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2008年07月14日

●今はまさしく「五里霧中」だが (鹿島アントラーズ×FC東京)


昨日の夜は、カシマスタジアムでJ1第16節。鹿島アントラーズ 4-1 FC東京。前日浦和が大分に完敗したため、鹿島にとっては勝てば首位に立てる状況。一方東京にとっては、リーグ中断明け以降勝ちなしの嫌な流れを断ち切りたい一戦であった。あいにくの濃霧の中で行われた試合は、「挑戦者」に対して「王者」が堂々と受けて立つ形でオープンな攻め合いとなり、東京が先制したものの、鹿島が決定力の差を見せつけて見事逆転勝ち。


今回は京王観光の貸切列車ツアーで遠征。キックオフ2時間半ほど前に現地に着いたのだが、既に湿気が高く肌寒い感じ。とりあえず国道51号線沿いの屋台村で焼き鳥をほおばっていたら、時間がたつにつれ周辺は灰白色の霧に包まれていき、50mほどしか離れていないのにスタジアムの全景が見渡せなくなった。ロンドンじゃあるまいし……さすがは鹿島国、まさにアウェーの気候。入場してみるとピッチ上ももやっていて選手の判別も難しいほど。うーむ。

 
モヤモヤの中で試合開始。悪コンディションだけに慎重な入り方になるだろうと思いながら観ていたら、いきなり攻め合いが始まったのでちょっと驚いた。1分、野沢が椋原を振り切ってクロス、塩田が押さえきれずにヒヤリ。3分、中央からのクイックリスタートで右に開いた本山がDFの裏を狙うグラウンダー、マルキーニョスが飛び込むも一歩届かず。5分には羽生・梶山・平山とつないで左→右への展開、攻撃参加の椋原のシュートをGK曽ヶ端がキャッチ。

両チームとも4-4-2の布陣で、速いパスワークから積極的に前へ出る。ボールがよく動いて面白いゲームとなった。8分、右スローインから虚を突いて内田がボックスへ侵入、折り返しをマルキーニョスが後ろへ戻し、走り込む小笠原がシュート、わずか左に外れ。14分にはエメのポストプレーから平山が右足で狙うも曽ヶ端が横っ跳びで弾き出す。どちらもチャンスを作っているが、動き出しの量と質、パス回しの「意図」といったあたりで鹿島がやや上に見えた。

17分、佐原と田代がハイボールを競り合ってこぼれ球に本山が走り込む危ない場面、塩田が懸命にかき出す。19分にはカウンター気味の展開から椋原のクロスははね返されたものの、梶山の強烈なミドルシュートがゴール右上をかすめる。「オープンゲーム」が延々と続く形。逆に言えば、両チーム(特に東京)の中盤守備があまり効いていないということか。そうしているうちに霧がますます濃くなって、選手たちも明らかにプレーしづらそうな様子になってきた。

28分、左サイドを新井場が突破、ニアを狙うクロスにマルキーニョスが飛び込むが佐原が競りかけてCKに逃れる。鹿島の守備もそれほどタイトでないため東京はボールをとればそれなりに前へ進めるのだが、そこで崩すひと工夫が足りない印象。ミドル以遠のシュートが多い。もっとも、鹿島の方も視界の悪い中でパサーとアタッカーの思惑がズレる場面がけっこうあり、やや苛立つ様子もうかがえたため、先制点さえ奪えれば勝負はできるように思えた。

35分、平山から裏へ走るカボレへパスが通り、角度のないところからの強シュートを曽ヶ端がセーブ。37分、青木のクロスをファーで田代が折り返し、マルキーニョスがオーバーヘッドで狙うも藤山が競りかけてノーゴール。40分、徳永の攻め上がりから羽生がボレーシュートを撃つも枠外。42分には右タッチ際で佐原がファウル、野沢のクロスがGK・DFの頭上を越してマルキーニョスの頭に合ったが、塩田が倒れながらセービング。前半はスコアレスで終了した。


