●『9条どうでしょう』
『9条どうでしょう』(毎日新聞社)読了。人気哲学者・内田樹氏と彼が選んだ個性豊かな3人の論者たちが、日本国憲法第9条(及びそれを改正しようという国内の動き)について語った本。
この本の勝因(勝手に勝ったことにしてるが)は、とにかく人選に尽きる。平川さんは元々内田さんの盟友だし、小田嶋さんも何かこの手の話を書きそうに思える人だけど、まさか町山さんとはね。なるほど、軍事オタクの過激派(笑)が入った事で本全体の娯楽性と幅広さがぐっと高まっているように思えるのだ。
内容的には、まず内田樹さんが、憲法9条と自衛隊の無矛盾性とその背後に潜むより大きな問題(「奴僕国家日本」)を論理的に考察し、「望ましい解決策」を明らかにしている。
町山智浩さんは、複雑な出自を持つアメリカ永住権者としての立場から、映画の引用を交えつつ、改憲論者の「国民」や「憲法」に対する無知無理解と、愛国心の本当の在処を説いている。
小田嶋隆さんは、随所に毒舌とユーモアとサッカーの話とかなりの脱線を交えながら、日本国憲法の魅力を強調し、改憲派と天皇の立場を巡る「ねじれ」を鋭く指摘している。
平川克美さんは、「ロス疑惑」や「グリコ森永事件」に端を発して「小泉劇場」にまで連なる現代日本の劇場性を指摘し、改憲派の「現実を創り上げる」姿勢の欠如を叫弾している。
どれも、それぞれの論者の色がきちんとでていて、説得力もあり、僕のような「別に護憲派じゃないけど今の改憲論は気にくわねー」という人間には元気の出る議論である。つーか、本当に、何で変える必要があるのか全然分からんし、今出てる「改正案」が現憲法より出来がいいとはとても思えないんだよね。
特に、小田嶋さんが示した「解決策」は、あまりの素晴らしさに頷きまくり、勢い余って涙まで出てきたよ。それが何かはあえて書かないが……愛と笑いと感動の涙とはこの事か(笑)。いや、このページを読んだだけでも、この本を買った価値はあった。
とにかく、明日は終戦記念日だけど、例年以上に目尻をつり上げて「愛国心」だの「国の誇り」だの「自主憲法」だのとヒステリックにがなり立てる輩が増えてそうな今年、まったりと力強くそいつらに対抗するためには必読のテキストである。多分(笑)。
コメント
うざい
Posted by: Anonymous | 2006年08月15日 12:58
そりゃどうも(笑)。
Posted by: murata | 2006年08月15日 21:14
おそらくタイトルは「水曜どうでしょう」をひねったものでしょう。その「水曜どうでしょう」は「水曜ロードショー」をひねったもの。
ごみレスでした。
Posted by: 峰村健司 | 2006年08月16日 00:14
どうも。普段は本なんかほとんど読まない私ですが、これは読みました。町山さんが出ているラジオ番組のファンなんで。
個人的には、内田さんの話に感銘を受け、共感しました。一般的に「問題の先送り」は悪いとされる世の中ですが、無理に解決する方が危ないこともあるように感じるんですけどね。九段下にある神社のこととか(笑)
いわゆる護憲といわれている人たちも、この本の作者達ぐらい柔らかい頭で言葉を操ってもらえたら…なんて思いますが。まあ、彼らの支持者からは反発必至でしょうけど。
Posted by: ワイ・トキオ | 2006年08月16日 00:32
>ミネさん
ごみレスというより、何だか不思議なレスですなあ(笑)。「水曜どうでしょう」って、まだやってるんでしたっけ?
>ワイ・トキオさん
どうもー。
確かに、いわゆる改憲派と言われる人たち(その多くが靖国参拝派だったりしますが)も、いわゆる護憲派と言われる人たちも、「一気に白黒つける」ことに拘りすぎるきらいがあるんですよね。ちょっと潔癖症チック、というと言い過ぎかな?
「とりあえずうまく行ってるから、そのままでいーじゃん」「実際に害が出てきたら適当にまた落としどころ見つけようよ」という感じにはなかなか行かないんでしょうねえ。
Posted by: murata | 2006年08月16日 00:43
>>「水曜どうでしょう」って、まだやってるんでしたっけ?
再放送という形でやってるよ。
MXとかTVKとかチバテレビとか。
あと、新作を年1回程度制作してる。
ま、それはそうと「例年以上に目尻をつり上げて」いたのは”マスゴミ”ではなかったかと。。。
首相会見も自分たちにとって都合のいい部分だけ切り貼りして放送してたようですし。
この件に関してはだいぶ食傷気味ですわ。
Posted by: こばえもん | 2006年08月16日 17:44
>この件に関してはだいぶ食傷気味
まあね。
だから、色々と「先送り」でいいっしょ。本当は。
Posted by: murata | 2006年08月17日 12:39