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2006年06月23日

●終わった?いや、終わってないよ。 (日本×ブラジル)

NHKで、ドイツW杯グループF最終戦。日本 1-4 ブラジル。苦しい状況ながらも決勝トーナメント進出の僅かな可能性にかけて、我らが日本代表が王者・ブラジルに挑んだ一戦。期待の膨らむ展開だったが、前半ロスタイムの1点が全てを変えてしまった。嗚呼、この結果をどう受け止めればいいのだろう…。


前半開始直後から、予想通りブラジルがボールを支配する展開。抜群のキープ力にものを言わせ、日本DFの寄せを軽くかわしては独特のリズムのパスをつないでバイタルエリアへボールを運ぶ。ロナウジーニョにカカーにジュニーニョ、さらに軽快な両SBも加わっていく。これに対し、気合いの入っている日本イレブンは粘り強くプレッシャーをかけて対抗。上り調子の稲本がよく効いていて、中田や加地の動きもまずまずいい感じ。

それでもブラジルアタッカーは凄い。DFの当たりをものともせず、個人技でシュートに持ち込む。ロナウド、ロビーニョ、ジュニーニョ……しかし、日本には川口能活がいる。素晴らしい反応速度でビッグセーブ連発!16分のロナウドのシュートを横っ跳びワンハンドで弾き出したプレーは、アトランタでのベベットのFKストップを想起させた。24分には加地が深くえぐってクロス、DFがあわやオウンゴールという場面もあり、「これは…行けるかもしれん」。

34分、稲本から左サイドでフリーの三都主へ好フィード、三都主は切れ込み気味に持ち上がってから走り込む玉田へスルーパス。玉田はやや左に流れながらきれいにDFライン裏に抜け、思い切って左足を一閃!ボールはニアサイド上のゴールネットに突き刺さった。日本先制!!いや、実に気持ちのいい(特にこないだの柳沢のアレを見ちゃった後では)ゴール。この時点ではクロアチアがオーストラリアをリードしていたこともあり、期待は大いに膨らんだ。「行けるぞ!」

思わぬ失点に面食らったか、その後はブラジルの攻撃は停滞気味になり、シュートも正確さを欠くように。逆に、日本の攻撃に勢いが出てきた。フレッシュな玉田と巻はどんどん裏を狙い、加地もキレた動きでジウベルトを押し込む。ここまでは本当にいい雰囲気だったのだが…そううまくはいかなかった。ロスタイムに落とし穴

46分、左サイドでDFを引きつけたロナウジーニョが逆サイドへ大きく正確なパス。これをシシーニョが頭で折り返し、マークの外れていたロナウドが押し込んでゲット。同点。ロナウジーニョ得意の形(いつもはあれでジュリかメッシが抜ける)にしてやられてしまった。時間が時間だけにあまりにも惜しく、ホイッスルが鳴った瞬間何事か叫ぶ中田の、そしてその他の選手の沈鬱な表情が気がかりであった。

その雰囲気を引きずったということか、後半の日本は立ち上がりから動きに思い切りがなく、DFラインは下がりっぱなしに。対照的に、自分を取り戻したブラジルは的確なポジショニングと速いパスワークで波状攻撃をかける。ほぼ完全なハーフコートマッチ。日本は2トップとそれ以外が分断されてしまった。後半8分、ジュニーニョが得意の無回転ミドルシュート。強烈な一撃が能活の脇を抜く。コースは甘いように見えるが、あれが全然止められないのよ、欧州のGKでも。

ペースを取り戻したい日本は消えていた小笠原を外して中田浩IN。しかし14分、ロナウジーニョがDFを幻惑するステップからスルーパス、左サイドから回り込むジウベルトが完璧なコースのキックを逆サイドネットに突き刺した。この場面、日本DFの対応もやや鈍いように見え、心身ともに切れてきた印象。無理もない事ではあったが…。18分、おそらくはまだ諦めてないであろう能活がロビーニョとジュニーニョの強烈ミドルを連続で弾き出し、吠える姿に胸が熱くなる。

その後は見ているのが辛い時間だった。ブラジルは余裕の省エネモードへ移行し、何とか一矢報いたい日本は中盤のパス回しから反撃を図るのだが、なかなか決定機に至らない。途中出場で汚名返上の機会を与えられた高原は膝を負傷して退場、代わりに出た大黒様のシュートは枠をとらえられない。逆に36分、速い縦パスの出し入れパスを受けたロナウドがDFの間を狙う技ありのミドル、これがゴール右に決まって1-4。うーん。

ブラジルはカカー、ロナウジーニョ、ジッダと順に外していき、決勝トーナメントに備え始める。盤石である。ちくしょう、こうなったら1点でも返さないと。40分、ボックス前中央絶好の位置からのFK、俊輔のシュートは、いい感じに飛んでいったがポストのわずか右を抜けた。ロスタイムの中田浩のシュートはGKに押さえられ、さらに三都主がDFの股を抜いた決定的なクロスも、走り込む俊輔が空振り。結局1-4で試合終了となった。終わった……


少なくとも前半の日本代表は、胸を張れる戦いをやれたと思う。前の2戦が暑さの中だったせいもあるとは思うが、今日は動きにキレのある選手が多かったし、やられながらも歯を食いしばって撃ち返そうとする姿勢は「僕たちの代表」と呼ぶに足るものだった。特に能活は…見ていて涙が出そうになったよ。そのオーラは欧州トップクラブのGKにも決して負けていなかった、とここで断言したい。彼と一緒に進む「大いなる旅」は本当に素晴らしい。

