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2008年10月19日

●おそるべきタートルフットボール (大分トリニータ×FC東京 テレビ観戦)

J1第29節 大分トリニータ 1-0 FC東京 (FC東京公式)
 
 
諸事情によりお金の余裕も時間の余裕もなく、スカパー!でのテレビ観戦となった。優勝戦線への生き残りをかけた上位対決。試合は、多くの時間帯で東京がボールを保有して攻め、大分が得意の堅守からカウンターを狙い続ける予想通りの展開となったが、ホームで無類の強さを見せる大分がセットプレーで得た虎の子の1点を守りきって勝利。「タートルフットボール」の威力を存分に見せつけられ、東京は残念無念な連敗となってしまった。


この日の九州石油ドームは「国体明け」とあってピッチ状態は最悪だった。不規則バウンドが多発し、選手たちも足を取られまくり。従って両チームともまずは安全第一ということで、序盤はロングボールをDFがはね返し、セカンドボールを奪いあう場面が続く。立ち上がりこそ大分の勢いに押された東京だが、エメルソンの足技と今野の前へ出る強さを軸に次第にペースを握る。10分、CKからゴール前で混戦、今野のシュートをGK下川が横っ跳びでかろうじて防ぐ。

しかし先制点は大分。24分、ボックス右手前で茂庭がウェズレイを倒しFK、鈴木慎吾のシュートは定規で引いたような直線で飛び、壁の間を抜けてゴール左上に突き刺さった。塩田一歩も動けず、0-1。その後は大分の速攻に勢いがつき、38分には右サイドをえぐった高橋のクロスがゴール前ウェズレイの足下にこぼれるも、茂庭が懸命のシュートブロック。東京もカボレ・エメがボックス近辺で突破を仕掛けるが、深谷ら粘り強い大分DFに阻まれ続ける。

後半、東京は浅利を下げて羽生を投入。主に左サイドをかき回す羽生の動きに左→右へスイッチした徳永の攻撃参加も加わり、再び東京が攻めたてる展開に。48分、DFのクリアミスをカボレが叩きつけるボレーシュート、下川が体を伸ばしてキャッチ。54分、羽生の鋭い出足から左サイドを走る赤嶺へ、クロスにニアでカボレが合わせるも惜しくも枠外。56分には今野のミドルシュートがバーの上を越える。この時間帯で追いついておきたかった。

ややマークがズレ気味とみた大分は自陣の守備を厚くすることで対処し、前にウェズレイ・金崎を残して3バック+2ボランチに両サイドも下がって東京の攻撃をせき止める。東京の中盤でボールの動きが滞るやエジミウソンが襲いかかり、シンプルにスペースを突くアタッカーへ浮き球を供給。64分、カウンターから右サイドを突破した高橋が強烈なシュート、サイドネットに突き刺さって冷や汗をかく。ここら辺はさすがJ最高峰のカウンターサッカーである。

ここで東京はエメOUTで石川IN。石川は右サイドを縦に勝負し続け、74分にはカウンターからボックスへ突入してシュートするが、これも下川がナイスセーブ。その後は東京が押し込みながらクロスを森重らがはね返し、ダブルボランチがこぼれ球をかき出し、大分アタッカーがスペースへ引き出して時間と陣地を稼ぎ、の繰り返し。東京はなかなかシュートまで持ち込めず、終盤には怪我の癒えぬ長友まで投入するも効果ゼロ。結局、そのまま試合終了。
 
 
なんつーか、してやられたな、相手のパターンにはまったな、という感じか。

最初、ボコボコのピッチを見て「これは東京有利だ」と思った。「田んぼサッカー」@日立台でもわかったようにカボレやエメの技巧は悪ピッチで際立つものだし、大分のサッカーは堅守速攻といっても「引きこもって蹴るだけ」じゃなくてアタッカーへのローリスクなグラウンダーの楔パスにも特徴があるから。実際始まってみると、エメは期待通りに足下に収めてカボさんを狙うスルーパスなどでチャンスを作っていたし、大分の攻撃はなかなか形にならなかった。

だから、前半の前半、押している時間帯に先制点がほしかった。今野のシュートは惜しかったのう(この試合のMVPはGK下川だろう)。鈴木のFKが決まり、大分が浮き球を上手く使うようになると「カメナチオ」(笑)にそれこそ手も足もでなくなってしまった。後半の初めに羽生INでマークがずれて、大分が引いて落ち着かせるまでの時間帯にも同じことが言えるかな。大分のサッカーは完成されたシステムだから、相手にとっては機能し始めるまでが勝負。

面白かったのは、前半、割とシンプルに蹴り合ってる時間帯には生き生きと効果的にプレーしていた今野が、後半羽生が入ってパス回しが始まると消えてしまったこと。改めて彼の適性について考えさせられる光景であった。そう言えば、右の攻撃的MFは先発エメで途中から石川、というのは展開を考えれば明らかに逆の方が良かったんだけど、まあ相手もあるから、というか、結局こちらの思惑通りに試合を運べなかったということなんだろう。

個々の選手を見ると、まずCBの2人は難しいコンディションの中でナイスなプレーぶりだったように思う。浅利もまあまあか。塩田・藤山はボールに触る回数が少なかったので評価せず(笑)。守備陣全体としてはもう少し楔のパスを潰せればよかったけど、佐原の警告もけっこう響いたかな。徳永は相変わらず縦に進む馬力だけはあるな、と。今野は前半はチームに入れてたんだけどね。長友は、まあここで無理使いしちゃいかんだろう、とは思った。

