« 原博実監督について (『最も愛される監督・原博実-ヒロミズム』を読んで) | メイン | 「なでしこオールスター2007」 »

2007年08月19日

●明日につながるもの、つながらないもの (FC東京×柏レイソル)


(試合内容とは関係なく)ちょっと気力が沸いてきたので、少しずつ復活します。
 
 
昨晩、味スタでJ1第21節。FC東京 0-1 柏レイソル。東京にとって、中断空け後2連敗で迎えた「正念場の」(この言葉をいったい何度使えばいいのだろう)ホームゲーム。悪劣なコンディションの下、サッカー自体の質はともかくとして(笑)、互いにファイトする熱い試合が繰り広げられた。結果は、途中から東京の一方的な攻勢になりながらもついにシュートが決まらず、柏が虎の子の1点を守りきって勝点3を獲得。


序盤から東京は気迫のこもった動きを見せる。高いDFライン、浅利や藤山を中心とするしつこい中盤守備とカバーリング。先発を6人入れ替えたターンオーバー効果もあるのだろう、動きの鋭さでは柏を上回っていた。赤嶺・ルーカスが前で動き回るのに引っ張られて徳永の上がりもいつもより多く、リチェーリのスピードがSB蔵川を脅かす。ただし、ボロボロのピッチ&柏のプレスへの対応でもあるのだろうが、戦術的には変わり映えのしないキックアンドラッシュ。

一方、柏は慣れない悪ピッチへの対応に苦慮。東京のプレス守備にさらされながらのつなぎはスムーズさを欠き、フランサへのボールの収まりも非常に悪い。東京がロングボールを多用したこともあり、持ち味の守→攻の切り替えの早さがなかなか発揮されない。しかし、金沢の裏を狙ったロングボールは効果的で、MF太田が快足を飛ばして東京陣深くまで攻め込む場面は何度か見られた。こういう時は藤山の先読み守備が光る。

14分、太田が右サイド深くへ進入、フォローのフランサがフワリとボックス内へ持ち出してマイナスのラストパス。決定的な形だったが、幸いFW李がキックし損ねてノーゴール。21分にはボックス左手前からのFK、フランサのキックに塩田は逆を突かれた形になったが枠を外れてくれた。34分には柏陣深くのスローインからルーカスがゴールライン際で粘ってマイナスのクロス、混戦からリチェーリが押し込もうとするもGK南がかろうじてセーブ。

前半の終わり頃になると、柏の選手に早くも消耗の色が見られ始める。夏場の連戦というのもあるし、今の柏のサッカーというのは基本的に「息継ぎ」の少ないサッカー(一本調子、と言ってもいい)なので、この辺からだいたいキツくなるのだろう。東京ペース。終了間際には赤嶺のポストプレーからリチェーリがDFを振り切るシーンがあったが、DF懸命のカバーリングの甲斐もあったか、シュートは大きく右に外れてスタンドため息。
 
 
後半も、立ち上がりから前半終わり頃の勢いそのままに東京が攻勢をとる。右サイド攻撃からのクロスやリチェーリ・金沢のミドルシュートが柏ゴールを脅かした。ところが、先制したのは柏。51分、3人かかりで梶山からボールを奪った柏が逆襲速攻、MF山根のパスで抜け出たMF菅沼が左からボックスへ突入したところで戻った梶山が倒してしまい、PK。これをフランサが落ち着いてゴール左に突き刺した。押していただけにもったいない失点。

東京はもちろん反撃に出る。ルーカスやリチェーリの個人勝負に今野や徳永のオーバーラップも加えて押し込んでいく。動きの重い柏は次第にボールを奪っても「蹴るだけ」のプレーが増えていった。東京は60分に川口OUT馬場IN、65分にリチェーリOUTで平山INの交代。馬場は中盤のボールタッチを増やし、ルーや赤嶺、平山がよく左右に動いたこともあって攻撃のリズムはそれなりに整った。

70分、徳永のシュートを南が弾き出し、ボックス外でこぼれ球を拾った馬場がヘッドで落としながらボックスへ突入、ゴール至近でシュートを放つ。スピードにのった鮮やかなプレーだったが、これは南がビッグセーブ。その直後にはバイタルエリアのパスワークから梶山のスルーパス、左に流れて受けたルーカスが切り返しで柏DFを外すも、シュートは枠の上。柏にしてみれば完全に命拾いである。しかし、東京の攻勢はなおも続く。

