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2011年11月13日

●後手六八セザーで詰み (FC東京×水戸ホーリーホック)


FC東京 2-0 水戸ホーリーホック (J2第35節 味の素スタジアム)


いよいよJ2もシーズン大詰めに差しかかって残り4試合。他チームの結果によっては昇格決定もありえた一戦は、夕暮れ時の味スタで生観戦した。

キックオフ。両ボランチが復帰した東京は前節のせわしいサッカーとはうって変わり、左右にパスを回しながらリズムをつかもうとする。が、これがなかなか機能しない。森重と今野を欠くDFラインは組み立ての力に欠け、ならばと高橋は奮闘するものの梶山はボンヤリした動き。序盤はチャンスのないまま時間が過ぎていく。2分、ボックス左手前から北斗が狙ったFKはポストの左。12分、左サイドから尾本が入れたクロスを小池がミドルシュートしたが、権田の正面。

東京が主導権を奪ったのは13分、北斗のクロスを逆サイドに流れた羽生が落とし、梶山のシュートがGK本間の正面を突いたあたりから。16分、再び北斗が突進してマイナスの折り返し、谷澤がシュートするも枠をそれた。19分には中盤のパス交換から高橋が鋭いスルーパスを送って羽生が飛び出すも、一寸早く本間がキャッチ。この時間帯はアタッカーたち、特に羽生が前後左右に流動的な動きを繰り返すことでDFを揺さぶって、水戸DFのマークにズレが生じていた。

一方、水戸は早めに前線へボールを送って攻めようとするも、(パス能力はともかくとして)対人能力には優れた東京DFが2トップへのボールを着実に潰し続ける。24分、ボックス手前でのパス交換から高橋のミドルシュートがバーの上を越えた。26分には右サイドへ飛び出した谷澤が速いグラウンダーのクロスを送って梶山がスルー、石川が空振りしたボールをルーカスが狙うも本間がセーブした。

ところが、30分を過ぎる頃から再び東京の攻撃は停滞してしまう。2列目のフリーランが減ったとたんに中盤でパスがつながらなくなり、DFのパスミスがそれに輪をかける。水戸の激しい当たりに対して東京不利に見える判定が続いたこともあって、ピッチ上にもスタンドにもややイヤな雰囲気が漂い始めた。38分にはボックス左で水戸がFKを獲得し、元東京U18の村田翔が入れたクロスを権田がジャンプ一番パンチで弾き出す場面も。無得点のままハーフタイムへ。


後半、大熊監督の檄が飛んだか、前がかりに出た東京がいきなり続けてチャンスを作る。そして48分の右CK、石川が入れたクロスにニアで高橋が躍り込み、すらしたヘディングがゴール左隅に吸い込まれた。いい時間帯に出たいかにも彼らしいスマートな得点。1-0。そこからはガラッとリズムが良くなって東京の攻勢に。急造のDFラインも積極性を増し、53分には左サイドで大きく前進したノースがボールを奪って、オーバーラップの椋原がゴールライン際をえぐる場面も。

56分、右サイドのFKから石川が入れた低く速いクロスに梶山が合わせたが、GKが弾き出す。ところが「これは一方的になるかな」と思えた59分、水戸は遠藤と岡本に代えてやはり東京U18OBの常磐と、お久しぶりの鈴木隆行を投入。「まさかもう一度師匠の勇姿を観られるとは」と感動している場合ではなく、鈴木・常磐の激しいフォアチェックで東京はまたもビルドアップに苦労するように。もっとも、水戸の方はFWにボールを渡すこともままならなかったが……。

状況を打破したのはまたもロベルト・セザーだった。68分の投入直後に左サイドを突破して石川を狙う際どいクロスを入れ、続く76分にはドリブルでDF2人を抜いて本間の脇を抜くシュートを放つ。そして79分、ルーカスがDF後方に上げた浮き球に石川とともに猛然と走り込み、一歩前に出て右足を豪快に振り抜くと、ドライブのかかったボールはあっという間に本間の頭上を越えてゴールに突き刺さった。スーパーダイレクトボレー!!シビれた!2-0。

