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2005年08月15日

●8月15日正午、皇居前広場に行った


ふと思い立って、昼前から皇居へ。特別な理由はないのだが(僕は右翼ではない。どちらかと言えば左)、4月にビデオで観た岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』のラスト、黒沢年男と中丸忠雄演ずる青年将校が皇居前広場で自殺するシーンがやたら印象に残っていて、せっかくの終戦記念日なので現地へ出かけてみることにした。「8月15日の皇居前というのはどんな空気なのだろう」という。

最初は二重橋まで愛車(ママチャリ)で行くつもりで、11時頃家を出て大久保通りを東へ向かった…のだけれど、途中大久保近辺の人の多さに苦労して、11時40分の時点でまだ飯田橋。これは正午に間に合わんということで(間に合わなくても何の問題もないのだが)自転車を置き、タクシーを拾う。

タクシーの運転手さん(60歳台かな?)に行き先を告げると、ちょっと怪訝そうな顔。行き先が行き先だけに、もしかすると何も知らない阿呆か、それとも右翼かぶれの若造と思われたのかもしれない。「今日は天皇陛下が武道館に行ってるし小泉首相の靖国参拝に対するデモが出ているから、相当警戒されてるよ」から始まり、いつの間にか終戦記念日トークに。九段下で窓の外を見ると、なるほどプラカードを掲げた集団と機動隊が揉み合っている光景が目に入った。

話を聞いてみると、その運転手さんは昔米軍の下請けの会社で働いていて、ベトナム戦争の戦死者の遺体搬送業務等をしたりしていたそうな。「戦争なんか1つもいいことないよ」「偉い人は死んでも棺に入れてもらえるのさ。下っ端は袋に入って山積み」「テルアビブに行った時は、日本赤軍の乱射事件の1時間後でエライ目に遭った」「中東戦争はベトナム以上に悲惨だった」…etc。「ははあ、そうですか」とひたすら聞き入る。靖国参拝については、「戦争で死んだのは兵隊さんだけじゃない。千鳥ヶ淵に戦没者墓苑ができたのに、なぜわざわざ隣国に嫌われてまで公式参拝しなきゃならないのか。どうしてもしたければ夜中にこっそり1人ですればいいじゃないか」だそうな。全く同感です。短い時間だけどもいい話ができた。


で、何とか正午直前に皇居前に到着。夏の日差しがギラギラ照りつける中、しばし佇み、辺りを歩いてみる。当たり前だが、追悼式典等は別の場所でやっているし、天皇陛下はお出かけ中とのことで、特に何かが行われているわけではない。観光客がまばらにいる程度で警備もあまり神経質には行われていない様子。印象に残ったのは、とにかく太陽の存在の大きさ。あれだけひらけていて平らで、砂利の地面で照り返しがある広場は東京では他にちょっと思い当たらない。そのくせ周りには、コントラストとなる緑や水が豊富だったりする。いや、すごいな、あの暑さ、あの光は。60年前の正午も同じような日の光が降り注いでいたのだろうか。


ちなみに、『日本のいちばん長い日』の中で青年将校が自殺(切腹とピストル)したのは、左の写真で観光客の列の最後尾の辺りだと思われる。聞くところによれば完全なゲリラ撮影だったそうである。1967年当時の警備態勢がどうだったか知らないけれど、とにかく凄い度胸ではあるな。

帰り、楠正成像を取り囲む人垣を横目で見ながら地下鉄の駅へ。入口を下りかけたら、階段でホームレスが寝ていてちょっと驚いた。その先の通路でもおっちゃんが寝ている…。うーむ。

有楽町線で飯田橋へ戻って再び自転車に。ダメもとで前から行ってみたかった「斑鳩」をのぞいてみたが、長蛇の列で断念。やはり開店前に並ばないといかんのか?仕方がないので早稲田通りへ出て、「青葉」の飯田橋店で特製中華そば。中野本店より魚介の香が強いような気がしたのだが、どうだろう。まあそれなりにうまかった。ダラダラ汗を流しながら完食。

大久保通りを西へ40分余り、ようやく家に到着。時計は午後3時。疲れた…。


夕方、カレーを作りながら朝JSPORTSで録っておいたジロ・デ・イタリア第17ステージの録画放送を観る。ジロは今年ツール・ド・フランスより前に行われたレース。急傾斜の山岳コース、繰り返されるアタックがなかなかの迫力だった。優勝は残り数kmで仕掛けたバッソ。1回のアタックで、他の選手に追いすがる余裕を全く与えず引き離して完勝。強いなあ。わずか数日前には体調を崩して物も食べられなかったというのに。やっぱり彼はスーパーな選手なんだね。もっとも、今年までのツールでは、その彼をもはるかにしのぐ超人がいたわけだが。


夕食は手製のチキンカレー。ジャガイモやニンジンが半ば溶けるほど煮込む。我ながらなかなかにうまくできた。おかわりもして2杯をぺろり。ただ、煮込みすぎてちょっと鶏肉の存在感が薄かったような気もするので、そこは改善が必要かもしれない。やっぱ骨付き肉も使うのがいいのかな。

夜は昼間の疲れが出てダウン。外で雷鳴や雨の音が響く中、ベットに伏してウトウト、あるいは本を読んで過ごす。今年の我が家の8月15日は割と平穏に終了。これからの60年も、この平穏が続くことを願いたいね。

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