●4位浮上やがな (FC東京×徳島ヴォルティス)
昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ2第17節。FC東京 1−0 徳島ヴォルティス。京都戦の快勝でやっと上昇気流に乗るかと思いきや、その後も複数得点が奪えずにモヤモヤの残る戦いぶりの我らが東京。今回は、毎年上位に食い込みながらなかなか1部昇格を果たせぬ徳島との「狸ダービー」であった。試合は、滑るピッチの上で良く言えば泥臭い、悪く言えば雑で粗い攻防が延々続く展開となり、梶山が「チェンジアップ」で決めた虎の子の1点で東京が勝利。
この日の東京は五輪予選に参加中の権田が欠場で塩田が先発し、他は最近お馴染みの顔ぶれで「まずは繋いで行こう」というサッカーである。対する徳島は4−4−2の布陣で守備ブロックをしっかり固め、ドウグラス・津田・柿谷らが逆襲速攻を狙ってきた。まずは1分、前目でのパスカットからドウグラスが左サイドを突進、シュートがポスト右を抜ける。2分、中盤の奪い合いからこぼれ球を拾った高橋が糸を引くようなミドルシュートを撃ち、GKオがキャッチした。
拙いパス回しにやたら滑るピッチも加わって立ち上がりは攻撃の形を作れなかった東京だが、それでも何とかボールを動かすうちボックス付近まで攻め込む場面が増えていく。10分、ボックス左角から梶山が撃ったシュートをオがキャッチ。15分にも左から切れ込んだセザーが強烈なシュートを撃つが、これもオが横っ跳びで弾き出す。それなりにシュートは撃っているのだが、崩しの連携不足ゆえにチャレンジングなパスも少なく、決定機にはなかなか至らない。
もっとも、徳島の方も楔役を果たすべき2トップが今野・森重に封じ込まれてチャンスを作れない。26分、左サイドのFKで今野が判断良く早いリスタート、クロスに森重が飛び込むがヘッダーは枠外。東京ペースながらも地味な展開に、場内はおとなしい雰囲気になってしまった。32分、徳島はようやく逆襲から橋内が足の長いクロスを入れてドウグラスに通りかける場面となるが、一歩届かず。33分には徳永の速いクロスに谷澤が走り込むも、合わせ損なって逸機。
36分、左サイドを北斗が突進、セザーの高速クロスを高橋が叩くが、きわどくゴール右上を抜けた。そして前半終了間際。右サイドで徳永のクロスがブロックされ、すかさずフォローした谷澤の速いクロスを逆サイドでセザーが折り返し、ゴール前梶山の足下へ。シュートは当たり損ねのボテボテだったものの、逆にタイミングを外されたオは動けず左隅にゴールイン!いかにも梶山らしいトリッキーな得点。ここ(だけ)はうまいこと好プレーが連鎖してくれた。1−0。
後半立ち上がりは徳島が雑なラッシュに出て、東京はやや受け身になりながらはね返す。51分、縦パスで左サイドを抜けかけたドウグラスが森重と競りながらシュート、わずかにバーを越えてヒヤリ。だが徳島の攻勢も長続きはしない。54分、波状攻撃の中で右サイドの森重が狙いすましたクロスを逆サイドのセザーに通し、セザーのクロッシュートに高橋が合わせられれば1点、の場面となるもあと一歩が出ない。61分、谷澤のミドルシュートはわずかにバーの上。
基本的には東京がボールを支配する展開。しかし毎度恒例の連携ミス・パスミスの多さに加え、単騎勝負でも滑るピッチに足をとられる姿が目立って追加点は遠い。65分、田邉のデコイランのお陰でフリーになった羽生がミドルシュートを撃つも、オが横っ跳びで押さえる。69分、セザーのポストから突進した谷澤のミドルシュートはわずか右に外れ。一方の徳島はアタッカーを入れ替えながら反撃を狙う。67分、ドウグラスの反転ミドルシュートがポスト左を抜けた。
71分、田邉OUTで石川IN。石川はさっそく右サイドでDFをちぎってみせ、彼の登場でスタンドもようやく盛り上がってきた感があった。73分、左スローインから北斗が中へ入れたパスを2人がスルー、フリーになった谷澤がシュートするもまたバーを越えてしまった。谷澤は撃っても撃ってもシュートが枠に行かない魔法にかかってしまったような。80分前後にはボックス周辺で何度もパスを回しながら、いつまでもシュートに持ち込めない場面が。うーむ。
