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2010年08月22日

●ザ・完敗 (FC東京×サンフレッチェ広島)


昨日の夜は、味の素スタジアムでJ1第20節。FC東京 0−2 サンフレッチェ広島。ともに夏場の連戦の中で負傷・欠場者が相次ぐなど満身創痍、結果も出せていない両チームの対戦。東京は開幕以来となるホームでの勝利がほしいところだったが……試合はサンフレッチェがお得意のパスサッカーで終始優位に立ち、後半の2ゴールによる点差をはるかに上回る内容で完勝を収めた。トンネルに入ってしまった感のある東京は、これで2引き分けを挟んで4連敗。
 
 
序盤からゲームを支配したのは広島。ストヤノフを軸として着実にビルドアップし、楔のパスから加速する攻撃。立ち上がりこそ長いボールが多かったものの、徐々に東京の守備網をパス&ムーヴで揺さぶってチャンスを作っていく。6分、槙野のミドルシュートがバーを越え、その直後、高萩のパスでDF裏に抜けた森崎のシュートがポストの右を抜ける。8分にはストヤノフのロングパスで右サイドを突破した森脇のクロスに佐藤寿人が頭で合わせるが、バーの上。

一方の東京は徳永がSB・今野がボランチで先発し、CBには寿人対策(?)で椋原。守備は押されながら踏ん張るが、攻撃はサイドから単調なクロスを上げてはね返される場面が多い。期待できるのはセットプレーで、17分には連続CKからクロスを平山が落とし、大黒が飛び込むチャンスとなるもGK西川がブロック。さらに梶山が撃ったミドルシュートも西川がセーブ。23分、ボックス正面のFKからストヤノフが狙ったシュートは権田が読み切ってキャッチした。

前半半ばを過ぎても広島はスイスイとパスを通し続け、東京の中盤守備はそれをせき止められない。34分、森脇が中へ切れ込んでミドルシュート、権田が横っ跳びで弾き出す。39分、左サイドを槙野がワンツーの連続で突破し、ゴール前へ躍り出るも、寿人を狙うクロスが合わず逸機。ロスタイムには森崎のFKが壁に当たったはね返りを槙野がダイレクトボレーで叩くが、権田の正面を突いた。東京はいいところのない前半だったが、何とか無失点でハーフタイム。
 
 
後半、東京は頭から松下に替えて大竹投入。しかしいきなり青山の鋭いスルーパスで寿人が抜け出す大ピンチ、シュート失敗で命拾い。広島は前半途中から出始めていた右→左のサイドチェンジをさらに増やして東京を追い詰める。そして56分、右サイドの森脇からボックス手前の高萩にグラウンダーのパスが通り、さらに左サイドをフリーで上がる服部へラストパス。服部は左足できれいにゴール右隅へシュートを撃ち抜き、権田も届かず広島が先制した。0−1。

リードした広島は全く攻め急がなくなり、後方で回しまくってはストヤノフの正確なフィードで東京の隙を窺う形に。東京は平山に替わった重松が懸命のチェイスを見せ続けるが、いなされてしまう。62分、カウンターから寿人が撃ったシュートは椋原がブロック。そして64分、広島は右サイドからまた服部へサイドチェンジを通し、寿人が椋原の目の前で鋭い反転シュート!ゴール右隅へ突き刺さった。サポーターから受け取ったコーナーポストを振り回す寿人。0−2。

東京は大黒OUTでリカIN。3トップのような形にして反撃を試みるが、個々の選手がバラバラに仕掛ける攻撃はなかなか好機に至らない。70分、大竹が正面からフェイントでDFをかわしつつボックスへ突入するもシュートできず。75分には広島の波状攻撃から青山のダイレクトボレーが右ポストをかすめる。残り15分を切るとさすがに広島も足が止まったが、パス回しと交代出場選手のチェイスで確実に時間を使い、そのままのスコアで試合終了となった。
 
 
完敗。この2文字しか思い浮かばないような試合だった。2点差をはるかに超える内容の差。

怪我等で主力の一部を欠いているのも、過密日程の中でここ最近結果が出ていないのも両チーム一緒。だが、質の差は一目瞭然だった。サンフレッチェ広島はポゼッションを大事にし、全体がスライドしつつ、全員が数m単位の動き出しやフォローを繰り返し、パスの連続でどんどんボールを動かすサッカー。ただし決してチマチマとつなぐだけではなく、ストヤノフの高速フィードやサイドチェンジ、オーバーラップを繰り返して加速する崩しなどダイナミズムもあった。

一方のFC東京は徳永を(左とはいえ)SB、今野をボランチと「本職」のポジションに戻し、平山・石川が先発。おそらくは広島の低くて素早いアタッカー対策としての椋原CB起用と合わせ、印象的には何らかのチャレンジというよりも手堅い布陣で結果を求めているように思えた。しかし攻めては個人技頼みの色彩が強く、広島の寄せで簡単にボールが停滞し、守備の方も今野起用にも関わらず中盤でプレスがかからないなど、ほとんど良いところが見られなかった。

もちろん広島の、11人が有機的に連動して攻撃を作り上げるサッカーにもスタミナ切れの問題やカウンターを食らう危険性など、それ相応のリスクはある。実際、戦績は不安定だ。でも選手たちにスタイルは確実に浸透しているし、単なる個の力×11を超える何かがあのサッカーにはあるように思えた。もしかしたら、ムービングフットボール、すなわち城福監督が当初掲げていた「人もボールも動くサッカー」とはああいうものを指していたのではなかったのだろうか。

