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2008年07月28日

●自転車レースは、チームスポーツなり ('08ツール・ド・フランス)


ここのところ毎年ドーピング関連であーだこーだありながらも、結局いつも観てしまうツール・ド・フランス。今年も「コンタドールもボーネンもベンナーティもいねーよーじゃよー、全然最高峰レースじゃないじゃんよー」などとボヤきながらもやっぱり全部観てしまった。だってー面白いんだもーん(笑)。今回の総合は昨年同様に終盤までもつれ、僅差をTTで争う展開となったが、CSCの苦労人サストレが見事マイヨ・ジョーヌを獲得した。


サストレの優勝は、「チーム力」と「経験」の賜物と言って良いだろう。

まず、チーム力。終盤の山岳、特に超級3つの並ぶ第17SでCSCの示したチーム力はまさに「圧巻」の一言だった。フォイクト、アルヴェセン、オグレディ、カンチェラーラ、そしてアンディ・シュレク。他のチームなら普通にエースに収まって不思議ではない実力者たちが引いて引いて引きまくって……まるでマシンのようだった。気がつけばバルベルデもクネゴもヴァンデヴェルデも、時にはメンショフさえもが後方に取り残されていた。

その上サストレとフランク・シュレクのダブルエース体制。最大の勝負地ラルプ・デュエズで結果的にマイヨ・ジョーヌのシュレクが「囮」となってサストレをアシストした事に象徴されるように、作戦的な幅も広く、他チームは「勘弁してくれ」と思ったことだろう。サイクルロードレースはチームスポーツだということを改めて思い知らされた思いである。少なくとも今回のサイレンス・ロットやラボバンクには、チームとしてCSCに対抗できる力はなかった。

ただ、それでも、サッカーにおいてどんなにパス回しに優れたチームも良いゴールゲッターに恵まれなければ勝ちきれないように、ロードレースでも結局最後はエース同士の能力比べになることは否めない。特に、第20Sに控えた個人TTは完全に個人の競争。一対一の争いにおいては、サストレはエヴァンスやメンショフにかなわないと思われていたのだ。それが、第17Sラルプ・デュエズの独走に引き続く第20Sの快走。まさに一世一代の走り。

これまで何度もひと桁順位に入りながら表彰台を逃してきたサストレだが、力は超一流でなくともツールというレースについては多分誰よりも知り尽くしているのだろう。力の使いどころをわきまえているというか……極端な話2週目まではひたすら力をためて、本気の力を使ったのは第17Sと第20Sの2日間だけだったのではなかろうか。それに比べると、所々で自分の力を使って勝負しなければならなかったエヴァンスは気の毒ではあった。

今回、事前にコースレイアウトを観た時にはバルベルデやクネゴに有利なんじゃないかと思ったんだけど、どうも彼らはやはりワンデーレース向きらしい。バルベルデにとってはボーナスタイムが廃止されたのも意外と大きかったのかもしれないが。エヴァンスやメンショフはまさしく「総合力」を備えた選手だけにコースレイアウトに左右されず上位に入ってきたけれど、彼らは既述の通り相対的なチーム力の弱さでわずかに遅れてしまったのだった。

実は、密かに今回はシュレク兄が勝つと予想していたのだ。山岳得意の彼にはTTの距離が短いことがプラスに働くだろうし、直前のツール・ド・スイスで崖下に転落する大落車から奇跡的に生還した姿を見て「こういうアクシデントで覚醒するというのは自転車競技的にはアリ(ランスとか、コンタドールとか)だな……」と思っていたので。でも、まさかあれほどまでにTTが弱いとは(笑)。つーか、マイヨ・ジョーヌを1回着るのが精一杯だったのかな、今回は。

ともあれ、サストレは今年勝たなければ(よりマークされる)来年以降は厳しかったろうから、良かった良かったと言うべきか。CSCのアシスト好き(笑)の僕としても大変に嬉しい。


3賞のうち、ポイント賞(マイヨ・ヴェール)はラボバンクのフレイレが獲得。前夜祭の記事の時に「フレイレとフースホフトが有力」と書いたけれども、総合の予想と違ってこちらは当たっていた(笑)。メンショフの総合もかかっていたからアシストは限定的にしか得られなかったろうに、単純な平坦のない凸凹の激しいコース設定をほぼ独力で乗り切ったのはさすが世界チャンピオン3回の選手。緑とオレンジってのは、色彩的にもまあまあ合うしねえ。

