●面白くなってきやがった (FC東京×モンテディオ山形)
昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ1第33節。FC東京 1−1 モンテディオ山形。いよいよ残り2試合。前節は首位・名古屋を倒して1部残留へ実質「あと1勝」までたどりついた我らが東京だが、今回は昼間の試合で神戸が清水に劇勝し、プレッシャーのかかる状況での戦いとなった。試合は、前半からボールを支配するものの山形のまったりペースにはまって攻めあぐみ、後半平山のゴールで一旦はリードを奪ったものの、田代の一発にやられてあえなく引き分け。
キックオフ。平山が復帰した東京は2トップに戻し、徳永がCBに入って森重は控えスタート。一方、前節既にJ1残留を決めている山形はメンバーを落とした様子で、田代・宮沢・石川竜がベンチに並ぶ。2分、北斗がトイメンのSBを振り切ってドリブル突破、クロスは惜しくも平山に合わず。6分、石川が右サイドを強引に突き破り、クロスにファーで大黒が合わせるも枠外。やはり個人能力では東京が上回っている印象であり、全体的に押し込む形で試合が進んでいく。
だが、4−1−4−1の陣形でハードワークを続ける山形の守備は粘り強い。東京は前線へなかなかボールが入らず、中→外へ回しては攻めあぐむ場面が多い。12分、コーナー付近で長谷川が椋原からボールをもぎ取って折り返し、小林のシュートがバーをかすめてヒヤリ。17分、梶山の奪った刹那のロングパスで平山が巧くDFの背後をとるが、前に出たGK清水が一対一をストップ。直後、カウンターで長谷川がボックスへ突入するも、カバーの徳永がクリアした。
「1−0上等」風の山形は前に焦らず、ここぞという場面だけスピードアップする。32分、小林の左からのクロスに北村が頭で合わせ、権田が片手で弾き出す。34分、足を痛めた石川がリカルジーニョと交代するアクシデント。40分、リカがDF2人をぶっちぎってゴールライン際をえぐるが、西河が懸命のクリア。43分には平山が左サイドを突進し、ボックス内への折り返しを羽生が逆サイドに流すも、大黒の寸前でDFが懸命のクリア。膠着気味でハーフタイムへ。
後半になっても変わらずまったりムード(?)で試合が進み、東京はなかなか攻撃のきっかけをつかめない。52分、動きの重い大黒に替えて前田を投入。しかし流れは変わらずに焦れる展開の中で細かいミスが増え始める。57分、左サイドで早いリスタート、疾走するリカからの速いクロスを平山が頭で叩くが、ポスト右。ここで山形は長谷川OUTでエース田代IN。その田代を中心にワンタッチで中央突破を図るプレーも増えて「いよいよ来たか」という感じであった。
63分、東京は羽生→森重と替え、徳永・梶山を一列ずつ上げて4−2−3−1の陣形にシフトした。対する山形はキャプテン宮沢を投入。先に効果が出たのは東京の交代で、森重はCBに入りながらも正確な縦パスで攻撃を加速させる。68分、右サイドでボールを奪った森重の柔らかいクロスが梶山の頭をかすめ、さらにリカに渡るもシュートはDFがブロック。その前後にも平山がシュートチャンスを得るが、やはり群がるDFに防がれる。まるで雲霞のようだった。
先制点が入ったのは73分。森重からきれいなグラウンダーの縦パスが梶山に通り、梶山は外に出すと見せかけてボックス内の平山へ。平山が撃った反転シュートはDFの足に当たりながら、清水の頭上を抜けてゴールに吸い込まれた。縦のラインでいいパスとシュートがつながったナイスな得点。よし!!1−0。77分にもやはり森重→梶山→平山と今度はワンタッチで縦につないだが、平山のシュートは際どくポスト右を抜けた。これが決まれば完璧だったが……。
そう簡単には終わらなかった。80分を過ぎると、連戦の疲労と重圧のためか東京は足が止まり、後半まで主力を温存していた山形の攻勢に。そして85分、人数をかけた攻撃の中で宮沢の反転パスで小林が左サイドを抜けてクロス、今野に競り勝った田代のヘッダーがゴール左上に決まってしまう。この時間帯の流れるようなパスワークは敵ながら天晴れだった。1−1。
ドローでは神戸との勝点差が詰まってしまう東京は、今野を前線に上げて再び攻撃モードに。89分、梶山とのパス交換から今野が反転シュートを撃つが、右に外れ。逆にロスタイム、逆襲速攻で右サイドを疾走する田代の速いクロスに宮沢が飛び込むが、ヘッダーが枠外にそれて命拾い。惜しかったのは終了直前で、左スローインから森重がゴール前に入れた浮き球に前田が滑り込んで合わせるも、清水がキャッチ。結局、同点のまま試合終了となってしまった。
