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2009年09月07日

●気迫の勝利、梶山の勝利、みんなの勝利 ('09ナビスコ杯準決勝2ndレグ)


昨日の夜は、味の素スタジアムでナビスコカップ準決勝2ndレグ。FC東京 1-0(合計3-2) 清水エスパルス。水曜日の第1戦は東京が2度リードしながら追いつかれる展開での痛み分けとなり、その後両チームとも主力に欠場者や負傷者が出る中で迎えた「国立まであと一勝」の大一番。試合は、早い時間帯に「次の主砲」の一撃で先制した東京が堅実な攻守で試合を支配し、ほぼ危なげなく逃げ切りに成功。見事、5年ぶりの決勝進出を決めた。
 
 
立ち上がりから双方ボールを大きく速く動かす意図が見え、スピーディーな攻め合いとなった。清水は中盤のパス交換からサイドへ開いてクロス、東京は梶山から左右に流れる2トップへつないで基点を作るパターンが多い。とにかく「勝つことが全て」の一戦の割にはやや意外な展開にも思えたが、自分たちのスタイルへこだわりを持つ両チームゆえだろうか。両チームともキビキビと動き、スタンドにも緊張感が充満。さすがは準決勝、という感じである。

意外と早い先制点は16分に入った。パスカットからカボレが突進、展開パスを受けた石川がボックス脇まで進んでからサイドチェンジ。左サイドの羽生がインスイングの速いクロスを入れ、ニアに走り込んだ平山がDFに競り勝ってヘディングシュートを突き刺した。よし!相手の緩慢なパスを見逃さなかった鋭い守備、ピッチ幅を一杯に使ったダイナミックな展開、そして力強いフィニッシュ。現時点ではこれ以上望めない、文句なしの得点シーンだった。1-0。

これで東京が勢いに乗った。18分、切れ込む石川の左足強シュートはGK山本の正面。東京は守備のバランスが相変わらず良く、この日はそれにカボレや石川の気迫溢れる鬼プレスが加わった。清水は伊東らMF陣が精彩を欠き、梶山や米本がパスカットする場面が多い。21分にはカボレのポストプレーから、25分にはカウンターで椋原→羽生→へきれいにつながって、平山が決定機を得るもあと一歩。27分、永井のドリブルシュートは権田が弾き出す。

東京はテンポの良いパスワークで圧倒し続ける。特に梶山は負傷の脚を気にするそぶりは見せるものの、優れた読みと抜群のキープ力で攻守に渡ってチームを牽引。また、時折飛んでくるクロスは権田が安定感あるセービングで防ぐ。37分、清水陣で延々とパスをつなぎ、急加速の徳永が左サイドをえぐってクロス、惜しくも平山に合わず。攻撃の形を作れない清水は42分に永井→藤本の交代。2点目こそ奪えなかったものの、東京ペースのまま前半終了。
 
 
後半に入って48分、またも梶山が出足よいパスカットからボックス外でFKを獲得。ブルーノのシュートは壁に当たってボックス内に転がり、フリーの石川がシュートするもふかしてしまう。50分、平山から椋原へサイドチェンジのパスが通り、中の羽生→カボレとつないで走り込む石川がシュート、山本がかろうじて弾き出す。52分には石川の縦突進からクロスにカボレが飛び込み、前へ出る山本と交錯しながらボールにさわるが、惜しくも枠には飛ばず。

60分、市川のクロスがDFに当たり、こぼれ球を叩いた藤本のボレーがバーの上を抜ける。ここら辺はようやく清水も反撃モードである。61分、右サイドからドリブルで仕掛けたカボレがDFの間へ走る羽生へラストパスを送るが、わずかに合わず逸機。63分には左サイドから細かくつないでボックスへ突入、枝村が柔らかいシュートで狙うもポスト右。東京の方は前半飛ばした反動も出たか全体的に運動量が落ち、押し上げが効かなくなって押し込まれる形に。

しかし、そうなってもブロック守備で耐えつつカボレや石川で逆襲を狙えるのが東京のいいところ。65分、市川の裏をとってカボレが左サイドを疾走、シュートを山本が横っ跳びでセーブ。攻めあぐみ始めた清水は70分にFW長沢を投入、クロス主体の攻めになっていく。だが、東京も権田・ブルーノ・茂庭の壁はそう簡単に崩れず、中盤では梶山が落ち着かせるプレーを見せる。72分、ヨンセンのパスで枝村がボックスへ突入した場面はカバーの米本がクリア。

残り15分。疲れからミスは増えたものの、東京の選手たちは焦らない。79分、枝村が撃った反転シュートもポスト左を抜ける。その直後、平山OUTで佐原IN、東京は5バックに切り替えて逃げ切り体制に。前線では石川と羽生に替わった鈴木、そしてカボレまでもがフォアチェックで相手に自由なプレーを許さず、清水は判断の遅さもあってなかなか効果的なプレーを繰り出せない。苦し紛れのクロスをはね返した東京が少人数で前にボールを運び、の繰り返し。

終盤、パスを回してとにかくボールを渡さない東京。コーナー付近ではカボレが泥臭くキープに奮闘する姿も。86分、石川に替えて平松投入。平松がそのまま右MFの位置に入ったのは正直「?」という感じだったが、89分、その平松がパスカットから右タッチ際を突進して中央を走るカボレの前方へパス、カボレは飛び出す山本より一瞬早くシュートするが……右サイドネット。惜しくも「さよならゴール」はならず、か(笑)。ともあれ、そのまま東京が1点差で勝利。
 
 

