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2009年08月30日

●ニータンには頑張ってほしい (FC東京×大分トリニータ)


昨日の晩は、味の素スタジアムでJ1第24節を観戦。FC東京 2-0 大分トリニータ。7月下旬以降リーグ5戦勝ちなしの不調で、中位(定位置とも言う)に埋没しつつある我らが東京、今回は最下位に低迷する大分をホームに迎えた。勝ちきれないチーム同士の対戦だけに前半は膠着した展開となったが、後半途中から大分のスタミナ切れに乗じて攻勢に出た東京が若手選手の活躍で2点を奪取。実に40数日ぶりの勝利を収めたのであった。
 
 
キックオフ。今回はポポヴィッチ体制になってからは初の対戦となったが、大分の変化は一目瞭然だった。布陣こそ3-5-2で変わらないものの、守備ボール保持にこだわらないシャムスカ時代とは異なり、とにかくボールを大事によくつなぐ印象である。東京も現在はパスサッカー指向が強いだけに、大ざっぱに言えば「似たもの同士」の対戦にも見えた。2分、左サイドを駆け上がる藤田が中へ折り返し、フェルナンジーニョの反転シュートがポスト右を抜ける。

同じスタイルならば東京に一日の長が……と言いたいところだが、序盤は大分がやや優勢。大分は中央にフェルナンジーニョ・金崎ら技術の高い選手が並び、高松のポストプレーや藤田のサイドチェンジを交えて滑らかにボールを運ぶ。が、東京の最終ラインを破るには至らず、気がつけば試合は膠着。東京はブロック守備が、大分はシャムスカ時代に培ったカバーリングシステムが機能し、双方回して攻め込めず。地味というか、少々退屈な時間が続いた。

両チームの攻めが活発になったのは30分過ぎから。まずCKにフリーで飛び込んだ森重のヘッダーがわずかに外れて冷や汗。36分、平山が右サイドをえぐって折り返すも、羽生の寸前でGK西川がストップ。さらにカボレとのワンツーで徳永がボックスへ走り込むが、DFの激しい当たりに防がれる。39分、フェルナンジーニョが左サイドを突破、折り返しを藤田が狙うも枠外。41分にはカウンターから梶山がボックスへ突入するが、ラストパスは西川がキャッチ。
 
 
後半頭から、大分は負傷の上本に代わり坪内が出場。これが後々響いてくる。後半は前半に比べると中盤が間延びし、攻め合いになっていく展開。48分、ボックス正面FKのピンチはフェルナンジーニョのシュートが壁に当たって外れ。東京は波状攻撃しながらシュートが撃てず、ゴール裏から「シュート撃て!」コール。56分には右コーナー付近でブルーノと正対したフェルナンジーニョがクロスを入れ、走り込んだ高橋がシュートするも権田がキャッチ。

時間が経つにつれ大分は疲労から上がる枚数が減り、米本・梶山がボールを拾いまくる東京が両SBの攻撃参加とともに押し込んでいく。63分、平山のポストプレーで石川がゴール前に飛び出すが、DFが懸命にせりかけてシュートできず。さらにボックス左のFKでクイックリスタート、ゴール前の石川にボールが入るも反転シュートは大分DFがブロック。ここら辺は大分、さすがの粘りである。東京は梶山のラストパスにFWが間に合わない場面が幾度か。

ようやく試合が動いたのは後半半ばを過ぎて。68分、東京は羽生に代えて大竹投入。この交代が効果てきめんだった。70分、右サイドでボールを持った大竹がDFの間へ走り込む石川へ絶妙のパス。石川がボックスへ突入したところで一旦はDFがカットしかけたものの、詰めたカボレがフェイントを入れて西川の脇を抜き、ゲット。大竹の仕掛けで一気にスイッチが入ったような感覚。1-0。その後も東京ペースが続き、体力的に厳しそうな大分を攻めたてる。

