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2008年04月13日

●こうして歴史は創られていく (FC東京×東京ヴェルディ)


昨日の夕方は、味スタでJ1第6節。東京ヴェルディ 1-2 FC東京。待ちに待った、というわけでは個人的にはなかったのだけれど(笑)、3年ぶりの「東京ダービー」。FC東京の営業的にはほとんど無視された状態ながら、なんだかんだでダービーマッチらしい熱い雰囲気と内容の試合に。結果は、フッキの異次元弾によりリードを許したものの、大竹投入をきっかけとした後半の攻勢で逆転勝利。双方のファンの記憶に決して消えない痕跡を残しそうな90分となった。


今回はヴェルディのホームゲームだったわけだが、試合前には過去の対戦時のゴールシーンをつなげたVTRを流して「FC東京さん悪いけど今日は勝ちます。」のテロップを出すなど、懸命に盛り上げようとしている様子がうかがえた。こちらはすっかり「多摩川クラシコ」に注力してつれないのに、片思いぶりが切ないというか……(笑)。あと、試合前のゲストはボクシングの坂田選手と立川市長で、その意味不明ぶりも微妙に笑えた。

 

「まず入りは慎重に」ということなのか、序盤の東京はカボレ・赤嶺の2トップをシンプルに狙うプレーが多かった。対するヴェルディは中盤以下はそれなりに左右へ回すものの、攻撃局面に入るとブラジル人アタッカーの個人技を頼みとするサッカー。2分、左サイドのスローインからカボレのポスト、後ろから走り込んだ羽生がシュートするも枠外。4分、フッキががFKで40m近い距離を直接狙うが壁直撃。6分、CKにニアで合わせた佐原がゲットしたか……という場面はファウルの判定。

やはりフッキのパワーとスピードは侮りがたく、東京は押し込まれる。多用したロングボールもアタッカーとの息が合わずにはね返されることが多く、DFラインを上げられない。しかし自陣に敷いた厚い守備網は適切に機能し、藤山・佐原が軽くヒヤヒヤさせながらもなかなかシュートを撃たせない。13分には自陣からのFK、競り合う選手たちの間隙を縫って羽生が飛び出し、土肥と交錯しながらシュートするが惜しくも外れ。23分、ボックス正面のFKをフッキが狙うがコースを読み切った塩田がキャッチ。

25分を過ぎたあたりからヴェルディの攻撃が息切れし始め、東京はラインを上げて中盤でパスをつなぎ始める。後追い守備ばかりが目立っていた梶山も前に出てボールをさばくよう姿が目立つように。26分、左に流れた赤嶺のクロスがファーに流れたところ、梶山がボレーで狙うがDFブロック。32分、左タッチ際で福西が今野の顔面にパンチをかまし、興奮した両チームがもみ合いのような形に。おお、ダービーだ(笑)。36分、ヴェルディのCK、土屋に合いかけたボールを塩田がナイスパンチ。38分にはCKくずれから梶山が巧みなボールさばきでDFをかわしてループ気味に狙うがバーの上。

ところが40分、徳永がオーバーラップをかけてさあチャンス、というところでカボレと接触した那須が倒れてゲームが止まり、勢いがせかれた形に。そして43分、右で仕掛けるフッキを藤山がボックスのギリギリ外で倒してFK、ディエゴのチョン蹴りからフッキが豪快に逆サイドへたたき込んでヴェルディ先制。流れは確実にこちらだっただけに、悔やまれる「エアポケットの時間」だった。ロスタイムにはDFを振り切った徳永のクロスに赤嶺が飛び込むもわずかに合わず、0-1のままハーフタイムへ。


後半の立ち上がりもせめぎ合いが続いたが、55分を過ぎた頃からボールの動きが加速して攻め合いに。ここではヴェルディアタッカーの個人技が光る。58分、目まぐるしい攻防で東京の陣形が乱れたところ、左サイドでフリーになったフッキへパスが渡り、シュートは横っ跳びの塩田の指先を抜けたものの、右ポストに当たって命拾い。60分には藤山を背負ったフッキがオーバーヘッドのパス、走り込むディエゴが塩田と一対一になるがシュートは正面。この2本をしのげたのは結果的に大きかった。

ここで城福監督が動く。浅利に代えて大竹投入。「切り札」の登場に、大いに沸く東京側スタンド。大竹は期待に応え、俊敏な動きと献身的なチェイスも含めた「前へ出る意思」でチームの攻撃を加速させていく。いきなり62分、大竹の持ち上がりからカボレが中央へ折り返したボールをボックス外の赤嶺が丁寧に足で落とし、走り込む羽生が右足を振り抜く。強烈なドライブのかかったボールは跳び上がる土肥の指先を抜けてゴール右上に吸い込まれた。まさに目の覚めるようなスーパーシュート!!

