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2010年12月05日

● 天を仰ぐ (京都サンガ×FC東京)


昨日の夕方は、西京極陸上競技場でJ1第34節。京都サンガF.C. 2−0 FC東京。ついに来てしまった、1部残留を賭けたリーグ最終戦。大事な一戦の相手は既に降格の決まっている京都であった。試合は、異様な緊張感とぎこちなさの中で京都に先制を許し、増していく重圧の中で追いかける苦しい展開。後半途中からは奇策を交えた総攻撃をかけるも1点が奪えず、逆に追加点を許して完敗。神戸が浦和に完勝したために初のJ2降格が決まってしまった。
 
 
キックオフ直後から目についたのは、東京の選手たちの動きの硬さであった。守っては中途半端に前に出て奪おうとしてかわされたり、お見合いで相手をフリーにしたり。攻めても攻撃陣の動きが少なく、中盤からパスを出しあぐねてはサイドに追い詰められて……自力残留のためには勝たなければならない東京だが、京都のカウンターを懸命にクリアする場面が多い。8分、オフサイド崩れの隙を突いてドゥトラが飛び出したピンチはカバーの今野が間一髪ブロック。

15分、平山が京都陣中央でDFをかわして突進、ミドルシュートがわずかにバーを越えた。他にもウイングの鈴木とリカルジーニョが度々ドリブルで仕掛けるが、空回りの印象。ただし京都もさほど前がかりでは来ないため、膠着状態のまま時計が進む。29分、右スローインから椋原の低いクロス、平山が飛び込むもわずかに届かず。31分、右CKで森重が遠目からヘッダーを撃つもGK守田がキャッチ。「前半は0−0でも仕方ないか」という雰囲気だったが……。

痛恨の失点は33分。京都の波状攻撃の中で中村大が左サイドからクロス、ファーサイドで北斗に競り勝ったドゥトラが頭で叩いてゴール左上に決まってしまった。「うわ、これは……」という感じ。0−1。尻に火が付いた東京はようやく攻勢に。38分、京都陣左のFKを北斗が直接狙ってポスト左を抜けた。40分には平山が落としたボールにDFと競りながらリカが飛び込むも、わずかに届かず。結局、押しながらも得点にはいたらず、そのまま前半終了となった。
 
 
後半、もちろん東京は前がかりに。だが、梶山の動きが悪く、頼みの平山もDFに狙われてなかなかチャンスを作れない。47分、森重→平山の楔パスから追い越すリカがシュートするが、ポスト左。50分には左サイドを突破したリカのクロスを守田が正面に弾き、フリーの平山に渡る決定機となるも、シュートを守田に当ててしまう。これはものにしたかった。京都が焦らずパスを回し始めたこともあり、東京にとっては一段と嫌な空気が漂い始めたように感じられた。

ここで東京は早くも今野を前線に上げる奇策に出る。58分、椋原のクロスに今野が飛び込むも、守田がきわどくセーブ。続いて鈴木に替えて大黒投入。どんどん前に動き出す大黒が入ったことで攻撃に勢いが出た。61分に中村充に左ゴールライン際を破られるピンチを何とかしのぐと、62分には椋原のパスで大黒がボックスへ突入、さらに64分には左CKから今野のヘッダーが守田を抜くも、渡邉がゴールライン上でクリア。「ああ、早く決まってくれよ!」という。

何とか早く追いつきたい東京は66分、米本OUTで大竹IN。大竹は投入直後にボックス内でこぼれ球を拾って切り返しからシュートを撃つなどキレのある動きを見せ、期待を抱かせた。ところが、あろうことか東京はここで森重も前線に上げ、梶山が最終ラインに下がってロングボールを連発するパワープレーに打って出る。まるで4−1−5のような陣形。大半のパスは大竹の頭上を越えてしまい、平山が競ったセカンドボールも全く拾えない状況になってしまった。

そこからは焦る東京のロングボールに対して両者競り合うシーンが延々と繰り返されることに。京都は人数をかけて守りを固め、攻撃はドゥトラ・ディエゴの2人カウンターにお任せ。78分、大黒がすらしたボールを今野が角度のないところからシュートするが、守田がブロック。83分には北斗のクロスが抜けたところをヨングンが、85分にはボックス内で粘る大黒の折り返しを平山がシュートするが、いずれもDFがブロックした。とにかくスペースがなさすぎる。

87分、西野がリカを足裏タックルで倒して一発退場。しかし、既に穴熊と化している京都が10人になっても影響はなし。逆に89分、カウンターで梶山を振り切って突進するドゥトラを権田が倒してしまい(触ってないようにも見えたが)、PK。これをディエゴが左隅にきっちり決める。「とどめ」と言ってもよい追加点だった。0−2。その後も東京の選手たちは攻め続けるも、得点できないままついにタイムアップ。終了の笛が鳴った瞬間、思わず天を仰いだ……。
 
 

力及ばず、だった。内容どおりの結果だから、悲しいし悔しいけれど一方で「しょうがないな」とも思う。この試合についても、シーズンを通しても。

心配していた事柄が全て出た90分間であった。序盤は緊張のためか明らかに動きが硬く、連携も悪かった。それでも、後ろ目に重心のある陣形でのスタートでもあり、大事な試合で慎重になるのは当然だから前半0−0なら上々だったのかもしれない。ところが、懸案だったサイド攻撃に対する守備の弱さを露呈して先制点を奪われ、次第に増す焦りの中でフォームを乱していって最後の力攻めも功を奏さなかった。一言で言って、自分たちのサッカーができなかった。

