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2011年10月21日

●カズとナオでお得感2倍!2倍!(横浜FC×FC東京)


横浜FC 0-1 FC東京 (J2第6節 ニッパツ三ツ沢球技場)
 
 
4月9日開催の予定が東日本大震災によってここまで順延された第6節。平日夜の横浜開催と厳しい条件だったが、あと何回観られるかわからない「キングカズ」お目当てに現地へ足を運んだ。
 
 
開始直後に横浜の陣形を確認すると、フラットな4バックの前にアンカーの佐藤を置いてカイオが前に張る4-1-4-1フォーメーション。ベタ引きではなく全体をコンパクトに保って東京のパス攻撃を寸断しに来た印象である。しかし、序盤は局面での東京の優勢が目立つ。中盤の構成力と個々人のボール保持力の違いは明らかで、東京は余裕を持ってパスをつないでいるように見えた。そして時折DFラインの後ろを狙う縦のボール。「チャンス一歩手前」の場面が続いていく。

嬉しいことに三浦カズは先発出場。横浜も本来はパスサッカー志向なのだろうが、全体的な劣勢の中ではやはりカウンター中心にならざるを得ない。だが、その中でカズは派手さはないもののよく走り、よくボールを追い、よく味方につないで目立っていた。16分にはカズを基点とする逆襲速攻から高地が最初のシュートを放つ。もっとも、全体的な東京の優勢は変わらない中での健闘ではあったのだけれど。

次第に東京の攻撃に拍車がかかる。18分、CKの二次攻撃から谷澤がゴールライン際をえぐってクロス、田邉が際どくシュートできず。21分、森重の直接FKをGK関がキャッチ。25分、ルーカスがCBの間で梶山のパスを受けて反転シュートするが、宇宙開発。26分、田邉のドリブルから右へ展開、谷澤のクロスに田邉がダイビングヘッドするがポスト右を抜けた。31分にはセットプレーから徳永がシュートし、ゴール前の混戦で今野が押し込もうとするもふかしてしまう。

次々生まれるチャンス。ところが、決めきれないでいるうちに東京の攻撃は手詰まりに陥ってしまう。横浜は東京のスピードやスキルにも慣れてきたか、東京が横浜陣までボールを運んでもなかなか崩されなくなってきた。43分、DFを振り切った徳永のクロスを田邉が頭で叩くがバーの上。終了間際にはプレー外で谷澤と藤田が接触し、両軍入り乱れて興奮する場面も。両手を振り上げる岸野監督と冷静に味方を諭すカズの対比が興味深かった。そして0-0のまま前半終了。
 
 
後半も東京の攻めあぐみムードは続く。最初のシュートはようやく53分、谷澤が右サイドから切れ込んで狙ったが、関がキャッチした。55分には田邉が細かいパス交換から左サイドをえぐり、戻したボールをどフリーの高橋がシュートするが、DFに当たって枠外に逸れてしまう。頭を抱える高橋。ここで東京は田邉に替えて石川を投入する。惜しかったのは60分で、スローインから椋原がボレーで速いクロス、羽生がシュートするもバーに当たって決まらない。うーむ。

横浜FCは相変わらず劣勢ではあるもののDFでは頑張りを見せ、パスも前半に比べればつながるようになった。62分、高地が左サイドに空いたスペースをスルスルッと持ち上がり、一気にえぐってゴール前に踊り出す。シュートは権田が防いだものの危ない場面だった。東京も66分、石川のクロスを逆サイドで受けた谷澤が細かいステップを踏みながら強引にゴール前へ持ち出すも、シュートは関に防がれた。

69分、羽生OUTでセザーIN。石川とセザーは積極的にドリブルを仕掛け、何度もシュートを撃とうとするが横浜DFがすんでのところで群がってブロックしてしまう。74分、石川のクロスにセザーが合わせた場面も枠外。75分、横浜はカズ→八角の交代。下がるカズに大きな拍手が送られる。79分には左サイドから今野→石川→セザーとつないで梶山がシュートしたが、案の定「コンバージョン成功」。行き詰まった東京の攻撃。スコアレスドロー濃厚に思えたのだが……。

ロスタイム、東京が最後の猛攻を見せるもまだ横浜は崩れない。そして残り1分を切った頃。中央のFKから徳永が右へ持ち出し前線へ蹴り込んだボールを横浜DFが懸命のクリア。だが、そこには石川がいた。ボックス手前に跳ねたボールを待ちかまえて迷わず右足一閃!ボレーで叩かれたボールは関の横っ跳びも届かず、あっという間にゴール右隅に吸い込まれていった。ゴラッソー!!石川ナオの、いかにも彼らしい鮮やかな決勝ゴールで東京が劇的な勝利を収めた。
 