終盤、既にサイドアタッカーを外している東京は完全にパワープレイへ。柏は古賀を除いてはヘディングに強い選手がおらず、平山やルーカスは面白いように競り勝つ。柏は完全に後手に回り、何かが起きそうな気配も漂う。おそらく原監督もそう感じたのだろう、76分にゴール前に強い福西を投入。しかし、ここで外す選手が梶山だったのは失敗か。東京はセカンドボールが拾えなくなり、柏がカウンターで東京陣に持ち出して「息をつく」場面が見られるように。

81分、最大のチャンス。赤嶺がボックス内に落としたボールに平山が走り込み、前へ出る南をかわしてさあ無人のゴールへ……というところで南が引っかけて平山が倒れる。完全なファウルに見えたが柏原レフリーの笛は鳴らず。ゴール裏から「クソレフリー」コールが出かけるも、「それどころではない」という感じで応援が被さったのがわかった。まあ、その後ドゥンビアが倒されたシーンも何もなかったから、まあ……。結局、0-1のまま試合終了。
 
 
試合後は微妙な心境だった。

確かに選手たちの「戦う気持ち」は見えた。それに判定への怒りも加わって、選手たちが挨拶に回ってきた時にはブーイングよりも拍手の方が大きかったし、ゴール裏からは「You'll Never Walk Alone」も聞こえてきた。なるほど、苦しい状況で彼らはよく闘った。これは「一筋の光明」だろう。しかし、それはあくまで選手個人レベルのこと。チームとしてはさほど進歩が見えず、結果が出なかったのも事実なのだ。特に、憂太が出る前のロングボール多用は……。

「味スタの荒れた芝への対応」「中盤のプレス回避」「残留へ内容よりも結果」「監督の引き出しが尽きた」。理由は色々あるのだと思う。だけど、創造性に欠けるサッカーの繰り返しを見ていると、このチームの将来に暗澹たるものを感じざるを得ない。まあ「蹴るだけサッカー」は論外として、とにかく縦に速い「鬼プレスからのカウンター」スタイルへの回帰を望んでいる人も多そうだけど、単にそれ「だけ」ではまた05年に戻るだけだ。

この試合の柏を見ていても思ったのだが、一つの形、一本調子ではどうせいずれ頭打ちになる。だから、今の東京はちょうど組織力や戦術の蓄積が底をついた状態だろうから、今季の残りは苦しくてもあまり極端に走らず、将来の「積み上げ」のためのベースを作り上げることを目的にチームを回してほしいし、それ向きの指導者(ヤンツーさんとかね)を連れてきてほしい。個人的には、もしそれで2部に落ちるとしても仕方がないとさえ思う。急がば回れ。

……いや、そこまで言うのは我ながら極端かもしれない。でも、とにかく、選手をねぎらってあげることは大事にせよ、この程度であまり褒めちゃアカンだろうとは思う。つーか、中断前にしろ磐田戦にしろ、「一筋の光明」が見えては消える状態だから、ずっと(笑)。


選手たちが引き上げるのを見届けて僕がスタンドを降りたその後で、FC東京の社長と専務が出てきたそうである。謝辞を述べるにしては悪いタイミングであり、発汗さんから聞いた限りでは内容も乏しかった様子。鬱憤のたまった人々のブーイングを浴びたのも仕方ないのかな、とは思う。社長はなにしろ最高責任者なんだし、今季の体制作りについては彼らも関与していたのだろうから。どうせそのうち「出てこい」って言われるんだろうし(笑)。

ただ、チームの成績や試合内容の悪さについての不満を表明したいのなら、先にぶつけるべき相手がいるだろう、ということは言っておきたい。現場の責任者とか強化の責任者とか。だいたい、今の状況の大きな原因たる原監督復帰については、ファン・サポーター(のかなり大きな部分)が望んだことじゃなかったのか。もしかすると、社長と専務の頭には昨年のファイヤーワークスナイトのことがあったのかもしれないね。


あと一つ、どうしても書いておきたいこと。84分、足を押さえて倒れる憂太を見て南がボールを外に蹴り出した場面。再開のスローインを受けた平山は、あろうことか柏陣のコーナー付近まで持ち込んでからタッチライン外に出してボールを「返した」。そもそも柏にしてみれば、憂太のために試合を止める義理もなかったはず。それはやっちゃいかんよ、平山君!!鹿島じゃないんだから。ここでもいい意味での「東京らしさ」は失われつつあるのか……。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2281

コメント

こんばんは~。

東京についてのエントリーが復活して、うれしい限りです。この調子でずっと続けていただけるとうれしいのですが……って、チーム状況はそれどころじゃないのが悩みの種なのですが。