こうなると東京の厚いDFとポゼッション指向が生きてくる。サポーターもやたらめったら「撃てー!」とか言わなくなるし(笑)。大分はパスの出し所を失うシーンが多い。74分、大分は清武OUTで宮沢IN。久しぶりのみやざー登場に東京側のスタンドも沸く。東京の方は終盤要員・鈴木と赤嶺の登場である。78分、右サイドでカボレが潰れたところ、一気に前へ持ち出した平山がクロスを上げ、鈴木が走り込むチャンスとなったが、カバーのDFがかろうじてカット。

82分、カボレのパスでオフサイドギリギリの位置から鈴木が左サイドを突破、折り返しをDFに走り勝った大竹がシュートするも、これは西川の正面。終盤は急ぐ大分が宮沢のロングパスから攻め込もうとするも、東京DFが着実にはね返し、の繰り返し。特に米本と今野の運動量は凄まじく、どこにボールを動かしてもこの2人がいる、という感じ。大分にしてみれば鈴木慎吾か家長を使いたいところだったのかもしれないが、残念ながら交代枠が残っていない。

そしてロスタイム。ゴール裏から『眠らない街』の歌声も聞こえ始め、あとはポゼッションで時間を潰すだけ、「今日は平山キープ劇場がなくて残念だな」と思いきや……大分陣中央でパスを受けた米本が突如右足を一閃、凄まじい勢いで飛んだボールはあっという間に西川の頭上を越し、ゴールネットに突き刺さった。無回転ロングシュート!すげえ!ジュニーニョ・ペルナンブカーノみてえ!!と、ファン総立ちの大喜び状態でタイムアップ。
 
 
なんか、試合の最後の4分の1でうまく帳尻を合わせたというか(笑)。

トリニータはいかにも再建途上という感じ。結果は出なかったが、パスサッカーの萌芽や粘り強い守備の健在には可能性を感じた。攻撃については時間のかかる取り組みでもあるし、おそらく今年は来年の再昇格に向けての準備期間となるのだろう。問題は有望な若手選手たち(金崎、森重、西川、etc)をキープできるか、か。財政状態はかなり厳しいんだろうね。菊池の獲得(は別に問題ないと僕は考えるが)とか、怪しげな胸スポンサーとか。うーむ……。

つーか、大分、あのアウェイユニフォームはやめてくれないかな。けっこう格好いいとは思うのだが、濃いグレーに黒の背番号は見づらくってしょうがない。遠目に見ると誰が誰だか。

FC東京は、なんと公式戦7試合ぶりの勝利。攻守ともにさほど内容が改善されたようにも見えなかったが、石川の復帰で「ベストメンバー」が揃ったこと、相手をフィジカルで上回って終盤に圧倒できたこと、大竹の調子が上がってきた(そしてそれなりに時間を残した投入だった)こと、あたりが勝因だろうか。少なくとも安定感は戻ってきた感じだし、攻撃の手詰まり感を打破するのは好調なアタッカー個人の力、というのはミもフタもないが普遍のパターンである。

一ファンの身勝手な希望を書くと、水・日とナビスコ杯準決勝(清水戦)を控えてもいるのだから、この試合は「今の主力」はもっと休ませて、組み合わせとか色々と試してほしかったんだけども。まあ、ホームだし、監督としては連勝の頃のフォームを取り戻す(あるいは崩さない)事が大事だったのだろう。11月3日のナビスコ決勝までは手堅いやり方を貫いて、タイトルを1つとっておいてからもう一段の飛躍を目指す、というイメージで捉えれば良いのかな?

個々の選手について。まずMVPは米本。抜群の運動量で大分MFに対して優勢に立ち、勝利に大きく貢献した。最後のキャノンシュートもお見事。かつて浅利も98年JFL大宮戦で「超ウルトラストロングスーパーロングシュート」を決めたそうだが(Mendoza氏談)、それを1年目からやってしまうとは恐ろしい男である。相方の梶山はボール奪取やキープは良かったけど、攻撃参加の時に味方と合っていなかった。あと、直接FKは10番が狙ってくれんかのう。

アタッカーでは、カボレの動きがキレていた。なにげに2戦連発。これくらいはやってもらわないと、という説もあるが(笑)。平山は少し落ちてきているかな。大竹・鈴木の調子が良いのは今後に向けて明るい材料。石川は復帰戦にしては上々だが、もう少し外を使ってもいいかも。羽生は無駄走りが報われない。赤嶺はすっかり立ち位置を見失っている様子。DF陣とGKは、皆及第点だったように思う。特に高松とドッグファイトを繰り広げた今野は大活躍だった。

