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2011年05月23日

●怪我の功名大いに結構 (FC東京×湘南ベルマーレ)


昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ2第13節。FC東京 1-1 湘南ベルマーレ。富山戦の勝利で不振のトンネルの出口がようやく見えたかと思いきや、草津に完敗を喫して逆戻りの我らが東京。今節はホームに戻って日の丸先生率いるベルマーレとの対戦であった。試合は、これまでになく快調なサッカーを見せた東京が開始直後に先制し、その後も攻め続けるが2点目が奪えず。後半積極的な交代策に出た湘南に追いつかれ、残念な引き分けに終わってしまった。
 
 
この日は試合の1時間ほど前から猛烈な雨が降り出す荒れ模様の天気だった。ピッチ状態が心配だったが、特に水が浮く様子もなく、ボールの転がりもまずまずの案配。味スタの芝のコンディションは決して悪くないのかな、という印象であった。いや、悪い時にはみな血相変えて文句言うから、良い時には褒めないと(笑)。少し雨が弱まったかな、というところでキックオフ。

序盤からペースを握ったのは東京だった。平山・PJに続いて高松まで離脱してしまった東京は、セザーと羽生の2トップで田邉草民が初出場初先発するスクランブルの布陣。だが、これがうまい事機能した。田邉は一応攻撃的MFだが、味方がボールを持てばとにかく前後左右に動き回って時にはDFラインに下がってパスを受けては散らし、攻撃を動かしていく。開始後いきなり、田邉・梶山・セザーの滑らかなパス交換で攻め込んでスタンドがどよめいた。

そして1分。右スローインから田邉→梶山とつないで中央へ戻したボールをセザーがダイレクトに叩く。ボールはGK西部の腕を弾いてゴール左隅へ飛び込んだ。久々の秒殺東京!湘南DFは全くマークに付けていなかった。1-0。その後も東京ペースが続く。前線では羽生が裏を狙い続けてDFラインを押し下げ、田邉のパスで梶山・セザーらがボックス前に次々と入っていく。7分、椋原の折り返しを受けた羽生が左足で渾身のシュート、西部が横っ跳びで弾き出した。

一方の湘南は前目のプレスから逆襲速攻を狙いたいところだが、東京のパス回しは軽快でなかなかボールを奪えず、カウンターになりかけても東京DFの戻りが早い。22分、守備でも献身的な動きを見せるセザーがドリブルシュートするが、ポスト左。25分、田邉の縦パスでボックス前へ進出した梶山のシュートを西部がキャッチ。30分には梶山から左SBの北斗へ展開し、クロスが正面へはね返されたところで森重がロングシュートを撃つも、枠を外れてしまった。

30分を過ぎると東京の攻勢も一段落し、アジエルを軸に湘南のパスが回り始める。が、東京の守備ブロックを崩すまでには至らない。37分、湘南が速攻から左へ展開、石神の強烈なミドルシュートを権田が横っ跳びで弾き出した。40分、梶山の展開パスからセザーが切り込んでシュートするが西部がキャッチ。43分にはボックス周辺のパス回しから徳永が縦に走って速いクロスをGKとDFの間に通すも、田邉はあと一歩触れず。惜しい!というところで前半終了。
 
 
後半は開始直後から湘南の前がかりぶりが目立つように。アジエル・坂本・永木に加えて両SBがどんどん前に出て圧力をかけてくる。49分、ボックス前のパスワークから臼井が強烈なロングシュート、ゴール左上を抜けた。東京も負けずに54分、波状攻撃でとったCKのはね返りをボックス左で達也が拾ってファーへクロッシュート、飛び込む森重の寸前でDFがクリア。57分には東京陣中央のFKを石神が直接狙い、弾丸のようなシュートがポスト右を抜けた。

58分、東京陣でパスカットした湘南のカウンターとなり、巻のポストから坂本がループシュートを狙うが権田がフィスティングで防ぐ。60分、ドリブル勝負するセザー・達也から戻したボールを梶山がシュートするが、ふかしてしまう。ここら辺は予断を許さない一進一退の攻防であった。63分には東京が逆襲から羽生→田邉→ボックス内の椋原とつなぐも、シュートできず。