この頃になると、全体的に東京の守備の寄せが甘くなって徳島にもチャンスが生まれるように。78分、津田のラストパスで柿谷がボックス内へ突入、幸いシュートは枠をそれてくれたが冷や汗ものだった。柿谷は84分にも鋭いミドルシュートを撃つが、これは塩田がセーブ。その後東京は上里・下田と入れて中盤の守備を強化し、攻めるか時間を使うか中途半端になってバタバタしながらも、残り10分を何とかしのいで試合終了。前節に続いて勝点3をゲットした。
これで、5勝のうち4つが「1−0」の勝利。イタリアかよ(笑)。
今回も内容的には決して良くなかった。つなぎのミスが多く、アタッキングサードでも連携がとれずに行き詰まる場面がほとんどだった。結局、個人能力頼みのサッカーになってしまってるというか、最終局面で個人技を生かすのは良いのだけれど、そこに持ち込むまでのフォーマットが固まらないと安定した攻撃力は得られない。これはポゼッションとか堅守速攻とかいうスタイル以前の問題だろう。で、確率の低い強引な攻めゆえに毎回1点どまりになっている、と。
もちろん「1−0」でも「それでよし」の意思統一ができていて、逃げ切りの方法論が確立していれば(エンターテイメントとしてはともかく勝利のためには)問題がないはず。だけど、この試合の終盤のバタつきぶりを見ていても、やはり1点ではとても「危なげない」とは言えなさそう。毎試合京都戦みたいな大勝を望むわけではないけれど、今後チームの勢いを増していくためにも、追加点をきっちり取るのは重要なことに違いない。当たり前っちゃ当たり前の話だが。
ともあれ、東京にとってはこれが今シーズン初の連勝。5勝4分2敗の勝点19となって4位に浮上した。リーグが混戦となっているせいもあって、悪いながらもしぶとく粘っているうちに何となく帳尻が合ってきそうな感じではある。まあ、この際、ギリギリでも何でも昇格できれば御の字だとは思うのだが……やっぱりもう一段推進力を加えて加速したい気もするな。ペドロ・ジュニオールが契約解除となってしまった今、外国人枠を使った補強などはあるのだろうか。
個々の選手に目を向けると、MVPは……難しいね。仕事を一番してくれていたのは谷澤だと思うんだけど、何しろシュートが全部枠外だったから。梶山は本領発揮のトリッキーなシュートを決めてくれたし調子は上がってきたようだが、まだまだミスが多い。セザーは貢献度は高いけど、独りよがりなプレーもあった。田邉はもうちょいフィジカルが強ければな、と。誰か1人をあえて挙げるなら今野になるだろうか。徳島の2トップを完全に押さえきった強さには感嘆した。
ということで、ファンとしては「贅沢は言わない」などと言いつつも、もう少し心躍る瞬間がほしいな、というのがこの試合を観ての正直な気持ちではある。贅沢すぎるか(笑)。何だかんだで試合終了のホイッスルが鳴った時はみんな喜んでたから、とりあえず次も勝ってけろけろ。
[付記1]
この日は『銭湯Day』ということで、来場者にはオリジナル手桶や東京都浴場組合(「よくじょう」と書いて変換したら違う字が出た)の広報誌「1010」が配られたのだが、「1010」の巻頭インタビューが梶山陽平だったのだ。僕もこの冊子は先日入手して(都営地下鉄の駅とかに置いてある)梶山の妙にカッコつけたインタビュー写真(ただしゴルゴまゆ毛)に大笑いしていたのだけれど、まさかその梶山が決勝点をとるとは何やら出来すぎであったかと。
[付記2]
味の素スタジアムの西側の空き地には2013年に開催される東京国体(メイン会場が味スタ)のための補助競技場が建設される予定だけど、昨日見たらもうかなり工事が進んでいて、フィールドには既に緑の芝が敷かれていたしその周りには陸上トラックの形も見えつつあった。競技場の芝って最後に敷くのかと思っていたので、ちょっと意外な感じやね。
[付記3]
しかし昨日は選手が足を滑らすこと滑らすこと……しかもホームチームの東京の選手がスッテンコロコロしまくっているのを見て、「はてな?」と首を傾げてしまった。試合直前に豪雨に見舞われた湘南戦の時は上々のピッチコンディションだったのに。やはり湿度の高い時期は芝の管理も厳しいのだろうか。あと、先月末のL’Arc~en~Cielのコンサートの影響も多少あるのかもしれないけどね。スパイクの対応とかで、もうちょい何とかならんもんなんだろうか。