●粛々と進むべし (FC東京×ファジアーノ岡山)
FC東京 3-0 ファジアーノ岡山 (J2第31節 味の素スタジアム)
ここのところ体調が悪かったり家庭の事情があったりして東京の試合を生で観られなかったのだが、岡山戦は約1ヶ月ぶりに味スタで観戦。10月半ばとは思えない汗ばむ陽気だった。
立ち上がりから主導権を握ったのはホームの東京。岡山のフォアチェックを森重を軸とするパス回しでいなしつつ、谷澤・田邉への縦パスから攻撃を組み立てる。3分、谷澤のパスがDFの隙間に入り込んだ羽生へ通り、反転シュートはきわどくポスト左を抜けた。3-4-3(3-4-2-1?)の布陣を敷く岡山はウイングハーフが守備でほとんど効かず、東京攻撃陣へ効果的なプレッシャーをかけられない。東京は羽生の自在な動きとSBの攻撃参加も加え、一方的に攻めたてていく。
10分、東京の右CK。谷澤のクロスはDFの間を抜け、森重のチョン、と足を出したキックがゴール左に決まった。あっけない先制点。1-0。直後の12分、オーバーラップした徳永のシュートをGK真子が横っ跳びで弾き出し、CKで森重が今度はドンぴしゃのヘッダーを撃つがこれも真子がセーブ。17分には、梶山の好フィードから田邉が左サイドで粘ってクロスを上げるも、谷澤のヘッダーはバーを越えた。もちろん東京ゴール裏からはお馴染み「枠飛ばせ!」コール(笑)。
しかし、前半も半ばになると暑さもあってかユルい雰囲気が漂いだし、パスの出し手と受け手で呼吸の合わない場面が増え始めた。一方の岡山はようやくサイド攻撃が機能し始め、クロスの入る場面も見られるように。そして27分、小林がボックス左手前から撃ったループシュートは権田の頭上を越してバーを直撃、はね返りに澤口が詰めるピンチとなったが、シュートは権田が体を投げ出してセーブ。これは危なかった。
ところがこれで目が覚めたか、東京の攻勢に火がついた。34分、梶山の展開パスから徳永が右サイドで勝負してクロス、椋原のシュートはDFに当たったものの、ボックス正面にこぼれたボールに高橋が詰め、突っかけるDFをひらり一回転してかわしてから右足一閃!地を這うシュートは真子の横っ跳びも届かずゴール左隅に決まった。ある意味東京らしからぬ、華麗というかエレガントというか(同じか(笑))、「王子様シュート」とでも呼びたい得点。2-0。
東京ペースは続く。36分、徳永からのロングフィードを前線のルーカスがきれいに収め、DFを置き去りにして突進。「あとは決めるだけ」の大チャンスだったがシュートは左に外れてしまった。さすがはルーコン。そして40分、左サイドから羽生がフワリと浮き球を入れ、ボックスに入った梶山が超巧みなトラップでDF2人を翻弄してから左足でゴール右に突き刺した。やっぱり10番、上手いことは上手い。3-0。東京が大量リードを奪って試合を折り返すことになった。
後半開始直後、ルーカスのポストプレーから高橋の強烈なミドルシュートがポスト右を抜け、大量得点の期待が高まった。が、それに反してというべきか、東京はあくまで省エネモードの徐行運転。ややまったりとした空気の中で両チームが攻め合う展開となった。幾つか上がった岡山のクロスは今野や権田がはね返す。53分、逆襲速攻の場面で椋原からフリーの田邉へラストパスが通るも、ループシュートはバーに当たって決まらず。これは入れてほしかった。
余裕で試合を進める東京は58分に羽生→石川、67分に田邉→坂田と選手交代。岡山の方も選手を入れ替えながら反撃を図り、59分には左サイドをパスワークでえぐってからフリーの千明がシュートするが、左に外れてしまった。後半の半ばを過ぎると東京のミスがまた増え、岡山のポゼッションが高まっていく。それでもシュート等に持ち込む場面は東京の方が多いのだけれど。71分、ルーコンOUTでセザーIN。
