●このメンバーでやれるのもあと2試合か ('08-'09天皇杯準々決勝)
土曜日の午後は、ユアテックスタジアムで天皇杯準々決勝。清水エスパルス 1-2 FC東京。Jリーグも全日程を終了し、今季日本サッカーのビッグタイトルも残りひとつとなった。ベスト8のうち北国仙台で対決するは、ナビスコ杯をあと一歩で逃した清水と、クラブ史上初の天皇杯獲得を目指して邁進するFC東京。試合は、東京DFの乱れを突いた清水が前半に先制するも、後半早々東京がエース赤嶺の2ゴールで一気に逆転、見事準決勝進出を決めた。
開始後、まず気づいたのは清水の中盤の並びが前回とは違ったこと。MF4人のメンツは同じだが、10月はダイヤモンド型だったのに対し、今回は伊東と山本が2人で中盤の底を支えるボックス型。守備重視の「ノックアウト仕様」ということだろうか。一方の東京は4-3-3の布陣。数的不利の中盤を蹂躙された前回の悪夢が頭をよぎるが、さすがにそこは考えたのだろう、右サイドに入った鈴木達は可動域広く中盤守備によく参加し、全体のバランスは悪くない。
5分、赤嶺のポストプレーからカボレが左サイドを突破、クロスは惜しくも鈴木に合わず。その直後、清水のカウンターで東京DFが数的不利に陥るが、ラストパスの精度が悪く助かった。8分、児玉のアーリークロスを叩いた原のダイレクトボレーはバーの上。どちらも主導権を握りきれない時間帯が続く。東京は梶山が珍しく最初から目覚めていて精力的な働き。10分、CKのこぼれ球を拾った梶山からボックス内のカボレにパスが通るも、DFの寄せでシュートならず。
清水の側で目立ったのは攻撃的MFの位置に入った兵藤。16分、ドリブルで中央を持ち上がり、羽生のタックルを外して強烈なミドルシュート(枠外)。18分、ボックス右で清水がFK獲得、山本の巻き込むクロスをゴール寸前で赤嶺がクリア。清水は枝村がいつもほど目立たないものの、軽快に回して攻める意図はいつも通り。20分、左サイドに流れた赤嶺がドリブルでDF2人を抜きさるが、逆サイドの詰めが遅れてクロスはブロックされてしまう。
23分、清水先制。逆襲から岡崎に抜け出されかけ、佐原がボックス内後方からスライディングで倒す。CKの判定で一旦は命拾いしたかに思えたが、佐原は流されていたファウルで警告をくらった上にそのCKのクロスを手ではたいてしまい、結局PK。高木がきっちりゴール右上に突き刺した。0-1。佐原らしいと言えばらしいが、ちょっとしまらない失点。東京もすぐに反撃し、28分、右CKを佐原が落として鈴木がゴール前に流すが、押し込めずGKキャッチ。
先制した清水はパス回しの思い切りが良くなり、ワイドな展開に東京は後追いで走らされるシーンが目立ち始めた。嫌な流れである。ところが34分、清水陣で持ち上がろうとした山本から赤嶺が出足よくボールを奪い、倒されながら左を追い越す鈴木へつなぐ。鈴木は深くえぐってからクロスを入れ、ゴール前にカボレが飛び込んで「ヤッター!」と万歳しかけたところでシュートはなぜかポスト左に外れ……そりゃないよカボさん(笑)。絶好の同点機だった。
しかし、赤嶺のフォアチェックは得点に至らなかったものの、冷や汗をかいた清水はやや慎重になった。前線に岡崎・原を残し、まずは守りを固める体勢。自然と東京は前がかりに。38分、ボックス右手前の梶山がDF裏へ走り込んだ羽生へ絶妙のパスを通すが、シュートは惜しくも枠外。40分、兵藤が左足で強烈なミドルシュート、塩田が弾き出す。ロスタイムには徳永のクロスをトラップした羽生がゴール前で倒されたが、笛はならず。そこで前半終了。
後半開始直後、いきなりもの凄い勢いで今野が攻め上がり、ハーフタイムに城福監督が注入した気合が見えたような気がした。46分、ボックス正面から撃った赤嶺渾身のミドルシュートがバーを越える。48分には右サイドから鈴木がドリブルでボックス内へ切れ込み、児玉が後ろから押し倒して今度は東京がPKを獲得。脚を痛めたのか蹴ろうとしないカボレに代わり、赤嶺がきっちりGKの左を抜いて決めた。1-1。赤嶺の落ち着きぶりが印象的だった。
直後の50分、ポストに入ったカボレが左サイド深くへ浮き球パス。勢いよく上がってきた長友が抜け、すかさず上げたクロスを鈴木が折り返す。ゴール前で待ちかまえていた赤嶺が体を捻りながらのシュートでGKの脇を抜き、ゲット。怒濤の逆転劇である。2-1。しかし、このプレーでカボレの怪我は悪化したようで、近藤祐介へチェンジ。54分、東京は梶山→鈴木の速攻で攻め込み、早いスローインから羽生がクロスを上げるが、惜しくも赤嶺に合わず。
さらに東京の攻勢は続く。57分、梶山からどこを通ったのかわからない不思議なスルーパス(笑)が通って左サイドを長友が抜け、シュートをGKがかろうじて弾き出した。東京は攻めつつもバランスはしっかり保っており、清水はパスの出し所を失って苦しむことが多い。自然とハイボールを蹴る形が多くなるが、ことごとく佐原がはね返した。64分、枝村のミドルシュートも枠外。66分には鈴木が個人技でDFを抜き去り、右からえぐって撃ったシュートはポスト右。
