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2008年04月15日

●パーフェクト・レース ('08ツール・デ・フランドル、'08パリ~ルーベ)

先週今週と、日曜の夜は、JSPORTSでサイクルロードレース「北のクラシック」2連戦をまったり観戦。最近は色々と生放送されるようになったワンデーレースの中でも、この2つ、すなわちツール・デ・フランドルとパリ~ルーベはダントツのお気に入りである。ステータスの高さゆえに選手の質やモチベーションが抜群というものあるが、やはり笑っちゃうほど過酷なコース設定が面白くてたまらないのだ(走っている方は別の意味でたまらないだろうが(笑))。


先週の日曜日はツール・デ・フランドル。相変わらずの石畳急坂に加え、小雨や小雪が降ったかと思えば数分後には強い日差しが降り注ぐ天候の目まぐるしさ。展開的には、ど本命のクイックステップが盤石のレース運びを見せた。アシスト(しかしベルギーチャンプ)のデヴォルデルを常に前へ先行させ、ボーネンは好位で力を温存しつつ、激坂区間になると脚力にものを言わせてジャンプアップ、の繰り返し。ボーネンは久しぶりに王者のオーラを漂わせていた。

で、結果はやはりクイックステップの完勝。ただし、優勝はボーネンではなかった。クイックステップはボーネンへのマークを利用する作戦を採用、終盤の勝負所の手前でデヴォルデルがアタックをかけ、ボーネンは追走集団にとどまって睨みをきかす。それまでにもさんざん仕事をしていたはずのデヴォルデルは驚異的な粘りを発揮し、フレチャらの追撃を振り切って見事逃げ切り。後方でそれを見届けたボーネンの派手なガッツポーズが印象的だった。

まあ、作戦としては完璧だったし、デヴォルデルの持久力はビッグレースの優勝に相応しいスーパーなものであった。ただ、ボーネンファンとしては彼ほどの男が結果的に「囮」の役回りになってしまったのはいささか残念でもあったし、最後のガッツポーズもちょっとわざとらしいようにも見え、本当は彼自身も悔しい気持ちを抱えていたのではないかな、と思う。どうも、05・06年の勝利以来、「中心にはいるけど頂点に立てず」が続くボーネンなのである。うーむ。


そして翌週のパリ~ルーベ。今度は粗い凸凹石畳(パヴェ)が断続的に続く難コースで、晴れはしたものの乾いた砂と強い風が選手たちを痛めつけていった。最大の難所「アーレンベルグ」なんて、チームカーでさえ走行困難な様子で、集団が通ると外れたボトルが跳ねまくっているのがテレビ画面にもはっきり映っていた。栗村さんの言い方じゃないが、ベルギー系の人たちってのはホントに「どM」(主催者は「どS」か(笑))なのね。人の走る路じゃないだろ、あれ。

そんな難所をいくつも通り、落車やメカニックトラブルも頻発しているうちに集団はあれよあれよと減っていき、気がつけば先頭グループはわずか8人に。クイックステップはボーネン・デヴォルデルの最強コンビ、CSCもカンチェラーラ・オグレディの2連覇コンビを送り込むことに成功した。先週と同じようにデヴォルデルが先へ先へと仕掛け、しかし今度はさすがにオグレディが追走して首に鈴をつける。と、残り30km余りでボーネンがアタックをかける。

これに反応したのが一昨年の覇者カンチェラーラと、昨年のツール・デ・フランドル勝者のバッラン。この3人のローテーションはさすがに強力で、みるみるうちに後方集団は引き離されていく。いや~、なんつーか、今度こそ展開の綾は関係ない「役者が揃った」状態の力勝負。200人以上の選手が出場していたはずなのに、気がつけば(おそらくは)実力上位3人が残っていたというのは、ある意味不思議にも思えるし、ある意味順当とも言えるかもしれない。

