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2008年07月27日

●迷ってる場合じゃないですヨ (FC東京×横浜Fマリノス)


昨日の夜は、味スタでJ1第18節。FC東京 1-1 横浜Fマリノス。リーグ中断明け以降6戦勝ちなしと成長の苦しみ(?)を味わっている東京。今回は16位に低迷中、監督交代して間もなくのマリノスが相手であった。約2万9千の観客を前に行われた試合は、開始早々の失点から立ち直った東京が外国人2人の活躍で同点に追いつくものの、後半失速してやっとのことで引き分け。今後に向けて不安の残る内容と結果に終わってしまった。


この日は「浴衣まつり」「ファイヤーワークスナイト」「ザ・プレミアム・モルツDay」と豪華3本立ての企画。浴衣姿のカミさんを連れてルンルン気分で味スタへ。試合前には売店に行列してプレミアム・モルツ生650円を購入。正直この値段は高い……のだが、やはりこの圧倒的なホップの香りと澱みのない旨味は別格である(普通のモルツと比べるとよくわかる)。この日だけと言わず、毎回売ってくれないかな、というのがビール好きとしての要望。

  
7月らしいムッとした暑さの中でキックオフ。ゆっくりとした試合の入り方になるのかな、と思ったのだが……。開始直後、FKから椋原のアーリークロスを赤嶺が落とし、羽生がボレーで狙うがGK榎本がキャッチ。これに対し、連敗脱出に燃えるマリノスは序盤から飛ばし気味に前へ出てきた。3-5-2の陣形で坂田と大島が前に張り、WBへの広い展開と中盤3人の速いパスワークを織り交ぜて攻めたてる。東京のDFラインは早くも下がっていく。

4分、金沢のトラップミスからボールを奪われ横浜は空き気味の左サイドへ展開、小宮山の好クロスは徳永がはね返したものの、セカンドボールを拾った山瀬がシュート気味のグラウンダーをゴール前へ。これを残っていた大島が足下に収めてシュート、塩田の横っ跳びも届かずゴール左に決まった。東京DFは人数は揃っていたのにやや棒立ち気味で、速いボールの移動について行けずにあっけなくやられてしまった。ため息の0-1。

ところが同点ゴールは早かった。9分、左ライン際のパスワークから中へ切れ込むカボレが速いグラウンダーパス、これが右サイドフリーで上がるエメルソンへ通る。エメは左へ切り返すようなトラップで巧みにDFの間へボールを持ちだして榎本と一対一の状況を作り出し、落ち着いてその股下を抜くシュート。トラップ一発で松田と河合を無力化した見事な個人技。まったくもって「エメルソン劇場」と呼びたくなるようなシーンだった。1-1。

その後は横浜がボールを支配し、小宮山が椋原を抜いてクロス、という場面がいくつか。しかしいずれも塩田が落ち着いてハイボールをキャッチ。東京は中盤でのパス回しでは見劣りするものの、相手WB裏に流れる選手を起点に機会をうかがう。14分、CKから今野の叩きつけるヘッダーに赤嶺が飛び込むものの、寸前で榎本キャッチ。16分、左コーナー付近で藤山が坂田に振り切られかける危ない場面、懸命に食い下がってシュートブロック。

前半中頃になると横浜の動きが落ち始めるが、東京の側もパスミスが多く膠着状態に。23分、焦れた松田のロングシュートは大はずれ。25分、羽生がボックス右でFK獲得、金沢のインスイングのクロスはアタッカーもDFも触れずポストわずか左を抜ける。28分、横浜のパス回しで左右に振られてマークがずれ、どフリーの小宮山の突進から波状攻撃となり冷や汗。東京は金沢・藤山あたりの守備がどうも危なっかしい。一進一退の攻防が続く。

32分、縦パスで赤嶺が巧くDF裏右に抜け、角度のないシュートがきわどく左に外れ。36分、松田がワンツーでボックスへ突入するが今野がスライディングで防ぐ。38分、クリアキックを左タッチ際で受けたカボレが鋭い反転でDFをぶち抜き突進、さらに中澤をかわすもシュートは榎本を直撃。42分には山瀬のパスがゴール前坂田の足下へ入るが、佐原が好カバー。東京としては、いい内容ではないものの2トップからチャンスは作れており、「まずまず」の前半だった。