攻撃陣では、梶山は良くなかった。なんか、北京から帰って以来去年までの梶山に戻ってしまったような。エメと石川は使われ方が気の毒だったというか、石川がもう少し「汎用性」を高めてくれれば。羽生はさすが。もう怪我しないでね。カボレは頑張ってたけど、1人孤立して戦う形になってしまった。赤嶺は……もちろん熱さは彼の持ち味ではあるけれども、抗議の執拗さはいただけない。審判たちに目を付けられてしまっているような気がする。

まあ、ともあれ、これで優勝争いからはほぼ脱落である。余計なプレッシャーもなくなって挑戦者として伸び伸びと……なんて状況での「大物食い」で勘違いするのはもうゴメンなので、何とか次の鹿島戦(だけでなく)に勝って最後までACL出場権争いに加わってほしいものだと思う。ガンバとレッズは追いかけるにはいい標的だよね、そういう意味では。


それにしても、また1-0。トリニータのサッカーには毎度の事ながら感心させられる。派手な「攻撃サッカー」とはほど遠い内容かもしれないが、理詰めで、統制がとれながら個人技も生かしているのが素晴らしい。というか、あの選手層の薄さ、J1で有数の資金力のなさで優勝争いをしてしまうのだから、シャムスカという監督は本当に恐ろしい男である。言い方を変えると、あの戦力・環境でこれほどの結果を出すには「これしかない」のかもしれないけど。

だからこそ。僕としては、今年はぜひ大分にリーグかナビスコのタイトルをとってもらいたいと思っている。経営危機やらスポンサーに関するリーグの無理解やら度重なる選手の引き抜きやら国体という障害(笑)やら、あらゆる困難をはねのけて、Jリーグの地方クラブが歓喜に浸る瞬間を目にしたいのである。それが、もしかしたら今の日本サッカーに足りないもの(それを「夢」というと陳腐すぎるかな)を少しでも補ってくれるかもしれないと思うから。

ねえ、ニータン?
 
 
ちなみに、九州石油ドームの芝については、単に国体のためというだけではなく、今年の猛暑のせいで夏の間から相当にヤバイ状態にあったことも影響しているようだ。つーか、九石ドームの芝管理の人たちはかなり気の毒な状況だったろうな、と。とはいえ、東京でも2013年には国体が開催され、味スタはメイン会場となるのだから東京ファンにとっては他人事ではない。とりあえず、その年には荒れ芝用の戦術とスパイクが必要になるのかな(笑)。
 

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コメント

こんばんは、いなされてしまいましたね、審判が流し過ぎな所が東京的には辛かったかな?

>割とシンプルに蹴り合ってる時間帯には生き生きと効果的にプレーしていた
>今野が、後半羽生が入ってパス回しが始まると消えてしまったこと。

これは割りと考えさせられてしまう所ですよね。
どうしたもんだろ、状態次第では交替って事もやって貰いたいですよね。

清水がふろん太に勝っててやっぱ攻め過ぎるチームには清水の好守縦ポンがはまったって感じでしたね。
(川崎って東京と似てる部分が多いのかな?)
似た者同士に見えるナビスコ杯ですが清水を応援します。
(単純に山本海と森島康のどっちが嫌いかという問題らしいw)

「噂のカメナチオとは、このことか!」と、感心している場合ではなかったんだけれど、ちょっと残念。なんだか九石ドームまで甲羅に見えてくるから不思議だ。いっそのこと、頭と4本足付けてはどうだろうかw

ここからが本領発揮ということで、最後まで諦めが悪い私でいるつもりですw 祝杯をあげましょうね。

今野が消えたのはパス回しが始まったこともありますが、スリーボランチからツーボランチになったことで、彼特有のワンツーから前に抜けて受ける動きやドリブルでの突進力を見せられなくなったことも大きかったと感じました。

皆さま、どうもです。

>審判が流し過ぎな所が東京的には辛かったかな?
前半は割と吹いていたのが、後半はかなり流すようになって、選手もとまどっていたように見えました。個々の判定が云々というより、基準が変わってしまうのはけっこうツライ。で、まあ、流し始めてから、特に東京に不利だったとは思わないですけど、大分はそれなりにやりやすかったかもしれんですね。

>状態次第では交替って事もやって貰いたいですよね。
そうですね……。今野も、かつてのように「外せない」選手ではなくなってますものね。それは、チームにとって(そしてもしかしたら今野にとっても)良いことではないかと思います。

>「噂のカメナチオとは、このことか!」と、感心している場合ではなかったんだけれど
すいません、テレビの前でひたすら感心しっぱなしでした(笑)。

>九石ドームまで甲羅に見えてくる
ガメラか(笑)。そういや、平成ガメラシリーズの第1作には福岡ドームにガメラ来襲、のシーンがあるんですよ。新作が作られたあかつきにはやはり九石ドームを……。

>祝杯をあげましょうね。
万一の事があったら、朝までコースですな、きっと。

>スリーボランチからツーボランチになったことで
なるほど、それはあるでしょうね。ただ、位置は下がったにしても、守りを固める相手に対してチーム全体が攻勢になっているのだから、そこで他のMFと連携して前に出る姿がもっと見たいですよね。別に後ろでさばけるわけでもないし。ミドルシュートくらいかな、よかったのは。

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