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2014年03月20日

●本当の「新しい東京」はここから始まるか

FC東京 3−1 鹿島アントラーズ (ナビスコ杯第1節 味の素スタジアム)
 
 
リーグ戦が開幕して3試合、善戦しながら勝ち星がないFC東京。不安を募らせるいとまもなく、今度はカップ戦の開幕である。まだ肌寒い平日の味スタで行われた試合は、若手を交えたメンバーで臨んだ東京が好調・鹿島に快勝。お待ちかねの初勝利だ!! 
 
 
東京は神戸戦から大幅にメンバーを入れ替え、DFには吉本と新人の松田が入り、アンカーは野澤。その他羽生・平山・河野が先発するなど、新鮮な顔ぶれとなった。最初は4-3-3かと思ったのだが、よく見ると平山・渡邉が2トップとして前に構え、河野はその後ろで幅広く動く形。河野は攻撃ではよくボールを引き出して鹿島DFの隙間を突き、守っては小笠原にプレッシャーをかけ続ける。彼を中心に東京がペースを握った。

7分、東京は鹿島陣でパスをつなぎ、巧みにボールを収めた米本が反転で浮き球パスをゴール前へ送る。左サイドから猛然と加速した河野が昌子を振り切り、GK佐藤と交錯するようにしてボールを押し込んだ。1-0。続いて9分、千真とのワンツーで抜け出した河野が左サイド深く一気にえぐってマイナスのクロスを入れ、フォローする太田がニアサイドを撃ち抜いてゲットした。あっという間の、鮮やかな連続得点。2-0。

2点のリードを奪った東京は慌てずよくパスを回し、守備に回っても適度に狭い間隔を保ちながら丁寧なマークの受け渡しとここぞというポイントでのプレスを繰り返す。鹿島はボール保持では上回っているのだが、前半半ばを過ぎるまでは可能性の低いロングシュートを除いてほとんど見せ場を作れなかった。29分、右サイドで米本→羽生→河野→ボックス内の平山と多角形のパスが通り、平山が倒されるも笛は鳴らず。

35分、鹿島はCKからようやくダヴィがヘッダーを撃つが、枠外。41分、左サイド攻撃から太田のクロスが逆サイドに抜けたところを吉本が折り返し、ボックス内の平山がDFに囲まれながら巧みに足下に収めるも、シュートはH-Ⅱロケットばりの宇宙開発(笑)。平山も悪くはないのだが、あとちょっとテンポを上げられればなあ、という場面が多い。ロスタイムのダヴィのヘッダーも外れ、2点リードで前半終了となった。
 
 
後半、鹿島は立ち上がりから本山を投入して攻勢に。両サイドが広く開いて左右にパスを回しながら押し上げる。48分、大きな展開から山本が切れ込んでシュートするが、バーの上。自陣からなかなか出られなくなった東京は54分、河野OUTで三田IN。三田は良い出足からカウンターの軸となり、対する鹿島は豊川→カイオ、東京はさらに千真→武藤の交代。これらの交代で、鹿島が押し込み、東京が逆襲を狙う形が定まった。

65分、ショートカウンターから武藤が素晴らしいスピードで左サイドをえぐり込むが、平山へのラストパスはDFが間一髪クリア。67分、鹿島のボックス周辺のパス回しから本山のミドルシュートが塩田の正面を突く。その直後には左から切れ込むカイオの弾丸シュートがゴールマウスを襲うも、塩田が横っ跳びワンハンドで弾き出す。

決定的な追加点が入ったのは70分。右サイドでキープする武藤を松田が勢いよく追い越し、鋭いクロスを入れる。中に走り込んだのは背の低い三田だったが、巧みなコースどりでDFの前に出て頭で突き刺した。お見事!3-0。ところが直後の71分、鹿島はボックス手前から小笠原がゴール前に絶妙の浮き球を入れ、DFと入れ替わって飛び込む本山が決めた。得点直後で守備が雑になったようにも見え、もったいない失点。3-1。

