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2008年05月23日

●PK戦ってのは不思議なものだね (07-08欧州CL決勝)

昨日の早朝は早起きしてe2byスカパー!で欧州チャンピオンズリーグ決勝。マンチェスターU 1-1(ex0-0 PK6-5) チェルシー。今シーズンのプレミアシップでもしのぎを削ったイングランド2強が、欧州の頂点を決める舞台で再び対決。試合は前半と後半がそれぞれのチームの時間帯となる展開から90分では勝負がつかず、延長、そしてPK戦へ。最後は、いかにも大舞台らしく「悲劇のヒーロー」が生まれる幕切れとなったのであった。


延長戦も終わりに近づいた頃、両チームが最後の交代枠を使って「PK戦要員」を準備しているのを眺めながら、なんとなく「腹の底では双方とも「失敗した」と思っているんだろうな……」などと考えていた。

前半を支配していたマンチェスターUにしてみれば、早々にケリをつけるべき試合だった。広く速いパスワークで揺さぶって主導権をとり、ロナウドのヘッドで先制、さらに2つの決定機が。キャリックのシュートがチェフを抜いていれば、あるいはテベスがルーニーの絶妙クロスに追いついていれば……しかしいずれも決められず、逆に終了間際の「いい時間帯」に一瞬の隙を突かれて同点弾を許す。「しまった」というのが本音だったろう。

その後ペースを握ったチェルシーにとっても、90分で決着をつけなければならないゲームだった。後半気落ちと疲労でユナイテッドの動きが落ちるや、強靱なフィジカルとリーグの雪辱を期す気持ちを前面に出して圧倒。勝ち越し点は時間の問題にも思えた。だが、ドログバやランパードのシュートはポストに弾かれ、度重なるCKのチャンスもものにできず。延長に入るとユナイテッドの中盤守備強化で試合は膠着してしまった。さらにはドログバの退場……。

実況の倉敷アナが「余計ですね」と繰り返していた雨天の悪コンディション、おまけにどちらのチームにとっても不本意であったろうPK戦。スカッとした点の奪い合いを期待した向きにしてみれば、いささか残念な試合展開であったかもしれない(計2点は少ないわな)。でも、足をつらせる選手の異常な多さが示すように両チームが死力を尽くした熱戦であったことは間違いないし、何より決着のつき方はこの上なくドラマティックであったのだ。


サッカーを見慣れている人ならば経験的に知っているとおり、その試合中に活躍した選手に限ってPK戦では外してしまう、というのは非常にありがちな話である(下記注参照)。案の定、この日まず外したのは先制ゴールを決めたロナウドだった。他の選手が濡れたピッチも考慮して小細工なしでバンバン蹴り込むのを横目に、1人GKのタイミングを外そうとして失敗。この自惚れ具合がさすが「ヤキソバ君」というか(笑)。

で、5人目、「決めればチェルシー勝ち」という場面でのキッカーはジョン・テリー。人選的には文句なし、わざわざキャプテンマークを巻き直すあたりも最高に「絵になる」感じだったのだが……軸足を滑らせながらのキックはあえなくポスト直撃。考えてみれば、延長戦で超決定的なギグスのシュートを寸前でクリアしたのがテリーだったんだよね。勝てば間違いなく殊勲者だった。ホント、どうしてこういう事になってしまうのか。つくづくPK戦というのは不思議だ。

結局、チェルシー7人目アネルカのキックをファン・デル・サール(この時だけ両手を叩いて気合いを入れ直してたね)が横っ跳びで止めて、ユナイテッドの優勝が決まった。もちろんテリーは顔を伏せて泣き崩れ、救われたロナウドは(さっきまでべそかきそうになってたくせに(笑))満面の笑みを浮かべて……。

ただ、これは確かにチェルシーにとっては大きな悲劇であって僕も思わずウルッときたのだけれど、一方で解説の宮内さんが涙混じりの声で語った「僕は、これで良かったと思ってるんですよ」という言葉に共感を覚えた、という事も書いておきたい。つまり、テリーは誰もが認めるチェルシーの「主将」であるのだから、その彼が外したのならばもう仕方がないではないか、他の選手で終わるずっといい、と。確かにそうだ、その通りだと思った。

実は、ユナイテッドの6人目としてギグスが出てきた時にも同じような事を考えたのある。「もしユナイテッドが負けるとしたら、ここでギグスが外して終わるのがいいだろう」と。言い換えれば、ロナウドは凄い選手かもしれないけれど、まだまだそういう部分を背負うに足る存在ではないのかな、ということ。そうした意味でユナイテッドにとって今後長らく「頼りになる選手」というのは、おそらくロナウドではなくてルーニーなのかな、とも思うのである。

とにかく、ジョン・テリーよ泣くな。君の若さなら、きっとまた次回があるさ。


試合結果についてはちょっと複雑な気持ち。元々僕はマンチェスターUをひいきしているのだけれど、ジョゼさんがいた頃はチェルシーを応援していたし、今でもチェルシーは魅力的な選手を揃えた良いチームだと思う。ただ、今季についてはどうしてもジョゼさん絡みのゴタゴタの印象が強くて……ユナイテッドが勝って良かったのかな、と。でも、テリーやランちゃんにも勝たせてあげたかったし……ホント複雑な心境なんだよね。チェルシーも「また来年」かな。
 
 
[注]
「試合中活躍した選手がPK戦で外す」パターンでFC東京ファンにとって忘れられないのは、03年天皇杯4回戦ヴィッセル神戸戦@丸亀での阿部吉朗。試合中2得点の大活躍で0-2の劣勢から引き分けまで持ち込む立役者となったのだけれど、準々決勝進出を決めるPK戦ではGK掛川にストップされてしまいそのままチームも敗退。試合後、その試合が東京での最後の出場となったアマラオに慰められながら涙ぐむ姿が忘れられない。

その他、たとえばW杯におけるスターの事例だけでも、86年メキシコ大会のフランス×ブラジル戦でのプラティニ(あれはチームとしては勝ったのか)とか、94年アメリカ大会の決勝ブラジル×イタリア戦でのバッジオとか。なんだかんだいって「絵になるPK戦」ってのはけっこう多いんだよね。本来の「サッカー」からすれば邪道かもしれないし、個人的にはどちらもかわいそうで観てられないんだけど(オシム爺さんか俺は)、まあ劇的なのは確かだ。
 

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