●底は打った、のかな (ヴィッセル神戸×FC東京 テレビ観戦)
ヴィッセル神戸 0−0 FC東京 (J1第21節 神戸ユニバー記念競技場)
土曜の夜は神宮球場にいたので、スカパー!の中継を録画して本日観戦。
立ち上がりは神戸の攻勢。ポポ・ボッティのドリブル突破など縦に速い攻撃で一気にバイタルエリアへ押し寄せ、松岡・朴の強烈なミドルシュートが枠をかすめる。しかしそれらをしのいだ東京は10分を過ぎる頃から徐々にペースをつかんでいき、13分、大竹→リカルジーニョ→石川とテンポ良くパスが通って石川のミドルシュートがバーを直撃。その直後には左に流れたリカの速いクロスに大黒が飛び込んできわどい場面を作るなど、着実にチャンスを作っていく。
この日の東京は前線の4人が流動的に動き回ってパスコースを作り続け、神戸のプレスが(整然としつつも)強度に欠けたこともあり、ボランチからリカ・大竹への楔のパスを軸として相手の守備ブロックに食い込むことができていた。だが、やはり問題はそこから。大竹が積極的に撃つミドルシュートはいずれもDFにブロックされてしまい、40分、大きな展開からボールを収めた中村北斗の強烈なシュートは惜しくもバーを越えた。スコアレスのままハーフタイム。
後半も序盤は神戸がラッシュをかけ、46分、松岡のスルーパスでイ・ジェミンがキムと競り合いながらボックスへ突入し、シュートを権田が好セーブ。しかしやはり前半と同様、すぐに東京が主導権を取り戻す。54分、リカのパスでDFのギャップに走り込んだ大竹がボックス寸前で倒されたが、なぜかノーファウルの判定。65分には徳永のパスでリカが左タッチ際を突破、石川へのラストパスが通り、石川はGK徳重をかわすも角度を失ってシュートできず。残念!
後半半ばを過ぎると双方ともフレッシュなアタッカーを投入し、ミスが目立ちながらも必死に勝点3を目指す攻め合いに。68分、北斗のミドルシュートは徳重がセーブ。77分、都倉のパスでCBの間に飛び出した我那覇が強烈なシュートを放つが、権田が好反応で弾き出す。78分、鈴木の強烈なロングシュートは徳重が好セーブ。84分、左に開いた鈴木達のクロスが逆サイドに抜け、フリーの徳永に通ったが……ボールを押さえきれずシュートには至らなかった。
最後の見せ場は追加タイム2分を回ってから。カウンターで中央駆け上がる石櫃(この場面の実況アナの「石櫃が行く!」という叫びは、シンプルだが格好良かった)の強烈なミドルシュートを権田が伸び上がってフィスティング。続くCKのはね返りを叩いたボッティのドライブシュートも権田が横っ跳びできわどく止め、さらにこぼれ球を拾ったポポの決定的なクロスもまたまた権田が弾き出した。3連続ビッグセーブ!権田のおかげで最悪の事態は免れて試合終了。
まあ、前節のヒドさを考えれば、少し立ち直ったかな、と。
今回は前節から中1週間空いたおかげもあるのか、選手たちの動きは(特に前半においては)決して悪くなかった。また、欠場者の多い中でのスタメンの選択も無難なもので、攻守とも個々の役割は整理されているように見えた。攻めてはリカや大竹を中心とするパスワークから幾度か好機を得たし、守っても相手にボックスへの侵入をあまり許さず、権田の好セーブもあってW杯明けでは初の完封。あとはどこかで決勝点さえ奪えれば……というところだったのだが。
残念なのは後半攻め合いになったところで次々と新たなアタッカーを投入しながら、その割に決定機が少なかったこと。パス攻撃を牽引する大竹・リカが下がり、さらに前半基点として活躍していた梶山が沈黙したことで、攻撃がペースダウンしてしまったように見えた。「使われる」選手に比べて「使う」選手が少なすぎた感じ。徳永は彼なりに奮闘していたのだが。羽生・松下が出られない状況では仕方のないことなのだろうか。田邉草民は実質戦力外なのかな。
個々の選手では、まず徳永は頑張った。もはや「やるしかない」状況で吹っ切れたのか、リカの突破をもたらした65分の速いパスや84分に決定機となった前線への飛び出しなど、これまでより思い切りのよいプレーぶりが目立った。僕は彼のプレー適性からしてやはりボランチで使わない方が良いのは間違いないと思うし、この試合でも悪い位置でボールを失う場面もあったのだが、それでも彼は彼なりにできる範囲で奮闘しているように見えた。賞賛に値すると思う。
攻撃陣では、まずリカがキープ力と視野の広さを武器に健闘。球離れの遅ささえ気をつければ今後も使えそう。大黒はもっとシュートさせてあげたい。石川や鈴木達也は動きは切れていたので、そろそろ決めてくれそうな雰囲気だ。梶山は前半快調で後半電池切れ、でも交替できないのが苦しいところ。守備陣は概ね及第点か。北斗はやはり外よりも中を上がった方が怖さが出る。そして権田!セレッソ戦のミスを取り返して余りある、素晴らしい守護神ぶりだった。
ということで、神戸の低調さ(なぜ都倉は控えなのだろう?)に助けられた面はあるにせよ、思ったより悪くなかったというか、「ここから上げていけば」という試合だった。あくまで残留争い(とカップ戦)を考えれば、だが。個人的には、この試合でも可能性を感じるプレーぶりだった大竹洋平を今後は攻撃の軸に据えてほしい。「やりくり」にとどまらない、来年以降にも残る何かを考えるならば、それは彼のような才能を開花させることではないかと思うのである。
ネット上は悲観論が溢れてるようだけど(そりゃそうだよな)、僕はとりあえずナビスコ杯清水戦と浦和戦がちょっと(だけ)楽しみになった。まあ、今さら慌てても、落ちる時には落ちるから。ここでキレても仕方がない、というか。しばらくは落ち着いて見守りたいと思う。