« ふと気になった森重のワンプレー | メイン | まだ「ある」んだな、これは (FC東京×アルビレックス新潟) »

2010年10月17日

●暗転、だが (ベガルタ仙台×FC東京)


昨日の午後は、ユアテックスタジアム仙台でJ1第26節。ベガルタ仙台 3−2 FC東京。前節久しぶりの白星に引き続き、天皇杯でも勝利を収めて上昇ムードの我らが東京。今節は残留争いのライバルとの直接対決となる大事な大事な一戦であった。試合は勝負試合らしいタイトな攻防となり、2度に渡ってリードを奪った東京が逃げ切りを図るも、終盤東京のミスにもつけ込んでたたみ掛けた仙台が劇的な逆転勝ち。東京はまたしても痛い黒星を喫してしまった。
 
 
気合の入った両サポーターの歌声が響く中でキックオフ。序盤は双方速攻基調で攻め合いを挑む。開始直後、東京陣深くでの競り合いから、こぼれ球を拾った赤嶺のシュートを権田が押さえる。2分、オーバーラップした椋原がニアの大黒を狙ってクロスを入れるが、きわどくDFがブロック。ボールが激しく行き来する中、次第に東京がペースをつかんでいく。6分、平山のパスでリカルジーニョが左サイドを突破、クロスがゴール前の大黒に通るもシュートはできず。

先制点は9分。右CKを頭で叩いた平山のシュートはゴール寸前で仙台DFがクリアしたものの、はね返りを拾ったリカがもう一度クロス、大黒がジャンプ一番きれいなヘッダーをゴール左隅に突き刺した。1−0。その後も東京ペースは続く。攻めては平山に対する早いフォローからサイドを突き、守っても徳永がバイタルエリアを制圧。18分、椋原がDFを振り切って突進、低いクロスをDFがそらして大黒に渡るが、シュートは枠外。腕を振って悔しがるむっくん。

一方の仙台は中盤で劣勢のためロングボールが多く、赤嶺は前線で奮闘するも孤立する場面が多い。15分、梁からパスを受けた赤嶺のシュートは権田の正面。24分、朴のクロスに中原が飛び込んだ場面もヘッダーは枠外。逆に28分、東京はカウンターから右へ展開、椋原の早いクロスがDFとGKの間を抜けるも、平山らが詰め切れず逸機。ここまでの流れからすれば東京の完勝ペースにさえ思えた。

ところが29分。中央で詰まった仙台は右サイドへ展開、走り込む斉藤が思いきったロングシュートを撃つと弾丸のようなボールは権田の手を弾いて右ポストを直撃、待ちかまえた梁がボレーシュートを叩き込んだ。思わず唖然の、電光石火の得点だった。1−1。その後は双方とも守備で丹念にスペースを消しつつ攻撃で無理をせず、「大事な一戦」らしい膠着状態に。時折リカがドリブルで攻め込んでも仙台DFが2〜3人で囲い込んで抑える。同点でハーフタイムへ。
 
 
後半も、立ち上がりは引き続きタイトな攻防が続くかに見えた。が、あっさりと均衡は破れる。51分、左サイドのボール争奪戦から北斗がふわりとしたアーリークロス、DFの反応が遅れたところに走り込んだ平山が頭で合わせ、前に出る林を抜いてゲットした。一瞬だけ真空状態になった守備の隙を突いた一発。2−1。得点直後の短時間は東京の攻勢になったものの、しかし負けられない仙台が前がかってきたことから、その後は一進一退の攻防になっていく。

58分、梁から右サイドへ展開、斉藤のクロスを中原が落として赤嶺が飛び込むが、森重が体を張ってブロック。59分、赤嶺が巧みな反転でキムの逆を取って突進、どフリーで上がる関口にラストパスが通ったものの、鋭く前に出た権田がビッグセーブ。仙台のパスの回りは前半に比べて良くなったのだが、東京DFの粘り強さも光る。60分、森重のパスカットからカウンターとなって平山がDFの間を突破、中を狙った速いクロスは林が横っ跳びでキャッチした。

もう一崩しがほしい仙台は中原に替えてフェルナンジーニョを投入。仙台のパスワークのリズムが上がり、東京はボックス付近で守備に追われる場面が増えてしまう。65分、速いパス交換からフェルナンジーニョが左サイドを突破、パスがゴール前の梁に通るが、リターンが通らず助かった。ここで東京は森重OUT羽生IN。セカンドボールの確保やパスさばきに安定したプレーを見せる羽生が入ったことで、東京は押し込まれながらも一方的な袋叩きは許さない。

69分、単騎左サイドを突破したリカがクロス、大黒が右足アウトでシュートしてわずかにバーを越えた。71分、梁のクロスを赤嶺がダイレクトボレーで狙って今野がブロック、キムのクリアキックを関口がチャージし、不規則ボールが枠に飛んだ場面は権田が素晴らしい反応で弾き出す。ファインセーブ!77分、東京は石川→重松の交代でプレスの強度を上げにかかる。これは奏効し、仙台は中盤でボールをつなげずサイドから単調なクロスを上げる形が増えていく。

