うまねんblog

　
ディディエ・ドログバは、「単体」での能力と機能性においては、今現在世界最高のＦＷと言っておそらく間違いないと思う。常にゴールを狙っていくストライカー気質、絡まれても押されても倒れない体幹の強さ、守備網を蹴散らすパワー。そして両足から放たれる爆発的なシュート。どれをとっても超一流である。

特に（アタッカーにとって最も苦しいはずの）ＤＦを背負った状況での強さは桁違い。よりによってリヴァプール戦でゴールから遠ざかりながら反転スーパーミドルを決め、解説の原さんに素っ頓狂な声を上げさせたこともあった。何しろ、１人で点を取って来ちゃうんだから味方にとっちゃ頼もしいことこの上ない。要は「ドログバ大作戦」（笑）。おまけに彼を囮に使った時の有効性といったら……手が付けられんよ、ホントに。

もっとも、僕は最初このドログバという選手が好きではなかった。元々フィジカルで押しまくるタイプのアタッカーが好みではないというのもあったし、一昨年のＣＬバルサ戦での退場のような、無用のラフプレーや神経質な振る舞いが時折見られたからだ。ハートはそれなりに強いかもしれないが、どうもゆとりとか懐の深さに欠けているところがあるように思えたのである。

それが、今年になってガラリと印象が変わった。きっかけはシェフチェンコの加入である。鳴り物入りでＡＣミランから移籍した元セリエＡ得点王は、プレミアシップのテンポになかなか馴染めず苦戦が続いている。この時期で公式戦６得点は、「シェヴァ」の能力を考えたらスランプと言っていいだろう。多額の移籍金、さらにはアブラモビッチオーナーとの親交も取り上げられ、マスコミばかりか時には味方のファンにも揶揄を受けているとか。

そのシェヴァを最も庇っているのが、誰あろうドログバなのである。取材に対しては「誰だって慣れるのには時間がかかる」「僕は彼に点を取らせてもらっているんだ」「そのうち今の不調は笑い話になるよ」などとコメント。シェヴァが点を取れば真っ先に駆けつけて抱きつき、シェヴァのアシストに対しては感謝のジェスチャーを欠かさない。同僚としては当たり前かもしれないが、考えようによっては彼らは同ポジションのライバルでもあるのだ。

自分が好調で余裕があるのかもしれないし、プレミアに慣れるのに苦労した自らの記憶も蘇ってきたのかもしれない。でも、「でかくて強くて力任せ」のイメージとはかけ離れた一面に「おっ」と思わされたのは僕だけだろうか。エヴァートン戦でも、試合後に「シェヴァ！シェヴァ！」と、またも無得点に終わった相方を気遣う彼の姿があった。気がつけば、シェヴァだけにとどまらず、周りの選手に対しても配慮する姿が多く見られるようになったような。

ドログバの、フィジカル・技術だけにとどまらないサッカー選手としての成長と、シェフチェンコとの清々しいチームメート関係。なんだかいいよなあ。かなり一般的になっているらしいネガティブイメージとは裏腹に「チェルシーらしいなあ」とも思うし、ドログバ個人に対する好感度も僕の中ではうなぎ上りである。彼、今回のＦＩＦＡ最優秀選手の投票では６位だったようだが……来年は１位になっていてもおかしくはないかもしれないし、そうなってほしいな、と思う。