●浦和レッズ×FC東京
昨晩、さいたまスタジアム2002でJ1第17節。浦和レッズ 4-0 FC東京。リーグ再開後なかなか良化に向かわない戦いぶりに加え、金沢・今野と「代えのきかないメンツ」に負傷者続出、さらには徳永も出場停止の苦しい状況。苦戦は覚悟していたのだが……結果は無惨な大敗。よりによってレッズに。「最もやってはならないことをやらかすのが人間というもの」という経験則(?)を思い起こさせる試合だった。さすがに、これをやらかしたからには、誰かが責任追及されねばなるまいよ。
試合内容は、いつも通りといえばいつも通り。序盤は寝ぼけ眼で、浦和の速いパス攻撃にオロオロしっぱなし。状況打開を図る伊野波の積極性が裏目に出て、サイド攻撃から小野にボレーを決められ0-1。15分くらいからようやくエンジンがかかり、浦和の攻勢を必死のカバーと運(笑)でしのぎつつ、ルーカスの個人技と梶山のキープから何度か良い形を作る。が、ここぞ、というところで軽いプレーや連携ミスが出て、梶山のミドル以外に決定機はなし。
ただ、後半に入り、代表戦の疲れか、明らかに浦和の足が止まった。セカンドボールを拾っての二次攻撃が出るようになって「お、これは引き分けくらい行けるか」と思えたのだけれど……そこで伊野波退場。彼だけでなく、チーム全体が過熱気味だったのかもしれない。10人になって守備が混乱したところでアレックス(この男はこういう状況につけこむのが本当にうまいな)にドリブルからのミドルを叩き込まれて0-2。これで早くも勝負あり。
そこからは得点経過のとおり。数的不利とこの上なく痛いタイミングでの追加点でガックリきたのは否めない。ベンチからの指示もなかなか届かなかった様子(つーか、誰か聞きに行けってば)。そして、そもそも浦和はリーグ屈指の守備力と選手層を有するチームなのである。これでは勝負にならない。適度に選手を入れ替え、無理せずパス回しをする相手に振り回され、気持ちと体力が萎えていったところでガツンガツンと2失点。まさにドツボ、である。
この試合をスタンドから見ていて気づいたのは、特に前半、マークや動き方について選手同士が身振り手振りを交えて話し合う姿である。なるほど、さすがに選手たちも危機感が高まっているだろうし、ガーロ監督が細かいところまで「教えてくれない」ことにも気づいているのだろう。それはそれでいい。ただ、もう第17節である。「さすがに今頃そんなことやってちゃいかんのじゃないの?」というのが率直な感想。
それと、特に序盤、選手たちが「ホントにこれでいいのか、これでうまく行くのか」と不安げにプレーしているように見えるんだよね。せっかくワシントンというボールの預けどころができたのに、パスコースのなくなった増嶋が「思い切って」入れるまでは楔もほとんど使わなかったし。先制ゴールをくらって開き直らざるを得ない状況になって、ようやくチームが動き出す。これは春から全く改善が進んでいない部分だ。
思うに、そもそもガーロが「やるべきこと」「当然できること」と考えているプレーのメニューや精度と、東京の選手が持っているそれとのギャップがあまりにも大きすぎるのだ。そのギャップの大きさが、広島戦の時に書いた一貫した「見込みの甘さ」となっているのだろう、多分。さもなきゃ、これほど宛のない「実験」を続けるわけないと思うんだよね。ガーロにブラジル国内での指導経験しかないのがやはり大きいのか。
そして、春のうちはまだ、そのギャップは「今後埋めていくもの」として認識できたけれども、リーグ再開後5試合で明らかになったのは、「どうやら埋まらないらしい」ということだろうか。ガーロには手取り足取り「仕込む」スキルはないようだし、他にギャップを埋められそうな人材(たとえば、経験豊かなコーチとか)もいないようだし。まあ、シンプルにまとめると、「今の東京のレベルに合わない人を連れて来ちゃった」ということか。
加えて、チーム全体を取り巻く雰囲気がこれまでになく悪化しているのは周知のとおり。僕個人としては、これまで何度も書いているように、性急な、もしくは別の意図が感じられるようなネガティヴ・キャンペーンに乗っかるつもりはない。「ワシントンはガーロの手先だ」みたいな言い方もサイテーだと思う。でも、それはそれとして、今やファンやサポーターの不満がヤバい所まで高まっているのは事実だろう。
