●悔しい悔しい、ああ悔しい (横浜FM×東京)
横浜Fマリノス 3−2 FC東京 (J1第4節 日産スタジアム)
ナビスコカップの快勝で調子を取り戻して迎えた首位マリノスとの一戦。3月末とは思えぬほど冷え込んだ日産スタジアムで生観戦した。
試合は序盤から緊迫した雰囲気の中で進んだ。互いにDFの寄せは厳しく速く、東京は渡邉千真・李の2トップに当ててからのタッチの少ないパス交換で、マリノスは縦横に動き回る中村俊輔を中心とする流麗なパスワークで、それぞれかいくぐろうとする。12分に東京が李と千真の豪快な2人カウンターで惜しい場面を作ると、15分と20分には俊輔が絶妙のスルーパスで兵藤のシュートチャンスを演出する。
26分、東京の左スローインからアーリア→ルーコン→東と長短のグラウンダーを素早く繋いで太田が左サイドを抜け、クロスが逆サイドに流れたところで待ちかまえた李がボレーシュートを叩き込む。かつて相手チームの10番から「部活サッカー」などと呼ばれていたチームとは思えない(真面目な話、ちょっと俊輔に感想を聞いてみたい(笑))、素晴らしいパス交換からの得点だった。1-0。
だが、その後はマリノスが攻勢に出る。この日は俊輔の出来が抜群で、東京はボールを奪えないばかりか巧みな配球で振り回され、次第に自陣へ釘付けとなっていく。32分、俊輔の強烈なミドルシュートを権田がバーの上へ弾き出す。36分にも高橋のボールをフォアチェックで奪った富澤のシュートを権田がパンチで防ぐ。東京も41分にカウンターから李がヘッダーでゴールを狙うが、GK榎本に防がれた。
後半になると今度は一転東京のペースに。ハーフタイムの檄が効いたか、前からの寄せが復活したことに加えて攻撃陣のパス回しも積極的になり、逆に横浜は攻めあぐむ姿が目立つように。54分、ボックス手前からアーリアがスルーパスを送って李が飛び出すがシュート寸前で榎本がセーブ。57分にも東→李→右の高橋と速くつなぎ、クロスに東が飛び込むも一歩届かず。観ていて気持ちよい攻撃が続く。
ところが、好事魔多し。59分にボックス正面でマリノスにFKを与えてしまった場面。俊輔のキックは壁に当たったもののそれが右隅の絶妙のコースに飛んでしまい、権田の横っ跳びも届かずゴールイン。何とも不運な失点だった。1-1。不思議なもので、これで流れは一気に横浜へ傾く。67分には端戸のキープから天野が右サイドを抜けてクロスを入れ、マークを外した藤田がヘッダーを決めてマリノス勝ち越し。1-2。
69分、李OUT米本IN。米本の投入で東京の中盤に運動量と激しさが蘇り、戦況はまたも一変する。71分、左サイドでルーカス・千真・東が細かくパスをつないで前進、DFの間を抜けたルーカスのシュートが右ポストを叩く。そして81分、中央でパスカットしたアーリアが猛然と持ち上がって右サイドへ展開、東がグラウンダーで折り返すと、アーリアのスルーでフリーとなった千真が冷静にゴール左へ流し込んだ。なんとセクシーな逆襲速攻!2-2。
こうなると東京は押せ押せである。SBの攻撃参加も増え、85分には米本のサイドチェンジで左サイドを抜けたルーカスが惜しいシュートを放つ。「勝てる」という雰囲気……だがしかし。89分、マリノスは右サイドの攻めから波状攻撃をかけ、兵藤のスルーパスでDFライン裏に抜け出した藤田がまたもシュートを決めてしまう。あ〜あ。東京は平山と三田を入れてパワープレイに出るも時既に遅し。2-3で試合終了となった。
悔しいなあ。とにかく悔しい。
激しい攻防が90分間続いて両チームの良さも出て、おまけに劇的な展開ともなり、実に見応えのある好ゲームだったように思う。東京も、前半はいい形で先制する一方粘り強い守備で得点を許さず、ネジを締め直した後半はソリッドなパスサッカーでマリノスを圧倒しかけた。一旦は逆転されてしまったものの、選手交代も功を奏して素晴らしい形で同点に追いつき、さらに畳みかけかけた。あと一歩だったんだが……。
サッカーとはそんなもんだ、と言ってしまえばそれまでなんだけど、本当に紙一重だったと思う。アンラッキー極まりない俊輔のFK。ポストに防がれてしまったルーコンのシュート。結果的に後手に回ったが効果もあった選手交代。超セクシーだったカズマックスの同点ゴール。ポストに当たってギリギリで入った藤田の決勝点。足りない部分は色々あるとして、勝つチャンス、勝てる可能性も確かにあった。だからこそ悔しくてたまらんのだよ僕は。
いやー、ホント悔しいなあ。こんなに悔しいのは何年ぶりとかかもしれない。2003年の秋の東京ダービー以来かもしれないな。10年ぶりか(笑)。
個々の選手では、まず攻撃陣は皆良い出来だったと思う。李は速攻の軸として活躍し、もちろんボレーも見事だった。千真はヒーローにしてあげたかったなあ。東とアーリアは相変わらずグー。ルーカスはシュートは入らないけど動きはキレていて、米本も良かったし、高橋と権田もまずまず。CB陣も2失点目を除けば健闘していたと思う……って、それで何で負けるんだ(笑)。あえて言うなら両SBはもうちょっと守備で頑張ってほしいかな。
まあ、とにかく、これでリーグ戦は2勝2敗。勝ち負け同数で引き分けなしってのはまんま昨シーズンのパターンやね。アウェイで強い相手に勝てないまでもしぶとくドローで勝点を持って帰るような戦いをしないと、優勝はおろかACLも難しいのではなかろうか。翌週は水曜日に名古屋戦、土曜日に大宮戦とホームゲームが続く。スカッと連勝して上昇気流に乗って欲しい。
[追記1]
マリノスについては、6連勝するだけのことはあって確かに強かったな、と。特に俊輔は素晴らしかった。ボールとられないし動きは軽快だしパス回しはますます巧みになってるし、第2の全盛期を迎えてるんじゃないか。小野裕二が移籍して今季は完全に「俊輔システム」になってるみたいだから、それがいいのかもしれない。ピッチのどこにいても存在感を出せる選手というのは、なかなかいないもんだ。
ただ、今のマリノスの勢いは、何も俊輔の好調ぶりだけが生み出しているわけでもないんだよね。この試合でも前半はともかく米本が入ってからは何とか俊輔を封じ込めていたと思うのだが、そしたら他の選手もスイスイとパス回し始めちゃうんだもんな。勝ち越されてからはボールをとるのも一苦労で……決定力もあるしそりゃ強いわ、というか。俊輔が怪我さえしなければ、間違いなく優勝争いをするチームなのだろう。ふむ。
まあ、選手(特に兵藤)がバタバタ倒れて(特に相手の攻撃時に)大げさにのたうち回ったりするあたり、ちょっと鹿島国の香りがしないでもないような気がするのだが。
[追記2]
試合後の李忠成のコメントがいいね。なんというか、とにかく前向きで。こういうストライカーが1人いるのはチームにとってとても良いことだと思う。