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2014年04月20日

●君は、高橋秀人と太田宏介の躍動を見たか

FC東京 2ー0 セレッソ大阪 (J1第8節 味の素スタジアム)
 
 
多摩川クラシコの惨敗後、リーグとカップで3勝をあげ、前節も「4-1-5対策」が功を奏して広島攻撃陣をほぼ抑え込む惜敗。シーズン序盤の苦戦から流れが好転しつつあるだけに、今回は東京にとって是非とも勝ちたい試合であった。柿谷・フォルラン効果か4万大観衆を集めた味スタで行われた一戦は、戦術と個人技のバランス良いサッカーを披露した東京が強豪セレッソ大阪に快勝。
 
 
この日の東京は2トップ平山・エドゥーの下に河野を置く4-3-1-2の布陣でスタート。いつものように奪い所を見定めたボールへのアタックから、前線への縦パスを基調に速攻を狙っていく。対するセレッソは4-4-2の布陣で、広く左右へパスを回しながら、フォルラン・南野の仕掛けに柿谷の変化を加えながらDFライン裏を狙う。前半はどちらも守備を崩しきらず、局面でつぶし合いが続くタイトな展開となった。

24分、クロスにニアで合わせた杉本のダイビングヘッドは権田が弾き出す。28分、東京は右サイドの切れ味鋭いパスワークから米本がミドルシュートを撃つも、GKキムが横っ跳びでセーブ。その他双方チャンスになりかける場面は幾つかあったが、DF陣が何とかカバー。終了間際にはCK後の混戦から東京ゴール前にボールがこぼれる場面があったが、権田が押さえて事無きを得る。互角の形勢でハーフタイムへ。

 
後半に入ると中2日の疲労が出たか、双方とも守備の出足が鈍り、よりオープンな攻め合いに。50分、左サイドを持ち上がった東が仕掛け、こぼれ球を拾った米本が正面からシュートするも、きわどく外れ。その後はセレッソに押し込まれる場面が多く、柿谷のヘッダーが枠をかすめるなど危険な雰囲気に。そこでフィッカデンティ監督はエドゥーに替えて武藤を投入。この判断が流れを呼び込むことになった。

66分、左タッチ際で粘る武藤のパスで太田が縦に抜け、丸橋のタックルを鮮やかにジャンプでかわしてゴールライン際を一気にえぐり込む。太田が入れた速いクロスをCBの間で待ちかまえたのは平山!豪快なダイレクトシュートにキムは反応できず、ボールはゴールネットに突き刺さった。太田の突破とクロスの技術、平山の位置どりとシュートの全てが「お見事」としか言いようのないナイスな得点!1-0。

先制直後は完全な東京ペースとなり、武藤がDF2人をかわして決定的なクロスを平山に合わせる場面もあったが、シュートは惜しくも枠外。追加点の欲しい東京だが、フィッカデンティ監督の次の手は河野OUT三田IN、三田が左MFに入って4-4-2へシフトした。これに対してセレッソはフォルラン→扇原の手を打つが、中盤を厚くした東京の守備は米本を中心に次々とボールを奪ってペースを渡さない。

追加点は77分。またも左タッチ際で粘る武藤が中の三田へつなぎ、疾風のようなスピードで追い越していく秀人がパスを受けてボックス左へ。ここで秀人が内側に走り込む武藤へヒールパスを通し、一気にゴール前へ進出した武藤はDFに絡まれながらもキムの股下を抜いてゲットした。労を惜しまないフリーランと互いの動きと距離をしっかり意識した連携、そして倒れない強さと技術。素晴らしい得点だった。2-0。

その後は再びセレッソの攻め込む場面が増えるが、東京は守備陣形を崩さず守り、右サイドから何度か入ったクロスも大事には至らず。前線では最後までボールへの執念を見せ続ける平山の頑張りもあって、結局2点差のまま試合終了となった。東京、久々にホーム大観衆を前にしての勝利!!
 

