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2010年10月04日

●やっぱり「俺たちの国立」か (FC東京×湘南ベルマーレ)


すっかり秋空に変わった日曜の午後は、国立競技場でJ1第25節。FC東京 3−0 湘南ベルマーレ。ともに降格圏からの浮上を目指す両チーム、特に東京にとっては前節大熊監督就任後の初戦を落としているだけに「絶対に負けられない戦い」であった。試合は、大宮戦同様に多くの時間帯で東京の攻勢となったが、今度は大黒のゴールを皮切りに3得点をあげて内容どおりの完勝。11試合ぶりの白星で、前日神戸が負けていたために15位に浮上した。
 
 
立ち上がりは激しい攻め合いとなった。東京は4−4−2の布陣で平山や石川を狙うロングボールを中心に、対する湘南は4−3−3の布陣で阿部ら3トップが位置を変えながらDFラインをかきまわし、前に速く運ぶ攻撃。2分、右CKに合わせた徳永のボレーシュートはバウンドしてバーを越えた。3分、オフサイドギリギリで左サイドに飛び出した寺川の折り返しで坂本がボックスへ突入、狭いところを狙ったシュートは権田が弾き出す。ともにシュートの意識も強い。

しかし、時間が経つにつれ東京がペースを握る。この日の東京は守備の出足が非常によく、平山・石川が収められない場面でもすぐさま奪い返して攻撃へつなげていく。11分、石川を追い越す椋原のクロスが大黒に合いかける惜しい場面。21分、中央を森重が突進、パスを受けた平山のシュートがゴール左上を抜けた。31分には左からのクロスを大黒が落として平山がシュートするも、DFがブロック。その他にリカルジーニョがドリブルで仕掛ける場面も幾度か。

だが、なかなか点が入らない。東京は楔のパスが少ないためサイドを突破しても湘南の守備陣形は崩れておらず、クロスははね返されてばかり。逆に33分、エメルソンの縦パスを受けた馬場がボックス前で潰れ、こぼれ球を寺川がシュート。これが権田の頭を越してバーを叩いた。あぶねー。さらに直後、エメのドリブルから交差して入った馬場の強烈なシュートを権田が横っ跳びでストップする。ここら辺は少ないピンチながら、浮き足立った様子で危なかった。

そんな嫌な雰囲気が吹き飛んだのは37分のCK。今野のヘッダーは当たりが弱かったが、GK野澤がキャッチしようとする前に割り込んで大黒がボレーシュート!ゴールライン上のDFの間を抜いて決まった。大黒らしい「最後の一仕上げ」。1−0。続いて39分、石川から左へサイドチェンジ、リカの縦パスを平山がダイレクトではたき、走り込む石川がゴール右隅へ唸るような強シュートを突き刺した。良い展開、良い落とし、良いシュート!!2−0。

呪縛から解き放たれたような連続得点に沸き返るスタンド。一方、早くも追い詰められた湘南は前がかりになり、43分、エメを基点とする展開から臼井が切れ込んでシュート、権田が横っ跳びワンハンドでセーブ。直後、阿部のヘッダーがバーをかすめた。2点差でハーフタイムへ。
 
 
後半も東京ペースは続く。開始直後、石川が右サイドでドリブルからクロス、平山のヘッダーは前に出る野澤に防がれた。48分、左から仕掛ける坂本がキムを抜いてボックスへ突入するも、カバーで戻った徳永がカット。49分、湘南陣での細かいつなぎから徳永がスペースに持ち出し、駆け上がるキムの弾丸ミドルシュートを野澤が横っ跳びで止める。

湘南は元々ハンの運動量が物足りない上に、攻撃陣が前がかりになるためバイタルエリアががら空きで、東京はそのスペースを使ってどんどんチャンスを作る。54分、森重のパスカットから一気に攻め込んで大黒がシュートするも、野澤がキャッチ。58分、速攻の中でリカを囮に使いながら平山がシュート、惜しくもバーの上。64分、ボックス左でこぼれ球を拾った平山がクロス、ニアに走り込む大黒が左足ヒールでシュートするがきわどく外れてしまった。