しかし、ここから東京は我慢の守備と逆襲速攻狙いのサッカーを徹底し、鹿島に決定機を許さない。75分、遠藤のスルーパスでDFの間を抜けた柴崎がシュートするが、塩田がストップ。79分にはカウンター要員の石川を投入し、武藤・平山と3人で鹿島陣コーナー付近にボールを運ぶ。ロスタイム、鹿島の波状攻撃から柴崎が撃ったシュートもポストの左に外れ、2点差のまま終了のホイッスルが鳴った。東京、今季初勝利!!
 
 
いやあ、まずは良かった。1勝できてホッとした。そして、実りある勝利でもあった。

成果の第1は、何といっても好調の鹿島に勝ったこと。アントラーズは今季ここまでリーグ戦3連勝。海外移籍の大迫が抜けたとはいえオーソドックスで質の高い組織力と個人能力は相変わらずで、この試合もリーグ戦ほどの迫力はなかったかもしれないが、小笠原・ダヴィ・遠藤などの主力はしっかり先発してきた。その鹿島から今季初、それもいい内容の勝利を挙げたのだから自信にならないはずがないだろう。うん。

次に、ガラリとメンバーを替え、若手や「控え」中心のメンバーで臨んだ試合で結果を出せたこと。もちろん現時点での能力はレギュラー組にかなわないし、若手については、攻守ともに荒削りな部分があったのは否定できない。でも、例えば河野や松田の躍動感、羽生の気の利いたプレー、塩田の安定感など、いつもの連中にはない良さがはっきり見えたのも確か。今後のチーム力向上に確実につながる内容と結果だと思う。

そして、僕が個人的に一番「これは!」と思ったのは、今季メインに取り組んできた3トップのサッカーとはちょっと異なるやり方を試して、しっかり機能させたことだ。顔ぶれや相手のシステムにもよるのだろうから、次はまた前の3トップの形に戻っているのかもしれない。だけど、戦術的な引き出しが増えるのは良い事に違いないし、フィッカデンティ監督がこの段階で「なかなかやるな」と思わせてくれたのが嬉しいよね。

いや、ホント、3試合結果が出てなくて何となくモヤモヤし始めていただけに、この勝利は大きい。この1勝でチームに弾みがついて、これから急上昇、とまでは行かなくとも成長軌道に乗ってくれれば何よりである。少なくとも「コンパクトで攻守の切れ目がなく、アグレッシブ」なフィッカデンティサッカーの長所は見えた……よね(笑)?

個々の選手について。河野は素晴らしかった。これまではポテンシャルを感じさせながらも結果につながっていなかったんだけど、この試合については堂々のMVPと言っていいだろう。攻撃はもちろん、小笠原や柴崎を自由にさせない(前半の)守備も良かった。新人の松田は、守備は危なっかしかったけれど、3点目のアシストは完璧だった。野澤と吉本は及第点、だろうか。武藤はフィニッシュのところだな〜。

若手だけでなく、この試合はベテランも持ち味を出して頑張ってくれた。羽生は派手さはなかったけれど、要所を押さえて「つなぎ役」として仕事をしてくれた。塩田はセービングの安定感が抜群。この調子なら、リーグ戦で控えに置いとくのがもったいないような。あと、中堅組は……森重はちょっとお疲れだったかな?平山は仕事はしっかりしてるけど、得点の香りがしないんだよなあ。太田はスタミナもすごいなあ、と。
 
 
てな感じで、久々の勝ち星で浮かれているのもつかの間、4日後にはもう次のリーグ戦、フロンターレとの多摩川クラシコが待ちかまえているのであった。この勝利が後で「ぬか喜びであった……」なんてことにならないよう、次はきっちりリーグ戦初勝利を挙げてほしいものである。頑張ってや〜。
 

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