65分、湘南は巻・高山に替えて佐々木・菊池を投入。数分後、東京は田邉→谷澤の交代。68分、相手のパスミスを拾ったセザーのクロスを梶山が叩くが枠外。72分、CKの二次攻撃でボックス右角付近からセザーが地を這う強烈なミドルシュート、西部が弾いたボールはポストに当たって枠外へ。さらにその直後にも谷澤がミドルシュートを撃つもこれも西部がセーブ。そして湘南は75分、坂本OUTで中村IN。結果的にはこの交代策が的中することになった。

78分、東京陣でのパス回しから、菊池が右斜めへ足の長いパスを通す。臼井が縦に走ってセザーを振り切りながら速いクロスを入れ、今野と森重の間に走り込む中村が豪快にダイビングヘッドを突き刺した。敵ながら天晴れな得点。1-1。このまま終われない東京は羽生に替えて大竹を投入する。しかし、既に両チームとも足が止まっており、互いにミスで攻撃を終える場面が続いていった。梶山も田邉が下がってからは味方との呼吸が合わない場面が目立つ。

86分、達也のミドルシュートはポストのわずか左。88分、湘南は縦につないで佐々木のラストパスで中村のシュートチャンスとなるが、当たりが悪くポスト右に外れ。結局、どちらも勝ち越し点を奪えないまま試合終了。東京側スタンドからはやや控えめなブーイングが聞こえてきた。


希望の光が少しは見えたかな、という試合だった。

内容は良化していたと思う。特に前半はテンポよくパスが回り、選手間の距離やフォローし合う動きもこれまでの「とにかく早く前に行くぞサッカー」とは一線を画していた。パスサッカー風味になっていたというか。引き出す動きとパスさばきを繰り返すことで潤滑油の役割を果たした田邉と、前線で走り回って湘南DFをかく乱した羽生。彼ら2人の活躍は大いにチームを活性化し、梶山やセザーらのこれまでにない、攻守に渡る奮闘をもたらしたと言ってよいだろう。

しかし大熊監督も、いくら怪我人続出で駒不足とはいえ、田邉先発・羽生FW起用とは何とも大胆な選手起用をしたものである。追い詰められた大熊さんの開き直りといえば10年前、2001年5月の札幌戦を思い出す。あの年は呂比須を獲得して2トップによる攻撃強化を試みたもののあえなく頓挫、最下位に沈んだところで呂比須を外し、1トップに戻したことを契機にチームは急上昇へ転じたのだった。窮地における反発力はそれなりに持っている監督ではあるのだ。

ただし、今回は勝ちきれなかった。開始早々快調なパス攻撃で先制し、その後もペースを握り続けた。慣れぬメンツゆえの粗さはあったものの、これまでの力ずくの攻めとは異なり、観ていてワクワクするサッカーだった。おそらく先に2点目がとれれば難なく勝点3を手にして大きな期待と共に味スタを後にすることができただろう。だが、反町監督の適切な交代策もあって追いつかれてしまい、ファンのフラストレーションを払拭しきることはできず。これをどう見るか。

僕としては、あくまでポジティブにとらえたいな、と思う。少なくとも、この試合を見て「お、いいな」と感じられたプレーや展開の中には今後に向けたヒントとなるものが多く含まれていたはずだ。誰か1人に配球を頼らない「多心化」とか、パスとフォローを繰り返してテンポアップしていく連動性とか、中央とサイドの出し入れによる揺さぶりとか、思い切ったシュートの選択とか……もちろん厳しい目で見れば、足りないところの方がはるかに多いとは思うのだけれど。

とりあえず、これからしばらくはこの試合(の前半)で見せてくれた方向性でぜひ行ってもらいたい。すなわち、田邉や羽生の個性をチームの中で生かすこと。ただし彼らの消耗を考えれば、90分あのサッカーだけを続けることも無理ではあるのだろう。これから石川やPJといった主力が怪我から復帰してくる中で、選手交代なども上手く使いながらチームの引き出しを増やしていかなければならない……って、そういうのが一番苦手そうなんだよな、熊っつぁん(笑)。

まあ、でも、今季一番まともな試合だったのは間違いないと思う。田邉草民がもたらしてくれたイメージ。とにかくこれを生かしていかないと。怪我の功名でもいいじゃないか、別に。
 

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コメント

草津戦からは、かなり色々なことを整理してきた印象です。

少しは明るさが見えて来ましたが、次は苦手の京都戦。シンドイ時期が続きますね。(苦笑)

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