●今日は酒かっくらって寝ちまおうぜ (湘南×東京)
湘南ベルマーレ 3−2 FC東京 (J1第11節 BMWスタジアム平塚)
リーグ中断まであと3節、相手は16位に低迷する湘南。前節ホームで引き分けに終わった東京としては、是非とも勝ちたい一戦である。雨の降りしきる平塚で生観戦した。
序盤優勢に試合を進めたのはホームの湘南だった。攻守ともに気迫を前面に出したプレーぶりでスロースタート気味の東京に圧力をかけ、積極的にシュートを放っていく。11分、湘南の左サイド攻撃からのクロスを徳永がブロックしきれずボックス内に落ち、どフリーで拾った高山がシュートをゴール左上に決めた。東京にしてみれば目が覚めきらないうちにやられた、という印象の失点。0−1。
出鼻を挫かれた東京はさっそく反撃にかかるが、密度の濃い湘南の守備網を前にパスワークがなかなか機能せず、ほとんどクロスやシュートに至らないまま時間が経過していく。むしろ湘南の方が速攻でスムーズに東京陣深くへボールを運べている印象だった。
前半半ばを過ぎるとさすがに東京も攻撃が形になり始めるが、前線にボールが入ってもターゲットへのフォローが遅く、千真のシュートチャンスもほとんどないまま。40分には米本のドリブル突破からサイドへ流れた千真がクロスを入れ、果敢に攻撃参加した徳永がシュートを狙うもDFがブロック。湘南1点リードのまま前半終了となった。
後半になると監督の檄も効いたか東京はさらに攻撃的となり、高橋がCBの間に下がってボールをさばく形に変更して両SBを高く上げ、畳みかけていく。53分の右サイドFK、太田が入れたきついインスイングのクロスが敵味方の間を抜けてそのままゴールイン。1−1。さらに57分、ボックス手前でパスを受けた千真が左足を一閃!強烈なドライヴのかかったボールがGK阿部の手を弾いてゴール左上に決まった。ビックリするような逆転ゴラッソ。2−1。
ところがホッとしたのもつかの間、大きなミスが出てしまう。65分、DFラインのパス回しの中で水たまりに足をとられた高橋が転倒。すかさず詰めた馬場がボールをかっさらい、権田の頭上を抜くシュートを決めた。「あちゃー」という感じの、秀人先生痛恨のミスである。2−2。
そこからは既にキリノを入れていた湘南に対して東京も石川、李、平山と次々投入して攻め合いを挑む。71分、永木のクロスにキリノがどんピシャで合わせたヘッダーは、権田が素晴らしい反応で弾き出した。75分、ボックス手前から石川が強烈なミドルシュートを枠へ飛ばすが、今度は阿部が横っ跳びでファインセーブ。80分には李のクロスを巧みに足下へ収めた平山がシュートするが、惜しくもポスト右に外れ。
東京に再びミスが出たのは81分。下がってくるアーリアへ高橋がやや緩いパスを渡した瞬間、鋭いダッシュで永木が襲いかかってボール奪取、カバーの秀人も振り切ってシュートをゴール右隅へ決めた。「やってしまった」としか言いようのない大失敗であった。2−3。その後は味をしめた湘南FWの激しいフォアチェックが続く中、東京は左右に回して反撃を図るも、平山や徳永らのシュートはいずれも決まらず、湘南が逃げ切ってリーグ2勝目を手にした。
長いシーズンこんなこともあるさ、という気もしつつ、しかしリーグ戦の星勘定を考えればあまりにも痛い敗戦。
前半は確かに湘南の思うつぼ、という展開だった。だが、そこからハーフタイムでうまく選手たちの気持ちと陣形を切り替えて後半は攻勢をかけ、エースのスーパーゴールもあって逆転に成功。あとは慌てず丁寧に攻撃を組み立て、次第に焦って前に出てくる相手の背後を突いて3点目を奪えば何の問題もなく勝てていたはずだ。実際、僕もかなり楽観的な気持ちで試合を観ていたのだけれど……高橋やっちゃったなあ。
確かにピッチは水浸しで滑りやすく、難しいコンディションではあった。湘南のフォアチェックが素晴らしかったのもあるだろう。でも、最後方に位置する要のポジションがあれをやっちゃあおしまいだよなあ、という。3失点目の方も、もちろん奪われたアーリアも不注意だったのだが、高橋のパスも悪かった。おまけにその後さらにボールを奪われる場面があり、本人も浮足だっていい標的になってしまっていた。
試合後、高橋はユニフォームで顔をかくして涙も見せていたらしい。本人も責任を痛感しているのだろう。何というか、もともと体格や技術に恵まれているわけでもなく、ひたすら努力と知恵を積み重ねてのし上がってきた選手だけに、こういうポカはなおさら痛々しく感じられるんだよね。同じくミスをした長谷川アーリアジャスールが(内心はともかく)表面上は堂々と振る舞っているのと比べても、まことに対照的。
僕が「個人のミスで負けてベソ」というシチュエーションで思い出すのは、1999年J2第3節の新潟戦@西が丘である。後半残り少ない時間帯でCBの小峯がバックパスをかっさらわれそうになって決勝点となるPKを与えてしまった試合。小峯が泣きながらゴール裏に謝りに来て、サポーターから激励やら叱責やら色々と浴びていたのをよく覚えている。あの時は最終節で新潟にリベンジして昇格を決めたことで、チームとして「取り返す」ことができたのだが……。
まあ、高橋の場合も、いつか笑って話せる日がきっと来るよ。というか、東京ファンとしては(代表だなんだとは関係なく)高橋にもっともっと良い選手になってもらって、この日の出来事なんぞ笑い話の類にしてもらわないといかんよね。もちろん、チームにも今後の好成績でこの敗戦を帳消しにしてもらって、ね。今日はとりあえず、酒かっくらって寝ちまうことにしようぜ(笑)。