« 暑苦しいというか、重苦しいというか (アルビレックス新潟×FC東京 テレビ観戦) | メイン | こんだけ攻めても駄目なんかい (FC東京×名古屋グランパス) »

2010年08月05日

●俺たちには大黒将志がいる (スルガ銀行チャンピオンシップ)


昨日の夜は、国立霞ヶ丘競技場でスルガ銀行チャンピオンシップ。FC東京 2−2(PK4−3) リガ・デ・キト。ナビスコ杯とコパ・スダメリカーナの優勝チームによる一発勝負のカップ戦、相手は一昨年のクラブW杯にも出場したエクアドルの強豪リガ・デ・キトであった。試合は、2度にわたってキトにリードを許す苦しい展開となったが、後半ロスタイムに東京の誇る「日本一のストライカー」が同点ゴールを奪う。PK戦を制した東京が見事初優勝を飾った。
 
 
キックオフ10分後に到着し、2万弱の観衆で埋まったスタンドに驚きながら着席。その時点では東京優勢で試合が進んでいた。森重・田邉が着実にパスをさばき、平山の展開パスから石川がサイドで仕掛けていく。22分、ゴール左隅を襲うキムの直接FKをGKドミンゲスが横っ跳びでセーブ。26分、CKから森重のヘッダーは惜しくも外れ。一方のキトはやや動きが重くリアクション中心の構えだったが、一旦ボールを奪うとさすがのポゼッションを見せる。

29分、キトは縦のつなぎからFWバルコスへ速いグラウンダー。バルコスは鋭い切り返しで今野を外し、ゴール左隅に叩き込んだ。緩急の変化がナイス。0−1。だが、これは厳しいかと思いきや、東京もすぐに反撃する。34分、バイタルエリアで前を向いた田邉が思いきったシュート、一瞬ふかしたかに思えたがボールは急激に曲がり落ち、ドミンゲスは思わず前に弾き落としてしまう。これを詰めていた平山が押し込んだ。よし!1−1。その後は一進一退で前半終了。
 
 
後半、立ち上がりからキトは前半よりもペースを上げてきたように見えた。46分、いきなりサルゲイロの反転シュートがポスト左を抜ける。しかし東京も交代出場の梶山と羽生を中心に速いパス回しで対抗し、主導権は渡さない。引き続き互角の攻防が続いたが、63分、キトが右サイドのFKからクロスを上げた場面、椋原がアタッカーを引き倒してしまいPK。MFウルティアがきっちり右隅に決めた。1−2。そこからは、キトは余裕を持って大きくパスを回すように。

東京は大黒、ソ・ヨンドク、重松と投入してゴールを狙う。68分、平山のパスでDFの背後に出た石川が右サイドをえぐるも、シュート性のクロスはドミンゲスが弾き出す。その後も東京はクロスに平山が競りかけるが、キトDFもしぶとくシュートを防ぐ。残り15分を切るとキトは引いて自陣を固め、東京は梶山が左右にさばいても中へ入れないように。キトは6人の交代枠をうまく使って時間を使っていく。84分、波状攻撃から重松が撃ったボレーシュートも枠外。

迎えたロスタイム。後のない東京はDFラインからキムがロングフィード。DFに競り勝った平山がゴール方向へ流し、クリアを躊躇したキトDFがボールをそらしたところに大黒が走り込んであっという間に一対一に。右サイド角度のないところだったが、大黒は巧みに左足アウトでタイミングを外し、ドミンゲスを抜いてゲット!!まさに起死回生、土壇場のスーパーゴールだった。2−2。そして終了間際のピンチも、権田の体を張ったプレーで防いで終了のホイッスル。
 
 
PK戦。東京にとってはいい記憶ばかりでもないが、やはり真っ先に思い出すのは2004年のナビスコ決勝であり、場所が国立となれば負ける気はしない。案の定、いきなりキト1人目のウルティアを権田がストップ。一方、途中出場の選手を並べた東京は大黒・松下とゲット。3人目の重松がドミンゲスの正面に蹴ってしまったものの、キトは4人目のルナも外してしまう。今野が決め、そして最後は梶山が右ポストに当てながら決めて、東京が勝利を収めた。優勝!!
 
 

いや、良かったな、と。タイトル獲得という意味でももちろん喜ばしいし、夏場の連戦で苦しんでいる最中だけにホント勝てて良かった。おまけに日本チーム初勝利とは!

リガ・デ・キトはやはり強かった。日本の湿っぽい暑さがこたえたのか全体的に動きがやや重かったようだが、攻撃の際のつなぎやトラップの技術とキープ力、いざという時の寄せの迫力などはなかなかのもので、緩急の付け方や逃げ切りに徹する試合運び(最後は失敗したけど)あたりもさすがであった。石川や平山があと少しで抜けそうなところ、あるいはサイドアタッカーがクロスを上げようとした場面、ギリギリでキトDFの足が追いつくあたりが「いかにも南米」。

そう、実質ホームとはいえ、キトのような「異質な強豪」とタイトル・賞金をかけた勝負ができたのは、東京の若い選手たちにとってよい経験となるに違いない。キトとはいつかまた、クラブW杯で対戦することになるのかもしれない……そうなるといいね。

FC東京は、連戦の最中ということでベストメンバーというわけにはいかなかったけれども、内容的にはまずまずか。守備のバランスは90分間通して悪くなかったし、攻撃も(相手が引いていたにせよ)ボールを支配して能動的に仕掛けるシーンが多かった。ただ、攻め込んでからの崩しの局面でパンチ力に欠けるのは相変わらず。最近起用の少なかった田邉・平山・石川や初出場のソ・ヨンドクがある程度フィットできたことは、今後にポジティブな影響をもたらすだろう。

MVPは大黒。あの1点がなきゃ負けてたわけだし、決して簡単なシュートではなかったから。角度がなく体勢も悪かったのを逆手にとるような、左足アウトのチップキック。GKを手玉にとった。いや、本物のストライカーとはこういうものかと。優勝賞金の3千万円は彼の完全移籍の足しにしてほしいものである。FWでは平山も良かった。得点機も含めてハイボールに体を張り続けてくれたし、足下に収めてくれる彼が入ると(変な言い方だが)攻撃が安定するんだよね。

梶山・森重は2人とも良かったし、どちらも大切な選手だけに45分間の起用にとどめたのはナイス判断だと思う。田邉はいい意味で予想を裏切るプレーぶりだった。石川も磐田戦に比べれば調子が上がってきた様子。重松・大竹・ソは少し目立たなかったかな。羽生はカバーリングお疲れ様。今野はバルコスにかなりやられてたが、あれは相手が凄いんだろう。権田は……この試合は塩田でも良いような気がしたけど、彼の先発が勝負度合いを表していたというか。

あと、忘れちゃいけないのはPK戦における城福采配である。キッカー5人中4人を途中出場の選手としたのは、夏の試合における疲労度を考えれば至極まっとうな判断。また、唯一フル出場でキッカーとなった今野は、ああいう場面では最も頼りになる男だから。相手が外した直後に「おつき合い」せずにたやすく蹴り込んだのは、もうさすがとしか言いようがない。プレッシャーに負けずに決めた選手たちが偉いのはもちろんなんだけど、今回は人選も良かった。

まあ、何にせよ、この勝利でチームに弾みがついてくれることを期待したいものである。次は日曜日、目下優勝争い中の名古屋をホームに迎える大事な試合だ。頑張って。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2638

コメント

最初、ソ・ヨンドクくんを「ソ・ドンヨク」くんと書いてました。貪欲(笑)……すまぬ。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)