これで東京が勢いに乗らないわけがない。65分、大竹からカボレへブレーキのかかったスルーパス、土屋がかろうじてカットするも、こぼれ球に土肥が追いつけずあわやオウンゴール。その直後には梶山が意表を突くロングシュート、土肥が横っ跳びで押さえる。もう押せ押せドンドン、ゴール裏も「ヴェルディだ~けに~は~ま~け~ら~れな~い!」と煽りまくる。対するヴェルディはアタッカーの足が止まり、ファウルをもらいに行くプレーが増えていった。よしよし。

67分、右から仕掛けるカボレが重厚なドリブルでDF2人を抜いてラストパスを入れるが、赤嶺が空振り。さらにこぼれ球を拾った大竹から中央の梶山へ、梶山はシュートと見せかけてDFを引きつけてからもう一度大竹へ戻す。「すわ、大竹の初ゴールか!」と思えた場面だったが大竹がトラップをミスしてしまい、さらに外側にいた今野がシュートするもDFブロック。68分、フッキが強引なドリブルから放ったグラウンダーのミドルシュートは塩田ががっちりキャッチ。

69分、羽生OUT金沢IN。羽生を外すのには正直首を捻ったが(足が攣ったらしい)、この交代は結果的に吉だったかもしれない。金沢は急な出場にも慌てることなく中盤の攻守をつないで最後まで主導権をヴェルディに渡すことがなかった。それでもフッキ(だけ)は怖い。73分、右から切れ込んで放ったミドルシュートがゴール右隅を襲い、塩田が横っ跳びできわどくセーブ。75分、カウンターからカボレが豪快に持ち上がり、フリーになっていた赤嶺にラストパスも、ループ気味のシュートは枠外。

なおも東京は攻める。77分、ボックス外での競り合いで大竹がうまくボールを拾い、赤嶺が強烈なミドルシュート、土肥がはじいたボールがカボレの前に落ちるがオフサイド。ラスト10分に入るとさすがに両チームとも疲れが目立ち、粗い蹴り合いの場面も。ヴェルディは84分に平本投入。嫌なタイプの選手の登場、その前には柴崎のクロスがサイドネットに突き刺さったこともあり、「引き分けでも仕方ないか」との思いが頭をよぎる。87分にはCKから佐原がどんピシャのヘッダーを撃つが、ポスト左に外れ。

だが、最後まであきらめないのが東京。ロスタイム、左サイドのパス交換から梶山が直線的なクロス、DFの間に入った今野が頭で落とし、走り込む長友が胸トラップから足を伸ばしてシュート、土肥の脇を抜けたボールはふわりとゴールの枠内へ。うおおおおおおお、やった!!現地ではオフサイドにも見えたし、実際には競り合うDFの足に当たったオウンゴールだったようだが、そんなことは関係ない。ゴール裏へ駆け寄る長友を怒濤の歓声が包んだ。その後は「オーレ!」のかけ声の中、東京がきっちりキープして試合終了の笛。よし!



正直なところ、翌週に「多摩川クラシコ」を控えていることもあり、今回の「東京ダービー」はさほど盛り上がらないのではないかと思っていた。実際、観客数はわずか2万2千余り。ところが、いざ試合が始まってみるとやはりダービーはダービー。スタンドはいつも以上に熱い雰囲気だった。もちろんそれはただの「看板」によるものではなく、同じ都市に本拠を置く者同士の対抗意識、福西や土肥といった元東京組の思いといったものが相まって熱い試合内容となったからこそである。

また、これも正直に書いてしまうと、今回は勝つのは厳しいと考えていた。今季ここまでの戦いを見る限り東京の組織守備は発展途上であり、フッキやディエゴの「個の力」を抑えきれないのではないか、と。しかし、前半ディフェンシブな布陣と戦法で強力アタッカーを封じ込め、後半にエッジの立った選手の投入により攻撃スイッチを入れて逆転勝利。応援するチームが、いい内容で、劇的な展開で、熱戦をものにする。ファンとしてこれ以上の喜びはない。

あの羽生までもがガンガン蹴っていた事から判断するに、やはり前半の前半の「点が入れば儲けもの」とでも言いたげなサッカーは意図的な作戦だったのだろう。大竹の投入のタイミングといい、運もあったにせよ(ディエゴのシュートが決まっていれば完敗していたかもしれないから)、城福監督の采配は見事だった。そういう意味でも、この試合における最大の殊勲者は、熱狂的な雰囲気と「土肥相手」の状況にも我を失わず、冷静に90分ノーミスで試合をまとめた塩田ではないだろうか。

そして、羽生!!ここまでの5試合も無尽蔵な運動量と鋭く工夫ある動き出しで新生東京の原動力となってきた彼だが、一方では決定的な局面ではちょっと物足りなく感じる事もあった。だが、この試合の同点ゴールはまさに超ウルトラスーパーミラクルシュートとでも呼びたくなるもので、驚くと同時に「これで東京ファンも皆彼の存在意義を認めるようになるだろう」と嬉しくなってしまった。試合後に長友(もちろん彼も殊勲者だ!)と2人でやったぎこちない「シャー」は可愛かったなあ(笑)。

個人的には、リーグ戦におけるFC東京としては、2003年11月22日以来の名勝負であった。ヴェルディに何か恨みがあるわけではないし、営業的見地から無理に「ダービー」の看板をかけるようなことはしてほしくないのだけれど、でもこうして色々な思いの詰まった印象的な戦いを繰り返していくことで、結果として本拠地を同じくする2チームの対戦が本当に特別な戦い」になっていくのであれば、それはそれで楽しいことではある。「多摩川クラシコ」だって、「第13回」だから許せるんだよ。

