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2010年07月18日

●「こんなこともあるさ」 (FC東京×ヴィッセル神戸)


昨日の夜は、味の素スタジアムでJ1第13節。FC東京 2−2 ヴィッセル神戸。約2ヶ月に渡るW杯中断もようやく明け、いよいよ僕たちの「日常のハレ」の再開である。相手は降格圏ギリギリに位置する神戸。東京にしてみれば、きっちり勝って上位進出に向け勢いをつけたいところであった。試合は東京が序盤に幸先良く2点を先制したものの、あと一歩で3点目が奪えず、逆に後半終了間際の土壇場で残念な2失点。悔しい悔しい引き分けとなってしまった。
 
 
風があり、7月にしては過ごしやすい空気の中でキックオフ。長友の抜けた東京は左右のSBに松下・中村北斗が入り、攻撃的MFは大竹と羽生が、FWはリカルジーニョと新加入の大黒がコンビを組む新鮮な布陣。序盤はこれが機能した。鋭いフォアチェックと安定感あるライン防御が神戸の攻撃を寸断し、ボールを奪うと速いテンポのパスワークで攻めたてる。攻撃陣の連携未成熟ゆえにシュートにまではなかなか至らないながら、確実に主導権を握っていた。

先制点は9分。中盤でパスを受けた大黒がDFの寄せをかいくぐりながら左サイドのスペースへパス。一気に抜けたリカのシュートはGK榎本が弾いたものの、DFの機先を制して詰めた梶山が冷静に押し込む。梶山は、大黒にパスしてから60mくらいのフリーランが実った形に。1−0。その後も東京は試合を優位に進める。オーバーラップは控えめなどリスクはあまりかけない形ながら、大黒のポストプレーも交えた速いパス交換に神戸DFはついていくのがやっと。

そして17分、ボックス左でパスを受けたリカがDF2人の間を割って中へ突入、チョコンと上げた低いクロスを大竹がダイレクトボレーで叩く!タイミングを外された榎本は一歩も動けず、ゴール左に突き刺さった。大竹の得点はこういう「絶対に止められない」ものが多い。2−0。尻に火のついた神戸は前へ出る。20分、オーバーラップした茂木のクロスに北本が合わせるも、ポスト右に外れ。逆に21分、大竹の決定的なクロスに大黒が飛び込んで際どいチャンス。

惜しかったのは22分。神戸は連携ミスから榎本がパスミス、リカが無人のゴールを狙ってシュートするがポスト右に外してしまう。ただもらいかと思ったが……。そこからは試合がやや膠着し、神戸の攻撃を自陣に下がった東京がはね返してカウンターを狙う展開に。30分、エジミウソンの縦パスで都倉がDF裏に抜け出るが、シュートはきわどく枠をそれる。35分にも大久保のパスで右サイドを突破したエジミウソンが速いクロスを入れるもわずかに合わない。

ロスタイム、ボックス左で神戸のFK。朴の入れた速いボールは混戦の中で何とかクリアしたものの、アタッカーと接触した塩田が脳震盪を起こしてしまう。直後のCKで塩田は前に出ながら触れず、終了のホイッスルの後も倒れ込むなど、不安の残る終わり方であった。
 
 
後半。いきなり2枚替えで活を入れた神戸が攻勢に出る。バイタルエリアで仕掛ける大久保から右サイドどフリーの朴へラストパスが通ったが、塩田が前に出てシュートコースをふさぐ。49分には右サイドを突進した石櫃の速いクロスを塩田がパンチでクリア。激しくなった神戸のプレーに押されるように東京はパスミスが増え、大竹が前を向いて仕掛けるシーンが目に見えて減ってしまった。52分のFK、松下の低く速いクロスに森重が飛び込むもわずかに届かず。

58分、神戸は右サイドのパスワークから石櫃が強烈なミドルシュート、塩田が弾き出す。ただ、ここは神戸が前がかりになった分、東京にとっても追加点のチャンスであった。61分、リカの壁パスで左タッチ際を突破した羽生が大きく右に振るクロス、大黒のボレーシュートは榎本を抜いたもののわずかに枠を外れた。さらにその直後、また羽生のクロスを大黒が今度は落とし、拾った大竹がループシュートを狙うも榎本がわずかに触って決まらず。おっしい!!