70分、流れを変えたい清水は岩下・原に替えて高木純・矢島を投入。75分を過ぎると東京の選手に疲労が目立ちはじめ、次第に自陣に押し込まれていく。77分、矢島が右サイドをドリブル突破、佐原と競りながらのシュートは左に外れ。さらに二次攻撃から山本がクロスを上げるが、塩田ががっちりキャッチ。80分、脚を痛めた鈴木がOUT、藤山IN。フジはそのまま右SHの位置に入ってプレッシャーをかけていくが、清水攻勢の状況は変わらない。
83分のCK、山本のクロスを塩田がギリギリではじき出す。さらにFKからゴール前で浮き球の混戦となった場面も塩田が跳んでキャッチ。84分、清水は長身FWの長沢を投入してパワープレーに出る。これに対して東京は平山を投入。終盤は清水が次々とハイクロスを入れるも、キャプテンマークを巻く佐原がことごとくはね返す。東京は両SBが無尽のスタミナでボールを追い、ロスタイムGKも前線に上がる清水の総攻撃もしのぎきった。東京が逃げ切りに成功。
試合は互角の攻防→清水ペース→東京ペース→清水ペースと動いたわけだが、両チームにさほど差があるようには見えなかった。実際、シュート数では清水の方が上回ったわけだし。ただ、東京が自分の流れの時間帯にきっちり2度好機をものにしたのに対し、清水は岡崎や原がよく仕掛けた割にはチャンスの数が少なかったかな、と。効率の差というか、この日は東京の日だったというか。長谷川監督が「負けた気がしない」と言いたくなる気持ちもまあわかる。
見方を変えると、清水はいつものアグレッシブさを欠いており、東京の方も「ムービング・フットボール」はどこへやら。天皇杯にはありがちだけど、シーズン終盤の疲労に加えてノックアウト方式ゆえの慎重さもあり、正直スペクタルな攻防にはほど遠い内容だった。そういう展開になると、全体の連動性を欠いてもユニット(強力3トップ!)の力で勝負できる東京の方に分があった、ということになるかもしれない。夏場以降の「現実路線」の成果とも言えるだろうか。
MVPは赤嶺。落ち着いて決めた同点PK、鋭い反応でゴール前を制した決勝点、いずれも素晴らしかった。加えて、前半清水の攻勢になりかけた時間帯にフォアチェックでボールを奪って決定機につなげたプレー、あれも試合の流れを考えると得点と同じくらいに価値の高いものだったと思う。ホント、今シーズン1年を通じてすっかりエースとしての風格が身についてきた。今の赤嶺だったら背番号11を付けても何の違和感もないのではなかろうか。
鈴木達也も好守両面に渡って大活躍だった。石川に比べると最終局面での破壊力はやや劣るものの、献身的な上下動や周りとの連動性を考慮すれば、彼がレギュラーでも良いと思う。中盤では梶山が良かった。いつもは前半半ばまで寝ぼけ眼なのが、この日はちゃんと最初から目が覚めていた。梶山1人で伊東と山本の2人に対抗できていたような感覚。今野は微妙な出来。押される時間帯にはそこそこ働けるのが、攻勢になると途端に消えてしまうのが何とも。
笑ったのは佐原。PKに至る一連のプレーでは、彼の悪い面である「闘志空回り」ないし「自爆体質」がモロに出てしまった。ただ、2プレーの間に2つの反則と1つのきわどいプレーがあっても退場にならなかったのは、彼にとってもチームにとってもラッキーというべきだろう。で、後半清水がパワープレーを挑む時間帯になると、抜群の存在感で空中戦を制した。あれこれあっても結局「いてくれて良かった」となるのが不思議。つくづく面白い選手である。
この勝利で、東京はガス時代以来11年ぶりの準決勝進出。次はノブリン有終の美を飾りたい柏が相手。茂庭が出場停止、カボレ・鈴木は負傷が回復するかどうか。さらにあとカード1枚で決勝に出られない選手が5人。難しい、監督の「勝つための腕」が試される試合となるのは間違いないだろう。個人的にはACL出場との関係で複雑な気持ち(ACLに耐えられる力があるのか?)もあるけど、しかしあと2試合、とにかく城福体制1年目の集大成を見せてほしい。
この時期になると移籍の噂が色々と出てくるわけで、報道によれば赤嶺が神戸から、今野がガンバ大阪からオファーを受け、梶山も海外移籍を目指しているとのこと。特に赤嶺は替えの効かない貴重な存在だけに、たいへん、たいへん気がかりである。この試合の後も、逆転勝利の立役者というのに笑顔を見せていなかったし。残ってほしい、残ってくれるだろう、とは思うのだけれど、こればっかしはわからない。つーか、お願い、残ってー!!
そうなんだよな、少なくともこのメンバーでタイトルを狙えるのは、多分この大会が最後なんだよな……そう考えると、やっぱり元旦国立で城福さんと選手たちが躍り上がって喜ぶ姿を目にしたいと思う。次のエコパにも足を運びたい。ガンバレ、ガンバロウ!!
コメント
こんばんは
鈴木達也いいですねー
あの生き生きした走りっぷりは、石川が移籍してきた時を思い出します。
ウィングが素晴らしいと、見ていて東京らしいサッカーて気がしますね。
羽生と戸田を合わせたようないい選手だ
と思っていたら戸田退団の情報が
引退の可能性も高いみたいで、今夜はショックで動揺してます
Posted by: 胡志明 | 2008年12月22日 21:35