« ドーナツ化する東京 (東京ヴェルディ×FC東京) | メイン | わからん。いや、もうダメかもしれない。 (ザスパ草津×FC東京 テレビ観戦) »

2011年05月09日

●同じ「しょっぱい」試合でも (FC東京×カターレ富山)


昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ2第11節。FC東京 1−0 カターレ富山。震災中断明け3試合で2分1敗しかも無得点と、どっぷり不振に浸かってしまった感のある東京。ゴールデンウィーク最終戦の今節は公式戦初の対戦となる富山をホームに迎えた。試合は、意欲的なサッカーを見せながら未完成ぶりも露呈した富山に対して、東京が相変わらずの停滞ぶりでお付き合い。しかし、スコアレスドロー寸前に飛び出したベテランの一撃が東京を救うこととなった。
 
 
試合前、今季開幕からゴール裏に下げられている「J2なめてません」の横断幕が「J2なめてました」に変わっている事に気づいた。ギャグにしてられるうちは大丈夫、だよな(笑)。

キックオフ。負傷と出場停止でPJ・セザーを欠く東京は控えにFWを置かないメンバー構成。初登場の上里がボランチに入ってさばき、高松が前に張って梶山はその周辺を自由に動き回る形。サイドは突進力のある達也と北斗。一方の富山は話題の「3−3−3−1」。全体がブロック型、あるいは球形に伸び縮みし、局面で数的優位を作ることで攻勢をとっていく狙いか。パッと見た感じ、個の力を生かそうとするサッカーと組織力で勝負するサッカーの対決に見えた。

だが、両チームの攻撃はいずれも機能しない。東京は梶山が左右に流れて高松とともにボールを収めるものの、そこから連携で崩す場面がなく、強引なクロスやシュートで終わるケースが多い。一方の富山はショートパス中心に少ないタッチでつなごうとするが、精度が低く東京CBを脅かすには至らない。6分、黒部の強烈なミドルシュートは権田がパンチで弾き出す。19分、梶山への楔パスから右へ展開、椋原がミドルシュートするもGK内藤がキャッチした。

前半半ばを過ぎる頃には東京の攻撃に早くも行き詰まり感が出始め、中盤でパスの出し所を失う姿にスタンドから不満の声も。28分、富山MF吉川が負傷退場のアクシデント。29分、ドリブルで斜めにボックスへ入った北斗がシュートを狙うが、当たりが弱くDFがブロック。点をとられそうにもないが、とれそうにもない雰囲気が続く。

残り10分を切り、しびれを切らした(?)森重が徳永と入れ替わって上がることで、やっと東京の攻撃に少し厚みが出るように。36分、右タッチ際を突破した椋原のクロスを達也がボレーで狙うが空振り。37分、森重のミドルシュートを内藤が弾き、さらにこぼれ球を上里が狙う。39分にはボックス内でパスを受けた梶山が切り返しでDFをかわしてシュートするも、内藤がファインセーブ。いい流れの数分間だったが、ゴールは奪えず。0−0のまま前半終了となった。
 
 
後半、開始直後に今野のバックパスを権田がそらしかけてヒヤリとするも、その後は引き続き東京の攻勢に。46分、阿部巧のクロスを高松が胸トラップからボレーで狙い、バーを越える。53分には中盤を持ち上がった徳永の弾丸ロングシュートがポスト右を抜けた。56分、東京は北斗→谷澤の交代。同時に富山が負傷の池端OUTで木本IN。富山は前半終了間際にも途中出場の谷田が負傷交代していたため、なんと怪我のみで交代枠3つを使い切る不運であった。

気の毒がってはいられない東京としてはここで畳みかけたいところ。が、かえって試合は膠着してしまう。はっきりカウンター狙いにシフトした富山に対して東京は前半ほど前線にボールが収まらなくなり、61分に達也が、63分に椋原が左右からえぐるがクロスは合わず。そのうち、気温の高さもあって両チームとも足が止まってしまった。停滞する攻撃に苛立った東京ゴール裏からは「意地見せろ!」コールも。68分、東京ベンチが動いて上里に替えて羽生投入。

1点が遠い東京。71分、梶山から右へ展開、椋原のクロスに逆サイドから阿部が飛び込むがシュートできず。逆に74分、左から朝日の上げたクロスにソが飛び込み、すらしたヘッダーを権田が横っ跳びで辛うじて弾き出す。これは危なかった。77分には右CKのはね返りを徳永がミドルシュート、梶山が触ってコースを変えるも、ポスト左へ外れた。押し込んではいるのだが……気がつけば残り10分弱。「またスコアレスドローかよ」という考えも頭をよぎる。

