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2007年10月14日

●珍しくエルゴラの『東京書簡』がいいな、と思った件 (再掲)

先週末のエル・ゴラッソに掲載された後藤勝さんの連載コラム「東京書簡」が面白かった。今回のお題は「FC東京、期待外れの理由」。ヴェルディファンの海江田哲朗氏から「昨季とその前の年も、最後のほうで勝ちまくって帳尻を合わせるのは、ありゃなんですかね」と痛いツッコミ(笑)を入れられた東京ファンの後藤さんが、万年中位に沈み続けるその理由を探っている。


正直なところ、以前双葉社から出た『トーキョーワッショイ!』を除けば、僕は後藤さんの書く「FC東京モノ」についてはあまり好きになれなかった。ファンにありがちな愛情の方向のズレから生じる摩擦、と言ってしまえばそれまでなんだけど、どうも「東京らしさ」みたいな観念を強調しすぎるきらいがあるように思えるのだ。あと「原さんが作った土台をガーロが壊して倉又さんが直してくれた」みたいな論法も共感できないし。

今回のコラムにおいても、中位低迷の原因をことごとく裏目に出る強化方針や波のあるチーム体質に求めつつ、

ひたむきに走ってプレスをかけ、サイドを突破する「東京スタイル」は、見失ってはいけないこのクラブの基礎部分、こだわりだ。それは順位とは関係なしに大切にすべき宝物と言える。(中略)赤嶺のようにガス的な良さを持った新世代の選手を育てていかなくてはならない

と書いている。まあ、それは決して間違いではないと思うし、赤嶺に関しては全くその通りだと思うのだけれど、その「東京スタイル」への拘泥がある面では柔軟性の欠如につながっているんじゃないの……と心の中でツッコミを入れかけたところで、次の一文を見て「おっ」と思った。

しかしこのサッカーを太くするだけで、はたして優勝は可能なのだろうか。

そう、やはりそこが問題なのだ。それは、「いかにも東京らしい」派手な攻防で2-3と惜敗した先日の千葉戦について書かれた西部謙司さんのスポナビコラム「犬の生活 フットボールとファイトボール」の末尾に出てくる問題提起にも通じるものでもあるだろう。

一方、いつも“泣いてから強い”東京ですが、今後はそうなる前に何とかするのか、それとも最初から半泣きでいくのか。(中略)東京も岐路というか、もうひと山越えたいところではないでしょうか

という。けっこう痛いところを突いてくる人って、多いのね(笑)。


ここで後藤さんは、「選手個人としてもチームとしても上のレベルに持っていかないといけない。前線から守備をして思い切りよく飛び出していく。それだけではなく、もう一段階上。考えて、かつ勢いのあるサッカー」という石川のコメントを引きつつ、

相性のいいチームにはいいが、ダメな相手にはとことんダメ。それがFC東京の良くないところだ。外がダメなら中、中がダメなら外と、常に相手の逆をとる柔軟性が欲しいと石川は言う。

と書いている。これは、僕がここ2~3年の間持っている問題意識とピタリ一致するところだ。ジェフ戦の戦いぶりについて僕は「不器用なんだな」と書いた。「右でバランスをとれば左のチームにすくわれ、左に軌道修正すると右のチームにボカチンくらい」と。石川が言っているのも同じようなことではなかろうか。相手に応じて戦うための「引き出し」の少なさ。

東京の前からの攻撃的守備、サイドからの速い攻撃と一対一の強さはおおむね威力を発揮しており、昇格以降安定的に、特に03年以降は強力な武器として定着している。それは間違いのないところだ。だが、問題はそれができない時、通用しない場合にどうするか。これは、カップ戦だけではなくリーグ戦を勝つために何が必要か、という課題でもあるように僕には思える。

そこで後藤さんは言う。「それ(石川の言うところの「柔軟性」)を備えていたのはかつての磐田だ」と。そしてコーチにしろ選手にしろ、FC東京の主力には元ジュビロが多く含まれているではないか、と。示唆するのは「部活サッカー」と「ジュビロメソッド」の意識的なミックス、といったところか。これはもう大賛成。「俺たちは今こうだからずっとこうでいい」じゃなくて、やっぱり他人の良いところを取り入れてこその進化だと思うんだよね。

つーか、せっかちで即物的な僕としては、いっそ監督も磐田から呼んでくればいいじゃないか、と思ったりもするんだけど、柳下さんは磐田のヘッドコーチ(多分、次の監督かな)に復帰してしまったからなあ。となると山本昌邦さん?いや、山本さんが監督向きでなければ、いっそ桑原・山本のコンビをそのまま再現しちゃったらどうだろう……失礼、はしゃぎすぎました(笑)。


ともあれ、コラムの中では石川と福西のコメントしか紹介されてないけれども、選手をはじめとしてチーム関係者に「このままではいけない。変わらなきゃ」という意識があるとすれば歓迎すべきだし、今回の後藤さんのコラムがそう締めくくられているように、たとえ例年と同じく中位に沈むとしても(もうちょい順位は上がると思うけど)、この苦しい1年を無駄にせず、来年以降の飛躍のために「生かす」ことが何よりも大切だと思う。

まあ、そのためにも、リーグ戦残り6試合と天皇杯をしっかり頑張ることと、そして同時に、きちんと今年の諸々を反省すること。ただ単に同じようにダラダラ続けるだけでなく、間違いを繰り返さないという姿勢こそがポジティブに「今後につなげる」ことになるのではないかと思うのだ。少なくとも「終わりよければすべてよし」ではないだろう、と釘を刺しておきたい。今の雰囲気だと、前半戦を「なかったこと」にされそうな予感が(笑)。
 
 
[追記]
一度UPしたエントリーを誤って削除してしまったため、再度UPしました。アンテナ等で不都合がありましたら申し訳ありません。
 

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コメント

こんにちは、基本的に同意です、よく磐田の選手の試合後コメントで「今日は磐田の(パス)サッカーが出来なかった」ていうのが有りましたが彼らは「我慢」が出来たけど東京は「堪える事」が難しいって感じでしょうか?
柔軟さをどう作り出すか?現状は選手交代でしか変える術が無い気もします。
両コーチ陣の交流とか出来ない物でしょうかね?
しかし「泣いてから強い」は名言ですな(笑)

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