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2011年11月07日

●劇的な王手 (湘南ベルマーレ×FC東京)


湘南ベルマーレ 1-2 FC東京 (J2第34節 平塚競技場)
 
 
7連勝で一旦は2位以下を引き離しながら、その後分け・負け・分けと足踏みの続く我らがFC東京。今節は出場停止で梶山・高橋を、代表拠出で今野を、さらに直前の負傷で徳永を欠く、まさに緊急事態の一戦。時折小雨の降る平塚競技場で観戦した。
 
 
キックオフ。負ければ昇格の可能性が消える湘南は気合十分に前がかりのムード。対する東京は欠場者の穴を羽生・下田・ノース・北斗で埋めたものの、全体的にやや浮足立つ感じで前へ急くボールが多い。濡れたピッチ状況もあり、序盤は目まぐるしく攻め合う展開となった。7分に山口が、8分には森重がそれぞれCKからヘッダーを撃つが、いずれもバーの上。その直後には坂本がアジエルとのワンツーで右サイドから切れ込んでシュートを放ち、権田が押さえる。

要所でアジエルの技術を使いながらどんどんオーバーラップをかける湘南の速攻はなかなかの迫力。9分、ボックス付近のパス回しからルーカス(若い方)が撃ったシュートがポストのわずか左を抜けた。負けじと東京も11分、右サイドからのクロスに谷澤が頭で合わせ、GK西部が弾き出す。谷澤はこの日も「動きはナイスだがシュートは……」で、21分にも速攻の場面でルーコン(オッサンの方)のラストパスを好トラップしループ気味に狙ったが、わずかにバーの上。

26分、相手陣中央でボールを奪ったルーカス(オ)が西部の頭上を狙って撃ったロングシュートは枠外。その直後、カウンターでDFを置き去りにした石川が右サイドからえぐってシュートするが、西部が横っ跳びでビッグセーブ。29分には臼井が右から斜めにDFの間を突くドリブルを見せ、ボックスへ入ってシュートするも、間一髪戻った椋原が滑り込んでブロック。気を抜けないスリリングな攻防が続いた。

30分を過ぎるとようやく落ち着いた東京がボールポゼッションを上げ、じりじりと湘南を押し込む形が見られるように。しかし、ルーカス(オ)らにパスが入ってもフォローが遅くボールホルダーは孤立しがちで、またパスも順目に渡すものばかりのためになかなか相手を崩せない。決定的なチャンスを作れないままスコアレスで前半終了。決して劣勢とは言えないが、予断を許さない展開のように思えた。
 
 
後半立ち上がりはネジを巻き直した東京が前がかりに。前半に比べれば攻撃的MFのコンビプレーが出るようになって、断続的に湘南陣深くへ攻め入るように。46分、自らのドリブルで得た直接FKを北斗が狙うもバーを越える。49分、パス交換から谷澤が撃ったミドルシュートを西部がキャッチ。56分、田邉と石川の連携でボックス内へ攻め込み、折り返しを北斗が狙うがDFがブロックした。フィニッシュ一歩手前のシーンが幾度か続き、「そろそろ点が欲しいな」と。

しかし、ここから流れは湘南に傾く。57分、クロスをアジエルが落とし、さらにつないでハンが強烈なシュートを撃つがバーの上。59分には右から切れ込むアジエルの折り返しを坂本がシュート、コースが変わった球を権田が横っ跳びでキャッチ。前半に比べてより前線に飛び出すようになったアジエルの動きに、東京DF(特に下田)は対応しきれていないように見えた。64分にもボックス前の速いパスワークからアジエルのシュートがポスト右をかすめてヒヤリ。

60分、東京は田邉に替えてセザーを投入する。が、下田や羽生がアジエルらの動きに振り回されている状況では組み立てもままならず、湘南の攻勢が続いた。69分、東京陣でボールを奪った湘南のカウンターとなり、ルーカス(若)のシュートをDFがかろうじてブロック。湘南は石神→高山、ルーカス(若)→田原と前線にフレッシュな選手を投入していく。勝利どころか勝点1も危なくなったように思えた。

ところが71分、権田のパントが左サイドのスペースに抜けた場面。懸命に追った谷澤がゴールライン際で滑り込んでキープし、立ち上がりばなに切り返しでDFをかわしてからインスイングのクロス。これにDF2人と併走して飛び込んだセザーが、豪快なダイビングでゴール右に突き刺した。ナイスヘッダー!泥臭くシンプルだが、だからこその素晴らしい得点。よろしからぬ流れだっただけに選手もファン・サポーターも興奮しまくりである。1-0。

だが、これでは終わらない。直後の73分、反撃に出る湘南は速いパス回しからアジエルとのワンツーで永木がボックス内へ突入、ボールを奪いに行った羽生が永木を倒してペナルティの判定。体を寄せた正当なチャージにも見えたが……微妙。このPKをアジエルがゴール真ん中に決めて再び同点となった。1-1。手痛い失点。異議で警告を受けた森重が、キックオフまでの間に手を叩いて味方を鼓舞するのが見えた。