その後も東京の攻勢は続く。得点直後、右サイドを突破した北斗からのDF裏へ通すクロスにセザーが走り込んでシュート、本間が片手で僅かにコースを変えて防いだ。82分にも後方からのパスで右サイドに飛び出したルーカスがシュートしたがサイドネット。84分、高橋を削ったロメロ・フランクが2枚目のイエローで退場となって勝負あり。終盤は水戸が意地の反撃を見せるも、88分に左サイドをえぐる鈴木のシュートは権田がストップ。2点差のまま東京が勝利した。



いやー、ストレスの溜まる時間も多い試合だったけど、セザーのゴールの素晴らしさが全てを吹き飛ばしたというか。あれは爽快だった。

両チームの地力の差は疑いようもなかった。東京DFはビルドアップには問題があったが対人能力に優れた選手が揃っており、さほど特長のない水戸の攻撃にほとんど崩されずシュートもたったの5本。攻撃も、2列目が活発に動ける時間はそれなりにチャンスを作れていた。ベンチに主力アタッカーも残していたし、東京は慌てる必要は全くなかったのだ。それでも十数分の停滞した時間と微妙な判定に苛立ってしまったのは、昇格間近の状況のせいもあったろうか。

で、こういう展開ではセットプレーに期待がかかるわけだが、その通り後半頭のCKで得点でノるタイプのボランチが1得点。そこから流れが良くなって、一旦は水戸の2枚替えで押し戻されたものの、負けじとこちらもスーパーサブを投入して、そのセザーがどえりゃーゴールをぶち込んで追加点。後はだいたい押せ押せで90分終了。なんだ終わってみれば完勝じゃないか、と(笑)。まあ、大熊さんがやり繰りの中で見つけ出してきたJ2勝利の方程式ではあったのかな。

MVPは高橋。先制点のヘッダーもナイスだったけど、90分間中盤を切り盛りする運動量とここぞという場面で前がかりになる積極性が頼もしい。華奢な体で闘志をむき出しにするギャップにも萌えるし(笑)、ホントいい選手になってきたね。そして、もう1つの得点を奪ったセザーももちろん素晴らしかった。ああいう「目の覚めるようなゴール」は試合全体の印象をガラリと良くするという意味でただの1点以上の価値がある。ファンの血を沸騰させるゴラッソ。

他の選手では、ルーコンの2点目をアシストした好判断はさすがベテラン。羽生は尽きぬ運動量の割に報われなかった。谷澤はいつもの谷澤だったね(シュートさえ決まれば……)。石川は、田邉との違いを意識してもうちょっとシュート撃って欲しいなと思った。梶山は休み明けのせいかいつも以上にボーッとしてた。北斗は先週に引き続いて頼もしかった。ノースは……守備は堅実だし前に出られるのもいいんだけど、如何せんパスが……森重って凄いのね(笑)。

ということで、今節は徳島・札幌が勝って鳥栖が負けなかったため、昇格決定は来週の鳥取戦に持ち越しとなってしまった。ただし札幌らが残り全試合を勝って東京が全敗したとしても勝点で逆転されることはなく、得失点差で26点差がついている事を考えれば事実上東京のJ1復帰はこの勝利で決定したと言ってよいだろう。いわゆる「詰み」というヤツである。ようやくホッとできたというか、あとは優勝するだけだよな。前の昇格の時は川崎にやられたからね。

 
[付記1]

前半の終わり頃、北斗が水戸の選手と交錯してタッチライン近くで倒れた時、柱谷監督が大きなジェスチャーで「ボールを外に出せ!」と指示していた(ように見えた)のが印象的だった。その場面のフェアな振る舞いとホーリーホックの選手たちのラフにも見える激しいチャージ、どちらも柱谷さんらしいな、と僕には思えた。相変わらず熱い人柄のようで大変結構なことでありますな。いやホントに。


[付記2]

後半の終わり頃、高く空中を飛ぶボールがタッチを割って東京ベンチ前に飛んできた時のこと。いつものようにタッチ近くまで出ていた大熊監督がそのボールをダイレクトにヒールで引っかけて、フワッと浮かせて自分の頭越しにプレイヤーに渡したんだよね。アルゼンチン代表監督の時のマラドンとは比べ物にならないけど、ナイストラップというか、「そういえば大熊さんって昔は東ガスの選手だったんだよな」と久しぶりに思い出した。いやそれだけの話ですが。
 

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