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2010年03月28日

●黄色でよかったのに (大宮アルディージャ×FC東京)


今日の午後は、NACK5スタジアム大宮でJ1第4節。大宮アルディージャ 0−2 FC東京。開幕戦を勝利で飾りながらイマイチな戦いぶりの続くチーム同士の対決は、前半の内に2人の退場者を出した大宮が東京の攻勢にひたすら耐え続ける展開となったが、後半に2ゴールを奪った東京が勝点3をものにした。ひいきチームの勝利と新たな才能を目撃する喜びの一方で、数的不利の相手を袋叩きにする後味の悪さもあり、複雑な心境にさせられる試合だった。
 
 
立ち上がりはほぼ互角の展開。どちらも4−4−2のフォーメーションでパスをつなぎながら主導権を探る。攻撃の軸ラファエルを怪我で欠く大宮に対して東京は左MFに中村北斗を置く新布陣。高めに位置どる左SB村上の背後を突く形でチャンスを作っていく。開始直後に赤嶺の浮き球で石川が右サイドを突破、クロスを収めた北斗が切り込んでシュートするもGK北野がキャッチ。大宮も6分、橋本のサイドチェンジを内田がダイレクトボレーで狙うが長友がブロック。

試合が動いたのは9分。羽生に対して安が遅れ気味にタックルした場面、足裏で踏みつけたということなのか、村上主審はなんと一発退場の判定。大宮は早くも10人になってしまい、以後東京ペースで試合が進む。13分、カウンターで石川が抜けてシュートするが、北野がキャッチ。20分、直接FKのはね返りを狙った椋原のミドルシュートがポスト左に外れ。その直後には赤嶺がボックス手前からDFに絡まれつつ突進してシュート、当たりが弱く北野が押さえる。

ほとんどハーフコートゲームの様相。守備に人数をかける割に寄せの甘い大宮に対し、東京は余裕を持って回せばよいのに攻め急ぐことが多く、また攻撃がひたすら右サイドへ偏っていたせいもあるのか決定機は意外と少ない。23分、石川がワンツーで仕掛けてこぼれたボールを平山がコントロールショットで狙った場面も、ボールはきわどく枠外。もっとも大宮の方は「蹴るだけ」の攻撃になっており、FWにほとんど通らないため失点の恐怖もなかったのだが。

42分、石川が村上に走り勝ってクロス、ボールは敵味方の間をスルスル抜けて北斗の足下に収まり、戻したボールを羽生がシュート!しかし大宮DF陣が懸命に防ぐ。そして44分、マトがこれまた遅れ気味に羽生を倒した場面、アドバンテージ中の攻撃は防がれたものの、安の退場時に抗議で警告を受けていたマトは2枚目のイエローで退場。大宮はなんと9人になってしまった。騒然とする場内。前半終了後には大宮の選手たちが村上主審に詰め寄るシーンも。
 
 
後半になると前半以上に一方的な東京の攻勢となった。東京は羽生→キムの交代で長友を前に出し、今野や徳永の攻撃参加も交えて左右からたたみ掛ける形に。大宮は石原を坪内に替えて自陣を固めようとする。46分、クロスのこぼれを左サイドの平山が拾い、戻したボールを赤嶺がシュートするがバーの上。47分、長友のミドルシュートがポスト右を抜ける。48分、ボックス手前の混戦から今野がシュート、これも右に外れ。枠に飛ぶシュートが少なすぎる。

ヒヤリとしたのは51分。大宮が右サイドでFKを獲得、橋本が左足で蹴ったインスイングのクロスを権田がかぶり、あわやそのままゴールイン……だが幸いなことに、際どくポスト左に外れてくれた。そこからは東京が慌てずゆっくり回しながらクロスとシュートを雨あられと浴びせていく。54分、赤嶺が競り落としたボールを今野がボレーシュート、右に外れ。そして56分、北斗OUTで重松IN。期待のルーキーの初登場に東京ファンのテンションは高まった。

先制点は61分。ボックス内で石川が撃ったシュートはポスト(?)に阻まれたものの、二次攻撃で赤嶺がクロスを上げ、そのこぼれ球を後方から走り込む今野がゴール右上へ豪快に叩き込んだ。さすがは今野、というか、カミさんと「こういうKYが必要な状況で決めるのは今野だよな〜」と話していたところだったのでちょっと笑った(笑)。1−0。ますます追い詰められた大宮は前がかりとなるが、やはり人数不足は否めず、なかなかシュートに持ち込めない。

東京は赤嶺→リカルジーニョ、大宮は市川→渡部と替えるが流れは変わらず。東京は石川と重松の連携が面白く、70分に右サイドをえぐり込んだ重松が戻して石川がシュート、その直後にもボックス手前から重松が強烈なシュートを撃つが、いずれも北野が横っ跳びで弾き出す。そして78分、左サイドから長友がクロス、巧みな動きでマーカーを外した重松が頭でゲット!2−0。記念すべき初ゴールで勝負あり。あとは平山が何本かシュートを外して終了となった。
 