苦境のチームを救うプレーは、80分に飛び出した。森重も上がる波状攻撃の中、左サイドのスローインを谷澤がヒールでボックス内へ流す。「何だ、味方がいないじゃないか」と言いかけた刹那、DFの隙間を弾丸の如く飛び出していく小さな影が!ゴール前に抜けた22番が渾身の力で撃ったシュートは内藤の腕を弾き、ゴール右隅に吸い込まれていく。いかにも羽生らしい、思い切りに満ちた電光石火の一撃!!思わず目を見張った。1−0。

こうなるともう東京のものである。82分、左から梶山がドリブルでボックスへ突入、逆サイドへ送ったパスを達也が狙うも枠外。84分、ボックス付近でつないでから椋原のクロスを高松が頭で叩き、内藤が横っ跳びで防ぐ。終盤には中盤が完全になくなってカウンター合戦の様相となるが、東京は落ち着いて自陣に人数を残し、89分には守備固めの高橋を投入。ほぼ危なげなく過ぎていくロスタイム。そして試合終了。久しぶりの歓喜に、味の素スタジアムが沸いた。 
 


しょっぱい試合だが勝ってよかった、というべきか、勝ってよかったがしょっぱい試合だった、というべきか。どっちでもいいか(笑)。

またしても内容は良くなかった。前後半の終盤数分ずつ(森重が攻撃参加した時ね)は押せ押せとなったものの、それ以外の時間帯、特に両ハーフの中頃は攻撃が完全に停滞。なかなかパスが通せず、やっとFWに楔が通ってもそこからの崩しに工夫がない。ファンも相当ストレスが溜まっている様子だった。自慢のCBが迫力を欠く富山の攻撃を抑え込んだので負ける心配は少なかったが、仮に74分のピンチで失点していれば目も当てられないところだった。

当然ながら、選手たちは遅く雑にやろうとしている訳ではない。むしろ、「早く速く前に」つなごうする意識が変に強すぎて裏目に出ているように僕には見える。例えば、前半中頃に多く見られた場面。MFがパスを受ける。アタッカーは一気に前へダッシュしていく。しかしそれらがパスコースを作る動きになっていないため、ボールホルダーはかえってパスの出し先を失い、SBの助けも得られず、相手プレスの的になってボールを失ったり不本意なバックパスをしたり……。

楔のパスにしても、高松や梶山まではまあ入る。だが、そこでフォロワーが追いつかず絡めないために、結局行き詰まって単騎で無理仕掛けしたり、戻さざるを得ないシーンが目立つ。何というか、2007年の停滞サッカーを思い出す感じ。城福政権の後半は「ムービング」というスローガンとは別にポゼッションを重視するスタイルになっていて、昨年はそれが行きすぎて停滞した感があったけど、今度は急ぎ過ぎっすか。どうしてこう極端から極端に走るのかねえ。

で、そんな感じでずっとモヤモヤを抱えながら観ていただけに、決勝点につながったプレーは余計に鮮やかに見えた。コンビネーションで崩すとやっぱりスカッとするよね、端的に。もちろん、個の力を発揮して取り切れるのならそれはそれでいい。セットプレーを磨いておくことも大事だろう。でも、やっぱり流れの中の連携でチャンスを作れるのであれば、グッと確率は高まっていくと思うんだよね。特に、引いて組織的に守ってくるような相手であればなおさら。

MVPは羽生。献身的な無駄走りがやっとのことで報われた。谷澤もそうだけど、大熊監督はどうも彼らのような「周りが見える選手」についての評価がちと低いような気がするな。梶山は、今の状態ならボランチより前の方がいい。ただ、「絶対交代させない」存在はマズイと思うのだが。監督は梶山に今回の谷澤のアシストみたいなのを期待してるんだろうけど。上里はデビュー戦としてはまずまず。高松はそろそろゴールがほしい。DF陣はいつも通りの出来だったか。

試合後、ヒーローインタビューで羽生は涙を浮かべていた。これまで満足な出場機会が得られず悔しかったのか、それとも別の感情があるのか。いずれにせよ、しょっぱい試合、いや危うく3連続スコアレスドローでこの上なくしょっぱいGWになりかけたところ、もらい泣きの涙でしょっぱさを味わえるとは。野球に例えれば、凡打戦0−0の延長15回裏にホームラン1本でサヨナラ勝ちしたような気分。ある意味お得な……って、問題はこれから、なんだけどね(笑)。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2685

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)