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2014年03月02日

●FC東京の2014年は高橋秀人の双肩にかかっている(かもしれない)

柏レイソル 1−1 FC東京 (J1第1節 日立柏サッカー場)
 
 
マッシモ・フィッカデンティ新監督を迎えた我らがFC東京。今年は国内でプレシーズンマッチが開催されずファンにとっては情報の少ない中、例年より早い開幕戦は小雨降る日立台で行われた。
 
 
東京は事前の報道の通り4−3−3のフォーメーション。フラットな4バックの前にアンカー高橋秀人が構え、その両脇で東と三田が前線と後方を繋ぐ。FWは中央に新加入のエドゥーが入り、右に渡邉千真、左に新人の武藤。全体的にコンパクトさを保ちながら、ボールを奪うと素速く3トップにパスを入れる堅守速効型のサッカーである。対する柏はお馴染みレアンドロ・ドミンゲスを中心とするオーソドックスな4−4−2。

立ち上がり、昨年までと戦術が一変した東京は選手たちが役割をこなすのが精一杯という感じで、柏の方も異質なサッカーに面食らったか、比較的静かな攻防が続く。柏はドミンゲスがMFとDFの間でボールを受けて何度か突破を図るが、東京DFも森重を中心にFWへのパス経路を遮断してなかなかシュートまでは至らせない。28分、CKに合わせた森重のヘッダーが柏ゴールを襲うが、GK菅野が身を挺してセーブした。

試合が動いたのは、東京の中盤守備が2人のレアンドロをつかまえきれなくなった残り10分から。まず36分工藤のシュートが右ポストをかすめ、37分にもレアンドロが惜しいシュートを放つ。42分には左サイドをえぐった橋本のクロッシュートを権田が弾きだし、終了間際にはボックスすぐ外からドミンゲスが直接FKを狙うも枠外。そのまま0−0で前半終了となったが、東京にしてみれば救われた思いのスコアレスであった。

しかし、後半、いきなり先制したのは東京だった。46分、太田のアーリークロスをエドゥーが胸で巧みに左サイドに落とし、弾丸のような速さで走り込む三田がシュート!菅野に当たってゴールへ向かうボールを一旦はDFがかき出したものの、再び菅野に当たったこぼれ球を三田が押し込んでゲットした。1−0。こうなると堅守速攻サッカーはやりやすい。流れが一気に変わって東京ペースとなり、たて続けにチャンスを作る。

50分、右サイドの細かいつなぎからオーバーラップした高橋が抜け、グラウンダーのクロスを武藤がダイレクトで叩く。決まったかと思えるタイミングだったが、わずか右に外れ。53分にはCKの流れから千真の撃ったヘッダーがゴールポストを直撃し、こぼれ球を押し込もうとアタッカーが殺到するも柏DFがクリア。結果的には、ここで追加点を奪えなかったことが響くことになった。

柏が狩野を投入した直後の62分、目の覚めるようなダイレクトパスの交換からレアンドロの胸フリックで工藤が右サイドを抜け、鋭いシュートで権田の脇下を抜いてゲットした。1−1。そこからは、畳みかけようとする柏と逆襲を狙う東京とで攻め合いとなる。69分、CKの流れから武藤がゴール至近でシュートするが菅野が弾き出す。79分、右サイドを抜けたレアンドロのクロスにフリーの狩野が合わせたヘッダーは枠外で命拾い。

東京は武藤→石川の交代で4−4−2へシフト。82分、エドゥーのフリックパスで東がDFの間を抜け、逆サイドどフリーの千真へ……という場面は惜しくも合わず。84分には右サイドを抜けた工藤のシュートがポストを直撃し、こぼれ球を狩野が狙うも権田が好セーブ。さらにロスタイムにはエドゥーのドリブルシュートを菅野が止め、ドミンゲスがボックス内で撃ったボレーはバーを越えていった。結局、同点のまま試合終了。
 
 
アウェイでレイソル相手ということを考えれば、初戦としてはまずまずかな、と思う。

東京の取り組むサッカーが昨季までとは全く違う、新しいものなのはよくわかった。4−3−3という選手の並びだけでなく、全体はよりコンパクトに、守備はよりコレクティブに、攻撃はより速く、という感じ。ボール支配を重視して懐の深いパス攻撃を志向した(ように見えた)ポポヴィッチ監督のサッカーと比べると、パッと見の印象からしてガラリと変わっていた。そこにあるのは違和感であり、新鮮さでもあった。

もちろん、完成度はまだ低いのだろう。守備はコンパクト志向の割には囲みきれない場面があったし、攻撃も個人技頼みの形が多かった。それとやはりMFの3人、特にアンカーにかかる負担は大きいな、と。前半途中から柏は明らかに高橋の両脇のスペースを狙っていて、東・三田が攻撃に出るのが遅れたり、逆に戻れない(あるいは前後からのカバーが間に合わない)シーンが目についた。難しいシステムなんだろうね。

ただ、それでも、後半の初め頃はパスの流れもよく、得点シーンの他にも幾つか決定機を作ったし、MFの追い越しも加わって攻撃に迫力が出た。追いつかれてからもシステムを変えて千真をストライカー的なポジションに入れるなど、柔軟性を見せてくれたのも好印象だった(4−3−3原理主義みたいな監督だったらどうしようと思ってた(笑))。あとは結果が出れば文句なしだったが、今回は勝点1で満足すべきなのだろう。

まあ、ともあれ、フィッカデンティ監督のサッカーへの評価はまだまだこれから、ということで。早く初勝利を挙げて、落ち着いてチャレンジできる環境になればいいな、と思う。今年こうして東京がガラッと方針を変えてきたことについて色々と思うところはあるけれど、それについては僕の中でもまだ考えがまとまっていないので、おいおい書いていくことにしよう。

個々の選手では、攻撃ではエドゥー、守備では森重が素晴らしい活躍ぶり。エドゥーは闘志と器用なプレーぶりのバランスが良く、攻撃の中心となってくれそう。性格もいい奴そうだしね。森重はもう完全に「代表クラス」の格上感。システムが変わってやりやすそうに見えたのは三田、東、あと武藤もフィットしてた。千真と太田はストレスが溜まりそうだけど、でも彼らほどの選手なら活きる道はきっとあるはずだ。

で、やっぱり心配なのは秀人先生。いやー大丈夫なんだろうか(笑)。賢い選手だから攻守のバランスや要所への配慮、指示出しなんかはいいけど、何しろ真ん中を1人で受け持つようになるから。判断の速さや予測、周りを活かすプレーでフィジカル等の不利をどれだけカバーできるか。大いなる実験ではあるな。でも成功したらチームも彼自身もステップアップするのは間違いなく、楽しみでもある。FC東京の2014年は彼の双肩にかかっていると言っても過言ではない(かもしれない)。とにかく頑張ってほしい。
 
 
ということで、また一喜一憂の10ヶ月が始まった。今年もよろしくお願いします。
 

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