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2008年12月15日

●「Jリーグはこれでいい」のにね ('08Jリーグ入替戦)

J1・J2入替戦 ジュビロ磐田 2-1(通算3-2) ベガルタ仙台 (SUPER SOCCER)
 
 
土曜夕方に行われた入替戦は、夜帰宅してからスカパー!の録画で観た。初戦1-1の引き分けで迎えた第2戦、磐田のホームゲーム。泣いても笑ってもこれで全てが決まる「運命の一戦」である。試合は、いかにも入替戦らしい白熱の好ゲームとなったが、ジュビロが期待のニューカマー松浦の個人技で2点を先取。ベガルタも終盤に梁の直接FKで1点を奪ってさらに猛攻を仕掛けるも、最後は守護神川口が立ちはだかった。磐田がからくも逃げ切りに成功。
 
 
誰もが思ったと思うが、流れを決めたのは前半半ばのナジソンのシュートミス。梁がサイドをえぐってクロスを入れ、中島がDFを引きつけてスルー、あとは押し込むだけの決定機だった。決まっていれば気持ちの上で断然仙台が優位に立ったはずで、あまりにショッキングなプレー。その後のナジソンは精彩を欠き、結局45分で交替。仙台は重要な攻め手を失った。見方を変えれば、懸命の寄せでナジソンの視界に入ったDF岡田のファインプレーでもあった。

絶体絶命のピンチをしのいだ磐田はこの日キレキレの松浦が大仕事をする。41分、ドリブルからDFのタックル際に左サイドへ展開、前田の折り返しを自ら胸で大きくトラップ(?)、そのままGK林の頭を越えてゴールイン。トリッキーなシュートにも驚かされたが、その前の展開パスの出し方が見事だった。さらに70分にはカウンターから切れ味鋭いフェイントでDF2人を翻弄、さらに林もぶち抜いて決定的な2点目をゲット。素晴らしい技術、素晴らしいスピード。

その間、仙台はよく走り、よく体を当てて戦うのだが、やはり磐田に余裕のある状況では技術の差が出てしまう。慎重に慎重を重ねるオフト戦術でジュビロは無理をせず、守備を厚くして仙台の攻撃を寸断。ベガルタは個々の奮闘が組織的な攻勢に結びつかず、過密日程もあいまって空回りがいつしか疲弊に変わり、56分平瀬のループを川口が弾き出した後はチャンスも作れないまま時間がたっていく。終盤になると磐田は時間稼ぎも開始。磐田完勝の流れである。

しかし、そこで何かが起こるのが入替戦。ロスタイムの攻防は劇的だった。まず梁がこの土壇場で直接FKを決めて1点差。さらに仙台はあきらめずに攻め、関口が右サイドをえぐってクロス、飛び出した川口が弾いたボールを梁が拾って中央の味方に渡してシュート、DFブロック、それを仙台FWが拾ってシュート、ゴール寸前でDFブロック、さらにこぼれ球を梁が拾ってシュート、今度こそ決まったかというタイミングだったが、至近距離にいた川口がストップ!

なんちゅーか、奇跡的なセーブだった。僕のような能活ファンにとってはたまらないシーンだった。日本代表のレギュラーからは外れようが何だろうが、やはり能活は能活だったのである。神はまたしても降りてきた。そして試合終了。
 
 
正直に告白すると、1戦目の結果から僕は密かに「仙台有利だろう」と思っていたのだ。磐田はアウェイゴールこそ奪ったものの、勝つこともできず、好守のバランスに迷いが生じるのではないかと。「とにかく点を取らねばならない」仙台の方が自分たちのサッカーをしやすいのではないかと。ところが、両チームの技量の差は予想以上であった。加えて、オフト監督はあくまで「ノーリスク」の守備戦術を崩さなかった。そして、大きい大きい「ラッキーボーイ」の存在。
 
考えてみれば、守備的(消極的?)戦術ばかりが取り上げられがちだったオフト監督だけど、松浦といい岡田といい、一方で使えそうな若手を抜擢してチームに刺激を与えることは忘れていなかった、ということになるのだろうか。そういう、窮地の中での「退却戦術」にとどまらない前向きな部分が、最後の最後で斜陽のチームに残留という果実をもたらした事実を僕は(あくまで他人事ながら)とても興味深く感じる。彼らは未来のジュビロを担うことになるのだろうか。

まあ、それでも、だ。繰り返しになるけど、最後の梁のシュートをギリギリのところで能活が止めていなかったら、ベガルタが来年の1部に上がり、なんとあのジュビロが降格していたわけだ。入替戦というのは本当に恐ろしくもあり、面白くもある。リーグにこれほどいい刺激を与えてくれているように思える(しかもたくさんお客さんが入る!)ゲームを、来年から行わなくなってしまうのはなぜなのだろうか。やっぱり単純にもったいないと思うんだけどな……。


最後に。スカパー!の中継で映し出された、試合後の様子。仙台サポーターがジュビロの選手たちを讃え、磐田サポーターがそんな仙台サポーターにエールを送った光景には(そして、その様子を美しい言葉で汲み取った倉敷さんにも)本当に感動した。先日の山形と水戸のエール交換と同じく、これは誇るべき文化だと僕は思う。きれい事かもしれないけど、試合後(ないし大会後)はもう敵味方じゃないから。優れた敵に敬意を表するのは決して恥ではないから。

同じように、先日のフクアリでジェフが奇跡的な残留を決めた試合、試合後に東京サポーターの多くがジェフの選手たちに拍手を送っていたのも、同じく素晴らしいことではないだろうか。実際、あの試合のジェフは凄かったのだし。昔にさかのぼるならば、99年のJ2最終戦の後、東京のJ1昇格が決まるまで新潟が1時間近くスタンドを開けておいてくれた事、新潟サポーターが「昇格おめでとう」の横断幕を出して祝ってくれた事も、僕は決して忘れない。

ホントに、倉敷さんの言うとおり、「Jリーグはこれでいい」のだ。
 

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コメント

こんばんは。はじめまして。
仙台との縁はW杯日韓大会にさかのぼります。
代表メンバー発表前の試合で、仙台サポさんが
中山コールをしてくれたことは忘れません。
あの時のことは今でも感謝しています。

J2側が切れ目無しの51試合の後に、更に2試合ってのはきつ過ぎるでしょう。

ラグビーでは、試合終了をノーサイドと言いますね。ホイッスルが鳴れば敵味方は関係ない。それはきれいごとなどではなく、全力で戦った勇者がもつ、堂々たる精神だと思います。

みなさん、コメントありがとうございます。

それにしても、両チームともそれぞれの状況を考えれば、ホントに死力を尽くしたゲームだったと言えるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、そんな試合後に両チームが見せた態度も含めて、率直に、大したものだと思いました。

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