ハーフタイムには「ファイヤーワークスナイト」ということで、300発(?)の大花火大会。昨年まではバックスタンドの住人だったためほとんどガラスや人の頭越しの鑑賞となってしまったのだが、今年はメインスタンド席に移動したので花火の全体を眺めることができた。いやあ、ホント、きれいだねえ。特に青赤の花火がコンビで上がるのは素晴らしい。売店にビールを買い足しに行ってたら、半分くらいしか観られなかったというのは内緒である(笑)。


後半、横浜は長谷川OUT水沼INの交替。山瀬が一段低い位置から飛び出してくるより攻撃的な陣形にシフトして、立ち上がりから再び攻勢をかけてきた。49分、兵藤の地をはうロングシュートを塩田が横っ跳びではじき出す。51分にはバイタルエリアで横移動する山瀬のミドルシュートがバーのわずか上を抜ける。相手の攻撃的MFをつかまえられない東京は次第に全体が下がっていき、なかなか2トップにボールが収まらない苦しい展開。

それでも56分、東京にビッグチャンス。右コーナー付近でキープするカボレが寄せるDF2人の背後へパスを通し、フォローに入った羽生がゴールライン際を中へ。角度のないところだったため羽生はゴール前のスペースへ折り返し……たのだが、走り込むアタッカーが間に合わない。無念の逸機。その直後、今度は横浜の決定機。中央で坂田が粘って右の田中隼に展開、グラウンダーにファーの大島が合わせたシュートはポストに当たって命拾い。

ここで東京ベンチが動いた。カボレとエメルソンOUTで平山と石川IN……。おそらくカボ・エメの疲労を気にしたのだろうが、これで東京は貴重なボールの収まり所を失った。東京の攻撃は全くつなげず「蹴るだけ」となり、横浜ペースに。64分、パスの出し先に困った徳永が坂田にボールをさらわれて冷や汗。67分、田中隼の弧を描くグラウンダークロスに坂田・大島が飛び込むも、一歩届かず命拾い。73分には河合のオーバーヘッドシュートがバーの上を越える。

東京は交替選手がボールに絡めない中、孤軍奮闘する羽生が70分にボックス前でFKを獲得するが、石川のシュートは大外れ。この停滞を見て城福監督は再び動き、金沢に替えて大竹投入。しかし大竹は大ざっぱな組み立ての中で生きる選手ではなく、羽生が下がり気味になって東京の攻撃はますます淡泊に。勝ちきりたい横浜は小宮山に替え金井を投入。ただでさえ押され気味の椋原はもう上がれない。横浜のミドルシュートが続けざまに東京ゴールを襲う。

79分に、大竹とのコンビで徳永が左サイドを深く突破するが、平山を狙ったクロスはDFがブロック。81分、徳永のアーリークロスをボックス内で石川が落として赤嶺が中澤を振り切りながら突入するもハンドで逸機。終盤は完全な横浜の攻勢に。83分、左サイドからサイドチェンジが水沼に通るが、大竹が気迫のディフェンスで防ぐ。89分には坂田が左サイドを突破、クロスが逆サイドに流れたところで走り込んだ水沼がシュート、ゴール上に外れ。

ロスタイムになるとさすがに両チームともバテが出てルーズな攻防となり、東京もいくつかセットプレーを獲得したものの、大竹のキックはことごとく横浜3バックにはね返された。さすがに中澤・松田・河合の壁は厚い(つーか反則だべ(笑))。結局、1-1のまま試合終了となった。横浜にしてみれば「しとめ損なった」試合だろう。試合後、挨拶に回る東京の選手たちにはブーイングと、ゴール裏から「シュート撃て!」コールが浴びせられた……。



悔しい引き分けだった。

なんつーか、中断明け以降、選手の意識にせよ采配にせよ、どうも焦点が定まっていない。この試合、前半はまずまずうまく戦えていたと思う。梶山の不在に金沢の不調も加わって、中盤でほとんどポゼッションできず苦しい展開ではあった。でも、2トップとエメ・羽生の4人には仕掛ける意欲も能力もあり、全体的に押し込まれ気味の割にはチャンスが作れていた。控えの駒もこちらの方が上に思えたから、「後半勝負になれば」という感じではあったのだ。