そうして仕留めきれないうちに東京も攻め疲れし始め、永木・新居とフレッシュな選手を投入した湘南が攻勢を強める。67分、左から仕掛ける阿部のシュートがDFに当たってゴール前に跳ね、権田が倒れ込みながらキャッチ。東京は中盤でセカンドボールを拾えず、危ない形を作られるように。69分、ハンの強烈なミドルを権田が横っ跳びで弾き出す。70分には永木のスルーパスで坂本がキムの背後に抜けるも、一対一のシュートを権田がビッグセーブ!さすが。

ここで東京は疲れの見える森重に替えて松下、さらに石川に替えて重松を投入。大熊監督の指示で後ろ目に重心を移したせいもあり、戦いぶりが安定した。所々で昨年を思い起こさせるような、時間を確実に費やすパス回しも。そして83分、ボックス左手前から仕掛けるリカがDFをかわしつつ低いコントロールショット、これが野澤のジャンプも届かずきれいにゴール右隅に決まった。力を抜いて狙いすました、いいシュートだった。3−0。結局、そのまま東京が快勝。
 
 

ミもフタもない言い方だが、勝つのは気持ちいいもんだな、と(笑)。愉しかった。

スコア的にも内容的にも完勝と言っていいだろう。ボール奪取から余計な手間をかけずに相手ゴールへ迫る攻撃は前節同様機能し、多くのチャンスを作ることができた。特に2点目は展開・スピードとも文句なしの素晴らしい攻撃によるもの。セクシーフットボール(笑)!守備の方も、ピンチは幾つかあったものの権田の好セーブもあって無得点に持ちこたえ、懸念されたスタミナ不足も後半の無難な選手交代で乗り切ることができた。よしよし、という感じである。

大宮戦とこの試合を観る限り、大熊監督はやはり球際の強さや攻守の切り替えに重点を置いているようだ。大熊さんの言う「サッカーの本質」はそれだけにとどまるところではないのだろうけど、ここ2〜3年のチャレンジの中で失われかけていたものは確かにあって、城福さんの遺産は生かしつつもそれに上乗せしていきたい、ということではなかろうか。それは、個々の特長を生かし切る攻撃やゾーンにとらわれ過ぎない守備といった方向性の中にもうかがえた。

もちろん課題はまだまだたくさんある。前に速い攻撃は単調になりがちで、もう一工夫ほしいケースは多い。守備では、ボランチが前に出すぎてバランスを崩すことがあるのと、あと突然フッと集中力を失ってピンチを招く場面があったこと。ゲームコントロールの面では、ポゼッションと速攻の時間帯にもっとメリハリをつけてもいいかも(これは昨年の方ができていた)。まあ、そこら辺は今後羽生や梶山らが復帰してくる中で向上してくれれば、というところか。

MVPは権田。「とにかく勝たなければ」という試合だけに攻撃の間隙を突かれる形でのピンチがあったものの、全てを彼が防いでくれた。若さの割に安定感があるんだよね。攻撃の選手では、まず大黒だろう。機転の効いたゴールゲッターらしい先制点は1得点をはるかに超える価値があったと思う。平山もおそらくコンディションが上がって役割も整理されたのだろう、迷いのないプレーぶりで攻撃を牽引してくれた。石川は……ゴール後の笑顔が全てを表してたね。

森重は、パス展開の軸にはなってたけど、時々後ろがおろそかになることがある(大熊さんに注意されてた)。徳永は、彼なりに頑張っているのは相変わらず。快勝した試合だとあのぎこちなさも許せるかも(笑)。DF陣はまあまあの出来だったろうか。リカについては「もっと周りを使え!」と思う一方で、独特のアクセントとなっているのも否定できない。試合後、石川が呼ばれているのに彼が「シャー!」をやって、ゴール裏からツッコミを入れられたのには笑った。

まあ、これで降格圏から脱出したといっても、まだ神戸との勝点差はたったの1。今後清水、ガンバ、横浜、川崎、名古屋といった強敵との対戦が控えていることを考えても、早めに勝点を積み重ねたい状況に全く変わりはない。天皇杯を挟んで次節は好調仙台とのアウェイゲーム。チャレンジしがいのある相手であり、是非とも勝利を望みたいものである。頑張ろう。
 

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コメント

リカは使い方が難しい選手ですね。

ドリブルを始めると前しか見えないようで、フリーな味方が逆サイドに居ても自分で無理なシュートを打ってしまうし、守備ではマークの相手を簡単に離して北斗から注意されるはで、見ていてハラハラします。


でも、あの突進力は魅力ですから、周りがケアしながら育成していくしかないのでしょう。

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