おそらく予定の交代だろう、椋原OUT長友IN。そして後半も立ち上がりから攻め合いに。ただし、悪い視界を考慮してか、早くダイレクトに狙う攻撃が増えたように見えた。スリリングな攻防が続く。52分、また平山のスルーパスでカボレが抜け、シュートを曽ヶ端がセーブ。直後、ボックス手前のマルキーニョスが鋭いターンで梶山をかわしてシュート、わずか左に外れ。55分過ぎには右突破した内田のクロスがゴール前の本山へ入るが、塩田が体でストップ。

先制点が入ったのは58分。深い位置のスローインから徳永がクロス、カボレが落として平山がダイレクトで狙ったシュートは曽ヶ端が一旦はじいたものの、これを平山が拾って曽ヶ端を背負いながらキープ、中央のカボレに戻してシュートがゴールネットを揺らした。ようやくFWがボックス内で仕事をしてくれた、という得点。1-0。その直後にはやはりエメ・平山のパス交換から攻め込み、カボレがシュートを撃つ場面もあったがこれは曽ヶ端キャッチ。

これに対し、ホームで無類の強さを誇る(1年以上負けていない!)鹿島も黙ってはいない。より一層パス回しを加速させて反撃に出る。60分、マルキーニョスが藤山と競りながら上げたクロス、ノーマークの野沢がドンぴしゃのヘディングを撃つが塩田がはじき出す。さらにCKからこぼれ球を岩政がシュートするも枠外。まだこちらにツキがある、という感じ。しかし、ここで鹿島は田代・野沢に替えてダニーロと興梠を投入。これで流れが変わった。

62分、中盤のパス交換からダニーロが持ち上がって楔のパス。興梠が長友に当たられながら我慢して戻し、走り込むマルキーニョスがゴール左隅へ突き刺した。先制点からわずか4分後の同点劇であり、交代策ど的中でもあった。1-1。勢いに乗る鹿島は一気に攻めたてる。67分、小笠原が直接狙ったFKがバー直撃。70分、マルキーニョスの強烈なミドルシュートを塩田が横っ跳びで防ぐ。73分にはFKから混戦となり、マルキーニョスのヘッダーに冷や汗。

75分を過ぎる頃になると両チームともやや足が止まりだし、ルーズなカウンター合戦の様相を呈してきた。何とか持ちこたえてきた東京はここが勝負と見たか、羽生に替えて大竹を入れ、さらに赤嶺投入を準備。ところが78分、小笠原から右のマルキーニョスへ大きな展開パス、マルキーニョスは藤山のタックルをかわしてからゴール前へ速いグラウンダーを入れ、逆サイドから走り込む本山が足を懸命に伸ばしてゲット。1-2。完全にしてやられた……。

ここで東京は平山OUT赤嶺IN、鹿島は本山OUTで中田浩IN。何とか追いつこうとあがく東京に対し、鹿島は守りのバランスを保ちながらもカウンターの手をゆるめない。83分、左CKからのこぼれ球をダニーロが落ち着いて戻し、走り込む青木のミドルシュートがゴール右上を抜ける。84分、左に流れた赤嶺がパスを受けて突進、クロスのこぼれ球に大竹が飛び込むもファウル。その直後には今野のオーバーラップから赤嶺が反転シュートするが曽ヶ端キャッチ。

決定的な得点は86分。カウンターからマルキーニョスが右サイドを突破してクロス、ゴール前の興梠が巧みなトラップでDFを外してシュートを左サイドネットに突き刺した。1-3。これで勝負あり。さらに89分には左CKからダニーロがヘッド一発ズドンと突き刺してとどめの4点目。東京もいくつかチャンスは作ったものの得点には至らない。ロスタイムに左サイドを突破した長友の速いクロスにカボレが届かず、ボールがそれたところで終了の笛が鳴った。



オープンな「撃ち合い」となったこの試合、どちらのファンでなくとも観戦した人は大いに楽しめたことだろう。ボールがよく動くサッカーは観ていて楽しい。ただ、東京にしてみれば、そうした展開であるがゆえに、いっそう実力差を見せつけられることになってしまった。完敗である。

