●ドーナツ化する東京 (東京ヴェルディ×FC東京)
昨日の午後は、味の素スタジアムでJ2第10節。東京ヴェルディ 0−0 FC東京。なんとJ2の舞台で実現した3年ぶりの「東京ダービー」。不振の続く両チームにしてみれば是非とも勝利して浮上のきっかけとしたいところだったが、東京は相変わらず低調なサッカーで得点を奪えず、ヴェルディも数的優位を生かせないまま痛み分けのドロー。2万9千もの観衆が詰めかけたにも関わらず、ひどい会場運営や試合後の騒動もあって残念極まる一戦となってしまった。
今回は観客数が主催者の予想より多かったせいか(でもGWのダービーだぜ?)、スタジアムの運営には多くの混乱があったようだ。入場口不足による長蛇の待機列とか、2階の開放を巡ってもめたりとか。僕は幸い先に着いた東すか編集長に席をとってもらったので焦ることはなかったけれど、それでも案内の看板はないわ係員に聞いても要領を得ないわで入場に手間取ったし、チケットチェックのお姉さんの誤認によって止められたりもした。一体何なんだろうか。
ともあれ、定刻に試合開始。両チームとも4−4−2ながら、ヴェルディはやや守備的に見える布陣。序盤は東京の気迫が目立ち、前がかりの守備からアタッカーに早くパスを送ってチャンスを作る。3分、梶山がDFのキックをブロックしてゴール前に飛び出すが、シュートはGK土肥が横っ跳びで弾き出す。6分、阿部が速いクロスを上げ、DFに競り勝った高松のヘッダーがきわどくバーの上。14分にはボックス周辺のパス回しから羽生のシュートがポスト左を抜けた。
しかし東京の攻勢は長続きしない。次第に守備ブロックを前に攻めあぐみ、梶山が無理目のパスを狙ってはカットされ、ヴェルディのロングボールで2トップを走らせる攻撃が目立ちだす。前半中頃にははっきり相手ペースになっていた。21分、右サイドのFKで河野がインスイングのクロス、前に出た権田が届かず、高松のクリアがあわやオウンゴールで冷や汗。28分には平本が足を滑らせた今野を置き去りにして独走、追いすがる森重が間一髪タックルを決める。
だが、ヴェルディも攻撃の精度は低く、また東京CB2人のカバー能力が高いことから、幾度かFWが裏に抜けかけながら決定機には至らない。30分、右FKから鈴木が上げたクロスを高松が頭で叩きつけるが、土肥の正面。35分、中盤でボールを奪った森がそのままドリブルシュートを撃つが、権田がキャッチした。39分、右CKから井上のヘッダーがバーを越える。45分に鈴木の撃った反転シュートも枠外。散発的な攻防に退屈したところで前半終了となった。
後半開始。49分、左FKに土屋が合わせたヘッダーを今野がゴールライン手前でクリア。その後もヴェルディが攻め込む場面が続くが、東京の守備も安定しており、なかなかシュートに至らないまま時計が進む。そして53分、試合の転機となる出来事が。ハーフウェーでこぼれ球を拾ったセザーがそのまま突進し、ボックス手前でDFに引っかけられて転倒したかに見えた場面、主審はセザーのダイビングと判断して2回目の警告で退場となってしまった。あや〜。
35分以上を残して10人になってしまった東京。しかし、数的不利が悪い方向に働くとは限らないからサッカーは面白い。東京は高松→谷澤と入れ替えて鈴木を1トップに残す4−4−1の陣形に。元々攻めあぐんでいたところ、東京の守備意識が高まって守備ブロックのセットが速くなったため、ヴェルディはチャンスすら作れなくなっていく。もっとも、東京の側もパス出しを1人で引き受ける形になっている梶山がミスを連発し、なかなか攻撃を組み立てられない。
68分、羽生OUTでペドロ・ジュニオール(以下PJ)IN。単騎仕掛けられるPJがトップに入った事でヴェルディDFが引っ張られる形になり、東京はSBの攻撃参加が復活。それでさらにDFがばらけた所に谷澤・梶山が上がっていく好循環。今度は東京の攻勢となった。70分、PJのキープから鈴木のシュートがポスト左。72分には森重の好クロスを谷澤が胸で落として土肥の脇を抜くシュートでゲット、したかに思えたが、ハンドの判定で得点はならず。
劣勢のヴェルディは飯尾・市川と投入するも、他の選手の足が止まったこともあって流れは変わらない。77分、右サイド谷澤のキープから椋原がクロス、PJのヘッダーは惜しくも左上に外れ。83分、東京はボックス左前でFKを獲得、作戦会議(笑)の結果鈴木が蹴ることになったが、ただのクロスでズッコケた。「1点取れば勝てる」展開だが……。88分にはまたも森重がいいクロスを上げ、梶山がヘッダーを枠に飛ばすも土肥がファインセーブ(そしてオフサイド)。