一つの原因としては采配が挙げられるだろう。先発の攻撃陣に足下に欲しがるタイプばかり並べたのは失敗だったと思う。苦境の中での経験値を考えても、(90分使えなくとも)大黒か羽生は必要だったのではなかろうか。また、大黒・大竹投入でせっかく攻撃に勢いが出たところでパワープレーに切り替えたのは疑問。大竹がコメントしているように、彼の頭上をボールが行き交うばかりで運頼みの攻撃になってしまい、それがまた選手の焦りを増幅したように見えた。

大熊監督については、夏場の厳しい状況からよくぞチームを「戦える」水準にまで回復させてくれたという思いが強いのだけれど、この試合に関してはちょっとご乱心だったかな、と。

もちろん選手たちも様々な意味で力が足りなかった。プレッシャーがかかって普段通りのプレーができないのはある程度仕方がない。けれど、序盤の停滞にせよ終盤の焦るばかりの攻撃にせよ、工夫や意思統一があまり感じられなかったのは残念である。結局、もう何年も言われ続けていることかもしれないが、ピッチ上においてリーダーシップを発揮する(判断して、周りを動かす)選手がいない、という弱点がこの土壇場でまたしても出てしまったのかもしれない。

しかし、最初から最後まで(まだ天皇杯が残ってるけど)上手く行かないこと続きの1年だった。米本・平松の負傷に始まって、開幕直後の低迷、一旦は盛り返しながらW杯中断明けにまた急降下。その間に長友・赤嶺を放出する一方でアタッカーばかり獲る「補強」が効果を上げず、大黒獲得や監督交代という手を打つも、ギリギリのところでついに間に合わなかった。そもそもベテランのいない編成がどうだったのかという問題もあり、反省材料は挙げればきりがない。

まあ結果が出てしまった以上、失敗そのものについてはもうどうしようもない。つーか、こうなったら強くなって帰ってくるしかないんだよね、取り返す方法は。できるだけ早くJ2を勝ち抜いて、それから目にものを見せてやるしかないのだ。浦和や広島やセレッソがそうしたように。
 
 
……と、まあ、偉そうに書いてはいるけれど、さすがに昨日の試合が終わった瞬間には僕もかなりヘコんでしまったのであった。繰り返しになるけど、結果についてはもうしょうがない。それでも、やはり目を腫らして謝罪の言葉を絞り出す大熊監督や、打ちひしがれて涙を流す選手たち(特に徳永)の姿を見ていると、胸がいっぱいになって言葉を失ってしまうのだ。僕に出来たのはただ、頭を下げる選手たちに拍手を送ることだけだった。あの光景は決して忘れない。

おそらく、来年の東京は否応なしに大きく変わらざるを得ないのだろう。スポンサーや観客動員をはじめとして経済的環境は間違いなく厳しくなる。選手たちのどれだけが残ってくれるのか(残すことができるのか)はわからない。監督選びが難航する可能性もある。ただ、ピンチはピンチとして、それは新たに良い方向に踏み出すためのチャンスにもなり得るはず。一つ確実に言えるのは、僕は来年もこのチームを応援するということだ。僕は新生FC東京に期待したい。

大丈夫。11年前の新潟とは真逆の、とても悲しい出来事ではあるけれど、これもチームとともに歩む中での一つの経験だから。「いつか、笑って話せる日が来るよ」。本当にそう思う。
 
 
 
[付記]
しかし、こういうの(Tokyo boo http://boo.fm/b230497)を聞いてみても、やはり20世紀から東京を応援している古参ファン・サポーターは肝がすわっているというか、タフだな、とは思う。まあ半分くらいは強がりかやけくそなのかもしれないけども(笑)。でも、下向いていつまでもメソメソしたり、ヒステリックに罵詈雑言を口にしたりしても仕方がないのだから、どうせなら笑っちゃおうぜ、という心意気はまことに健全だと思う。「笑えばいいと思うよ」。うん。
 

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コメント

現地組です。


今季の悪いところが全部出た試合でした。

最後まで開き直れず、ゴール前に入ったのに横パス出してカットされるなど中途半端でした。


梶山が「慎重に入って、90分で勝つ作戦だった。」とコメントしてましたが、慎重さが消極的なプレイになってました。

ホームの山形戦、後半41分まで来ての同点被弾など、残留のチャンスを自ら放してしまってはこの結果は必然。

降格という外部要因ですが、チームの根本からの改革のチャンスでもあります。キチンと総括し、来季を迎えてもらいたいと思います。

(それでも悔しい~。)

おいどんも同じく国家試験が間近に迫っている中、行きましたが…。ゴール裏で応援していたんだけど、PKが決まった瞬間にただただ目の前の光景を見るしかない自分がいた…………。

まあシーズンは終わっていないし、年末年始3連勝して、元日を笑って過ごしたいなあ(ACLいけないけどね)。でもって、J2生活なんて1年で終わらせてやると。


>僕は新生FC東京に期待したい。
監督・大熊さんでいいんですかねえ?

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