しかし、考えてみればこの試合、大竹に米本に権田に金崎に清武に東と、20歳以下の選手がホントにたくさん出ていたんだね……。もちろん長友や梶山や平山、森重や西川も十分に若いわけで、抱えている「財産」を見れば両チームとも前途洋々のはずなんだが、ともに財政面からなにやら暗雲が漂ってしまっているのが残念な話ではある。
 
 
[付記]
菊地直哉のトリニータ入団について。賛成・反対は色々あるかもしれないが、僕は問題ないと考える。既に日本サッカー協会による1年間の登録停止処分は明けているわけだし、社会的非難を受ける可能性の大きい日本国内で本人があえてやり直したいと考えているのであれば、チームもイメージダウンなどの可能性を踏まえてあえて獲得するのであれば、なおさらである。

ネット上であれこれ見ると、糾弾調の意見を述べている人も多いようだ。大分ファンからすれば「前科者」の獲得は確かに嫌かもしれないし、それ以外の人々が個人的な嫌悪感を表明するのはその人の勝手だろう。だけど、「このような犯罪を犯した人は二度と復帰を認めるべきではない」とか「被害者の気持ちを考えろ」とかいった感情的な物言いには、僕は同意できない。

彼の罪が重いか軽いかはともかく(個人的には、たとえ相手が未成年者であっても、同意の上での性交に処罰を科す事には疑問を覚える)、また「当事者」としての大分関係者やサポーターが賛成反対を述べるならともかく。彼は既に一定のペナルティを受けている。再犯などしでかしているのでない限りは、もう一度やり直す事を認めてあげてもよいのではないか?罪は罪として、更正の余地は残しておくべきではないか?僕はそう思うのだ。

まあ、どちらかと言えば「フォーリーフジャパン」の方が、深刻で微妙な問題だろうよ。
 

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コメント

菊池は謹慎期間中に謹慎せず、科せられた社会奉仕活動も中断しドイツへ行ったことが一番の問題。
未だ罪を償ってはいないんだよ。時間が経過しただけ。

>常識人さん

その、社会奉仕活動を(おそらくは本人も「やる」と言ってたのでしょうし)やりかけでドイツに行っちゃった、というのは確かにおっしゃるとおり、良くないですよね。そこの部分は犬飼会長あたりも言ってるように(いかん、あのオッサンと意見が近くなってもうた(笑))、日本に戻ってもう一度きちんと「済ませる」のが本人のためにも良いというのは、よくわかります。

http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20090827-OHT1T00297.htm

ただ、真面目な話、「罪を償う」というのがよくわからない。奉仕活動をやったら「反省の意を示した」ということで刑事処分が軽くなる、みたいな話は聞くのですが。いや、ぶっちゃけ、ボランティア活動とかをすると「未成年の女性とした」ことが償えるのでしょうかね。それはそれでよくわからない。そもそも、淫行の被害者ってのも、わからない。いやホントにマジで。

私が本文の方で「ペナルティ」と書いたのは、日本サッカー協会の課した1年間登録停止の部分です。社会的非難についても加味してますけど。サッカー選手としての復帰は復帰として認めてあげて、それで一方で「やるって言ってた社会奉仕活動はきちんと済ませれば?」で良いのではないかと思います。特に、その社会奉仕活動とやらが何かと引き換えの条件になっていたのであれば(すいません、そこら辺の細部は私の知識不足でもあります)。

というか、日本サッカー協会が課した1年間登録停止処分の間は日本で謹慎して大人しくしてないと駄目だったということなのでしょうか……そこら辺の感覚が一番私と多くの人で違うのかもしれませんが、まあローカルっちゃあローカルな処分だし、磐田からは解雇されちゃったわけだし、海外に行ってサッカーすること自体はそんなに変な事だとは思わないんですよね。だってそれこそサッカーが本当に好きなんだろうし、彼。しかも当時無所属。