残り10分頃になると、仙台はDFラインの上がりも遅くなり、前線との間が開いて精度の低いロングボールを東京DFが繰り返しはね返す。79分には平山のループシュートがバーを直撃。東京の勝利が見えたかに思えた。ところが。大黒→松下と交代した直後の86分、左サイドのFKから梁が上げたロングボールは予想外に伸びたのか、前に出た権田がかぶって触れず、その背後に走り込むエリゼウがあっさり蹴り込んで同点。痛い痛い守護神のミスである。

思わぬ失点に動揺の見える東京に対して、追いついた仙台は慌てずじっくり回して攻めていく。そしてロスタイム、右サイドから斉藤が入れたクロスを赤嶺が落とし、ゴール前に躍り込んだフェルナンジーニョがゴール左に決めて何と逆転。今野に競り勝った赤嶺は素晴らしかったが、フェルナンジーニョを離してしまったキムの中途半端な位置どりも致命的だった。そしてそのまま、2−3で試合終了。
 
 

85分の時点では「九分九厘勝てる」と思ったのだが……サッカーは甘くないのう。

序盤の攻め合いの中で平山への楔パスとサイドの速攻を軸にペースを握り、大黒の決定力を生かして先制。一旦は思いきったロングシュートから追いつかれて膠着状態に陥るものの、後半早々に隙を突いて再びリード。後はカウンターで追加点をとるか守りきれば良いわけで、実際うまく選手交代もまじえてしのいでいるうちに、仙台は明らかに攻めあぐむようになっていた。本当に、ロングボールの事故とセットプレーだけに気をつければ、という状況だったのだけど。

後半のゲームコントロールとか、選手交代とか、より上手いやり方はあり得たのかもしれない。でも、現状の彼我の力量を考えても、残り5分までは上々の展開だったと僕は思う。だから敗因を挙げるなら、もちろん権田のミスと、守り固め要員の不足(平松……)になるだろうか。まあ、それらについては今とやかく言っても仕方がない。ただ、せめて勝点1はほしかったのだけど、その切り替えも効かなかった。毎度の事ながら「ピッチ上の指揮官」がほしいやね。

とにかく、ショッキングな負け方だし、勝点的にも痛い黒星なのは間違いない。でもまだ残り8試合。我々は何も失ったわけでもなく、何を得たわけでもない。落ち込もうが腹が立とうが、わずか1週間で次の試合がまたやってくる。本当の正念場はこれからなのだ。頑張ろう。

個々の選手では、まず徳永の頑張りについては書いておきたい。不慣れ・不向きなポジションには違いないが、おそらく北九州戦でCBに入った経験もプラスに働いているのだろう、ステディな守備を見せて後半半ばまでの優勢に貢献した。ただ、フェルナンジーニョみたいな「変化球」にはついていけないのと、あとボランチとしては指示出しが少なすぎるように見えるんだよね。冗談抜きで、現広報の浅利悟氏あたりに臨時コーチで付いてもらってはどうだろう(笑)。

攻撃陣では、まず平山。何だかんだで90分ボールを収めて闘える貴重な選手に違いない。今回は念願の得点も手に入れた。大黒は、先制弾は素晴らしかったけど、もう1つ2つは枠に飛ばしてほしかった。石川・リカはそろそろ今の布陣での動きを研究されてきたかな。森重は読みと巧さを生かして局所局所で良い仕事をした。これで90分働ければ……。羽生と松下は不運というか、損な役回りだったかも。重松は猪突猛進一本やりでは今後が心配になってしまう。

DFでは、今野はロングボール攻撃の大半を撃ち落とす「パトリオットミサイル」として活躍。キムは逆をとられたり中途半端なポジショニングでマークが遅れたり、不安定だった。むっくんは攻撃は貢献したけど、関口にぶち抜かれるなど守備はイマイチだった。北斗は、終盤狙われるのは相変わらず。そして権田は……「一番信頼できるヤツがミスしたんだからもう仕方がない」くらいの事は言っておきたい。つか、本人が一番悔しかろうて。

試合後、天を仰ぐ権田のところに真っ先に駆け寄っていったのは平山だった。彼も「お前のせいで負けた」と言われることが昔から多い選手(それほど期待されているということでもある)だから、おそらく今の権田の気持ちがよくわかるんじゃないかな。うん。
 
 
ユアテックスタジアムの相変わらずの観やすさも、ベガルタのソリッドでシャープなサッカーも(敵ながら)見事だったけど、それら以上に印象的だったのが仙台サポーターの試合後の喜びよう。メインスタンドでも3点目が入った時点で「やった!勝ったあ!」と飛び上がる人もいて、ホイッスルが鳴った瞬間はホント黄色い笑顔と歓声がスタンド中で炸裂したかのようだった。あの純粋な喜びよう、率直に羨ましいと思うし、僕たちもかくありたいものだと思った。

あと、赤嶺は予想以上に愛されている感じだったね。試合後はずっと赤嶺のチャントが続いていたかもしれない。それは、僕たち東京ファンにとっては嬉しくもあるし、悲しくもあるし……複雑な心境。相手として見るとなおさら良い選手だと痛感したし。もう帰ってこないのかな。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2661

コメント

> 毎度の事ながら「ピッチ上の指揮官」がほしい

ほんとに、これは何度思ったことか。。
特に今年は状況が状況なだけに切実ですよね。

今野あたりに試合の流れに応じてチームを動かせる選手になってくれよと思い続けて何年経つことか。。。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)