で平山が右サイド前方に進出、DFのギャップへ走り込む石川へラストパスを通したが、シュートは再び菅野の鋭い反応で防がれた。その後も東京の優勢は続き、米本らがボールを奪っては梶山から平山・赤嶺へ次々にクサビが入る。柏もサイドから反撃の機会をうかがうが、時折いい形を作っても攻撃の駒が不足している感じ。

32分、梶山のアウトにかけた技ありパスで石川が右サイドを突破、赤嶺を狙うクロスは菅野がキャッチ。38分、左ゴールライン際で石川がキープして振り向きざまのクロスに赤嶺が合わせたが、枠外。39分、細かいパスをワンタッチでつなぎながら羽生が中央からボックスへ突入、シュートはバーの上へ。ここら辺、得点こそ入らないものの圧倒している感があった。41分、菅沼の反転スルーパスで山崎がボックスへ走り込んだ場面も一歩早く権田がセーブ。

そして迎えたロスタイム。攻防の中でピッチ上の選手の間隔がやや開いたところ、中盤のスペースでパスを受けた羽生が左サイドから前線へ走り込む赤嶺へグラウンダーのパス。赤嶺はスピードでDFを振り切ってダイレクトにシュート、横っ跳びの菅野も届かずゴール左へ決まった。羽生のパスも絶妙だったが、赤嶺のキレも目を見張るほどで、一瞬走ってきたのは石川かと勘違いした。1-0。いい時間帯のいい得点により、いい雰囲気でハーフタイムへ。
 
 
後半も東京の攻勢は変わらない。46分、ボックス手前のFKで石川が強烈なシュート、菅野がかろうじて弾き出す。直後にも羽生がボックスへ突入するきわどい場面。東京が順調にパス&ムーヴを続けるのに対し、柏は連携がぎこちなく、局面でアタッカーが孤立する場面が多い。51分、左サイドに開いてロングパスを受けた羽生の折り返しを徳永がミドルシュート。53分には早いリスタートから石川が右サイドを突破、平山を狙うクロスを小林が体を張って防ぐ。

追加点は55分。椋原がDFに絡まれながら右サイドを強引に突破、ニアでパスを受けた赤嶺がゴールライン際で粘ってDFを振り切り、菅野の脇を抜く折り返し。ゴール前にきっちり詰めていた羽生が難なく蹴り込んだ。サイド攻撃にもバリエーションがが出てきたということか。2-0。さらにその直後、速い縦パスで石川が右サイドを抜け、またもフリーの羽生目がけてマイナスのクロス。今度はやや逆球となり、羽生のシュートは菅野の正面に飛んでしまった。

柏は若い田中に替えてポポを投入するが、流れは変わらない。62分、左に流れてボールを収めた羽生がまたも前線へナイスパス、平山がDFと競りながら左足を振り抜き、菅野の脇下を抜いてゲットした。「どうだ、できるんだぞ」と言わんばかりの相太キャノン。3-0。そこからの数分間は柏の緊張も切れて東京はやりたい放題。中盤は梶山と米本が完璧にコントロールし、右サイドでは石川がDFを軽々と置き去りにする。「こりゃ何点入るのか」という雰囲気に。

そして問題の69分。羽生がDFライン裏へ落とす絶妙の浮き球。DFと競りながら飛び込んだ石川がつま先で浮かし、ボールは菅野の頭上を越してゴールの中へ。芸術的ゴール!ブラボー!……と跳び上った場面だったが、シュート後に倒れ込んだ石川が起き上がらない。苦悶の表情でピッチを叩く姿が見えた。駆けつけたメディカルは即座に「×」出し。場内から「えー!」と、動揺交じりの悲鳴がわき起こった。左脚を固定したまま担架で運び出される石川。

東京は石川→田邉、柏は杉山→鎌田の交代。東京は賢明にも落ち着かせるパス回しを延々と続け、柏は意地の反撃を試みる。76分、村上のクロスを北嶋がヘッドで狙うがポスト左を抜けた。東京は羽生→北斗、平山→大竹と、今後の事も考えたナイスな交代。83分、右サイドから切れ込んだ村上がドリブルシュート、わずか左に外れ。ロスタイム、ロングボールをボックス内で北斗が落とし、DFの股下を抜く大竹のクロスを赤嶺が蹴り込むが、これはオフサイド。

最後、菅沼の意地のシュートも権田がキャッチし、4点差のまま試合終了。なんとなく、最後の15分くらいはスタジアム全体(柏ゴール裏除く)がやや上の空だったかもしれない。
 
 

これぞ完勝、という内容とスコアで3連勝。本当なら諸手を挙げて喜びたいところだが……。

FC東京にしてみれば、今季一番の内容だったかもしれない。夏場の不調はもはやどこへやら、選手は皆コンディションが良く、パスはテンポよくつながり、ミスらしいミスはほとんどなかった。引く相手に対して慌てず丁寧につなぎ、2トップへの楔から攻撃がテンポアップする意識づけもよくできていた。鈴木達・長友の不在もほとんど気にならず、日本人2トップがいずれも得点をあげ、勝負がついてからは出場機会の少ない若手を試合に慣れさせることもできた。