 
いやー、前のエントリーで審判本を好意的に取り上げたばっかりだったのに(笑)。レフェリーによる「ゲームコントロール」というものの恐ろしさを再確認させられる試合であった。

安英学による羽生へのファウルは確かに乱暴ではあったと思う。おそらく村上主審は足の裏が入ったのを重く見て一発退場の判断を下したのだろう。ただ、安のタックルは遅れ気味ではあったものの相手を傷つける意図は全く感じられず、前半9分という時間からも警告+注意にとどめるべきではなかったか。村上さん、「おっちょこちょい」らしいから紙の色を間違えちゃったのかな(笑)。つーか、あれが退場ならば32分の徳永の足裏タックルも退場にすべきでは。

あと、マトの方はある程度仕方ないとしても(2枚目の方も故意には見えなかったが)、それも安の一発退場がなければ避けられたかもしれない退場だったから。「レフェリーが試合を壊した」みたいな物言いは個人的に好きにはなれないけど、今回については判定で結果的に「壊れてしまった」ことは否めないのではなかろうか。一サッカーファンとして、とても残念な試合だった。

FC東京にとっては、ラッキーといえばラッキーであった。怪我人続出の中で攻撃パターンが定まらずに3試合でわずか1得点と苦しんでいたところ、後半の45分間はほとんど相手の反撃を恐れることなく攻撃練習ができたのだから……というとシニカルすぎるかな。でも、中盤の弱点を気にしなくてよい展開になったこと、勝点3と得点2を奪えたこと、期待の新人・重松をデビューさせて初得点をプレゼントできたことなど、ありがたい試合であったことは間違いない。

まあ、ある意味、シチュエーションが特殊すぎて内容的には「評価対象外」の試合だわな。もちろんリーグ戦で上位を目指すためには絶対勝たなきゃいけない試合ではあったし、なんだかんだできっちり勝ちきったのだから喜ぶべき何だろうけど……もっとすっきり喜びたかったよ!!

中村北斗を左に置く新布陣については、機能してなかったな、と。北斗左MFの理由は多分ボックス内への突進力(クロスへの飛び込みを含め)に期待したんだろうけど、中で突っかけてばかりなので長友も上がるに上がれず、左サイド攻撃が失われていた。その代わりというか、後半の長友・今野を前に出す作戦はズバリ的中したわけだが。特に今野のたたみ掛けるど迫力のプレーぶりはさすが。「情け容赦なさ」が求められる場面には欠かせない男である(笑)。

つーか、困った時のMF長友とか徳永のボランチ起用とかを見ても、城福監督というのは端的にアタッカーより後ろっぽい選手が好きなのかな、と思ったりして。

あと、忘れちゃいけないのは重松。特殊な状況ではあったけど、思い切りのよい仕掛けとドリブル・シュートの技術は確かに魅力的であった。もちろんこういう機会が巡ってくる「運」も実力のうち。守備とポストプレーについては未知数だけど、うまく行けばコンスタントな出場も可能では。パスワークで崩せるチームなら赤嶺の「最後の一押し」の力が生きるんだけど、今の状態だとドリブルやシンプルな連携で勝負できる重松の方がフィットするかもしれない。

いずれにせよ、勝点3は勝点3、か。リーグ戦では早くも首位を走る鹿島との差をできるだけ小さくとどめておいて、怪我人の復帰や攻撃コンセプトの再構築を待つしかないのだろう。とりあえず、水曜日の名古屋戦と次の日曜の多摩川クラシコでモヤモヤが晴れてくれますように。
 
 
[付記]
東京のシュート数「32本」には思わず笑ってしまった。それで2点かよ!!という(笑)。まあ、こういう試合で5点とかとっても後味悪さが増すからね……。
 

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コメント

バックスタンドで観戦していましたが、安選手の赤紙は厳しい判定だと思いました。

安選手にすれば、中盤で動き回る羽生を自由にさせたくないあまり、ガツンといってしまったのでしょうか?


結局、この退場がきっかけになり東京が勝利した訳ですが、素直に喜べない勝利になってしまいました。とても、残念です。

>コタツねこさん

そのとおり、本当に残念でしたね。

一つ一つのプレーとして切り取れば、安の退場も「仕方がない」かもしれないですし、マトの退場は「妥当」になるのでしょう。私もそう思わないでもないです。ただ、ホントにあれで良かったのかいな、と。

あの場で「よりよいサッカー」を実現するためには、安選手をイジェクトしない選択もあり得たのではないかと。端的にそう思うのですね。まあ、ここは安のタックルの悪質さをどの程度ととらえるのかにもよるのでしょうけど。

ちなみに、この試合の羽生は前節ほどキレていたわけでもないようでしたが、球際の俊敏性は大宮MFにとってやはりやっかいだった様子で、大柄な安やマトが「やっちゃった」のはさもありなんという感じでしたね。

お久しぶりです。

ナオが調子が上がっていますね、代表復帰は祝いたい気分です。

北野が良い仕事をしたのと大宮守備陣を誉めたいです。

自分は東京としてはやれる事は十分にやったと思います。
羽生さん四針ですか…。

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