いや、素晴らしい勝利だった。持てる力をいかんなく発揮した、チームみんなの勝利だ。

東京の勝因として挙げたいのは、まず勝利に対する気持ち、気迫である。清水がどうだったかはともかく、少なくとも東京の選手たちが見せてくれたプレーへの気持ちの入りようは今季一番だった。タイトルを目標にしながらリーグ戦で失速してしまい、「カップでは」という気持ちはあったのだろう。また、5年前の優勝を知る選手も少なくなって、渇望する気持ちも高まっているのかもしれない。いずれにせよ、スコア云々を超えてファンを満足させうる試合ではあった。

もちろん、精神力だけで勝てない事は言うまでもない。この試合は東京が「今持っている武器」を存分に発揮した試合でもあった。相手を揺さぶるようなパス回しと、清水が反撃モードになってからの耐えるブロック守備。これらは今年の6月・7月の連勝時に(そしてその後も)チームの根幹となってきた要素であり、その上この試合では一発勝負ならではの前がかりのプレスと、そしておそらくは8月の連敗時の反省からだろう、サイドチェンジも多用していた。

まあ、敵陣深くに入ってからのナンチャラとか相変わらずの課題は色々あるのだけれど、勝つことが全てだったこの試合に関して言えば、それらは問題にならない。終盤、城福監督がリーグ戦とはきっぱり区別して腹を括った守備戦術をとってくれたのも非常に嬉しかった。今、このチームに何がやれるのか。その一つの回答といったらよいだろうか。

個々の選手では、まずMVPには梶山を挙げたい。時々脚が痛そうなそぶりを見せて心配したのだが、開始早々の大胆なダイナゴル・ランを皮切りにチームを動的にも静的にも動かすプレーを連発。特に守備面では優れた読みからパスをカットし続け、米本らの助けもあって清水の攻撃を寸断してしまった。4日前の日本平ではあまり出来が良くなかったらしいから、きっと期するものがあったんだろう。羽生から引き継いだキャプテンマークがよく似合っていた。

カボレも素晴らしかった。相手を脅かすスピード抜群のドリブルのみならず、前線から戻って好プレスを連発。やっと本調子かな……というか、やはり「最後の試合」という気持ちがあったのか。相手選手が痛んでいるのを懸命に主審にアピールするあたりもカボさん風味というか。あと、前線では平山ももちのろん殊勲者である。あんな力強いヘッダー!去年までじゃ考えられなったプレーである。なんだ点もとれるじゃーん、みたいな。「次の主砲」は任せたぞ。

他の選手も、鈴木達はよく走ったし、米本はそれ以上によく走ってボールをさばいたし、石川も守備で奮闘しながら組み立てにも貢献したし、羽生はよく効いてたし、椋原はレギュラーと全く遜色ないプレーだったし、茂庭は鉄壁だったし、ブルーノさんは色男だし、徳永は梶山に怒られたりしたけどふてくされなかったし、佐原と平松はきっちり仕事をこなしたし、権田はパーフェクトだったしで、みんなそれなりに良かったような。赤嶺と大竹だけが不満顔か(笑)。

さて、これでいよいよ次は国立競技場でのファイナルである。相手は宿敵・川崎フロンターレ。「タイトル獲得」という今季の目標を達成するためにも、多摩川クラシコ連続逆転負けの雪辱のためにも、また色々な意味で来季に向けてチームのイメージを良くするためにも、ぜひとも勝ちたいところだ。2004年の優勝は02年~03年の取り組みに対する「ご褒美」みたいなものだったけど、今度はさてどうなるか。ともかく、勝ってその後の可能性を広げてほしい。

つーか、俺、今度こそは国立で東京の晴れ姿を観られるのかな……(笑)。
 

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コメント

お疲れでした。
ナクスタとのダブルヘッダーでしたがユースの試合での悔しさを取り返した気分でした。

2点目入らなかったから返って緊張感が持続したのか?w
平松のスルーパスとか堪能しました、その後入らないのも何時もと同じw

しかし最後の戦いに向けて武士が減って行くのもキツイなぁ…。

不屈の精神を持った剣士にあっては
自己(おのれ)に与えられた過酷な運命(さだめ)こそ
かえってその若い闘魂 (たましい)を揺さぶり
ついには…

「もう、他人(他チーム)の国立はイヤじゃ!」という私の気迫も伝わったようでw、最後の笛で泣きかけました。本当にうれしい。やっぱり決勝は青赤勝負下着でしょうか(笑)。本当に決勝ダービーになっちゃいました^^かっぷはもらあたぜ~♪

>古美根さん
どうもです。まあ、いつもと同じと言えば同じでしたけど、ポジティブに見れば「今できるサッカーできっちり勝った」と。平松のパスには私も「おおっ!」と身を乗り出してしまいました。

>最後の戦いに向けて武士が減って行くのもキツイなぁ…。
そうですねえ。しかし、考えてみれば5年前もよりによって本番のその時に頼れる武士(現湘南在住)がいなくなってしまったわけで……残りの選手、とにかく頑張って、頑張ろう!という。

>みぽりんさん
>「もう、他人(他チーム)の国立はイヤじゃ!」という私の気迫
5年前に諸事情により東京の晴れ姿を観られなかった私ですが、なんだかんだでその後は11月3日に国立に足を運ぶことが多く……潜在意識に悔しさが残ってるんでしょうか(笑)。

>本当に決勝ダービーになっちゃいました^^
これ以上ない相手、これ以上ない舞台ですね。本当に楽しみ。つーか、勝つ!!

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