ともあれ、条件を付けるのはそれはそれで良いのです。私が言いたかったことは、感情的に「許せない!」一色になって彼のやり直しの道を閉ざしてしまうのは行き過ぎだろう、ということです。もちろん、2007年の彼の静岡県青少年環境整備条例違反の被害者の方に面と向かって「あなたはあんな人をかばうのか!許せない!」と言われたら、私も言葉を失いますけどね。

 「法の支配」の反対語は「人による支配」だと聞いたことがあります。
 菊池選手は、現行の司法制度のなかで処せられたわけですから、更正の機会が与えられるのが、「法の支配」ではないかと思います。
 ただ、大分がそこまで考えず、「背に腹は代えられぬ」ぐらいに思っているなら、チームにもファンにもそして本人にも不幸な結果になるのでは、と心配しますが…。

こんばんは
米本は楽しそうにサッカーしてるのがいいですね
東京は黙々とサッカーする選手が多いからちょっと新鮮。試合に出続けても精神的に消耗しないのはいい選手の条件かもしれません。

菊池の件はおおむね同意見です。
被害者やジュビロ関係者が許せないというならともかく、第三者がヒステリックになることではないなあ、と思います。
菊池の将来を考えて被害者側が不起訴にしたという話も聞きましたし。
福岡の平島のように、チームが復帰まで面倒を見るという選択もあったはずですし、解雇されてサッカーできる状態まで戻ってきたことには小声でそっと「がんばれ」といいたいです。
あと代理人の田辺氏が契約解除せず、金にはならないその後の面倒を見続けたことも実は結構評価しています。

フォーリーフは複雑ですね。
やばい金であってもチームがつぶれる瀬戸際だったらはたして自分だったらどうしただろうと考えてしまいます。
新聞は紙面に広告を出した企業の不祥事に一切関知しませんし、考えようによっては広告スペースを提供しているだけと考えられなくもない。
アマラオが「それでも引退試合ができるならいい」と言った気持ちも分かりますし。

>すげえ!ジュニーニョ・ペルナンブカーノみてえ!!

フラッシュバックして自分の傷はまだ癒えてないんだなぁと実感しますたw
つーか打たせてやってくれよ監督w

>ばぐ6さん
私の言いたいことの核心を「法の支配」という言葉を使ってうまく切り分けていただき、どうもありがとうございます。もっとも「法の支配」ばかりが偉いというわけではなく、「人の心」ももちろん大事なわけで……バランスなんでしょうね。おっしゃるとおり、「背に腹は代えられない」とやみくもになってしまうパターンは一番怖いかも。

>胡志明さん
米本、いいですよね。決して不真面目ではなく、むしろ真面目で懸命なのに、生き生きと物怖じしてないのが好ましいです。次の7番は決まったかな。

>小声でそっと「がんばれ」
そうですね。あまり第三者が大声で言うと大分や磐田のファン、それに色々な関係者にも迷惑かもしれないですから……。「がんばれよ、そして、もう一度ピッチに立てることをみなに感謝しろよ」って感じでしょうか。大分の人には「勝手な事言うな」って言われちゃうかな。

>つーか打たせてやってくれよ監督w
あ、あれ、もしかしてベンチ的には撃っちゃいけなかったんですかね?いいじゃないですかねー、入っちゃえば(笑)!! 

>昨日昼過ぎにコメントをいただいた方

どうも真摯なコメントを寄せていただきましてありがとうございました。2つともきちんと読ませていただきました。

私としては誰かをおとしめるために文章を書いているつもりは決してありませんが、ご指摘をいただいて、ある種のバランスをとろうとして結果的に人を傷つけてしまうことはあるのだと、改めて思い知らされましたような気がします。

また、「事実」に基づいて書く、というのは本当に難しいことでもありますね。

今のところ上の本文やコメント欄に書いた私の意見が特に変わるわけではありませんが、不快な思いをさせてしまった事に関しましてはお詫び申し上げます。

そして、目下苦しんでいる大分の再浮上を心から願っております。大分ファンからすれば私なんぞに言われて迷惑かもしれませんが(笑)、好きなんですよ、トリニータとニータン。

http://umanen.org/blog/2008/11/08_6.html

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