僕としては、何度も書くようにガーロと東京がフィットしないと思いつつも、まだガーロ指揮の東京をシーズン終わりまでは見てみたいとは思う。金沢の負傷など不運な要素も多く、今切っては中途半端にわからないままで終わってしまうから。ただ、あの選手たちの自信なさげな様子や、電車の中でガックリ来ている子供ファンを見ると、「我慢すべきだ」という主張自体に無理があるような気にもなる。最後までやってもスッキリ○×が出るとは限らないしね。
だから。良い人材がいるのなら(これは絶対条件でしょ、そりゃ)、「もっと悪くなる」リスクを覚悟の上で、今の段階で監督を代えるのもありだと思う。「人心一新」というヤツである。つーか、春頃の理不尽な言われようといい、最近の侮辱コールといい、いっそ「ガーロ、やめちゃえよ」と言いたくもなる(昨日のエントリー)。とても残念なことだけれども、プロサッカーチームの監督は結果こそが第一義的な物差しとなるのだから、今の状況では仕方がない。
ただ、一方で、「まだ解任には踏み切れまい」とも思う。ガーロ肝いりのワシントンを連れてきたばかりだし、いざという時頼りにできそうな大熊さんや生え抜きのフィジカルコーチは代表へ出向、前ヘッドの倉又さんだってユースチームに対する責任がある立場だ。前監督の原さんは経緯からしてチーム的にはそれこそ「問題外」だろう(笑)。そして、他にフリーのいい監督って東京のフロントが短期間でつかまえきるのかしらん?みたいな。
ならば、このまま暫くはガーロ監督で行くとすれば、その旨チームはファンに対してきちんとアナウンスすべきである。「やらせるからには守る」のは、監督-選手でもフロント-監督でも共通の原則のはずだ。そもそも、「(原さんの次が)なぜガーロなのか」についてのきちんとした説明がない(ように思える)ことが、今日の(どの立場であれ)不満たらたら状態の一因であるはずだから。何も言われずとも黙って屈辱に耐えるほど、ファンは物わかりのいい人種じゃない。
個人的には、強化部長(鈴木さん、でしたっけ)が昨年来何考えているのかよーわからんのが非常に気になるんだけどね。現場のトップであり強化のスポークスマンでもあり得た原さんのような人は稀有であることを、もっとちゃんと認識するべきじゃないのか。分業制のはずなのに、全て矢面に立つのは監督、というのはかなり理不尽なことではあるまいか。
えー、屈辱の惨敗から1日たった段階で考えたのは、上のとおり。さらに頭が冷えたら、また変わったりして(笑)。
試合後、茂庭は人目をはばからず泣いていたそうである。残念だな、と思う。彼がそこまで追い詰められてしまった事実もそうだが、「君が泣いちゃいかん!」という残念さもある。今年のモニは昨年までに比べて出来が悪く、W杯前には「ハワイ傷心旅行」なんて失態(東京ファン的には笑えるボケだが)もあった。代表からも外れ、チームは不調続き、まさに逆境の最中。でも、日本屈指のDFたる彼には、そこでこそ頼もしい姿を見せてもらいたいと思うのだけれど……。下向いちゃ駄目だよ。
あと、伊野波は、イエロー2枚もらって退場したことで結果的に大敗の引き金となってしまったけれど、あれは彼なりに停滞しがちな攻撃を何とかしようとした結果なのだと思う。前がかりになって、その裏を永井らにとられ続けて、それでも攻守の両方でチームに貢献しようと走り、奮闘し続けたからこその警告2回。反省すべき点はあるだろうが、この経験をぜひとも将来の糧にしてほしいと思う。ぜひ。
コメント
>キーボードを叩く指が鉛のように重いな、しかし(笑)。
お察しします。(苦笑)
昨日のビデオなんて絶対見たくないですな。
ブーイングした自分が言うのもなんですが、あのブーイングに選手を晒した責任を誰かがとらなあかんですよ。
それと、フロントは現状認識を語らないといけないですよ。
はぁ~つらい・・・
Posted by: ぶらっくばす | 2006年08月13日 19:46
>キーボードを叩く指が鉛のように重いな、しかし(笑)。
NEC PC-9801シリーズのキーボードを思い出しました。
Posted by: kaz1568 | 2006年08月13日 20:45
涙というものは不甲斐ない「他人」に対しても流せるものだと思っています。
モニの涙には、そういう部分もあったんじゃないかな。
私も心の中で泣いていました。
この内容ではサポーターが言わなくても解任になる可能性が高いので、
「顔上げろ」と叫んでいました(前から2列目だったし)。
Posted by: cooper | 2006年08月13日 21:10
はじめまして!