小林監督が作り上げてきた山形メソッドに「わかっちゃいたけどしてやられた」試合。
モンテディオは、統制のとれた守備で粘り倒してロースコアの接戦に持ち込み、終盤のここぞという場面で1点取って勝つのが得意のチーム。そんなことは東京もわかってはいたのだろうが、それがチームの熟成度の差ということなのか、まんまと相手ペースに引きづり込まれてしまった。それでも、選手交代とシステム変更が功を奏して平山の一振りで先制し、あとは守り切ればよかったのだがが……失点前後は試合運び云々以前に、フリーズしてしまった印象だ。
名古屋戦の陣形をあえて変更した理由は、おそらく平山・大黒の併用のためと、相手の違いによるものだろう。横浜戦での平山と名古屋戦での大黒はいずれも素晴らしく、「負けない」事ではなく「勝つ」事が求められた今回は両方を使いたかった。また、名古屋戦に比べればボールを保持して攻めることができるという予測の下(実際そうだったし)、(現状どちらかと言えば)重心が後ろ寄りになりがちな4−2−3−1よりも4−4−2で行くことを選択したのではないか。
ただ、残念なことに、そうは問屋が何とやら。山形の組織守備の前に東京は2トップへの縦パスを入れることができず、中からサイドに追い詰められ、を繰り返すうちに試合が膠着してしまった。頼みの強引なサイド攻撃も石川の故障を招いてしまい、交代枠1つを早々に使うことになってしまった。加えてチームの要の梶山もトップ下でプレーした方が明らかに生きていた。大黒のコンディションも良くなさそうだったし、もう少し早くシステム変更してくれればなあ、と。
わからなかったのは、森重のベンチスタートだ。森重は今の東京において、有効な縦のグラウンダーパスができる数少ない選手である。それは試合全般におけるパスの流れと、先制点や77分の場面を見比べれば明らかだろう。そして山形のようなゾーンの組織守備を崩すために「楔を打つ」類のプレーは不可欠なのだ。コンディションの問題なのだろうか?前田の起用は前にボールを収めたかったということだろうが、53分の交代が大黒→森重だったらなあ……。
あと、大熊監督もコメントしている通り、選手たちのコンディションも決して良くはなかった。石川は怪我してしまったし、大黒や羽生、椋原、今野あたりも動きにキレを欠いていた。まあ、長いシーズンを戦ってきた大詰めであり、ここ2週間で5試合の強行スケジュールでもあった。おまけに試合ごとに増していく重圧。少なくとも僕の目には、懸命に頑張ろうとしているのに頭と体がついて行かない選手が何人もいるように見えた。今度こそ本当に本当の正念場である。
そんな苦しい状況の中、希望の光となっているのは平山相太の存在だろう。この試合でも前線でのポストプレーやサイドでのDFとの競り合いで体を張り続け、一旦は残留をたぐり寄せるゴールも決めてくれた。何というか、監督が交代してから特にそうだけど、最近の彼は表情が引き締まって、とても良い顔をしていると思う。コメントもそうだけど、決意というか意志というか、そういうものが強く感じられるようになったのだ。プレーも堂々としていて実に頼もしい。
あとは責任感を背中ににじませながらチームを引っ張る徳永や、東京伝統の「部活サッカー」を体現する米本、ふてぶてしさを感じさせる権田と森重も頼りになりそうだ。もちろんこの試合で不調だった選手の中には、6日間で見違えるように調子を上げる選手もいるだろう。鈴木達也も帰ってきた。重松もいる。次の試合のベンチには大竹が戻ってくるかもしれない。そう、東京にはたくさん武器があるのである。決して悲観的になることはないし、自信を持って行こう。
12月4日の京都戦は、おそらく1999年の昇格をかけた新潟戦か、もしくはそれ以上に(なにしろ今度は追われる立場だ)重圧のかかる試合となるのだろう。不安や心配はもちろん尽きないけれど、一方で不謹慎なようだが非常に楽しみでもあったりする。だって、リーグ最終戦までこれほどの緊張感を保ったままシーズンを送れるなんて、ホント99年以来ではなかろうか。もちろん(98年JFLのように)それが優勝争いである方がはるかに良いんだけど(笑)。
だから。あえて思い切り強がって、こう書いておきたい。「面白くなってきやがった!」と。
コメント
会社も休んだし、京都行きますよ、勝ちましょう
Posted by: aoaka11 | 2010年11月29日 10:22