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2007年10月17日

●「奇跡」は果たして起こるのか ('07ラグビーW杯準決勝)

土・日の深夜にはラグビーフランスW杯の準決勝を観戦。前回のエントリーで僕は「アルゼンチン×フランスの決勝なんて素晴らしいと思う」なんて書いたけど、まあ世の中そうはうまく行かないもので、開幕戦に続くアルゼンチン×フランスの再戦は3位決定戦で実現することになったのだった。つまりは、W杯優勝経験のある南北の2チームが決勝進出、ということだ。


第1試合 イングランド 14-9 フランス

準々決勝ではNZ相手に99年大会「史上最大のアップセット」を再現してみせたフランスだったが、その次の試合での煮え切らない敗北も再現(笑)。結局、良くも悪くもこういうチームなんだよな、フランスって。ピークパワーはもの凄いけど、その力を安定して出すことができない。まあ、オールブラックス相手に歴史に残るような戦いをしてしまったら、燃え尽きちゃうのはそりゃ仕方がないのかもしれんけど。

もっとも、イングランドの方も豪州相手に120%の力を出したばかり。前戦に比べればやはり出来は劣ったように思う。リードしている時間の長さや好機の数、そして地力ではフランスの方が明らかに上のように見えた。9-8の場面からあと一本がとれれば……でも、そこで藤島大さん曰く「しくじって」リードを広げられぬまま、ズルズルと終盤へ。こうなると威力を発揮するのはウィルキンソンの黄金の左足である。

ウィルコのキック成功率は前回大会に比べてかなり悪く、記録だけなら「普通に良いSO」くらいのものだろう。しかしそれでも、試合の中での存在感、チームメートの寄せる信頼、そして失敗続きでも肝心な場面で見せる集中力は素晴らしいの一言。予選リーグでトンガに苦戦したチームはどこへやら、イングランドFWはまたも崩れることなく粘り続け、逆にフランスは焦りと疲労からプレーの精度を欠いていく。

後半半ば、ウィルキンソンの右足(!)DGがポストに当たって外れた時、解説の藤島さんは「重要な場面になるかもしれない」と口にした。おそらくイングランド惜敗を思い浮かべての発言だったと思う。だが、ここは結果的には逆の意味で重要な場面となった。すなわち「逆転の一撃」の可能性。イングランドはそれを信じ、フランスは「3点のプレッシャー」に固くなった。そして本当に炸裂したウィルコの左足……。

試合を見終わって、もしかしたらイングランドとフランスの間には「W杯を勝ったチーム」とそうでないチームとの差があったのかもしれない、とちょっと思った。そして、予選グループをギリギリで突破した前回王者が前回MVPのエースの下一丸となって接戦を制し続け、ついに決勝進出……今回のイングランドには、思わず90年イタリアW杯(サッカーの方ね)のアルゼンチン代表を重ねたくなるのである。
 
 
第2試合 南アフリカ 37-13 アルゼンチン

アルゼンチンがついに敗れた。全体として動きにキレがなく、SHピチョットやSOエルナンデスもこれまでの活躍からは信じがたいようなミスを連発。ラフプレーでシンビンを食らう場面もあり、もはや心身ともに限界に達していたのだろう。「力尽きた」という表現が相応しい負け方だった。ただ、こうした「オールアウト」の経験を積み重ねて行くことで、チームは「伝統」という名の強さを身につけていくもの。いや、大したもんだ。

南アフリカは強かった。普通に戦っているように見えて、アルゼンチンにやりたいことをほとんどやらせなかったのだから。単なるFWの強さだけでなく、BKによる切り返しのカウンターがあるのがこのチームの恐ろしいところ。一発逆襲のトライを食らうと、「切り替えて」なんて口では言うけどやっぱりダメージは大きいのである。攻/守及びFW/BKのレベルの高さと均整を考えれば、確かにこのチームが最強かもしれない。
 
 
今大会面白いのは、有力国の実力が拮抗しているおかげで40日余りの長丁場の中、調子の波や対戦の巡り合わせによって予想外の結果が飛び出すこと。予選プールで楽勝続きだったNZはいきなりフランスと当たりたくはなかったろうし、当初絶好調だった豪州やアルゼンチンは決勝Tに入り下り坂となって散った。逆に、予選敗退さえ危惧されていたイングランドが決勝まで勝ち進むとは、一体誰が予想したろうか。

とにかく、泣いても笑ってもあと1試合(3位決定戦があるから2試合か)である。こうしてみるとあっという間の大会だったような気もするな。イングランドが連覇を飾るのか、それとも南アが地元開催以来の2勝目を挙げるのか。南アはまだ余力がありそう。ここまで来たら、ウィルキンソンと仲間たちの「奇跡」を見てみたいような気もするが……。
 

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