昨日はお疲れ様です。
フロントはやっと、動くそうです。
一度、見てください!
http://baibon.exblog.jp/
Posted by: オヒタシ | 2006年08月13日 22:00
一線を踏み越えずにできることの限界、その辺を感じる今日この頃、しゃくどぉです。
さいたまに行く前に四ッ谷でんまいもんを食べるくらいしかない、そんな試合の日もどうかと思ってはいますが、そうやってモチベーションを保ちつつ、、、
今年からむさしにお迎えしている山口さんはいいとおもうのですが、どうでしょうねぇ。
Posted by: SKD | 2006年08月13日 22:16
もし山口先生がやったとしたら奇跡だと思う。
まぁそもそも東京のユースの指導者に兼任ではなく選任でなってくれることでも奇跡なんだけどね。
信念を持っている人だから…難しいと思います。
Posted by: よっし~ | 2006年08月13日 23:02
オシムじゃないけど、失敗から学ぶことは
沢山あって、こんな失敗が、
この時期に出来たと言うことは
むしろ、ラッキーだと、考えています。
J2に落ちたことがある、唐辛子から見れば
我々はまだまだ、幸せじゃないですか。
っていうくらい、落ち込んでいるんですけど、w。
Posted by: BBSTAR | 2006年08月14日 12:17
あああああ。
でも、試合途中から「フロントなんとかしろ」のコールは萎えるなあ。終わってからならいいが。試合中は選手を応援したい。それと、やっぱりワシントンはちゃんと応援してあげたい。彼はなんも悪くないから。
Posted by: lika | 2006年08月14日 13:46
>それと、フロントは現状認識を語らないといけない
そうですね。それこそ「当分はガーロです。よろしくお願いします」でも「やばいのはわかってます。もう数試合待ってください」でも何でもいい。別にオフィシャルでのリリースでなくてもいいし。もちろん、嘘でない範囲でね(隠し事はあってもよし)。
>NEC PC-9801
中学生の頃、休みの日に8801をいじるのが楽しみでした。「三国志」か「信長の野望」しかしなかったので、ほとんどキーボードは使わなかったですが(笑)。
>「顔上げろ」と叫んでいました
おっしゃるとおりですね。やっぱり、選手がうつむく姿は見たくないです、私は。
>今年からむさしにお迎えしている山口さん
申し訳ない。正直なところ、どんな人かよく知らないのです。ファンブックで見る限りは、どちらかと言えば育成向きの方に思えますが…。
>こんな失敗が、この時期に出来た
まあ、確かに、浦和も2部落ちの苦境を乗り越えて今があるわけですから、何のこれしきまだまだ……っていうくらい、私も落ち込みましたぜ(笑)。そろそろ立ち直りかけてますけど。
>やっぱりワシントンはちゃんと応援してあげたい
そうですね。今まで「やってきた」フロントや監督、選手には結果について「なにやってんねん!」と言いたくなるのが自然ですけど、彼はまだ全然試合にも出てないですからね。
「ワシントンはガーロの手先だから」とか言ってる人もいるからなあ……。
Posted by: murata | 2006年08月15日 01:09