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2014年05月19日

●堅守だからこそ、攻撃が勝負

FC東京 3−0 ガンバ大阪 (J1第14節 味の素スタジアム)
 
 
セレッソ戦・横浜戦の熱い勝利からゴールデンウィークの3連敗と徳島戦の残念な引き分けを経て迎えた、W杯中断前最後のリーグ戦。東京ファンにしてみれば不安も大きかった一戦だが、蓋を開けてみれば久しぶりに攻撃陣がダイナミックな速攻で畳みかけて3点差の快勝。5試合ぶりの勝点3で一息ついた形となった。
 
 
この試合は何といっても開始早々に得点できたのが大きかった。まだキックオフから40秒も経っていなかっただろうか、ボックス右手前でポストに入った武藤がDFの背後へパスを流して河野が突破。ゴール前に迫ってからマイナスに折り返したボールを、エドゥーがノートラップで蹴り込んでゲットした。4試合無得点が嘘のようなあっけない先制点。ガンバDFは人数は揃っていたものの、東京の早くて速い攻撃に対応できず。

直後の3分、今度は河野が左タッチ際のキープからSBの背後へボールを流し、外を追い越して抜けた武藤が、弧を描くドリブルで一気にボックス左手前へ進出。立ち塞がるDFにもめげず、2万人を超える東京ファンの「撃て!」との叫びに応えるかのように武藤が右足を振り抜くと、東口の横っ跳びも届かずボールはゴール左隅に転がり込んだ。電光石火の連続得点。東京としては、これでぐっと戦いやすくなった。

そこから東京は一旦落ち着いて自陣に早く守備をセットするよう努め、相手のパスの停滞を待ってボールを狩りに行く。対するガンバは高いポゼッションから宇佐美・倉田で勝負する形で攻略を図る。ガンバがサイドを基点にいくつかチャンスを作り、特に30分のCKでの西野のヘッダーは決定的だったが、ゴールライン上で太田がナイスクリア。途中から中盤を4枚にするシフト変更も功を奏し、東京が無失点で前半を終えた。

後半の立ち上がりは一進一退だったが、次の得点も東京。52分、FWのフォアチェックでガンバのパス回しが乱れたところを逃さず高橋がカットし、ダイレクトでボックス前のエドゥーへ。エドゥーはDFの寄せが遅いと見るやすかさず反転して浮かしたボールを左足で引っぱたき、見事な弾丸ライナーのミドルシュートがゴール右隅に突き刺さった。エドゥーの個人技はもちろん、秀人の判断もキラリと光る得点だった。3−0。

3点差となったことで「勝負あり」の雰囲気となり、焦るガンバのパス回しに乱れが出て、ますますいい形でボールを奪えるようになった東京は余裕の展開に。ガンバは岡崎・リンスと投入して巻き返しを図るも、東京も東・羽生・平山と「落ち着かせる」交代で流れを渡さない。ただ、逆襲速攻にあまり人数をかけなかったのと、正面FKのチャンスで太田のシュートがポストに嫌われたこともあり、追加点は奪えなかった。

それでも、東京の組織守備は最後までガンバのパス攻撃に綻びを見せず、4分間の追加タイムも危なげなく過ぎて試合終了。ホッと胸をなで下ろす勝点3獲得、である。
 

実は前の勝利からまだ1ヶ月も経ってないんだけど、試合の多いGWに連敗したもんだから気分的には随分長いことモヤモヤしてた印象だったのだ。嬉しいのはもちろん、それ以上にホッとする結果だった。
 
色んな人が書いてたけど、ここ4試合にしてもセットプレー等でポカはあったにせよ守備の出来は決して悪くなく(何しろたったの3失点)、「後は得点」という状況だったわけだ。で、この試合では守備は相変わらずのまま3得点。もちろんサッカーは攻守を完全に分離できるものではないし、堅守の副作用としての得点力不足という面もあったとは思うんだけど、やっぱりアタッカー陣が活躍してくれなきゃ勝てないよな、と。

奪ったゴールはいずれも「これが見たかったんだよ!」という、爽快なものだった。

1点目と2点目は、いずれも河野と武藤の絶妙のコンビネーションによって相手DFの裏をとり、鮮やかに守備を破ったもの。ここ数試合はサイドに回すも崩せず、手詰まりの結果として左サイドから太田がクロスを上げては失敗、という繰り返しに陥っていただけに、それとは全く異なる攻め手が見られて本当にスカッとした。追い越す動き、前に出る勢いの大事なことよ。抜けた後のプレー選択も的確だったし。

3点目のエドゥーのゴールは、何度見直しても「素晴らしい」のひと言。秀人先生の鋭いパスカットから始まって、エドゥーの判断と反転の動き、ボールコントロール、シュートの速さと弾道、全てが美しいゴラッソだった。スタンドで見ていて、撃った瞬間入ると思って「やった!」と声を上げたもの。本当に。当たり前っちゃ当たり前だけど、チームのプレーの流れが良いといい個人技が出るものなんである。

この試合ではガンバのDFがあまり強力でなかったこともあり、本当に攻撃が改善したのか、今後もこういうパフォーマンスが続けられるのかは微妙。でも、鹿島戦やセレッソ戦の快勝(とGWの連敗)が偶然でなかったのはよくわかった。今後について言えば、引いて守る相手に勝つためにはセットプレーでももっとチャンスを作れないといけないよね。ついでに守備の方も、全体的には安定してるけどセットプレーはちと怖い。

まあ、いずれにせよ、たかが1勝、されど1勝。今節終了後の順位表を見ても中位以降で団子になっている中に残れたという状況に過ぎず、全然安心はできないのだが、こういう快勝がサポーターの気持ちを落ち着けてくれるのは確かだろう。これならまだまだ挑戦は続けられるな、と。そういう意味ではこの勝利は本当に大きい。夜には久しぶりに美味しいお酒を飲むこともできたしね。ありがとう!
 
 
[付記]

今シーズンは毎回試合後の監督コメントが楽しみなんだけど、今回は特に面白かった。

【J1:第14節 F東京 vs G大阪】マッシモフィッカデンティ監督記者会見コメント(J's GOAL)

色々興味深いポイントはあるんだが、まずはフィッカデンティさんもここ最近の結果によほど鬱憤がたまっていたのか、実に饒舌だな、と(笑)。その中で、ゴールを奪うということやチーム作りに関する考え方、選手たちへの要求、相手への敬意、ミスをした選手への思いやり、試合内容の分析や采配の狙い、選手たちが見せたパフォーマンスへの誇りや自らの信念、といったものがギュッと詰まっていて実に読み応えがある。

特に「サッカーはタイミングによって成り立っている」というのは名言だと思った。フットボールというのは単に選手の配置によって成り立っているのでもなく、ただ走り回ったり繰り返したりすれば良いわけでもない、ということ。動く(動かす)べき時に、動く(動かす)べき場所に動く(動かす)こと。当たり前のことなんだが、それをきちんと簡潔な言葉で言い表せる人って意外と少ないのではないかな。

まだきちんと結果が出ていない段階で言うのもなんだけど、こういう監督と一緒にやれるのはチームにとっても選手にとってもそして僕たちファンにとっても、良い経験というか、いい勉強になるのは間違いない。いや、この後、結果がついて来てくれればホント最高なんだけどね。マッシモ東京、頑張ってほしい!
 

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