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2006年01月18日

●『消えた魔球』


夏目房之介著『消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか』(新潮文庫)読了。前に『マンガの深読み、大人読み』をレヴューした時に「夏目房之介という人は、初期の『Number』で連載を持っていて、古いスポーツマンガについて模写(引用?)も交えながら楽しく紹介していたような記憶があるな。あのコーナー、どこかで単行本に収録されたりしてないのかな?」と書いたら、速効でご本人から「単行本化され、その後新潮文庫になりました」とのコメントをもらったのだった。ネットってスゴイかも(笑)。しかし、いざ探してみると既に店頭にも在庫も無いようなので、Amazonのマーケットプレイスで購入。

 
いい意味でも悪い意味でもグラフィック化が進んだ今の『Number』は、どのページも「角を触れば指先が切れる」上質紙でできているが、初めの頃は雑誌の中程に普通の週刊誌のような紙質のところがあり、連載コラム等小さめの記事が掲載されていた。その中で丸々1頁を占有していたのが夏目さんの「スポーツ漫画学」である。気楽に楽しめ、それでいて他の雑誌ではまず読めない性質のコーナー。昔の、洒落っ気たっぷりで企画力もあった『Number』を象徴する部分だったと、僕は勝手に思っている。
 
内容的には、『巨人の星』『アストロ球団』『タッチ』『リングにかけろ』『1・2の三四郎』等々、日本を代表するスポーツ漫画を取り上げ、活字と絵(模写)を駆使して紹介し、分析し、時には(いや、「しばしば」か(笑))ツッコミを入れるというもの。荒唐無稽さをノリノリでいじる回(例:『アストロ球団』の奇人変人たち!)あり、物語的分析(例:『タッチ』はいかに凡百のラブコメを超えたか)あり、さらには著者お得意の表現論も随所に出てきて、実に幅が広い。面白い。『プロゴルファー猿』のカンフー・ゴルファー(ヌンチャク型クラブを愛用!)には腹抱えて笑っちゃったよ。
 
読んでてちょっと思ったのは、この本、絵の部分では著者自身とベロ出しタヌキの2人が作品の紹介とツッコミをこなすのだが、夏目さんのコミカルな絵柄(写真参照)が実にぴったりはまっているということ。愛嬌のあるキャラクターだから、イジりまくっても作品を貶める印象にはならないのである。これが、みなもと太郎や吾妻ひでおならまだしも、さいとう・たかをの絵だったらこうは行くまい。当たり前か。本文もそうだけど、愛とかシャレとかが感じられるのがいいんだよね。ただ馬鹿にしたり、キツく切り捨てるのではなくて。
 
まあ、出版から15年も経ってしまっているだけあって、少々古びた部分があるのは否めない。例えば、サッカー漫画について一切触れられていない、とかね(そういやあの頃の『Number』ではサッカー特集なんてほとんどなかったな)。でも、それにしても、これだけ楽しめる本が絶版になってしまっていること、そして、後に続くものをあまり見かけない(スポーツ漫画のデータ本みたいなのは色々あるけど)ことは、いささか残念。僕が知らないだけかもしれないが……。
 
とにかく、古本であれなんであれ、手に入れてみる価値はある本だと思う。僕の知り合いで希望する人にはお貸ししますよん。

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コメント

自分は単行本持っています。
これはBS2の人気番組「マンガ夜話」のひな形ですね。

>これはBS2の人気番組「マンガ夜話」のひな形ですね。
ああ、なるほど。書籍メディアではなく、テレビメディアへつながって行ったのか。

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