 

サヨナラホームランはやっぱり気持ちがいいな、と(笑)。

正直なところ序盤の戦いぶりを見た限りでは意外な苦戦だった。全体的にフィジカルやスキルの違いは明白で、横浜FCはサイドでボールをつなごうとすると高い確率でタッチを割ってしまうなど「12年前の東京ってあんなだったよな」と懐かしささえ覚えてしまったほどだ。東京の攻撃に対してどれだけ抵抗できるかな、いずれセットプレーとかでポコッと1点とって、それで問題なく勝てるのではないかと思ったのである。いや、僕の見込みが甘うございました。

途中から両チームのプレーに圧倒的な差が見られなくなり、接戦となったのはなぜだろう。東京が「おつき合い」したということなのか、それとも徐々に東京のプレーに適応した横浜がより頑張れるようになったのか。おそらく両方なのだと思う。横浜の選手は、ホームの意地もあったのだろう、先日霞ヶ丘で観た時よりもアグレッシブに来ていたし、守備の粘り強さ、特に後半の健闘ぶりは賞賛に値すると思う。そこら辺はさすが岸野監督、と言ってよいのだろう。

それと、カズのプレーにもやっぱり感心させられた。確かにドリブルやシュートにかつてのキレはないんだけど、でも守備はしっかり効いているし、つなぎはできるし、前半終了間際の揉め事のシーンでは落ち着いてクールダウン役も買ってでていた。「大人のプレー」を堪能させてもらったような。Jリーグ19年目で未だにカズの先発出場が観られる喜びよ!「あと何回観られるかわからない」なんて失礼なこと書いたけど、あと10回でも20回でも観たいぞな。

で、だ。そんな相手チームの健闘を考えれば、この試合で勝点3とれたのは東京にとって本当に大きいな、と思う。最近のパターンとは違う勝ち方であったし、苦しい展開の中でお待ちかねのヒーローがもたらした決勝点。初のリーグ戦7連勝(!)でもあり、何だか昇格へ向けてまた一つ階段を上ったような気がするのは僕だけだろうか。まあ、実際徳島が敗れたため(ヴェルディよくやった)、4位との勝点差は11にまで広がった。安全圏まであともう少しである。
 
それにしても石川のゴールは凄かった。技術の高さや見た目のインパクトもさることながら、この試合の横浜の頑張りを吹き飛ばし、リーグの優勝争いの帰趨さえを左右しかねないまさにスーパーな一撃だった。かつてのようにレギュラーでバリバリとは出られない現状であっても、彼のような選手が大事なところで仕事をしてくれるのは本当に嬉しいことだ。まだまだ東京にとって必要な選手である。つか、カズの定義によれば「ベテラン」は35歳以上だしね(笑)。

いやー、結果的には(後半44分までは微妙だったが……)実に良い気分でスタジアムを後にできる試合だった。こういうゲームなら平日夜開催でもさほど苦にならないね。うん。
 
 
[付記]

三ツ沢球技場に足を運んだのは本当に久しぶり。箱庭みたいなコンパクトさが独特の雰囲気を作っていて、やっぱりいいハコだと改めて思った。公園内の小さなフットボール専用スタジアムというのは日立台と同様だけど、スタンドの傾斜による観やすさなんかは三ツ沢の方が上かも。バックスタンド裏に団地(?)がある光景も相変わらずだったなあ。横浜FCのフラッグが掲げてある部屋もあったけれども、あそこの住人はタダでシーズンパスを持ってるようなもんだな。


[付記2]

今回の観戦は、予習として三浦知良著『やめないよ』(新潮新書)を読んでから臨んだ。5年間に渡る新聞連載をまとめたコラム集で、約40年に及ぶサッカー人生の中で培われたカズのとことんポジティブな姿勢やサッカー観、人生観がよく表れている好著である。

現役続行にかける気持ちについて何のてらいもなく「真っ白な灰になるまで」「ずっとやっていたいね。死ぬまでね。」と書いたり、横浜FCとの契約延長において「レアル・マドリードから素晴らしいオファーが来たら、どうなるかわからないけどね」とお茶目かましたり、とにかく元気をもらえる一冊。出場機会に恵まれず悩んでいる時期に行きつけの店でイチローにばったり出会い、思わず熱い軽口で励まし合ってしまう話など、面白いエピソードも満載だ。お薦め。
 

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