●B29とレコード、ツィゴイネルワイゼン
先日、都内の某博物館で新規の収蔵資料に関する仕事をしていた時の話。
今年、その博物館に太平洋戦争時に都内で拾った「高射砲の弾の破片」を寄贈してくれた方がいて、それはそれでもちろん貴重な(何しろ70年前の戦争を生で伝える)資料なんだけど、添えられていた手紙に書かれていた体験談が興味深かったのだ。
その方はいわゆる東京大空襲の翌日(つまり1945年3月11日)、ご自身はなんとか難を逃れて焼け野原となった都内を歩き回っていたとのこと。で、とある橋のたもとにたどり着いた時、おそらく偵察か写真撮影をしていたのだろう、米軍のB29爆撃機が低空で飛んで来たのだそうな。
とっさに身を隠したところ、特に銃撃を加えたり威嚇したりするでもなくB29は飛び去っていったのだが、頭の上を通過する際にB29の機体からサラサーテ作曲のヴァイオリン曲『ツィゴイネルワイゼン』が聞こえてきたのだ、と……。