いや、しかし、サッカーって本当に面白いよね。
 
 
 
[追記1]
もしかしたら気づいた人もいるかもしれませんが、昨日発売「J’sサッカー」のダービー特集内(23ページ)に私のコメントが載ってます。コンコース上で記者の方にいきなり「東京ダービーへの思いを語ってください」みたいな事を聞かれたので、なんか頭の悪い子みたいな内容になってますが、ホントに頭が悪いので仕方がないです(笑)。本当に言いたかったのは最後の一文。「3年前と違う(あるいは同じ)ボクたちアナタたちの関係」が始まるね、と。

[追記2]
試合中、羽生のゴールが決まった時は「うおっしゃあああああああ!!」と絶叫、決勝点が入った時には「やったあぁああああああああああ!!」とガッツポーズし、どちらも頭がクラッとして「あ、俺壊れちゃうかも」と思うくらい興奮したのですが、その興奮を引きづった試合後の飲み会では1リットルジョッキでビールをぐびぐびと飲みまくり、本当に壊れてしまいましたとさ(笑)。いとうさんの本(なんというグッドタイミングだ(笑))でも読んで出直そう……。
 

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コメント

ゴール裏で観戦していましたが、決勝点はどうやって入ったかは分かりませんでした。クロスの折り返しに飛び込んだ東京の選手の肩にでも当たって、入ったのかなと思ってました。

帰宅後、テレビで映像を見ると、長友と土肥が交錯した直後に決勝点を確信して喜んで走り出す今野と、冷静に線審の判定を確認する大竹の対比が面白かったです。

あの場面でも冷静な大竹は、技術だけでなくハートも大物です。

感じたことをいくつか。
・いつの間にか大竹のチームですね(笑)
・前半の戦いっぷりはおおいに不満です。相手のプレスになす術無く馬鹿ロングボールって、いつから原サッカーに巻き戻したのでしょう!?
・横浜戦の先発といい、采配に疑問を感じることしばしばで、やや不安です。。。(大竹が使えることがわかったんで、あの男を使い続ける必要もないのでは)
・今日の試合で前々節まで失点がおおかった理由がはっきりしましたね。(フジを使わないかったから ^_^)

>ゴール裏で観戦していましたが、決勝点はどうやって入ったかは分かりませんでした。
そういう人はけっこう多いみたいですね。敵味方が絡んで見づらかったというのと、あとやっぱり興奮しすぎて記憶の一部がぶっ飛んだりとか(笑)。私には長友が胸で落としてから当たり損ないのキックで入れたように見えました。

>冷静に線審の判定を確認する大竹
ああ、そうなんですか!いや、ホント大物だな……。

>いつの間にか大竹のチームですね(笑)
まったくで(笑)。

>前半の戦いっぷりはおおいに不満です。
おっしゃるとおり、「ムービングはどこ行っちゃったの?」と言いたくなるような前半の前半ではありました。
ただ、試合後のコメントを見ると大竹の投入時期を見計らって勝負をかけていこうという意図はあったようですし、おそらくまだ自分たちのサッカーをそれほど多くの時間帯ではできないという認識の下にああいう作戦に出たのではないかな、と。
まあ、ロングボールならロングボールで、もうちょっとアタッカーと息を合わせてくれよ、とは思いましたけど。

私は、今のところ城福さんはよく考えて采配してくれているな、と思っています。不安なのは、実績がないからある程度我慢しないと仕方がないかな、みたいな。

>試合前には過去の対戦時のゴールシーンをつなげたVTR

切ないことにゴール割られてるの全部土肥ちゃんじゃん。今や自チームのキーパー凹ませてどうすんのとか思って見てたw

>色々な思いの詰まった印象的な戦いを

振り返ってみるとインパクトのある戦いって多いよねダービーって。

東京スタジアム杮落としゲームやら、アマホームラストダンスやら、ナビスコ準決勝Vゴールゲームやら、あの事件やら(苦笑)、ササが東京を救い緑を奈落の底に蹴落としたゲームやらね。

それと梶山とか大竹みたいな中学時代から緑とライバル関係にある選手も増えてきたし、これから益々楽しみなゲームになるね。


>切ないことにゴール割られてるの全部土肥ちゃんじゃん
そうなんだよな。「これは何かのブラックユーモアか?」という感じだった(笑)。まあ、実際試合中も(佐原の幻のゴールも入れると)3回にわたってそういうシーンがあったわけだが。

>振り返ってみるとインパクトのある戦いって多いよねダービーって
そう。なんだかんだで盛り上がるのよ。国立の試合では梶山の超音速シュートみたいな異次元プレーも飛び出したし。
繰り返しになるけど、「ダービー」という看板ばかり強調されるのはいかがなものかとは思いつつも、せっかく同じ都市をホームにしているライバルがいる、という(ある意味恵まれた)立場にいるのだから、楽しまなきゃソンソン、ってな感じなのかな、やっぱり。

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