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2008年12月14日

●よく考えたら、中米×アフリカなんてそうは観られんよな (CWC2008準々決勝)


土曜日の午後は、国立競技場でFIFAクラブワールドカップ準々決勝。アル・アハリ 2-4(延長0-2) パチューカ。興味は惹かれどチケットの高額さに及び腰になってしまうこの大会、昨年と同様ありがたいことに某方面から招待していただき、カテゴリー2(バックスタンド)のど真ん中で観戦することができた。つーか、公式発表によれば観客は3万人強とのことだが、そのうちどのくらいがお金を払ってチケットを買ったのか、ちょっと知りたい(笑)。
 
 
ガチンコの国際大会らしく、序盤はシブいつば競り合い(って去年も書いたな)。パチューカは足下の技術に優れ、長短のパスをつなぎ続けてボールを運ぶ。対するアル・アハリは自陣に厚い守備網を敷き、ボールを奪うとロングボールを繰り出して逆襲を狙う。自然とパチューカがボールを支配することになるが、クロスはことごとくアル・アハリの屈強なDFにはね返され、またカウンターの場面でマークのつかまえ方がぎこちないことから、優勢の印象はなかった。

先制点はアル・アハリ。28分、カウンターからFWアブータリカが左サイドを突破、速い折り返しをDFがカットしきれずオウンゴール。パチューカは右SBアギラルが攻撃参加する形が多いため、その裏を突くのはいい狙いだった。アル・アハリはFWの体格もかなり良く、カウンターも速さで抜けるというより一体一の当たり合いで勝負する感じ。先制されたパチューカはペースを上げ、細かいワンツーなども交えて攻めるが、アル・アハリの守備ブロックもなかなか固い。

追加点は前半の終了間際。またアル・アハリのカウンターとなり、アブータリカが今度は右サイドを突破、パチューカDFが戻りきれないところでMFバラカト→逆サイドのFWフラビオとボールを渡し、どフリーのフラビオが難なく蹴り込んだ。2-0。その後もロスタイムにカウンターがはまりかけるなど、終わってみれば前半は完全にアル・アハリの思惑通りに試合が動いた印象であった。パチューカは昨年の初戦敗退に引き続いてまた「やってしまった」モードである。
 
 
流れを変えたのはセットプレーだった。後半早々の47分、パチューカがボックス右手前でFKを獲得。MFモンテスが左足で入れたクロスは低く鋭い弾道で飛び、競る敵味方もGKも触れず左隅にゴールイン。高さで劣るパチューカにしてみれば「これしかない」FKだった。2-1。そこからはパチューカペース。中央ではパス&ゴーでDFのプレッシャーをギリギリのところでかわし、サイドチェンジの揺さぶりからFWアルバレスらが仕掛けていく。惜しいチャンスが幾度か。

73分、同点ゴール。ワンツーで正面突破を図ったヒメネスがボックス手前で倒され、FK。これをヒメネスが壁の間を抜くキックで直接ゴール左上に決めた。鮮やかではあったが、壁の作り方が悪いようにも見えた。2-2。その後は攻め合いとなり、アル・アハリの力勝負をパチューカがGKカレロの奮闘でしのぎ、逆に2つほどあったパチューカの決定機はDF必死のカバーとオフサイドに阻まれて決勝点ならず。15分ハーフの延長戦に突入することになった。

延長戦になると、両チーム疲労の色が濃くなる中、パチューカの正確な技術とボール回しが際立つように。98分、アルバレスがMFカルデナスとのコンビで中央突破、DFに当たってこぼれる幸運もあって押し込んだ。2-3。さらに110分、前がかりになったアル・アハリの裏を突くカウンター、ボックスに侵入したFWマリオニから追い越すヒメネスにラストパスが通り、ヒメネスがゴール右上へ豪快に蹴り込んでダメ押し。結局、そのままパチューカの勝利となった。
 
 
なかなか楽しめる試合だった。寒い中、国立まで出かけた甲斐はあった。

昨年は期待されながらエトワール・サヘルの堅実なサッカーに屈し、残念な敗退となったパチューカ。「今年こそは」という思いはあっただろう。結果、魅力的なサッカーでの大逆転勝利。大柄なDFで自陣を固める相手に2失点した時には「またかよオイ」と思ってしまったのだが、終盤の攻勢は見事だった。特に2得点のヒメネスは素晴らしい。FW登録だけどピッチ各所に顔を出してボールをさばいて、それでいて無駄な動きがなくて……東京の中盤にほしい(笑)。

感心したのは、パチューカのつなぎへのこだわり。敵陣やハーフウェー付近はおろか自陣深くからでも簡単にはクリアせず、きっちり、時には危なっかしくつなぎ、攻撃を組み立てていく。相手FW2人にチェイスされているのにDFがその間を割って前へ持ち出した時には、さすがに「おいおい」と声に出してしまった。でも、いいよな、そういうの。つなぐことが良いというより、スタイルへのこだわり、あるいは「これが俺たちのサッカー」という意志が素敵なのである。

一方のアル・アハリも確固としたスタイルを持っていたチームだったし、やはりこの手の大会の醍醐味というのは異種格闘技戦的な、多様な個性のぶつかり合いにあるのだと再確認させられる一戦でもあった。前の席に座っていた若い人たちが、最初の頃は「下手だな~」とか馬鹿にして観ていて、マンUの話とかしていたのが、ヒメネスのFKあたりから「すっげー!」と興奮していたのは面白かった。こういう試合だったら、ちゃんとお金を払って観ても全然オッケーだ。
 
 

国立から新宿までは、混雑を避けて徒歩で。南口の高島屋で買い物してから外に出たら、17時過ぎなのにもう暗くなっていて、JR本社前のライトアップがとてもきれいだった。サッカーとは直接関係ないけど、「ああ、こういう季節なんだな」という感じ。
 
 
[追記]
つーか、あとでもう一度よく見たら、準々決勝まではチケット代あんま高くなかった(笑)。普通のJリーグ並くらいか。我ながら、変な思いこみがあったかな。
 

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コメント

私はテレビ観戦でしたが、ヒメネス選手は良かったです。

中盤の底で攻撃を組み立てながら、チャンスと見ればゴール前に上がりシュートを打つ。決して俊足ではないのですが、上がる判断が良くて決定的シーンを何度も作っていました。

ヒメネス選手は、東京の10番には良いお手本になると思いました。というか、近い将来、梶山には昨日のヒメネス選手位になってもらわないと、東京のアジア制覇は難しいと思いますから・・・。

>ヒメネス選手は、東京の10番には良いお手本になると思いました。
まったくその通りだと私も思います。ポイントは「判断の精度」と「メリハリ」ですね。

私も招待券で観戦しました
昼間でもあり12月にしては寒くないのでCWCの雰囲気を体感しに軽い気持ちで出かけましたがナイスゲームでとても楽しめました
これで2,000円は安い!(払ってないけど)


>軽い気持ちで出かけましたがナイスゲームでとても楽しめました
いや、まったく。正直なところ行く前は「まあアデレード×ワイタケレよりはマシかな」などと色々な意味で失礼な事を思っていたのですが、いい試合でしたよね。

>これで2,000円は安い!(払ってないけど)
同感(笑)。

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