帰ってきましたね。東京の「良心」。アナタのことですよ。「鬼プレスからのカウンター」が俺は好きな方なので、サッカーの好みは違いますけど、これからも(無理せず)書いてください。楽しみにしてます。

よかったよかった。

84分の平山のプレー。本当にあれはだめだよ。FC東京の選手としては絶対だめ。猛省すべし。

復帰をココロ待ちしておりました。うまねんさんのレビューを読むのが試合後の楽しみだったんで…。

『試合後は微妙な心境…』なんとなくだけど分ります。ここ数シーズンは似たようなことを繰り替えていますからねぇ。

ヤンツーさんは自分も推したい、と言うか東京でぜひ見てみたい監督の一人です。

平山のあのプレーには自分も鹿島の匂いを感じて嫌な気分になりました。南に転ばされた報復の気持ちもあったのかな。

皆さま、コメントありがとうございます。

>この調子でずっと続けていただけるとうれしいのですが……
へばらない程度に、マイペースでリハビリしていきたいと思いまっす。

>帰ってきましたね。東京の「良心」。
いきなりそう来られると、まるでほめ殺しみたいだ(笑)。ありがとうございます。

>サッカーの好みは違いますけど、
いや、私も鬼プレスからショートカウンターで爽快に奪う得点は好きなんですけどね。それがハマらない時に次の手がないとやっぱりいかんよな、というのがここ数年の悩みで。

チームの「引き出し」の数が増えて対応力が上がれば、それこそメトカラさんがブログでやっているような戦術分析もより生きてくるんじゃないかな。

>84分の平山のプレー。本当にあれはだめだよ。
いや、まったくです。
憂太はその2つ前のプレー(柏の攻め)の前に倒れていて、にも関わらず柏が止めなかったことに平山は腹を立てていたのかもしれないですけど……東京の方も止めなかったわけですから。柏はルール上止める義務もないのに止めてくれたのだから、あそこはきちんと返さないと。

>ヤンツーさんは自分も推したい、と言うか東京でぜひ見てみたい監督の一人です。
ヤンツーさんも育成型の監督ではあるのですが、変なクセはなさそうだし、一見遠回りに見えてもチームを着実に強くするにはいい人選ではないかと、勝手に思ってたりします。

去年のファイアーワークスのエントリー、
しれっと昨日の試合のことと言われても違和感が無い・・・

復活おめです~。

結果として今の東京は
ある意味ジーコジャパンみたいに
なってしまってるなと。
似非スペシャリストの集まり。

原さん自身開幕当初はルーカスを
左に使おうとしていたことからして、
きちんとしたポゼッションを嗜好していた
と思うんですよ。

ところがルーは
真ん中に寄ってしまうためもともと
それほど守備専ではない金沢の
負担が激増。大敗してしまった
こともあり、一試合のみの選択
になったわけで。

この件もそうなんですけど、選手自身の
修正能力・ポリバレント力が著しく低下の
一途をたどってるように思うのです。

最近でいえば、石川とノリオが
再開以降ろくに守備をしなかったのは
ある程度張っていろとの指示かと
思いますが、キープできない+
運動力が低い福西とルーカスの
前線だとプレスがあまりに利かず、
結果ぐっちゃぐっちゃになるわけです。

そういうところで選手自身でラインを下げるとかサイドも守備に参加するとか、選手間での
修正能力は以前はもう少しあったように
思うのです。柏戦で浅利と藤山の判断が
ほとんど外れなかったのには感心しつつも
他の選手との対比すると…。

今年一年はもうこのまま進むしか
ないとしても、路線事態を一から
作り直していかないと、どの道
ジリ貧な気がしますね。J2に落ちて
ほしいと自分は思いませんが、
常に残留争い当たり前くらいの
ポジまで落ちないと、改革は
進まないかもしれないなあ。

>しれっと昨日の試合のことと言われても違和感が無い・・・
いやあ、土曜日は「監督ヤメロ」コール起こらなかったけどね。もう「借金5」なんだけどね。去年は広島戦の時点で負け越し1つだったけどね。アハハ。


>似非スペシャリストの集まり。
確かに、ちょっと融通の利かない選手が多いような気はしますね。昨年の前半にもだいたい見えてはいましたが。石川とか、ホント変な言い方ですけど、「つぶし」がきかなくなっちゃったというか。おっしゃるとおり、いくらベテランとはいえ藤山と浅利が目立つくらいですものね。

>路線事態を一から作り直していかないと、どの道ジリ貧な気がしますね。
同感です。
残念ながら、ちょっと腰を据えて時間をかけてやらないといけないかもしれないですね。となると、中堅~ベテラン(特に代表クラス)の多くは……うーん……。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)