« 「展開、接近、連続」と「接近、展開、連続」 | メイン | 勝負とはなんと残酷で、切なくて、美しいのだろう ('08ラグビーMS杯準決勝) »

2008年02月11日

●小平で、活気を味わってきたぞい


ふと思い立って、FC東京の練習見学に出かけてみた。西武線の急行で新宿から20分余りの小平駅、さらに20分ほど歩いたところにある小平グラウンドへ。ピッチの脇には、白くまぶしい雪が雪かきされた状態でたくさん残っていた。

僕にとっては02年7月18日以来の見学である。あの時は平日だったので見学者もまばらで、12人もの選手のサインをもらったり、原さんと写真をとってもらったり、ストレッチしているジャーンと目が合って笑い合ったりしたものだった。そういや、あの時サインをもらった人の中で今年も在籍しているのは藤山と石川だけか……サッカーの世界で「5年半」は長いんだねえ。前はなかった人工芝のグラウンドができており、ユースの子たちはそちらで練習していたし。

今日はグアム・宮崎キャンプの合間、しかも休日ということで、スタンドもネット前もファンでいっぱいだった。おそらく常連さんも多いのだろう、じっと身じろぎもせずに眺めていて、時々出る好プレーや珍プレーの時に「オオッ」とわずかな歓声が上がって……ちょっと秩父宮みたいな感じ(笑)。見学に来るくらいだから当然前向きな人が多いんだろうけど、静かな中にも確かに明るい期待みたいなものが感じられて、ちょっと一安心。

 

到着した時には、既に練習開始から30分ほどが経過。数人ずつの3グループとフリーマン(ブルーノ)に分かれ、色の違うビブスを着けてアタック&ディフェンスが行われていた。次に人数を増やしてフリーマンなしの3グループになって、最後は12人同士の2チームで実戦形式、という流れ。ルールの変化も選手の動きも目まぐるしく、観客もついていくのが大変である。

何しろ5年ぶりなのでどこが変わったとかは何とも言えないのだが、城福監督の声が評判通り大音量で響き渡っているのは確認できた。プレーの切れ目だけでなく、ボールが動いている間も大きな声で指示を出しっぱなし。ユース代表監督時代の大熊さんのように「オーバーコーチング」の文字も頭に浮かんでしまうほどだが、それが城福スタイルということなんだろうし、今の東京の選手たちに「教え込む」ことは確かに山ほどあるはずなのだ。

印象的だったのは、「パス出したら動け!」系の指示の多さや、ビルドアップ局面での「作り直せ!大丈夫!慌てるな!」の連呼。あと、平山がDFを前にした場面で後ろにいた石川に「ナオどうする!」と呼びかけ、石川が外をオーバーラップしてDFを引っ張る(結果として平山のシュートコースが開いた)と「ナオ、サンキュー!」。いずれも、基本と言ってしまえばそれまでかもしれないけど、確かに近年の東京に欠けていた部分ではある。

梶山が持ち味のキープ力を発揮して、かつ迷いなくプレーしていた。今年は「柱」として堂々とやってくれそうな気配である。もちろん今野と羽生も、ね。
 
 

全体練習が終わると、奥原コーチを中心に代表組抜きでコンビネーション練習。浅利・金沢ら後方組と川口・石川らのアタッカー組、さらに祐介・赤嶺のFW組に分かれ、後方組の「鳥かご」から飛び出すアタッカーへタイミングを合わせたフィード、そしてクロスをFWに合わせる、という流れ。ここでも精度はまだまだで、「あと1本」からが長かった。特に石川はクロスが……。

まあ、プレーの方は今後に期待するとして、個人的に「オオッ!」とキたのは奥原コーチの指導する姿である。この人、僕はちょっとの間しかプレーを見てないけど、本当に上手い選手だったから。「あの奥原」が、しかもまだ現役の藤山や浅利と一緒のピッチに帰ってきたという。嬉しいものだ。あと、浅利と藤山が2ショットで引き上げてくる光景にもオヤジファンは感激(笑)。

もちろん、この練習の間も監督からは「いいボール!」「もっと外へ!」と声が飛び続けていた。
 
 