いやー、実に気持ちのよい勝利だった。緊張感のある展開、痛快な攻撃と美しい個人技、守備の頑張りと的確な采配、そして何より、開幕からのチームの進歩ぶりを見ることができた。

何が良かったって、今季の守備を中心とする約束事はきっちり守りながら、攻撃面での連携が高まってきているし、さらには個々の選手もきちんとその特長を出すことができたこと。シーズン初めの頃は新監督から与えられた戦術を「こなす」のが精一杯という印象だったけど、徐々にそれを勝ち負けの駆け引きの中に落とし込めるようになったというか、ようやく戦術がくびきではなく武器になってきた感じ。

都並敏史さんが「マッチデーJリーグ」でこの日の東京の戦いぶりを「だいぶほぐれてきて良くなった」と評していたけれど、「ほぐれてきた」というのはいい表現だな、と。柏戦や甲府戦の頃はカッチカチだったもんね。わかりやすいところで言うと、得点につながった秀人の前線への飛び出しとか、武藤や太田の躍動感溢れる仕掛けとか。あと米本も役割を果たしつつ彼らしいボール奪取ができるようになってきたよね。

そうしたいい流れの中で生まれたこの試合の2得点は、本当に素晴らしいものだった。シュート自体もだけど良かったけど、それにつながる決定的なプレーがまた最高だった。ヒラリと鮮やかにDFのタックルをかわした太田の跳躍。一気にセレッソの守備網を突き破った秀人の疾走。まさにセクシーフットボールというか、「ああ、俺はこれが見たくて毎週スタジアムに足を運んでいるんだ」と改めて痛感する瞬間だった。

フィッカデンティ監督の采配は、この試合でも的確だった。双方共に寄せの鋭さがなくなってスペースが出来始めた時に武藤を入れたのは好判断だったし、先制した後相手が前がかりになってくるのに対して撃ち合いに持ち込まず、4-4-2にして中盤守備を固めながらカウンターを狙う形にしたのも、東の負担を減らしながら米本の守備力(と高橋の判断力)を発揮させることになり、勝利の確率を高めたように思う。

トップ下に河野を置いて小笠原を封じ込めたナビスコ鹿島戦といい、5バック+中央偏重守備で相手の攻撃を封じた広島戦といい、フィッカデンティさんの采配は変化があるし、意図がしっかり感じられるんだよね。個人的にも、例えばモウリーニョさんとか(東京を率いて間もない頃の)城福さんみたいに相手のやり方や状況に応じてしっかり「対策を立てる」タイプの監督は好きなんである。成功してほしいな、と思う。

個々の選手では、MVPは平山。先制ゴールはもちろん、90分前線で体を張って相手の脅威となり続けた貢献も非常に大きい。鋭い逆モーションでマーカーを置き去りにした姿とか見ると、ゴールゲッターだった高校時代の感覚が戻ってきたのかも、と思う。あと攻撃陣では、もちろん武藤。当たり負けしないしなやかで強靱な身のこなし、流れるようなドリブル。ライアン・ギグスみたいなFWになってくれるかも。

中盤では秀人先生がピカイチの出来だった。周りの選手たちと活かし合いながら、激しい当たりの守備や思いきった飛び出しで攻守に貢献。この出来ならW杯メンバーもあり得るよな、と。米本や東も、一時の迷いは吹っ切れてきたように見える。守備陣では、吉本が素晴らしかった(お立ち台に呼んだ人、エライ)。平山もそうだけど、一度「ここまでかな」と思った選手がまた伸びてものになるのはホント嬉しいよね。
 
 
……と、嬉しさのあまり長々と書き連ねてしまったが、こういう「行けるぞ!」という時に限って、こないだの多摩川クラシコみたいなことになったりするんだよな、経験上(笑)。発展途上ではあるし、順位も12位だし、安心するにはまだまだ早い。ただ、それでも、今回このような好ゲームを見せてくれたことで、今後が楽しみになったのも間違いない。辛抱のし甲斐があるというか。うん、頑張ろう。
 

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