パリでの3賞表彰式、黄色いジャージーを着たサストレの子供と緑のジャージーを着たフレイレの子供(ともに男の子)がじゃれ合っている姿がものすごく可愛かったね。

あと、グリーンジャージは獲得できなかったけれど、平地ステージで4勝したカヴェンディッシュの活躍は強烈な印象を残してくれた。単純に「最後の直線の強さ」だけで言えば、本人の言うとおり彼が世界最強、ボーネンもペタッキもかなわないかもしれない。彼、あまり言動や素行がよろしくないように言われているけど、レース後の記者会見でライバルのフェアな振る舞いを讃えたりもしていて、性格は案外悪くないようにも見える。次は世界選手権かな。
 
 
最後に、最近のツールを語る上で外すことのできないドーピング問題。今回はリッコとピエポリがサウニエル・デュバル全体を道連れに排除されるという結果が待っていた。これはこれで仕方のないことなんだろうし、主催者や「クリーンな」選手たちが「嘘つきが排除されて良かった」と言うのももっともだとは思うのだが……やはりファンとしては(僕はリッコの事はあまり好きではなかったけれど)辛いよなあ。アスタナ排除は何だったのよ、とも思うし。

いずれにせよ、来年こそはドーピング云々のモヤモヤがなく、スッキリした形でこの大会を楽しみたいものだと思う(と毎年書いてるような気がするな(笑))。コンタドールもバッソも戻ってきて、スキルシマノが日本人レーサー(別府史之?)とともに出場してくれると最高なんだけれども。あ、その前にブエルタがあるのか。コンタドール対サストレ対メンショフ、ボーネン対フレイレ対ベンナーティとかになったら、こっちが世界最強決定戦じゃん、てか。
 

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コメント

今年はまさにCSCのためのツールでしたね。第17Sは観戦出来ませんでしたが、第15Sでもそのチーム力のすごさは感じられました。
個人的にはミルラムのツァベルに1勝だけでもして欲しかったです(笑)。

いや、CSCは本当に凄かったですよ。これで大エースが1人いたらどうなっちゃうんだろう、と思うんですけど、逆にそこまで目立っちゃう「中心」がいないのが良いのかもしれませんね。

ツァベルは……良いところまでは行くし、ポイントはしっかり稼いでいるんですけどねえ。最後の一踏ん張りのところはやっぱり若いパワーにはかなわないのかな。ブエルタではなんとか。

これだけ成果が出ているということで、東京もキャンプ前に【軍隊トレーニング】の採用をしてみては?
半分本気です(笑)

ツァベルだけでなくマキュアンも今年はさえなかったですね。マキュアンもフレイレ同様にチームが総合狙いの編成だったのがなあ。それでもお得意のトレインただ乗り作戦があったのに・・・。結局は友の会(グルペットね)の方に力を発揮してしまって・・・。

あと、今回印象に残ったことは個人TTのシューマッハですかな。あのカンチェラーラに2つとも勝ったのはびっくりだったなあ。世界選手権はどうなるんだ?

バルベルデとクネゴはディルーカみたいなタイプなんですかね?ワンデータイプっていわれてしまうとそれまでなんですけど・・・。そしたら兄シュレクもそのような気が(自分としては弟シュレクの方がステージレース向き)。

ヴェルタはメンショフは出ないみたいですよ。それでもコンタドールvsサストレvsエヴァンスは実現しそう。

>東京もキャンプ前に【軍隊トレーニング】の採用をしてみては?
ちょっといいかも(笑)。
確か、2000年の開幕前の石垣島キャンプでは「とにかくJ1で戦う体力をつける!」みたいな感じで超フィジカル重視の走れ走れトレーニングをやったんじゃなかったかしら。J2以前ではなく、もしかしたらあの時こそが「部活サッカー」の起源ではないかと密かに思っているのですが。

>バルベルデとクネゴはディルーカみたいなタイプなんですかね?
どうなんでしょうねえ。そのディルーカもジロを勝ちましたからねえ。体の作り方とか色々要因があるでしょうから、一概にどちらとも言い難い選手が多いのかもしれませんけど。

>コンタドールvsサストレvsエヴァンス
エヴァンスももちろん嬉しいですけど、コンタ君にサストレにバルベルデも出そうなので、まさにこれこそ最強スペイン人決定戦!!

そして、ツァベルに(おそらくは)グラン・ツール最後の勝利が転がり込みますように……。

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