シュート数5対15という数字にも収まりきらない両チームのコントラストに、「この2年半は一体何だったのだろう」といったことさえ考えてしまう、残念でならない試合だった。やっぱり今シーズンの「こねくり回しすぎ」にも表れているように、その時その状況での最適値を求めるあまり、本当に拠るべき芯となるスタイルが曖昧になっているのではなかろうか(「城福監督は理想のサッカーにこだわりすぎ」と言う人もいるみたいだけど、僕はむしろ逆だと思っている)。

まあ、思い起こせば、昨年や一昨年のある時期においては東京も(サンフレッチェほどではないにせよ)ボールのよく動くサッカーをやれていたわけで、今は調子もどん底なのかもしれないし、ある種の自信喪失状態にあるのかもしれない。ついでに言うと、調子の良し悪しに関わらずパス&ムーヴやフォロー、フリーランを繰り返してくれる羽生の存在がいかに大きいかも改めて痛感した。大黒や平山は比較的よく動き出してたけど、そこにはパスが出なかった。

 
チームの顔ぶれからすれば信じがたい話だが、いよいよ2部降格の危険が現実味を帯びてきたのだろうか。残留を第1目標とするならば、じっくりチームを作り直したり熟成を待ったりする時間はもはや今シーズンの内には残されていないのかもしれない。だからといってバタバタと変えまくったりすると事態はますます悪い方に行きかねないわけで。まさに悪循環かも……。

……と、試合後にはマジでここ2〜3年の中では最もネガティブな気分になってしまったわけだが、まあ何というか、深刻になって悩み過ぎるのが一番良くないような気もするので、次の試合もその後もファンとしてはヒステリックにならずに見守ってあげたいものだとは思う。誰か特定の選手がどう、というだけの問題でもないことははっきりしたわけだし。冗談抜きで、秋が深まる頃までに天皇杯や来年のリーグ戦が楽しみになるような戦いぶりが見られれば。うん。
 
 
[付記1]
試合前にメイン側コンコースでエル・ゴラッソの臨時号を配布している様子だったので、もらおうと近寄ってみたら、大声を出して配っているのは村林社長だった。陣頭指揮お疲れさんです。

[付記2]
この日最も愉しかったのは、ハーフタイムにドロンパと「からあげクン」2人が出てきた時だった。途中でからあげクンが転んで頭からからあげが1個転がってそれを追っかけてみんなで右往左往……って、よくできたコントだったな。サッカーの方でもあれくらいの連携が欲しい(笑)。

[付記3]
シュート数が少なくて負けるとよく「パス回しが手段ではなく目的化して」などと言う人がいるので先回りしておくと、少なくとも昨日は「目的化」するほどパスは回っていなかった。それ以前の問題。「前に行けるのに行かない」状態とそもそも「前に進めない」状態を取り違えたらアカン。
 

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コメント

お疲れ様でした、
コーチ陣も選手も、もう一日リフレッシュ休暇を取ってた方が良いんじゃないかと、寿人相手に頑張ってた椋原のコメントが悲しすぎる。

この日の梶山はパスは駄目だったけどかなり上下動してたんだけどなぁ…。
去年と違い中盤で保持出来ないんだから平山使うなら上で固定で戻らないで、更にサイドにも流れない方が良いと思います。
ナオと平山で互いを消してる部分も有ると思う。(ナオは何言われても相手にしないでスマイルなw)
どうやったら大黒の持ち味を活かせるかだけチーム全体で考えて欲しいです。

中だけ固めてサイドは自由にヤラしても良いって相手の方が一枚上手だった…ウチもボランチ後ろにアンカーを入れて岡田サッカーしますかね?

確かに「理想のポジション」にはまったく拘ってませんよね。
他方、大黒にロングフィードを合わせる形とかは狙わず、あくまでパスを繋ごうとすることを指して、「理想のサッカーにこだわる」と言われているのかもしれませんね。
もっとも、シーズン中(そしてこの2年半)ずっと続けてきたことを急に変えるのは、実際問題大変なので、拘らざるを得ないかもしれませんが。

広島はいつもの広島サッカーでした。守備では寿人を残して、9人で守るのも想定内。

しかし、東京の攻撃は広島守備陣の前でただボールを回すだけで、前線と連動した崩しのプレイもミドルシュートもなし。完全に攻めあぐねてました。


何よりミスを恐れてか消極的なプレイが、チームのはまった迷路の深さを示しているようです。


道に迷ったときは、やみくもに進んでも深みはまるだけ。早くチームが正常に機能していた時点に戻すべきでしょう。

まずは守備を再構築するのが、急務でしょう。

城福さんは「変えたい人」なんですよね。3年目でようやく分かってきました。理論派風に見えるけど、実は芸術家肌という感じ。

うまく行ったから同じパターンを続けるというのができない人。気持ちは分からないでもないけど、そのペースを落とすなり、誰かがかみ砕いて通訳しないと、選手が理解できてないようにも見える

みなさん、コメントありがとうございます。

磐田が勝ち、仙台が快勝し、神戸が勝点を拾ったことで、いよいよ東京の現在位置は「残留争い」の様相を呈してきましたね。お尻に火がついてアッチッチ(笑)。

そういう状況においては残留が第1目標なのは確かですが、個人的にはやはりそこ「だけ」を見据えたチーム作りはしてほしくないですね。甘いと言われようと何だろうと。

2部に落ちなかったとしても、「単に残留しただけ」のチームは、結局その後浮上できなかったり落ちたりするのが大半だと思いますので。経験的に。

関連しつつも別の問題として監督人事とか色々あると思いますが、まあ漠然と、一般論として、とにかく残り4ヶ月を有効に使ってほしいものであります。

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