湘南の攻勢は続く。76分、右サイドで超絶キープを見せるアジエルを臼井が内側からオーバーラップしてクロスを入れたが、坂本に合う寸前に森重がダイビングヘッドで防いだ。中盤を立て直したい東京は羽生OUTで上里IN。79分、左サイドから高山がアーリークロス、ファーで跳び上がった田原の豪快なヘッダーは、椋原・ノースの2人が体を当ててようやく枠外へ。その他にもDFが体を張る場面が幾つか。

悪い流れを吹き飛ばす一撃が飛び出したのは80分だった。右サイドで攻撃参加した北斗がDF2人に絡まれながら粘ってボックス内へ突進、クロスはDFに当たって方向が変わったものの、ゴールに背を向けながらトラップしたセザーが反転して左足を一閃!ボールはあっという間にゴール左隅に吸い込まれていった。うおおおおー!!思わず叫びたくなる鮮やかなゴール。歓喜の表情の選手たちが次々とセザーの上に折り重なって……本当にお見事だった。2-1。

その後はあきらめない湘南が反撃に出るが、東京もDF陣が気迫のプレーではね返して時計が進む。ロスタイムに永木が撃った強烈なミドルシュートもバーを越し、結局そのまま東京が逃げ切りに成功した。東京、リーグ4試合ぶりの勝利である。
 
 

いやー、とにかく勝ってよかった。非常に嬉しく、かつ意義のある勝利だと思う。

苦しい戦いだった。不動の両ボランチに加えて今野・徳永を欠く布陣。今季はほぼ固定メンバーで戦ってきただけに大幅なメンバー変更の影響はことさら大きく、そのキツさに速さと変幻(アジエル)を兼ね備える湘南の攻撃が輪をかけた。特に後半半ばは中盤で完全に押されていて「引き分けられればオッケーか」と思えたくらいだった。さらに谷澤・セザーの奮闘で先制できたものの、すぐにPKで追いつかれる厳しい展開。ホント、よくぞ勝てたものだと思う。

試合後のインタビューで大熊監督も上気した顔で「嬉しい」と語っていたが、この1勝は本当に大きい。3試合で2点しか奪えず勝星なしの嫌な流れを断ち切れたこと。4人もの主力を欠きながら結果を残すことができたこと。最近先発から外れていたセザーや北斗が大活躍で復調を示してくれたこと。同日に敗れた4位札幌に対して勝点差を9にまで広げたこと。そして何より、釈然としないPKによる逆境を自力ではね返したこと。昇格へ向けて大きく前進する90分だった。

なんつーか、こういう試合を見たくて僕はスタジアムに通っているのだな、と。そんなことさえ考えたくらい気持ちのいい勝利であった。いわゆる「内容」はさほどよろしくなかったのかもしれないけれど、サッカーはそれだけじゃあないのである。

MVPは文句なしにロベルト・セザー。チームを苦境から救う殊勲の2得点。怪我より復帰してからなかなか調子が上がってこなかったが、この大事な試合でやってくれた。こういう活躍こそストライカーの仕事である。他のアタッカーでは、谷澤。先制点を生んだゴールライン際の頑張りをはじめ、90分間守備に攻撃に奮闘し続ける働きぶりには正直感動した。もしかしたら今、彼こそが一番「FC東京らしい選手」かもしれないな。あとはシュートが枠に飛べば(笑)。

中村北斗も勝利の立役者。後半途中まではパスミスしたりクロスが明後日の方角に飛んだりと「いつもの北斗だな……」という感じだったのだが、決勝点につながるドリブルは持ち前の強靱な足腰を生かした素晴らしいプレーだった。よくも悪くもコンスタントでないところが彼の特徴なのだろう。あと、森重。羽生がPKを献上してしまった場面、イエローカードをもらった上にボトルを叩きつけたのは感心しなかったが、その後の味方への叱咤激励は良かったと思う。

辛かったのは、やはりダブルボランチか。下田は湘南のスピードに追いつくのに必死なまま90分が過ぎてしまったという感じだろう。今の彼にはまだアジエルは手強すぎたかな、と感じた。ただ、狙いすましたボール奪取など光るプレーもあったので、ああした良い所を磨いていってほしい。その下田を横でフォローし続けた羽生先生は本当にお疲れ様。PKを与えた場面は、あの速いパスワークにきちんと追いついてボール奪取しかけたのだから、文句は言えないよね。

ということで、いよいよ他チームの結果によってはあと1勝で昇格決定、というところまでやってきた。J1復帰まであと一歩である。次は味スタで水戸との対戦。スパッと一発で決めるか、それともここでまたもつれてしまうのか。森重と今野(と徳永か)を欠いてまたメンバー的には苦しいが、いずれにせよ楽しみだ……などと言える余裕ができたのだから、やはり価値のある勝利だったんだよな、この試合は。
 

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