鹿島アントラーズは強かった。「この試合に勝てば首位」という状況で、ウチなんかは変に浮き足立ってしまうものだけど前年度王者はどうだろう……と思っていたら、ぜ~んぜん普通にいいサッカーしてやがんの(笑)。悪コンディションもあって一部MFとFWとで意図が合わずにイライラするところはあったけど、後半になったら修正してきたみたいだし、しかも失点した瞬間にプレーの精度とスピードが目に見えて上がってきたし。コンチクショウ。

オリベイラ監督の采配も的確だった。同じノーガードの撃ち合いでも、田代が佐原に封じ込められた前半に対して後半(頭から行かなかったのは東京の出方を見たのだろう)は興梠とダニーロを入れてボックス内での地上戦を挑んできた。これが効果てきめん。もちろんそれに応えた選手たちの対応力もさすがで、勝負所での小笠原の(特に守備面での)鬼気迫るプレーぶりには感心させられた。積み重ねてきた11冠は伊達じゃないんだね。

まあ、さすがに今回は城福さんも「あんなサッカーに……」と言うことはないだろう(笑)。「王道のサッカー」「横綱相撲」に未熟な東京が見事ボカチンくらってしまった試合、ということでよいのではないだろうか。まだまだこちらは促成栽培だったということ。もっとも、それについて悲観する必要は全くなくて、この段階で実力を思い知ったのは決して悪くないと思うし、堂々と挑んで華々しく散った事についてはある種の爽やかささえ感じてしまう。

まあ、要するに、2002年の磐田戦と同じくいいレッスンを受けたと思えばいい。あの翌年には優勝争いをして、2年後にはナビスコ杯を獲ったのだ。肝心なのは、この敗戦を今後にどう生かしていくか。そしていかに繰り返さないようにするか。

心配なのは、戦況不利になったりチームが機能しなくなったりすると途端にエメルソンの個人プレーが目立ったり、あと羽生以外のフリーランニングが減ってしまうようになっていること。結果が出ないことそれ自体より、むしろそのことでチームの意思統一が崩れてしまうことの方が怖い。サッカーの内容について高い志を持っている分空中分解のリスクも高いはず。霧の中だからこそ、進むべき道については明確にしておかないと危ない。

これは決して教条的になれという意味ではない。逆に、リーグ中断明け以降、選手交代も含めてあまりにも積極的に過ぎる(「攻撃こそ最大の防御」は局地的には成り立つけれども……そのうち梶山が過労死するかも(笑))のと、あと選手起用に偏り、というか変なカタさが生じ始めているのがちょっと気になってるんだよね。「攻撃サッカー」は基本的に好ましいし、駒も妙に豊富になっちゃったので使いこなすのは難しかろう、とは思いつつも。


ということで、チームにとって難しい時期にぶつかっちゃったような気もする「トップ3」との3連戦も、次のガンバ大阪戦が最後。リーグの折り返し点でもあるし、3チームの中で一番脇の甘い相手のような気がするので(失礼)、ここはひとつスコーンと勝って後半戦へ向けてもう一度勢いをつけてほしいと思う。つーか、負けられへんで~~。
 

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コメント

はじめてコメントさせていただきます。
先制した後、なんで我慢して落ち着く時間帯を作れないのかといつも疑問を感じてしまいます。
点取ったらすぐに点取られたってパターンを見慣れてしまうのはほんとイヤです。

>日本酒さん
確かにそうなんですよね。せっかくうまいこと先制できて、攻撃のペースを落としてでももう少しリードをキープできれば、相手も焦ってカウンターのチャンスも増えるでしょうに……。

どうも、長年あまり頭を使わずにサッカーをしてきたせいで悪い癖がついてしまっているのと、加えて最近城福さんも前へ前へとはやりすぎのように思えます。

大人のサッカーができるまでにはまだまだ時間がかかりそうですね。個人的には、根気強くチームの成長を待ちたいところではあるのですが。

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