後半も半ばになると中盤が空いて少しルーズな攻防に。ここで東京は羽生→鈴木、続いてリカ→石川の交代。しかしこれらは奏効せず。とどめを刺しに行くのかどうか迷いもあるのか、ドリブラー2人を生かす場面が少ない。むしろ大きく回して時間を使うプレーが増えていった。72分、右サイドからスルスルッとボックスへ入った梶山のクロスを鈴木が叩くが、DFに当たって決まらず。74分には左スローインから石川・鈴木が連続シュートするも榎本が押さえる。

終盤になるとさすがに東京は自陣を固め、ブロック守備をなかなか崩せない神戸はアーリークロスを多用するように。82分、右サイドを駆け上がる石櫃が松下を振り切ってクロス、ファーで近藤が合わせるも枠に飛ばせず。しかし84分、神戸が細かく速いパスをつないで東京DFの足が止まったところ、ボッティが右サイドへ斜めにドリブルで抜け、強引なクロスを上げる。これが絶妙の軌道で塩田の頭を越して左隅へゴールインしてしまう。何という「事故」。2−1。

それでも東京には1点のリードがある。精力的な守備で神戸に思うようなパワープレーをさせず、逃げ切りは濃厚に思えた。ところが93分を過ぎた頃、神戸がボックス右でFKを獲得。GK榎本も上がる総攻撃態勢である。ボッティのクロスは混戦の中で松下が何とかクリア。次のCKもはね返したものの、セカンドボールから上がったロビングを森重が手で弾いてPKの判定。大久保がゴール右隅にきっちり決めて神戸が土壇場で同点に追いついた。そして終了の笛……。
 
 

「あーあ」というか「暗転」というか。

試合途中までの感触は決して悪いものではなかった。中断前と比べてかなり顔ぶれの違うスタメンとなったが、確かに攻撃における連携不足はやや目についたものの、前目からプレッシャーをかける守備は機能していたし、パススピードは従来にない速さだったし、大竹やリカルジーニョも伸び伸びとやれていたし、早々に2得点できたし、中断明け初戦としてはこれ以上ない展開だったように思う。あとはどこかで3点目がとれていれば、何の問題もなく完勝したはずだ。

問題は、やはり後半半ば以降の運び方になるのだろうか。立ち上がりのピンチをしのいで、逆にカウンターから大黒と大竹の決定的なシュートに結びつけるも惜しいところで決まらず、という時間帯。鈴木と石川の投入はおそらく「3点目で決着をつけよう」という城福監督のメッセージだったのだろう(色々な組合せを試したいという意図もあったのかな)。ただ、そこで攻守のバランスに関してチームとして迷いが出たのか、攻撃については停滞してしまった印象である。

でもなあ……神戸の攻めがそれほど強力にも見えなかったし、普通は守りきれるよな、という。2失点いずれも(守備に関してはウィークポイントの)松下のところを突かれたのは偶然ではないのだろうけど、しかしボッティの「ループクロッシュート」なんて事故以外の何者でもないだろう。あえて言うならば、最後は降格圏ギリギリに位置する神戸の気迫(GKも攻撃参加!)に押し切られたのかな、と。もう少し前で粘ってキープできればなあ……というのは結果論か(笑)。

とにかく、「こんなこともあるさ」で済ませたい気持ちにはなる。ファンとしては。

個々の選手では、まず注目の大黒は幅広い能力を見せてくれた。先制点につながるスルーパスは素晴らしく、守備でも予想外に(失礼!)奮闘。ただし肝心のゴール前での動き出しに味方のパサーが反応しない場面が多く、彼の能力を生かし切れていないのはもったいない。リカルジーニョは、やっぱり2列目よりFWでノビノビやってもらうのが良さそう。大竹は周りを使ってもう少し良い体勢でボールを持てるともっといいんだけど。でもあのボレーにはシビれたぞ。

中盤では、羽生の判断の良さが光った。梶山はボチボチか。1点目の長距離フリーランはお見事。徳永は……うーん……(笑)。今野はいつも通りの今野ぶり。北斗は、やはりSBが良さそうだ。森重はフィードは良かったけど、最後にやっちゃったしイマイチな感じか。松下は、守備は仕方ないとして、幾度か見せた長距離オーバーラップは素晴らしかった。ああいう動きはチームにとって大事。交代で出た選手たちは皆不完全燃焼という感じか。あと、塩田は大丈夫?

スターティングメンバーの大幅入れ替えについては、最初は驚いたのだが、パーツパーツについて見ると「なるほど」という人選はけっこうあった。リカを前で自由にやらせること、北斗と松下のSBとしての可能性、そして中断前に調子を上げていた大竹の先発起用。チーム全体としても、繰り返しになるが案外機能していたし。ただ、あまりにも大きく変えたために、選手交代でさらにメンツをいじるとさすがに(羽生が下がった後は)バラバラになっちゃったかな、と。

ま、何にせよ、次の湘南戦は勝たないと。城福監督がどう修正して来るか。今回こんだけガラリとメンバーを変えて、次はまたガラリと変わっちゃったりして。どうだ反町さん、読めないだろう、なんつってね(笑)。
 
 
試合後には、チェゼーナへの期限付移籍が決まった長友佑都の壮行セレモニー。長友、ウケを狙って小道具(本田△風のグラサン、なのかな)を用意してたけど、それ付ける前から目が潤んじゃってるんだもの(笑)。その後も「出会いがあれば〜」って、無理してコメントするもんだからこっちもちょっと泣き笑いになっちゃったよ。でも、彼らしい率直な挨拶の物言いには好感がもてた。彼なしには昨年のナビスコ杯制覇もあり得なかった。イタリアでも頑張ってほしい。
 

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