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2008年08月30日

●勝つときってなあこんなもんさ (柏レイソル×FC東京)


木曜日の夜は、日立柏サッカー場でJ1第23節。柏レイソル 0-1 FC東京。6月の中断明け以降なかなか勝ち星&勝点を重ねられず、すっかり(定位置の?)中位にはまりつつあるチーム同士の対戦。双方とも相手よりもまずずぶ濡れの悪ピッチと戦わなければならない試合となったが、ピッチ状況の良化とともに本来のパス&ムーヴを取り戻した東京がエース赤嶺のスーパーゴールで勝利。気持ちよ~く再びの中断期間を迎えられることとなった。
 
 
この日は午後からずっと、断続的に強い雷まじりの雨が降る天気。柏駅からスタジアムへ続く道路もすっかり水浸しだ。もちろんスタンドに屋根のない日立台は幾度も経験済みだから、愛用のFC東京ポンチョはしっかり携帯していた。「雨でも槍でもどーんと来い!」である。ところが……。入場してすぐ、間違えてレイソル側の指定席を買っていたことに気づいた(笑)。座ってみると周りは真っ黄色。とても青色のポンチョが着られる雰囲気ではない。

まあ、日頃の行いが良いということか、幸いにしてキックオフ直前に雨はやみ、試合中も2、3度降ることはあったが頭にタオル(たまたま黄色いのを持っていた)をかければ何とか我慢できる程度。しかし、さすがに柏ファンのど真ん中で東京の応援をするわけにはいかず、中立を装いながら心の中で声援を送る90分となった。いつもの癖で東京側の好プレーについ拳を握って「よし!」と叫びそうになるが、慌てて掌を開き首をひねったりしてごまかす俺(笑)。
 
 
キックオフ。降り続いた雨でピッチは水浸し、というかもう田んぼに近いような感じ。ボールに急ブレーキがかかり、ドリブルやパスをしくじる姿が随所で見られた。当然つなぐのは困難なので、双方ともスペースにボールを蹴り出すプレーが多くなる。5分、ボックス内で止まったボールを太田が拾って角度のないところからシュート、塩田キャッチ。その直後、中央持ち上がる梶山がDFをかわして撃ったミドルシュートは菅野が横っ跳びでセーブ。

立ち上がりこそセカンドボールをよく拾う柏が押し込むかに思えたが、徐々に個々のキープ力で上回る東京が優勢に。12分、ボックス前でボールを拾ったカボレが切り返しでDFをかわしてシュート、古賀がブロック。20分にはボールを収めたエメから赤嶺へ戻し、ボックス内への浮き球に梶山が飛び込むが一歩届かず。東京は羽生までもが浮き球を蹴り続けるなどピッチ状況に応じたサッカーに徹しており、柏はお得意のプレスがかからない。

30分、梶山の縦パスを右に流れる赤嶺が胸ではたき、外を抜けたエメのクロスがゴール前のカボレに合いかけるも、トラップが大きくなって逸機。さらに次の右CKが逆サイドへ流れ、エメのパスでカボレがDF裏に抜けた場面はクロスが味方に合わず。一方の柏は単調なロングボール頼みの攻撃。東京はSBが上がりを控えて4枚で待ちかまえ、佐原が激しい当たりでフランサを封じ込めるとともに、背後へ抜けるボールは復調の茂庭が全てスイープ。

だが、ほぼ一方的な展開ながら、古賀を中心とする柏DFの粘りもさすがであった。また、一発の逆襲で試合をひっくり返す力を持っているのが柏アタッカーでもある。37分、東京のFKからこぼれ球を拾ったフランサが梶山を置き去りにして一気にドリブル突破、ラストパスへ菅沼が走り込むがカバーに戻った長友がクリア。終了間際には太田のアーリークロスに菅沼が飛び込むもまた長友が競りかけてシュートは枠外。同点でハーフタイムへ。


後半、東京のサッカーが変わった。前半は「裏に蹴って、FW走れ」の攻撃が多かったのだが、時間とともに改善されるピッチ状況を見てか、アタッカーの流動的な動きとパス交換で崩す攻撃へシフト。さらに今野や長友のオーバーラップも出始め、本来の「ムービングサッカー」が姿を現した。46分、左サイドに飛び出した今野がクロス、カボレが飛び込むもわずかに届かず。47分にエメがDFラインからかっさらった場面は菅野が飛び出して好セーブ。

面白いもので、東京が人数をかけて押し込み始めたことで、柏のカウンターにも鋭さが出始める。53分、逆襲から太田のクロス、ボックス内でフランサが落としたボールを菅沼がシュートするも、佐原がスライディングで防ぐ。その直後に今度は東京のカウンター、左の今野→右のエメとつながってエメがDFをかわしてシュート、きわどくポスト右を抜けた。58分には縦のボールで蔵川がDFライン裏に抜けるが、前に出る塩田を抜いたシュートは左に外れ。

目まぐるしい攻め合いは続く。60分、ボックス外から撃った永井のシュートを羽生がブロック。その直後にタッチ際を突破した羽生(ワープした?)が深くえぐってクロス、カボレの寸前で菅野がパンチ。62分、左を上がる藤山から追い越す羽生へつなぎ、クロスをファーで赤嶺が折り返したが、走り込むエメは空振り。63分には右に流れたカボレがグラウンダー、ニアに飛び込む羽生の寸前で古賀がカット。古賀、本当にしぶとい。名古屋の時とは別人のようだ。