だから、石川のループシュートがゴールインする瞬間までは「これで上り調子でナビスコ決勝とリーグ終盤に臨める。行ける!」という思いを抱いていたのである。それなのに、まさかの石川の負傷。おそらくあの痛がり方と負傷箇所からすると、残念ながら早期に復帰できないことは覚悟しなければならないだろう。上位陣のつぶし合いもあってACL圏内も見えてきた今、リーグ得点王の大黒柱を失ってしまうとしたら、チームにとって大きな痛手なのは間違いない。

ただ、だとしても試合は待ってくれるはずもなく、チームは立ち止まっているわけにはいかない。城福監督も選手たちも「やるしかないんだよ!」の気分だろう。無理矢理ポジティブに考えれば、これはチームにとってもまた一段成長するチャンスである。カボレ移籍の痛手だって、今にして思えばチーム立ち直りのための(城福監督の良い意味での「開き直り」も含めて)いい刺激になっているように思う。鈴木や大竹、田邉だっているんだから、大丈夫(と思いたい)!

次は4位清水とのアウェイ戦、その次は宿敵川崎とナビスコカップ決勝。正念場のビッグマッチが続くが、この2年、いや10年間で培ってきた底力を見せてほしいものである。勝って勝って、カップを片手にACLの切符もとって、みんなで石川直宏の復帰を待ちたいもんだ。ぜひ。

個々の選手について。MVPには「ムービングフットボールの体現者」羽生を推したい。1得点3アシストの大活躍もさることながら、あちこちに顔を出しまくる彼にきっちりパスが出て浮いた感じがなかったのは意義深いことだ。中盤では梶山の出来が素晴らしかった。抜群のキープ力とブレのない長短のパスが醸し出す存在感。前線での「さばき役」だけでなくストライカーとしての仕事も果たした平山と合わせて、チームの中央にビシッと背骨が通ってきたように思う。

嬉しかったのはやはり赤嶺の活躍である。京都戦までは周りと噛み合わずに自信なさげだったのが、磐田戦で本人も他の選手も存在意義を再確認できたのだろう、堂々としたプレーぶりで要求も多く、頼れるエースストライカーが帰ってきた。今後はマークも厳しくなると思うが、得点感覚を磨き直してチームを高みに引き上げてほしい。守備陣は、さほど重要な出番もなかった感もあるが、柏のでかいFWに全く当たり負けしなかった椋原の強さについて再確認。

しかし、ホント、石川は……この試合でもキレキレで、後半などトイメンのDFをほとんど問題にしていなかった。巧みなループも含めてシュート感覚も凄まじく、菅野の好反応がなければ得点ランクで単独トップに立っていてもおかしくはなかった。視察に来ていた岡田さんも「よしよし」という感じだったろうが。好事魔多し、とはよく言ったもんである。軽傷でありますように……。

柏レイソルは、この日山形が勝ったことともあり、残留が相当に厳しくなってきた。戦いぶりにもほとんどいいところがなく、ネルシーニョ監督の妙な若手抜擢といい、3点目を奪われてからの「心ここにあらず」状態といい、気持ちが来シーズンへ行っちゃってるのではないかと思えたくらいである。春にナビスコ杯で完敗した時にはチーム力の差(東京のチーム作りの遅れ)を痛感したものだが、今や全く逆転してしまった印象。サッカーとは恐ろしいもんだとつくづく思う。

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コメント

うーん、なんというかもう最後の15分間は試合展開全く覚えていないです。
ナビがどうとか日本代表がどうとか関係なく、石川の人生を考えると切なすぎますが、これが現実。
代表とか関係なく選手の人生を応援する覚悟を持つ、それがチームをサポートするということなんだと思います。
由紀彦やコバやアマラオにかつて持っていた感情を思い出しました。

夢が現実に成りこれからって所で、何でこうも残酷なんだよ…と嘆いてもいられないのも事実ですね。
ナオもモニも浄も居ない、でも藤とサリは居る、佐原も間に合うかも知れない。
叱咤された選手も一皮剥けるかも知れない。

梶山は次節に警告とかで出停を絶対に貰わない様にして欲しいですね、長友戻ってこられるのかな…。

検査の結果、前十字靱帯の損傷だったようですね。いや、わかっていたとはいえ……。

コメントに書いていただいた、由紀彦とか小林とかアマラオとか藤山とか浅利とか、そういう固有名詞を眺めてみて、あらためて石川は僕らにとって「そうした存在」になっていたんだなあ、と痛感しました。本当にいいヤツっぽいですしね。

ホント、月並みではありますが、石川が安心して治療に専念できるよう、他の選手には彼の分まで頑張ってほしいと思います。特に若い選手は、ね。チャンスでもあるわけだし。

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