しかし、実際には後半アタッカーを増やしたマリノスに対して受け身に回り、交替策も相手の脅威になっていたカボ・エメを外して信頼性の低い平山・石川を入れる意味不明瞭なもの。結果として「周りを使える」選手がいなくなったことで攻撃はバラバラになり、セットプレーもキッカーがあれでは……。中断明け以降の7試合で2得点以上の試合が皆無なのは偶然ではない。選手・ベンチ問わず、「どう戦うか」の意思統一が曖昧になっているのだと思う。

気になるのはカボ・エメの扱いである。カボレは決定力不足の点で確かに不満はあるものの、前でキープしてくれる人材として彼以上の者はいない。エメルソンも、後半立ち上がり消え気味ではあったが、あれは相手のアタッカーが増えて下がらざるを得なくなったから。同点ゴールも2人のコンビだったし、それに替えて平山と石川って、特に平山はそこまでの選手かね?赤嶺と平山の比較評価を見ても、どうも城福さんの考えが理解できなくなってきた。

チーム力を根本的に高めるためには、羽生の言うように受けて動く、はたいて動くの繰り返しの中で精度と判断力を高めていくしかない。それはブレてほしくないし、選手起用もそれを念頭にしてほしい。「ムービング」を旗印に掲げているのだから。ただ、暑かったり相手との力関係でそれを実現できない場合もあるから、その時に対応できる引き出しも用意せねばならない、と。でもあそこで平山はないだろうよ、と思う。浅利は何のためにベンチにいたんだ。

あと、試合後に巻き起こった「シュート撃て!」コールについては、「それ以前の問題だろう」というツッコミは野暮だろうか。単にシュートを撃つだけなら昨年までもできていた話で、ただそれでは得点力や試合の流れの支配に直結しないから「(ボールをつないで)崩してとる」ってのが今年のコンセプト(目標)のはず。なのに、ファンの方が監督や選手の迷いを深める態度をとってどうするの、という。ストレス発散ってか?塩田は怒ってたみたいだね。

つーか、もしかすると後戻りか先へ進むのか、このチームは重大な分岐点に差しかかりつつあるのかもしれない。2年前の8月と同じように、ね。案外早く来たな、という感じか。今回はさすがに「8月15日に終戦」というスーパーギャグは出ないと思うけれど(笑)。がんばれ城福さん、俺は信じてるぞ。まだ上も離れちゃいないし、下も近づいちゃいない……かな(笑)?
 

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コメント

2階席での観戦でしたが、「シュート撃て!」コールはフィニッシュに持ち込めない「それ以前の部分」を含めてだったと理解しました。
個人的には梶山がいなくなってエメルソンが復調してきたように見えたのが気になりました。意外と共存した試合って少ないと思いませんか?勘繰りすぎですかね?

花火のせいでwバックスタンドにいたんですが、「シュート撃て!」コールしましたよ、期待を込めて。「崩す、そしてゴール」は、あくまでも、「何時でもゴールの意識を」の後にくるものだと思うのです。昨日は意識をあまり感じられなかったな〜。その意識はFWだけじゃなく、まん中も、場合によっては後ろもってことで。

プレミアムモルツ、むちゃくちゃ美味しかったっす。というか、嫁、緑色。

Bullさん、みぽりんさん、コメントありがとうございます。

>「シュート撃て!」コールはフィニッシュに持ち込めない「それ以前の部分」を含めてだったと
多くの人は、そういう気持ちを込めていたのかもしれないですね。私も、後半11分の、羽生が右ゴールライン際を突破して折り返した場面、「シュート撃てるとこまで誰か入っとけよ!!」と叫んでましたから。広い意味では「シュート撃て!」ですわな(笑)。

ただ、ホームで勝てなくてうなだれている選手たちがきちんとメッセージをくんでくれたかがちと心配になったりして。塩田あたり、けっこう感情的になっていたように見えたので。