もう一波乱はロスタイムに。接触のないところで土肥が足を痛めてしまい、担架で退場。交代枠の残っていないヴェルディは急遽平本がGKを努めることになった。で、再開後のCK、東京は全員が集まって2度目の作戦会議を行うも(バスケかよ)、結局谷澤が普通のクロスを蹴ってはね返されてしまう。うーむ。モヤモヤした雰囲気のまま試合終了の笛を聞くことになった。
いや、終盤こそ無理矢理盛り上がったものの、ふと我に帰るとすごい停滞感、閉塞感。
前半の東京は本当にひどかった。最初の15分くらいは勢い込んでチャンスは作れたものの、一旦せき止められると打つ手なしというか、アタッカーの連動性もセットプレーの工夫もなく、大して強度のないブロック守備に攻めあぐんでしまった。そのくせ焦って前に蹴っちゃうからあっさりボールを奪われて逆襲されて……ヴェルディのカウンターも工夫と精度を欠いていたので0−0で済んだけれど、栃木あたりが相手だったら豪快にボカチン食らったのではあるまいか。
後半、セザーが退場になってからは「無理に前から奪いに行かず、しっかり守備ブロックを固めてから反転速攻」と狙いがはっきりし、交代選手も機能した(中村北斗を除く)おかげで攻勢に出ることができた。ただ、これも前半に比べればマシになったという程度の話。試合後の梶山のコメントなんかを見ると「11人の時にあれができていれば」という思いもあるようだが、それができないから問題なんだよな(笑)。「怪我の功名」はそうそういつもあるわけではない。
ここまでの4試合を見る限り、大熊監督のコンセプトはやっぱり「早く速く」なんだな、と。それは昨季後半の戦績を見れば、強豪相手に大きな有効性を発揮するサッカーではあるのだろう。でも、この試合の前半を見てもわかるように、早くて速いだけでは引いた相手を崩すのは難しい。そしてJ2では多くの相手が東京の個人能力を警戒してくることを考えれば「これで本当にええんかいな」と思う。しかも、準備期間の長さに反してサッカーの完成度自体が低いのだ。
4試合を終わって1勝2分1敗の成績は壊滅的とまでは言い難い。まだ首位との勝点差もたったの5に過ぎない、という見方もあるだろう。今のやり方を続けたとしても、(1999年がそうであったように)何とか昇格をつかみ取ることは可能かもしれない。でも、何か軌道修正を図るのだとしたら早い方が良いと思う。夏以降は日程がたて込んでたて直しが困難になってしまうから。
とりあえず、観戦者目線での無責任な感想を言わせてもらうと、中盤の組合せだけは何とかしてくれないかな、と。特にボランチ。徳永が不適任なのは言うまでもないが、今季の梶山のプレーはひどすぎる。細かい動き直しの少なさ、そして味方と全く意図の合っていない「ミスパス」の多さ。試合後のコメントであれこれ言う割には試合の流れを読んでいるようにも思えない。自分のコンディションが悪いのであれば、もっと周りに指示出して動かせばいいのに、とも思う。
結局、今の東京はボランチの所でチームを動かせず、高松や谷澤や羽生や鈴木といった周りの選手が気を使いすぎて空回りしてるように見えるのだ。で、彼らは疲弊して途中交代し、梶山は決して替えられない、と。ドーナツ化、あるいは不可侵の空虚な中心(ロラン・バルトかよ(笑))。今の梶山と徳永のコンビだったら、リスクはあっても高橋か草民を使うか、J2ではオーバースペックにも思えるCBのどちらかを回してほしいんだけどな。羽生や谷澤でもいいし。
まあ、そうは言っても次の富山戦はもう3日後には来てしまうわけで、今の段階で「大ナタを振るう」のはなかなか難しいのかもしれない(いや、ボランチだけは何とかしてほしいけど)。となると、梶山とPJのコンディションが上がることを願うしかないのかな。なんか、今回、試合後に大して悔しくない自分に気づいてしまったのだが、これは期待値が低いということなんだろうか。それはそれでとても残念な事に違いない。ここらで見返してほしいよ、ホントに。
[付記1]
5/4(水祝)東京ヴェルディ戦試合後の事象について(FC東京公式)
「事象」という言葉を見て、福島第一原発事故直後の政府発表かよ!と思った人は多かろう。もしかするとそこら辺の非常に微妙な線を狙ったチーム広報のギャグだったりしてな。あと、最後の一行の謝罪はよくわからなかった。FC東京がチームとして「心よりお詫び」しなければならないような事って、何かあったんだろうか。
[付記2]
結局、「たとえ結果が出なくても、サッカーに一喜一憂できる日常自体がありがたいよな」などと言っていられたのは、再開初戦のフクアリだけだったと(笑)。
[追記]
土肥ちゃんが心配だ。
コメント
梶山の出来が本当に酷いです。
確かに狙われてはいましたが、ボールを奪って、いざカウンターという場面でミス連発。
このままだと、ムダ走り量産の達也と両サイドバックが過労死してしまいます。
Posted by: コタツねこ | 2011年05月06日 08:08