ただ、前半ロスタイムの失点以後、気持ちが挫けてしまった様子だったのは、繰り返しになるが残念。まあ、確かに、あそこで「頑張れば何とかなった」とまではとても言えない。実力差は、特にゴールを狙うための「引き出し」の数と90分間の組み立てという面で顕著であった。それでも、それでも、追いすがってほしかったし、もうちょっと力はあるはず、と思う(思いたい)。特に、日本人NO1ファンタジスタの俊輔が不調だったのは残念至極である。

試合後、玉田(男前)が微妙な表情で「ブラジルを本気にさせちゃいましたかね?」と語っていたが、いいじゃないか本気にさせたのならば、と思う。彼はよくやった。僕は大会前は巻・柳沢の2トップでやってほしかった(ドイツ戦を見た後で「高原・柳沢で仕方がないか」と転向した)のだけれど、前に誰かが書いてたように、やはり「FWは調子で選べ」ということなんだろう。クロアチア戦の2トップは、柳沢のシュートミス以前にコンディション自体悪そうだったから。その見極めが難しいのだろうけどね…。


ともあれ、これでジーコジャパンの4年間の冒険(?)は終わった。だが、日本代表にとっては次のW杯へ向けて、いやそれ以外の目標に対してもここから新たな戦いが始まる、とも言えるわけで、別に本当にこれで「終わった」わけではない。今は落ち込んでいるけれども、少し時が経てば顔を上げて胸を張って進めるはずだ。そして、もちろん、またJリーグが始まり、僕たちのサッカーの日常も帰ってくる。やせ我慢かもしれないが、僕は今、あえてそう書きたい。

フットボールファンは止まらない。これしきのことで、止まってられるか、こんちきしょう(泣)。

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試合終了後、ピッチに倒れ込んだまま起きあがれない中田を見てたら、 なんだか泣けて [Read More]

コメント

奇しくも似たようなタイトルのエントリをアップしたのでTBさせていただきました。(笑)
そう言えば日本は、ブラジルに相対した3チームの中で、ブラジルに唯一一太刀浴びせることができたんですよね。
無根拠な楽観論を撒き散らしていたマスゴミと似たような物言いになってしまうかもしれませんが、その点はちょっとだけ(あくまでほんのちょっとだけですが)誇ってもいいのかもしれません。

おっしゃるとおり、今回の日本の戦いも何も残せなかったわけではなく、できたこととできなかったこと(もちろん後者が圧倒的に多いのですが)をきちんと認識して次に備えることが大事でしょう、日本代表的には。失敗を反省はするとして、変に卑屈になって引きこもってはいけない。この経験を「明日の糧」にできなければ、それこそこの4年間が無駄になってしまいます。

まあ、まずは次の監督選びですね。インナーナショナルレベルの指揮経験がある人がいい(素人はやめましょう(笑))、というのが今回最初に生かせる教訓かな。

今、ドイツ、からです。
現地で見ていて、ブラジルとの次元の違いが
手に取るようによく分かった。

我々日本は、とても良い経験させていただいたと、
素直に思う。
体格の劣る日本が勝ち抜くには、
この俊敏性を生かし、パスワークで行くのは、
当然の選択。
こっちで電車乗ってると、2M近いガリバー君達は
掃いて捨てるほどたくさん見かけ
彼らを間近で見ると、
「こいつらと高さ、フィジカルで勝負しては
いけない」と改めて感じます。

そのパスサッカーは、
パスミスしない、トラップミスしない、ワンタッチを難なくこなす、
が出来ないと、始まりません。

日本チームは、Jでもよく見られる、それらのミスが
一つ一つは小さいようですが、ブラジルに比較して
ミスが多く見受けられます。

これは、一回り、もしかしたらもう二回りくらい
ジェネレーションが代わらないと直らないのでしょうか?

でも、フィジカルでヨーロッパに劣る
ブラジルや、アルゼンチンを見ていると
日本も絶対にワールドカップ世界大会の
ベスト16に、毎回当然のように入れるのではないかと、

私は勝手に、

期待しているのです。

>BBSTARさん
現地報告、乙でございます。

やはり、日本はコレクティブで小気味いいパスサッカーを基本にしなきゃいけないということでしょうか。私もそう思います。

そして、注意しなきゃいけないのは、そういうサッカーと「判断」や「創造的なプレー」は必ずしも矛盾しないということですね。前に↓のコラムでも書きましたが。
http://umanen.org/umanen/sports/uma140.htm
トルシエ的なサッカーの中にも、本当は俊輔の生きる道はあったのではないかと、僕は今でも思っているのです。

とりあえず参考になるのは、「良いサッカー」をする欧州中堅国とか、あとメキシコあたりかな。そうした国の規律・論理に、速さや創造性の面で追いつき、追い越していく、と。まあ、口にするだけなら簡単なんですけどね(笑)。

まずは、オシム爺に監督をお願いするあたりから始めてほしいと個人的には思います。

>私は勝手に、期待しているのです。
私も同じです。笑う人がいようが何だろうが、期待しなければ何も始まりませんものね。

そのオシム爺は、千葉がOFF中、クロアチア国営放送のスタジオ・ゲストとして参加。

批評のテーマとして、個人プレーと連携について。
まず最初に"個人で何ができるか"を見てしまうため、どの選手も自分のためにプレーしている。

クロアチアも日本も同じですなぁ。
日本は技術ではなく、体格ですが。

http://nogomet.cocolog-nifty.com/hrvgo/

サッカーって、当たり前ですけど団体競技ですからねえ…。

「個人だけ」で戦えないのは当然。もちろん、組織×組織で互角ならば、最後に勝敗を決するのは個人の力。まあ、シンプルに考えればそういうことでしょうか。

特に日本の場合、世界レベルで通用するだけの個の力がない、っていうのは前提に近いものがあるので、「まず組織」だと思いますけどね。

オシムさん、頼んまっせ(笑)。

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