まあ、何にしても、シュート7本は少なすぎますわな。それは確か。

>場合によっては後ろも
藤山撃て!!ということで(笑)。いや、マジで。

>というか、嫁、緑色。
これはベルデーの緑ではなく、ツール・ド・フランスのポイント賞ジャージー「マイヨ・ヴェール」の色なのれす。いやこれもマジで(笑)。

組み立ての部分も含めて(笑)
伝わりますかねぇ、選手に。
僕のとこでも似た意見ありました。同じ言葉でも、ヒロミ時代とは違うメッセージが込められてるらしいですよ(笑)。難しいと思うなあ。

「サポーターは昔のサッカーを求めてる」みたいな変な誤解は避けたいですね。
いや、実は誤解じゃなかったりして(笑)

>伝わりますかねぇ、選手に。
>難しいと思うなあ。
確かに。なにしろ、言葉そのまんま「シュート撃て!!」だからねえ。普通に解釈したら「じゃあシュートさえ撃てばいいのかよ!」と思っちゃうよね。

>いや、実は誤解じゃなかったりして(笑)
ホント、それが一番怖いな(笑)。

>maillot vert
そんな素敵な風習?があるのは知らなかった〜。ツール○○とかジロデ○○は、いつも観光番組のように眺めていたんで。

「シュート撃て!!」をそのまんま間に受けて、ヘナチョコシュート打つような"プロ"はいないと思いますよ。また、そんなんで惑うようなメンタリティーしか持ち合わせていない監督(選手も)だったら、そっちのほうが心配。「っるせえな〜」って普通に流すか、檄だと受け取ってガンバるかじゃないかしら。
我が家では、試合前のSHート練習中こそ、「シュート撃て!!」コールやるべきじゃないかって言ってるくらい(笑)

ツール・ド・フランスのように何日間もかけてやる「ステージ・レース」というヤツは、その時点での各部門(総合タイムとか、ポイントとか)のトップが固有の色のジャージを着るのです。

ツール・ド・フランスだと総合トップがマイヨ・ジョーヌ(黄色)、ポイントトップがマイヨ・ヴェール(緑)、山岳ポイントトップがマイヨ・ブラン・ポワ・ルージュ(白地に赤の水玉)、新人賞がマイヨ・ブラン(白)。

なので、コース脇の農家の人は飼っている牛とかに4賞それぞれの色の服を着せて、テレビ映りを狙って楽しんだりしています。

ちなみに、ジロ・デ・イタリアの場合はスポンサーがガゼッタ・デロ・スポルトなので、総合トップのジャージーはピンク。さすがイタリア(笑)。


>また、そんなんで惑うようなメンタリティーしか持ち合わせていない監督(選手も)
>だったら、そっちのほうが心配。
いや、まさにそこが心配だったりして(笑)。
「ファンなんてそんなもん」くらいに思ってたくましくプロってくれればそれでいいんですけどね。東京というチームは妙にファンに気をつかいすぎるところがあるような気がするので。

試合終了後の「シュート打て」コールを聞いて、友人と失笑してました。
シュートを打てるような形ができていなかったのが問題だろうと。
「ゴール裏、ブーイングは大きかったけど、
声は出てなかったね。横浜のほうが声大きかったよ」今回誘った友人の弁です。

今回サッカー観戦は初めての人も含めて総勢9名で観たんです。
普段スタジアムに来ない人を誘った試合に限ってこういう試合ですからね、去年もファイヤーワークスナイトに友人を多数誘って、酷い試合だったのを思い出しました。

確かに、東京って昔から、大勢お客さんが入ったりイベントが盛り上がったりした試合ではあまり勝ったことがないような……(笑)。

ピンクも驚いたが、白地に赤の水玉!!!!
あ、確かに牛が水玉着てる(その時はペイントだった)の見ました。この決まりはおもしろいですね。サッカーも前試合ゴールした選手も水玉とかにしたりして。青赤水玉(笑)

シュートを打てるような形ができていなかったのが問題だと、私もわかりました。たぶん私のとなりの子供たちも。
ってことは、我々のような"超ドシロート"がわかるんだから、心配なくプロである選手や監督もわかるわけだ。ってことは、あのコールでプレッシャー感じるのは中盤なわけだ。

「すなわちコールは成功してるわけだ(笑)」

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