●高橋秀人のガッツポーズ（とGK林君の不幸な出来事） （東京×清水）
FC東京 ２−０ 清水エスパルス （J1第12節 味の素スタジアム）
前節はミスにより下位相手に手痛い敗戦を喫した東京。水曜のナビスコ杯を挟んで迎えた今節は、陸上トラックのエンジ色も鮮やかな味スタで生観戦した。
前半は双方とも攻撃よりも守備が目立つ展開となった。長谷川を負傷で欠き千真・李の2トップで臨んだ東京はいつものようにパスを繋いで攻め上がろうとするが、パスワークに変化が乏しく、10人が精力的にチェックを続ける清水の守備を突き崩せない。前半中頃、チャンのフィードを李が落として千真がシュートした場面はポスト左に外れ。右サイドをえぐった徳永が折り返したクロスも、ルーコンの寸前でDFがカット。
一方の清水も、守備はコレクティブに機能しているものの攻撃はあくまでバレー頼みで、その他のアタッカーは小粒感が否めない。バレー目がけた縦のボールをチャンと森重が着実にカットするシーンが続く。特にチャンは柔らかい身のこなしと軽いステップワークで存在感を発揮。24分にはフォアチェックから河井がクロスを入れるが、バレーのヘッドは威力なく、権田が難なくキャッチした。
大きなチャンスが生まれたのはようやく終了間際。40分、吉田が入れたクロスがバレー（？）に当たって逆サイドに抜け、切り返して徳永を外した伊藤がシュートするが、出足良く飛び出した権田が防ぐ。これはビッグセーブだった。その直後、東京も攻め上がった米本がボックス左角で潰れ、こぼれ球を拾った千真が右足を振り抜くもシュートはきわどくサイドネット。スコアレスで前半終了となった。
後半になると東京が前がかりの攻勢に。後方からの攻撃参加や追い越しがぐっと増え、グイグイと押し込んでいく。52分、徳永のパスでボックス右へ飛び出したルーコンが猛然と内側を上がる徳永へリターン。徳永が軽く触ってボールを残し、後に続いた高橋が右足を一閃すると、鋭く地を這うボールはGK林の股間を抜けてゴールイン。ガッツポーズする秀人先生！つーか、林やっちゃったな（笑）。1-0。
55分、後方からのFKに反応したバレーがヘディングシュートを枠内に飛ばすが、権田が横っ跳びでまたもグッドセーブ。そして60分、左サイドでパスを受けた千真が飛び込む李を狙ってアウトスイングのクロス。これは一旦林が前に出て弾いたものの、そのボールがゴール正面にいたルーコンの胸に当たってしまい、バウンドしてゴールの中へ。今度はミスではないが、これも林にとっては気の毒な得点だった。2-0。
ここから数分間はさすがに清水も前がかりになる。62分、アーリークロスに合わせたバレーのヘッダーがバーに直撃してヒヤリ。その直後にはバレーが左サイドをえぐってクロスを入れ、村田のシュートを太田がきわどくブロックしてまた冷や汗。
しかし、東京が攻め上がりを控えて自陣の守りを固めると、清水の攻撃は途端に勢いを失ってしまう。残りの時間は東京が主力を若手に入れ替えながら時計を進め、終盤には逆に途中出場の田邉・三田・林に古巣相手でハッスルする太田を加えた4人の速攻でチャンスを作る。得点には至らなかったが、太田のクロスに飛び込んだ林があわやの場面を作るなど、いい雰囲気のままタイムアップとなった。東京、今季6勝目である。
前節ショッキングな負け方をしただけに、今週はとにかく勝つことが大事だった。だから、2-0の勝利は満足行く結果と言っていいだろう。勝ってよかった。
内容的には、可もなく不可もなくという感じだったろうか。前半は頑張ってボールを回すけど変化やタメが足りなくて、なんというか、味付けはいいんだけどコクやとろみが足りない料理みたいな。アーリアの不在を感じる攻撃だったし、正直、得点の匂いがあまり感じられなかった。メインスタンドにヨハン梶山が座っているのを見て思わず「おい、ユニフォーム着て来いよ」と声をかけそうになったよ（笑）。
後半になってからの攻勢はなかなか迫力があったと思う。ただ、最近はいつも後半になってようやくエンジンがかかるんだよね。もちろん後半の方が得点の確率は高いからそれはそれで正しいのかもしれないが、その前に失点してしまうことも多いので……裏を返せば、勝因は2得点まで清水の攻撃をシャットアウトした守備、ということになるのだろう。お互い守備はよかったけど、結果的に粘りきったのは東京だった、と。
MOMはチャン・ヒョンス。バレーを封じ込めた守備は素晴らしかった。正確なフィードと合わせて総合力の高い選手であることを再確認。加賀とはまた違うタイプの好選手だよなあ。柔のチャンに剛の加賀というか、技のヒョンスに力の健一というか。この2人に森重の悪どさを加えたら完璧ではあるまいか（笑）。この日は徳永・太田もよかったし、もちろん権田は凄かったし、DFで勝ったというのは確かにあるな。
忘れちゃいけないのは先制点の高橋秀人か。さっそく取り返す機会が巡ってきてよかったね、という。あの場面、鋭いシュートも素晴らしかった（秀人はシュートをふかさない技術はピカイチだ）けど、SBとボランチがたて続けに突入する攻撃の厚みが得点を呼んだんだよね。トンネルしちゃった林君には悪いけど、いいゴールだったと思う。秀人の前にボールがこぼれた瞬間に東京ファン全員が「撃て！」と叫んだよな（笑）。
ちょっと気になったのは、左MFの位置にいた東があまり活躍できていなかったこと。トップ下でこそ能力を発揮するタイプなのはわかるんだが、そもそもトップ下を置かない布陣もあり得るわけで、もうちょっと何とかならんもんかな、とは思う。千真とルーカスは2点目の場面できっちりお仕事。三田・林・田邉の若手組は（疲労した相手であることは割り引くとしても）次に期待を持たせる動きだったかな、と。
ということで、何とか白星先行の状態に戻してリーグ戦中断まであと1試合。次戦はアウェイの鹿島という難しい一戦ではあるけれど、ここで勝てれば湘南戦やナビスコ杯敗退のショックもさすがに払拭できるのではなかろうか。つーか、俺らもその後1ヶ月半観られないんだから、とにかく勝ってもらわないと困る（笑）。ガンバレー。