危なかったのは65分。右→左に抜けた蔵川のクロスを長友がクリアしそこね、フランサがゴール右上を狙うループシュート。タイミングを外された塩田は動けず、やられた……と思った瞬間にボールはわずかバーの上へ。ヤバかった。危機を逃れた東京は驚異的な突進力を見せるエメを中心に攻勢を継続。71分にはエメ→カボレ→梶山→赤嶺→エメと速いパスがつながってエメがDF裏に抜けるも、シュートは菅野正面。決まっていれば間違いなく「ラブリー」だった。

決勝点が入ったのは72分。右から今野→エメルソン→カボレ→ループしたエメ→左に流れる赤嶺ときれいにつながり、赤嶺は切れ込みながら右足を一閃。ボールはドライブのかかった弾道で菅野の頭上を抜け、あっという間にゴールへ飛び込んだ。うおおおおおお!ゴラッソ!!これが味スタであれば間違いなく絶叫していただろう。しかし、沈黙する黄色い人々に囲まれて必死に歓喜の声をこらえざるを得ない俺(笑)。とにかく、ついに先制である。

直後に東京は羽生に替えて石川を投入。石川は馬力にものを言わせてガンガンドリブルで持ち上がり、柏のショートカウンターを抑える結果になった。75分、ボックス前のパス回しからエメがミドルシュート、バーの上。続いて77分にカボレ→平山。カボさんの仕事量を考えればこれは納得の交代。平山は時間使うの上手いし。その直後、ポポがスピードで左サイドを抜け、太田を狙ったクロスを入れるが藤山先生が競りかけてシュートはバーの上。

柏は永井・太田OUTで山根・北嶋INの交代策。さっそく82分、フランサのグラウンダーで北嶋と茂庭が競争の形になり、フレッシュな北嶋が勝つか……と思えたが間一髪茂庭がクリア。その後は柏が前がかりになり、東京は浅利投入で試合を締めにかかる。奮闘するDF4人に加えて浅利・今野の機動力。柏はシュートにも持ち込めない。逆に平山に2度ほどシュートチャンスがあったものの、古賀が気力の守備で防ぎきる。結局、1ー0のまま試合終了となった。
 
 
いや、何にしてもよかったよかった。

東京のサッカーは名古屋戦あたりから確実に良化が続いていて、この試合でも前半こそ悪ピッチに合わせたプレーを強いられたものの(でも、そこで状況に応じた戦いができたのは、春頃にも見えていた「進歩」だ)、後半は「これぞムービング!」という楽しいパス攻撃を見せてくれた。浦和戦・ヴェルディ戦が駄目で今回急に変わったわけではなく、むしろ悪くない内容にも関わらず結果が出ていなかったのに、ブレずにきっちり結果を出してきたのが喜ばしい。

ま、意地悪な見方をすると、もしもフランサのループが入っていて赤嶺のシュートがブロックされていたら(実際、どちらも紙一重だった)、結果は逆になっていたわけだ。身も蓋もない言い方になるが、サッカー(特にリーグ戦)の勝敗なんてなあこんなもんである。内容と結果は必ずしも比例しない。でも、だからこそ逆に少しのチャンスでも逃さない意志が求められ、少しでも「確率」を高めるためにより良いサッカーが求められるのだ、とも言えるけど。

個々の選手に目を向けると、MVPは間違いなくエメルソンである。サッカーというのは難しいコンディションであればあるほどテクニックの差が出たりするものだが、この試合のエメはボール扱いの巧さに加えてアイデアや間合いの感覚、足下の力強さでもずば抜けていた。なんか、開幕の頃は「またずいぶん小さな選手を獲ったものだな」と思っていたのだが、今やその存在感ゆえか、ピッチ上での彼はえらく大きく見えるような。ケリー再び、だろうか?

その他攻撃陣の中では、もちろん決勝ゴールをあげた赤嶺は素晴らしかった。誰が東京の「エース」なのか、今さら言うまでもないだろう。中盤では、今野に復調の気配が見えたのが喜ばしい。難しいコンディションでかえって吹っ切れたのだろうか。守備陣ではまず何といっても茂庭。下半身に不安がなくなったのか、変なドタバタ走りがかなり減ってきた。佐原もファイターぶりが好印象。長友は、攻撃は控えたけどその分カバーリングで大活躍だった。

つーことで、その場で跳び上がって喜ぶわけにはいかなかった(身の危険云々以前に、マナーとして駄目だよねそれは)のが残念ながら、雨の中好試合での勝利を見届けることができたのは本当に嬉しかった(最初から買い間違えんなよ、という意見もあるが(笑))。結果が出ることで、内容を求めることができる。内容が向上することで、結果もより良くなっていく。次の中断明けはそういう好循環にはまってくれるといいな、と思う。2週間後が楽しみだ。

柏は、前線で張れるFW(李忠成)が不在で、フランサが前を向く場面が少なすぎた、かな。
 

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コメント

murataさんの思いが通じて「結果」が出て良かったです。

けど、一試合の結果やわずかな順位の変動に過剰反応せず、murataさんのように大きな方向性を見据えて泰然としていたいものです。

かなり酷いピッチコンディションの中、両チームの選手がともに頑張った良いゲームだったと思います。

そのためか、最近の味スタでよく聞かれる選手を罵倒するヤジが無くて、気分良く観戦出来ました。

やはり応援としての叱咤激励はアリですが、自分の不満解消のための罵倒は、聞いていて不愉快ですから。

全身ズブ濡れで90分も電車に乗って帰りましたが、豪雨の中でも見に行って良かった、と思える試合結果・内容、スタジアムの雰囲気でした。

>いや、何にしてもよかったよかった。

ホントにそうだよね。いかに進歩していても結果が出ないと疑心暗鬼&自信喪失で結果的に後退ってことはありえるからね。
結果が出て本当によかった。

後はホームで勝ってくれればなんだけど。

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