で、そろそろサインや写真を求めるファンがミックスゾーンに移動し始めた頃、若手を中心にシュート練習が始まった。近藤祐介が凄い。神戸での2年間を経てさらにパワーアップしたような印象で、弾丸のような強シュートをバシバシ枠に飛ばしていた。バーに当たった時は壊れるんじゃないかと思ったよ。問題は、DFがいる状態でこれができるか、だが(笑)。一方赤嶺は怪我の影響か動きにしなやかさを欠き、ふかしてばかりだった。うーむ。

てな感じで「オーッ」と面白がって観ていたら、背後のミックスゾーンが人だかりで凄いことになっていた。特に今野の時は「あっ、今ちゃんだ!」という声とともに子供からカップルからギャルからオタクからが殺到し、チームの広報担当が「サインは1人1枚でお願いします!」と叫んでたけど、それでも「いつになったら帰れるんだろう」と心配になるほど。こういう時、丁寧に対応してくれる選手たちにはホント頭が下がる思いである。
 
 
全体としては、メニューの面白さに加え、城福さんの熱さ、それに頑張ってついていこうという選手の姿勢が活気を生んでおり、ファン的には「いいものを見せてもらった」という感じであった。ただ、一方で、これまでにない流動的な動きや多様な選択肢からの判断に選手が戸惑う場面も多く、あと1ヶ月ほどでどこまで仕上がるか、という点からするといささか心許なくも感じた。今年は北京五輪が終わる頃からが本当の勝負になるのかもしれないね。

ともかく、城福監督は本当に元気な人だった。あんなに叫び続けて1年もつのかいな、と思っちゃうくらい。今度見学に行くときには、差し入れとしてのど飴でも持っていこうかな(笑)。
 

[追記] 
実にラブリーだったという昨日の筑波大との練習試合については、こちらコチラでどうぞ。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2356

コメント

リンクありがとうございます。

>これまでにない流動的な動きや多様な選択肢からの判断に選手が戸惑う場面も多く、あと1ヶ月ほどでどこまで仕上がるか

なるほど。今日の小平で感じた(けど、言葉に出来なかった)違和感です。

まだ早いかもしれませんが、エメルソンの第一印象はいかがでしたか?

>fct-fanさん
どうもどうも。

まあ、チームが変わろうとしている時期なので、選手の動きや反応にギクシャクした部分があったり、違和感を感じたりする部分はある程度仕方がないんですけどね。今年は五輪&W杯予選がありますし、「馴染んでいく」速度がちょっと心配ではあります。

エメルソンは……まだちょっとよくわからないですね。今日は梶山や浅利、あと藤山がとても良く見えたので、そっちに目を奪われました(笑)。

こんにちは。いつも楽しく読ませていただいております。

おっしゃる通り、開幕までに間に合うかが心配ですね。
あと、2~3ヶ月というオーダーで、各選手の戦術眼と判断力が向上したとして、怪我や疲労によってmoving footballの理想の体現が難しいときに、ぐらっといかないかですね。悪いときに悪いなりにまとめようとする「したたかさ」や「そつのなさ」のない、いい意味でも悪い意味でもまっすぐなチームなので(笑)。

ともあれ何にせよ、いい方向に変わればいいな、ということで。

>WINGSさん
こんにちは。心配ですよねえ。一昨年に一回やっちゃってるだけに、なおさら。

12月の途中まで公式戦をやって、1月半ばからの指導で3月頭に開幕、というスケジュールは、現場のコーチにしてみれば(特にチームを「作り直す」場合は)どう考えても時間が足りないと思うんですよね。

だから、ある程度シーズンを戦いながら……と腹をくくらなきゃいけないはずなんですが、そこで結果が出ないと、おっしゃる通りまたファンもチームも「ぐらっと」来たりしてね。

私たちは「チームというのは急ごしらえであればあるほど、崩れた時は脆い」という事をここ2~3年の東京の戦いぶりから学ばなければならないと思います。丸1年かかっても仕方ないから、ホントいい方向に変わっていければな、と。

同感です。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)