76分、ボックス手前で跳ねたボールを石川がボレーで叩き、ドライヴのかかったボールがわずかにバーを越える。2年前に石川が点をとりまくっていた頃を一瞬だけ思い出した。80分、岸田が撃った強烈なミドルシュートは権田ががっちり押さえた。82分には坂田の裏をとった澤口がゴール前へ持ち込んでシュートするも、権田が弾いて枠外へ。85分、浮き球に反応して左サイドに飛び出したセザーがトゥキックで真子を抜いたが、ボールはポスト右を抜けてしまった。
気がつけば3分の追加タイムへ突入。岡山が意地の波状攻撃を見せ、澤口がゴール至近でシュートを撃つ場面もあったが、またしても権田が防ぎきる。結局3点差のまま試合終了となった。
東京にしてみれば、やや抑え気味に戦った前半で上手い具合に3点とれたので、後半は無理せず少し流して戦った。そんな試合だったのではなかろうか。
得点3対0、シュート数21対10。数字的にも内容的にも東京の完勝と言ってよい結果である。にも関わらず少し物足りないような感じがしてしまうのは、やはり前半の中頃と後半の多くの時間帯において「中だるみ」があったせいだろう。見た目にもミスは多くなっていたし、存在感のなくなっている選手もいた。ただ、28度を超える暑さに加えて5連戦の初戦である。ある程度の省エネはやむを得ないようにも思えた。
意識して良かった点を取り上げるならば、前半のパスワークだろうか。相手の守備ブロックの周りを漫然と「回す」だけでなく前方の選手に「差し込む」パスやが比較的多くなっていたし、2つ以上のパスコースを作る動きも以前に比べれば増えた。少なくとも昨年の不調時よりは改善されていると思う。あとは、それをもう少し長い時間、あるいは勝負所で意識的に継続できるかどうか。まあ、言うは易し、だけど。
もしくは、後半もペースを落とすこと自体は良いとして、スパッと1本だけでもカウンターを決められれば全然印象が違ったんだろうなあ、とも思う。そういう意味でも53分の田邉のループシュートは決めてほしかった。つか、3-0で「内容ガー」なんて、どんだけ贅沢やねん俺らは(笑)!!
個々の選手では、まず高橋。上にも書いたように2点目のゴールは本当にお見事で、思わず「オーッ!!」と大声を上げてしまったほど。7月の鳥取戦でもいいのを決めてるけど、あのミドルシュートは魅力的である。加えて彼は守備の方も着実に良くなっていて、課題はフィードの精度を上げることか。そこも伸ばせれば、もしかすると今年の東京の一番の成果は彼の成長、なんてことになるかもしれない。
攻撃陣では、羽生とルーカスは相変わらず精力的な働きぶりで「お疲れ様」。谷澤と田邉はもうちょい得点の匂いが強くなるといいわな。梶山と徳永は気合が入った時は凄いけど、ちょっと気が抜けるとポカをやるのは相変わらず。セザーには点をとらせてあげたかったね。今野・森重はJ2では盤石、というか早く上のカテゴリーでやらせてあげたい。権田は、優勢な試合展開の割には出番が多かったかな。でもきちんと集中力を切らさないあたりはさすがだな、と。
ということで我らが東京、この勝利(6連勝!)で勝点60に一番乗りとなり、かつ2位(鳥栖)との差は7にまで広がった。元々戦力的には他を圧するものがあるチームなのだから、まだ安全圏には至らないまでも「最大の敵は油断」くらいは言ってもよいのではなかろうか。残り9試合、とにかく粛々と勝点を積み重ねていくことが大事である。とりあえず東京ダービーまでの連戦を無事に乗り切れれば、だいたいそこで目途がつくのではなかろうか。その先は……。
まあ、まずは次戦、水曜日の横浜FC戦を楽しみに待つことにしよう。キング・カズも観られるし(たぶん)。
[付記]
そういや、岡山にはストヤノフが在籍しているので今回観られるかと思って楽しみにしていたのだけれど、残念ながらベンチにも入っていなかった。怪我でもしてるのかな?ファジアーノは最近のJリーグでは少数派の3バックのDFラインを採用していて、それはサイド攻撃重視と同時にストやんをリベロの位置に置く「ストヤノフシフト」でもあるのかな、とちょっと思ったのだがどうなんだろう。