互いに牽制のアタックをかけながら決して離れず、熱狂した観客に囲まれたパヴェを高速で駆け抜けていく3人。格好いい……。つい3年前に自転車レースを見始めて、ランスとウルリッヒの死闘も知らない僕としては、今までで一番シビれた光景かもしれない。一度引き離してしまえば独走力のあるカンチェラーラが有利に思えたのだが、しかしボーネンも決してマークの手をゆるめない。解説栗村さんの言うとおり「何も起こらないけど、手に汗握る」緊迫の時が続く。

結局、勝負はゴール地点のヴェロドロームまで持ち込まれた。多分、カンチェラーラもバッランも、先に仕掛けないと勝てないことはわかっていたのだろう。でも、疲労の極限状態で「世界最強スプリンターの1人」ボーネンに後ろに付かれてはもはやどうしようもなかった。最後はコーナーでまくりに出たボーネンが一気に2人を突き放して快勝。ボーネンがギアをかけた瞬間に勝負あり、という感じだった。表彰台で祝福し合う笑顔を見る限り、3人とも全力を尽くした結果だったようだ。すがすがしいラストシーン。


この2レース、クイックステップとしてはまさに盤石のレース運びであり、完璧な結果だった。エースへの厳しいマークと展開を利用してアシストに逃げ切らせたツール・デ・フランドル。逆にアシストの揺さぶりからエースの個人能力を最大限生かす展開に持ち込んで力で押し切ったパリ~ルーベ。ベッティーニ不在でもこれだけ強いのだから……もう他のチームとしては「お手上げ」状態だろうね。メンツの層の厚さで対抗できるのはCSCくらいだろうか?

そして、僕としては、やはりボーネンが勝つことができたのが嬉しかった。06年にアルカンシェルを着てツール・デ・フランドルを制して以降は、仕方ないこととはいえ過剰な注目と他チームのマークの中でなかなか勝てず、すっきりしない戦いが続いていた。昨年のツールでマイヨ・ヴェールを獲った時も辛そうだったし。でも、今回は本当に文句なし。久しぶりに曇りのない、彼本来の魅力的な笑顔を見ることができたような気がする。よかったね、トム君。

んで、気がつけばもう4月も半ば。来週はアムステル・ゴールドレースがあって、リエージュ~バストーニュ~リエージュがあって、5月に入ればもうジロ・デ・イタリアか。サイクルロードレースファンにも休みはないのね(笑)。
 

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コメント

お久しぶりです。
というわけで、毎度忙しい季節となってまいりました。

ツール・デ・フランドルでのボーネン君ですが、ガッツポーズがあったとはいえ、昨年ツールでアシストのステーグマンがそのまま逃げ切っちゃった時と同じ心情じゃないでしょうかね。

あと【北の地獄】は天気がよくて残念でした(笑)いつかハイビジョンでドロドロの選手達を見てみたいものです。

しかし、サイクルロードレースの生中継を日本で見ると、ほんといい感じの時間帯(日曜夜)ですね。恵まれてます。

>coldroomさん
どうも、ご無沙汰しております。

>毎度忙しい季節となってまいりました。
そうですねー。実はここから秋まで、自転車界はまとまった休みがなさそうですものね。ファンとしても、なかなか困ったもんです(笑)。

>昨年ツールでアシストのステーグマンがそのまま逃げ切っちゃった時
ああ、ありましたねえ。でも、今回はもっと複雑な心境だったんじゃないかな。チームの作戦的には大当たりだったので、「大将」としても下手な振る舞いはできないし……で、あの派手なガッツポーズになったのではないかと。ボーネン、基本的にはいいヤツそうなので、演技とまでは言いませんが。

>天気がよくて残念でした
いや、なんか、選手たちにとっては晴れててもそれはそれで地獄だったみたいですけど(笑)。来る選手来る選手砂だらけ傷だらけ血だらけ、という写真をネットで見ました。

今後のワンデーも、ホント楽しみですな。

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